ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第238話: 一人だけ桃〇みたいな資産もっているやつ

 

 

 

 ──1982年。

 

 

 いや、この際、もう82年という区切りは止めよう。

 

 既に、千賀子の前世では3年後に起こっていたプラザ合意が、この年に起こってしまったのだから。

 

 今さらな話だが、歴史はとっくにIFの世界へと突入しているのだ。

 

 

 まあ、それでも、千賀子の前世において、1982年に何が起こったのか……ちょっとした豆知識みたいな事を記しておこう。

 

 

 この年も大概悲しい事件や悲しい事故、悲惨な事が起こっていたわけで……え、どんな事があったのかって? 

 

 たとえば、ヨット訓練を応用した、自閉症や精神障害者の治療で知られていた『戸塚ヨットスクール』にて、生徒の死亡事故が続出していたのも、この時期だ。

 

 当時、東京にあった『ホテル・ニュージャパン』にて火災が発生し、数十人の死亡者と重軽傷者を出した事件。

 

 国鉄の送電ケーブルが切断される事件が発生したり、都内放火件数が最多記録を更新したり、サラ金への借金苦のあまり犯罪に走る者が多発したり。

 

 日航機の事故が発生して……あんまりにも暗いので、話を戻そう。

 

 

 ゆっくり、しっかり、頭を戻して、だ。

 

 

 まず、1982年前後に起こったというか、広がりを見せていたのが、『機動戦士ガンダム』の人気である。

 

 この作品自体が放映されたのが1979年であり、それから約3年後に人気が爆発し始めたわけだが……え、なんでタイムラグがあるのかって? 

 

 それはまあ、単純に、この頃のアニメはとにかく再放送が多く、多分に漏れず、ガンダムもまた何度も再放送されていた。

 

 また、ネット配信で見るのが当たり前になっている現代のちびっ子たちには些か想像しずらいかもしれないが、この頃の放送は全国一律ではなかった。

 

 具体的には、〇〇地方では放送されていたけど、××地方では放送されていない……というのが、極々当たり前だったのだ。

 

 それに加えて、地域によっては放送日が違っていたり、一ヵ月、二ヵ月遅れでの放送になったりなど、住んでいる場所によってタイムラグが生まれていた。

 

 それに加えて、この頃……実は、プラモデルがブームになっていた時期でもあり、それによって人気に拍車が掛かったのだ。

 

 おかげで、この頃はガンダムのプラモデルを買うために全国の小中学生が模型屋に列を作るなんて光景が生まれて。

 

 当時の販売会社が、販売日を特定の曜日に限定するなどしたこともあって、時には将棋倒しを起こして負傷者が現れる……なんて事故も起こったのだとか。

 

 

 次に、変わり種というわけでもないが、この年には『カレー給食の日』というものが生まれた。

 

 

 北は北海道から、南は九州まで。

 

 当時の全国小中学生約1600万人が、同じ日に同じものを食べるというものだ。

 

 現代人の感覚からしたら、『なんともユニークな催しだな』と喜ばれそうだが、この頃は違った。

 

 この行いによって連帯を養う効果があるか、それとも行き過ぎた管理教育の再来を招くか、中々な議論を呼んだのである。

 

 まあ、最終的には、様々な事情からすべての小中学校が参加したわけではなく。

 

 連帯感が生まれたのか、管理教育の影響があったのか、それは分からないけれども。

 

 とりあえず、『カレーは美味い!』と、ほとんどの小中学生からは好評だったのは、確かである。

 

 

 ──また、3月頃には、墨田川にてサンマが入ってきて、手づかみで捕まえようと飛び込んだり、網を抱えてくる者がいたり、とにかく色々と続出した。

 

 

 どうも、三浦半島沖合や東京湾にサンマの大群が流れ込んできて、その一部が墨田川や江戸川区にあった埋立地の運河に流れ込んだからなのだとか。

 

 現代ではすっかりサンマ=けっこうお高い魚というイメージになってしまったが、この頃は今の比ではないぐらいにサンマが獲れていたわけである。

 

 

 ……さて、ちょっと趣向を変えて、ほんのりエッチなニュースもある。

 

 

 それは、1982年、いわゆる『のぞき部屋』と呼ばれていた、当時流行していた風俗店舗が初摘発されたのだ。

 

 この『のぞき部屋』とは、その名の通り、覗くだけ。

 

 誰を覗くのかって、風俗嬢だ。

 

 店舗によってやり方は違っていたらしいが、隙間などから客が中を覗き、風俗嬢のプライベートな姿や、艶やかな姿を見る……というコンセプトの店である。

 

 なんで人気が出たのかって、それはもう単純に安いから。

 

 なんと言っても、場所を取らない。そのうえ、設備にそこまで金を掛ける必要がない。

 

 そして、風俗嬢側からしても、実際に肌を重ねるわけではない。中には顔を隠すことも許されていた店もあったとか。

 

 そう、風俗嬢と客は一歩も肌が触れていないのもあって、お互いに都合が良かったからこそ人気が出ていた……というわけだ。

 

 

 ……また、少し話を変えて、1982年とは、後世に名を残した様々な傑作が生まれた年でもある

 

 

 たとえば、巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が手掛けたSF映画の金字塔『E.T』が放映された年でもあり。

 

 世界にその名が知られた宮崎駿監督が手掛けた漫画作品、『風の谷のナウシカ』が、途中で映画化されることになったので、何度も漫画執筆が中断したり。

 

 世界中のクリエイターたちに衝撃を与え、漫画表現を新たに生み出し、歴史を塗り替えたとも評される『AKIRA』の連載が始まった年でもある。

 

 後に名が残るぐらいに様々な事件や事故が起こった年でもあるけど、同時に、後に名が残るぐらいに様々な作品が生まれ、記録が作られた年でもあった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………さて、そんな1982年を迎えた千賀子は、何をしていたかと言うと。

 

 

「──なにこれ?」

「長者番付のリストですね」

「それは分かっているのだけど、私が言いたいのはそこじゃなくて……この一番上に記された殿堂入りのところ、読んで」

「了解──秋山千賀子・1兆3891億円ですね」

「じゃあ、その下の1位は?」

「芝太郎・約2億です」

「意味が分からないにも程があると思わない? 桁が違い過ぎて誤植の類だと思うのだけど???」

「残念ながら、現実……これが現実です、マスター……!!」

「ガッデム!」

 

 

 なんか一方的に税務署から送られてきた本の中身を見て、千賀子は絶叫していた。

 

 いったい、千賀子は何を憤っているのか。

 

 それは、長者番付……正確には、『高額納税者公示制度』と呼ばれていた制度のことで。

 

 政府が数千万~数億円単位の高額納税者を公示する制度のこと。

 

 公示された高額納税者の名簿は、一般的には高額納税者番付や、長者番付として用いられており、そこから一般的には長者番付という名称が広まった。

 

 ちなみに、現在ではプライバシーの関係から廃止されており、死語の一つになりかけている名称だったり。

 

 なお、高額納税=高額収入というわけで、お金持ちの指標というか、この人儲けているんだなあ……って、いやいや、そうじゃない。

 

 

「殿堂入りってなんなのさ!? なんかいきなり別枠扱いでこんなのに載せられるの、嫌なんだけど!?」

「いちおう、第三者のチェックによる脱税牽制効果を狙ってのことでもありますので」

「そんなの『愛し子カワイイもうどこから褒めたら良いのか分からないうう涙が出そうああ出ちゃったカワイイ愛し子カワイイぺろぺろしたい会社』が勝手になんとかしちゃうから、私は何一つ関与出来ないのだけど?」

「そうだとしても、一般的には『愛し子カワイイもうどこから褒めたら良いのか分からないうう涙が出そうああ出ちゃったカワイイ愛し子カワイイぺろぺろしたい会社』は何一つ詳細が分からないのに、誰もが明々白々だと思っている不思議な会社ですので……」

「ちくしょう! 自分でも何を言っているのか分からなくなってくる! いったい、『愛し子カワイイもうどこから褒めたら良いのか分からないうう涙が出そうああ出ちゃったカワイイ愛し子カワイイぺろぺろしたい会社』ってなんなのさ!?」

「それが分かるのであれば、マスターも苦労はないかと……」

 

 

 とにかく、千賀子は憤っていた。

 

 何故なら、長者番付に載ってしまったら、これまで以上に面倒くさい人たちが押し寄せてくるからだ。

 

 なんでかって、金を持っていますよって周りに教えるようなものだからだ。

 

 幸いにも、泥棒や強盗なんかは事前に排除出来るし、詐欺や誘拐なんかも事前に排除できるけど……問題は、そこではない。

 

 明らかにヤバいのは巫女的パワーで退けられるが、面倒なのは、お互いにWin-Winな計画を持ってくる人たちだ。

 

 

 これの何が嫌かって、千賀子は別にこれ以上儲けたいとはまったく思っていないのだ。

 

 

 世の人たちからしたら、100回刺されて100回足蹴にされそうな話だが、千賀子は本気である。

 

 千賀子の感覚ではもう、どうやれば使い切れるのかって話であり、もはや、現在の己の資産の確認すら怖くて確認できないぐらいである。

 

 そんな千賀子にとって、『お互いにとって得になる儲け話、ありますよ』なんて感じに迫って来る人はもう、地雷以外の何者でもない。

 

 

 もともと、千賀子は、だ。

 

 

 豪華絢爛な食事やお高いブランド品よりも、好きな人が作ってくれた卵焼きや、我が子が描いてくれた似顔絵の方がはるかに価値がある……というタイプなのだ。

 

 欲張っても、現時点では千賀子にとって大切な人、購入した馬、冴陀等村のことなど……それらを守れる分さえあれば、千賀子は己の分はいらないとすら思っているのだ。

 

 だからこそ、新たな儲け話なんて持って来られても、千賀子としては……他の人のところへ持って行ってあげて、な感覚なのである。

 

 

「そりゃあ、政治家とかが大名行列みたいに続々と挨拶とか連絡くれるわけだよ! こんなの私が逆の立場だったら、何かあるたびにすっ飛んでくるわい!!」

「冗談抜きで、マスターに万が一の事が起こったら、一発で日本経済がヤバいですものね」

「てめえ、ロボ子……他人事だと思って……!!」

「私、ロボ子、人間のことはよく分かりません」

 

 

 とまあ、相変わらずというべきか、何というべきか……お約束みたいな言葉の殴り合いを経た後で。

 

 

「……で、なにこれ?」

「お手紙、ですね」

「それは分かっているの。私が聞きたいのは、この中身について」

「ふむ、マスターが所有している土地の一部を購入したい、ですね」

「そう、そうなんだよ。その土地がさ、私が覚えている限りでは、土地開発も農地転用も難しい、僻地も僻地だった記憶があるのだけど?」

 

 

 率直に、千賀子がロボ子に尋ねたら、だ。

 

 

「大正解でございます。この手紙の持ち主が所望している土地は、二束三文どころか購入者に対してお金を払ってでも……ぐらいな、ハズレもハズレな土地でございます」

 

 

 ──Q.そんな土地があるのかって? 

 

 ──A.悲しいかな、あったりする。

 

 

 あんまりにも僻地というか利用価値が薄く、自治体にも買い取り拒否されたりしちゃうせいで、儲け0で税金だけ取られ続ける不動産。

 

 負動産なんて呼び方が一部では付いちゃったり、付いていなかったり、そういう罠みたいな土地が……で、だ。

 

 

「なんでそんな土地を欲しいだなんて人が出てきたの? いや、好奇心とかそんなんじゃなくて、マジで意味わからないのだけど?」

「マスター……お忘れですか?」

「なにが?」

「好景気になりますと」

「なりますと?」

「土地の転売などが活発になるのです」

「そうなの?」

「これから、もっと増えますよ」

「えぇ……ていうか、早くない?」

「早くないですよ。むしろ、本当に情報を制している者は、合意がなされる前にはもう動いていますから」

「うわぁ……土地売買って怖い……だったね、うん、そうだ、そうだったよ、不動産関係はマジ殺し合いになるの忘れていたよ……」

 

 

 なんとも、不安を予感させる返答がなされ……そして、それは後に現実になるのであった。

 

 

 

 

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