ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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平和な話


第242話: また、マスターが思い付きで行動してる……

 

 

 とりあえず、ギリギリのところで致命傷を避けられた、といった感じだろうか。

 

 義父の友人もそうだけど、義父も十分頭が冷えて反省したわけだし、『春木競馬場』に新たな自販機を用意したのでそこに納品して──少し説明。

 

 実は、『春木競馬場』には既に和宏が婿入りしている店より酒を仕入れており、自販機を設置してそこへ納品させている。

 

 表向きはまったく別の酒屋の名前にしているが……なんで、そんな回りくどいことをしているのかって? 

 

 そんなの、周りが千賀子に配慮してしまうからである。

 

 強権で無理やり納品させることも出来たけど、それをするとそれまで納品していた他業者が割を食うことになってしまう。

 

 それに加えて、オーナー直々の命令&オーナー親族が務めている店からともなれば、どの店も空気を読んで千賀子の指示以上に動いてしまうのは明白である。

 

 だから、表向きは絶対に千賀子の親類がいる店だとは気付かせず、付き合いの付き合いみたいな流れで誤魔化して納品しているのだ。

 

 

 ……あくまでも自分は自分、兄は兄、それが千賀子の考えであるし、和宏も同じ考えである。

 

 

 千賀子としては、別に今回に限らず、被害額などを補填しても良いとは思っている。

 

 だが、それは千賀子の方から口出しするようなことではないし、和宏もそう思っているから口には出さない。

 

 おそらく、義父も同意見だ。

 

 なので、こちらから勝手に話を通せば両者のプライドを傷つけてしまうし、かといって、話を持って行っても……という部分がある。

 

 巫女的シックスセンスがある千賀子には、余計に分かってしまう……義父と兄の、確かなプライドが。

 

 始めから千賀子に頼っていたわけではなく、これまでやってこられたという、確かな自負。

 

 千賀子とは、根本から違う。

 

 これはもう、理屈の話ではない。

 

 千賀子も、その気持ちはよく分かっていた。

 

 頭では分かっていてもそこを勝手に通せば面目が潰れるし、家族のためだからと言えば頷いてはくれるが……確実にその心は傷つくだろう。

 

 今さら怒気を露わにするようなことはしない。

 

 和宏はもう無鉄砲で若かった頃とは違い、一人の夫であり、一人の父親であり、一家を支える存在でもある。

 

 けれども、傷つくのだ。

 

 だから、折衷案として千賀子が以前より出せたのは、敷地内に自販機を設置するからその内の一台に納品するか……という程度。

 

 それでも、ギリギリである。

 

 けして頭は悪くない(むしろ、地頭は千賀子より良い)から、そこがギリギリの落としどころだと……和宏も受け入れた。

 

 その結果、千賀子とごく一部を除いて誰にも知られていないが、『春木競馬場』内にある自販機の一つに、義父の店の酒が納品されていたりするのだ。

 

 

 ……で、そこに新たに自販機を設置した。言い換えれば、追加した。

 

 

 義父の酒屋と、件の友人の酒屋。

 

 あくまでも自販機だし、競馬場内には飲食店もあるので補充した傍から売れるなんてことはないけど……それでも、それが両者の静かな落としどころなのであった。

 

 

 

 

 

 ……こうして、なんとか和宏一家(と、その友人)の詐欺騒動がひとまず決着して、少しばかり時が流れた頃。

 

 

『千賀子殿、実は折り入って相談がありまして……』

「あら? 今度はなによ?」

 

 

 忘れた頃に……いや、いちおうどうにかせんといかんよねって考えてはいたけど、いつの間にか問題を解決していた河童のカパドンからの電話が千賀子の下へと届いた。

 

 いったい、どんな問題だったのか。

 

 忘れている人たちのために改めて説明させてもらうならば、だ。

 

 カパドンが住まう村に悪質な不動産会社が来ており、あくどい手で河童たちが住まう村の土地を奪って美味しく転売しちゃおう……という問題だ。

 

 単純な殴り合いなら河童たちが勝てるが、相手は人間……出来るならば傷つけたくはない。

 

 穏便に済ませたいと彼らは悩んでいて、千賀子にも相談を持ち掛けていた……のだが、少し前に状況が変わった。

 

 千賀子も詳しくは聞いていないが、どうやらついに河童の若手たちがブチ切れたらしく、尻子玉合戦が発生したらしく。

 

 これにより、悪事を働こうとしていた者たちは一人残らず撤退──できず、しばらく蔵に押し込められて可愛がられたらしい。

 

 そのうえ、若手河童たちの怒りは治まらず、どうも闇夜に紛れて彼らの親玉たちの下へと押しかけ、十二分に可愛がったとのことだ。

 

 結果、カパドンが望まぬ形ではあったが事態が好転し、今は平穏な毎日が戻っている……と、千賀子は聞いていたのだけど。

 

 

「──村近くの県道にゴミが捨てられていく?」

『はい、今回ばかりは相手もあっという間に逃げてしまうので……どうにか良い手はありませんか?』

 

 

 どうやら、新たな問題が発生したようであった。

 

 ……華やかなバブル景気の裏、光が強まれば強まるほど影が濃くなるように、この時期に多発して社会問題化した事がある。

 

 それは、『ゴミの不法投棄問題』だ。

 

 実は、日本は高度経済成長期から長らくゴミの問題に頭を悩ませていたが、それが再び表舞台に浮上してきたのがバブル期である。

 

 理由は色々あるけど、なんといっても建築ラッシュが続き、それに伴い物価の値段などが跳ねあがったからである。

 

 理屈で考えれば、そう難しい話ではない。

 

 建築ラッシュが起これば、当然ながら建築の際に様々な廃棄物が出てくるわけだけど……それらすべてが、ただ捨てたらOKという話ではない。

 

 中には、産業廃棄物として適切な処理をしなければならないモノがあるわけで、手間と費用と時間が掛かるわけだ。

 

 でも、処理施設にだって限界というものがある。

 

 そのうえ、物価の高騰に合わせて燃料費の高騰が発生し、以前よりも処理費用が掛かるようになった。

 

 その結果……少しでも経費を抑えるために、全国的に産業廃棄物の不法投棄が横行したのである。

 

 廃タイヤや工事解体に出た廃材もそうだが、中には医療器具(注射器など)もドカドカ捨てられていたのだから、驚きである。

 

 

「ん~……ゴミに関しては毎日のように日本全国からやってきて捨てていくからなあ……看板とか立てても意味ないよね?」

『もちろん、まったく意味がありませんでした』

「だよね」

『私を始めとして若手たちも協力して見張りを立てはしましたが……』

「さすがに四六時中、長い県道のどこかで行われる不法投棄を捕まえろってのは無茶な話ね」

『いちおう、先日の深夜にてなんとか一人は現行犯として捕まえることが出来たのですが……とにかく、キリが無いのです』

「……河童の居るところは、『山の主』としての私の縄張りじゃないから、さすがに全部は探知できないのが……う~ん」

 

 

 その言葉に、千賀子は唸り……考えるけど期待はしないようにと告げてから電話を切った。

 

 実際、千賀子が所有している山ならば、千賀子の権能が届くからある程度はガード出来るのだ。

 

 具体的には枝葉を伸ばして足を骨折させたり、タイヤをパンクさせて立ち往生させたりして、その間に警察を……という具合に。

 

 実は、これまで何度かその方法で犯人を捕まえていたりする。

 

 今では『あの辺りは何かが出る』という感じのオカルト的な怖さが浸透して、不法投棄に来る人の頻度は激減しているのだ。

 

 まあ、それでも激減しているだけで0になったわけではないのが、なんとも根深い問題ではあるのだけど……ん? 

 

 

 ──『冴陀等村』は、どうなっているのかって? 

 

 

 あそこは、ほら……なんか、村人たちが千賀子を宗主みたいな感じで超激烈熱狂的に奉っているじゃん? 

 

 それがさあ、女神様的にはとっても好感触っぽくてさ。

 

 なんか意味が分からないけど、あの村人たちだけ、女神様の姿を見ても発狂したりしないし、なんなら千賀子と同じぐらい奉る感じなわけで。

 

 しかも、なんか千賀子の『魅力』やら何やらが上がるたび、我が事のように喜ぶばかりで、どんどん狂信的になっていて。

 

 信じられないかもしれないけど、年若い男女が千賀子の姿を見た瞬間、嬉しさのあまりその場で失禁したりも……。

 

 おかげで、今では様子を見に行くたび祭りじゃ祭りじゃと大騒ぎになるから、基本的には村では唯一の旅館以外にはほとんど顔を見せないけど……そのうえ、ね。

 

 

 あの村、『神社』があるんだよね。

 

 

 そう、女神様パワーが宿っていて、愛し子である千賀子へ与えた『神社』が冴陀等村にはあるわけで。

 

 その『神社』がある周辺……周辺と言えるほど距離が近いわけじゃないけど。

 

 とりあえず、女神様的にはその範囲かなって定めている場所に、私利私欲のためのポイ捨てなんてしたらさ。

 

 女神様的には、『てめぇ愛し子のお家にゴミを捨てるだけでなく逃げ去るとは良い度胸ですね?』という感じになるらしく。

 

 

 ……千賀子が知る限りでは、ろくな結果にはなっていない。

 

 

 あまり触れたくないので見て見ぬふりをしているが、どうも冴陀等村の一角には、そういった者たちが貯蔵してある祠があるらしく。

 

 そこで何が行われているのかまでは千賀子も知らないけど、村人曰く、『女神様が教育してくださっている』という感じらしい。

 

 

 ……まあ、うん。

 

 

 そこで何が行われているのか知りたくないので近寄らないけど、あそこでナニカをやっているなあ……ってのは、千賀子も察している。

 

 一度だけ、遠くからこっそり様子を伺った事はあるのだけど。

 

 掛け声なのか、『ありがとうございます!』という言葉と、『良い子になりました!』という言葉と、『ぼくは悪い子です!』の三つが聞こえてきたぐらいだし。

 

 間違いなくろくでもない教育だろうけど、同時に、かなり厳しい教育なのかも──話が逸れたので、戻そう。

 

 とにかく、だ。

 

 

「ゴミか……実際問題、どうやって助けるべきかって話だけど……」

 

 

 腕を組みつつ考える千賀子だが、そんな簡単に答えなど出るわけも無かった。

 

 事は処理能力の問題だけではない。単純に、お金の問題だからだ。

 

 それこそ、不法投棄する方が金が掛かるなんてレベルにまで安くならなければ……現実的ではないな、う~ん。

 

 

(そもそも、一般人ですらゴミのポイ捨て多いからな……ゴミ箱が見当たらないから捨てるっていう意識がほとんどだし……)

 

 

 そう、問題なのは違法業者だけでなく、人々の意識の低さにもある。

 

 現代においてもゴミのポイ捨ては様々な場面でニュースなどに取り上げられるが、この頃に比べたら誇張抜きで改善した方である。

 

 そして、現代に至ってようやくそのレベルなのだから、この頃の人々の意識を考えたら……というわけだ。

 

 仮に、女神様にお願いをしたら……止めよう。

 

 女神様のことだ、愛し子以外ゴミ判定にして消滅させてしまう可能性大だ。

 

 ならば、ロボ子に頼んで処理設備でも……さすがに目立ちすぎるから、そんな大型なのは置けないし、周囲の苦情も出てくるだろう。

 

 ていうか、ただでさえ『春木競馬場』とかいう、千賀子の前世では跡地の面影すら無くなっていた施設が今も現役に……現役? 

 

 現役っていうか、そもそもアレを競馬場と呼んで良いのか……存在しない記憶を自動的に植え付けるアレを……止めよう、この話は。

 

 とにかく、力技で解決してしまうのは簡単だけど、それをすると科学技術の発達がストップしてしまう可能性があるし。

 

 だからといって『愛し子カワイイもうどこから褒めたら良いのか分からないうう涙が出そうああ出ちゃったカワイイ愛し子カワイイぺろぺろしたい会社』を経由させるのはもっとリスクが高いし。

 

 だいたい、その競馬場の敷地外(ちょっと離れるけど)にはゴミのポイ捨て(特に、吸い殻)がけっこうあるわけで。

 

 

(この問題、いくつもの要因が絡み合って生まれているから、どこか一つを解決したら全部解決って話じゃないんだよなあ……)

 

 

 急激かつ歪な好景気が生み出す建築ラッシュの闇、人々の意識の低さが生み出す闇、物価高を始めとして、その他諸々の細やかな闇が合わさった結果が今なわけで。

 

 ──前世と同じく、何年も何年も時間を掛けて啓蒙していくしか……いや、待てよ。

 

 

「……いっそのこと、集めてもらうか?」

 

 

 瞬間、それは閃きであった。

 

 人の善意に頼るばかりでは、人の善意を食い物にして欠片も悪びれない者たちの手で必ず善意は破壊される。

 

 それならば、多少なり見返りを用意した方が、受ける方もやる方も気兼ねがなくなるのでは……そう、考えた千賀子は。

 

 

「ロボ子!」

「──はい、なんでございますか?」

 

 

 スッとどこからともなく姿を見せたロボ子に、指示を出した。

 

 

「芋煮会を開くわ! ゴミ集めの〆にしましょう!」

「マスター、説明をば」

 

 

 ただ、ちょっと先走ってはいたけれども。

 

 

 

 




そう長くは続かない
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