ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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※ 女神様が出張るので、キショイかもです


第246話: なお、イチオシのシーンはスローモーション演出

 

 

 

 あまり知られていない話だが、アニメ制作というのは『基本的』には金食い虫である。

 

 というのも、この頃のアニメはCGというものがまだ無く(有っても、まだ実用的ではない)、基本的には1枚ずつ手描きで仕上げていくというものだった。

 

 30分アニメ……実際はオープニングとエンディングやCM放送を除けば20分少々だが、この20分少々のアニメーションを作るのは非常に労力が掛かる。

 

 

 なにせ、全て手描きだ。

 

 

 手描きでのアニメーションとは、すなわちパラパラ漫画であり、その枚数はおおよそ3000枚前後と言われている。

 

 基本的には下描きとなるラフ画、それを基に動きを作ったり、色付けをしたり、全体の形を整えて……ん? 

 

 

 全体の形を整えるとは、なにかって? 

 

 

 何度も言うが、この頃のアニメが全て手描きである。

 

 現代のCGアニメに慣れてしまった人には想像しにくいかもしれないが、3000枚という膨大な数の絵を用意するのだけど。

 

 当然ながら、一人でそんな枚数を描ける者は……いや、褒める意味で頭おかしいのが一人で全部描きあげるパターンが実在したらしいけど、そんなのは例外中の例外。

 

 だいたいは人数を揃えてから人海戦術にて仕上げるのだが……そうすると、必然的に出てくるモノがある。

 

 そう、作画のブレ、ばらつきだ。

 

 清書した原画を元にして大勢の人たちが役割分担をして仕上げていくわけだが、どうしても手描きゆえの癖というか、100%そっくりな絵柄で描きあげるのは不可能である。

 

 限られた予算の中で、1枚1枚じっくりゆっくり描きあげていく余裕があるところなんて、無い。

 

 特に、毎週放送のアニメともなればスピードも大事であるため、余計にブレが生じて、キャラクターの造形がはっきり分かるぐらい変わってしまう。

 

 3000枚という枚数を大勢で分担して描きあげるのだから、むしろ、ブレが現れて当たり前なのだ。

 

 

 なので、そのブレを修正し、全体を通してバランスを整える必要がある……というわけだ。

 

 

 なお、そういう立場の役職を作画監督(通称、作監)と呼び、この役職に就いた者の腕前によって、作品の質が大きく変わるとか……さて、話を本題に戻そう。

 

 改めて冒頭に戻るが、アニメーションとは『基本的』には金食い虫である。

 

 なにせ、『歩く』という動きを作るだけでも、多大な労力を必要とする。

 

 当然ながら、視聴者に違和感を持たせないよう質を上げてリアルに近づけようと思ったら、その分だけ労力はうなぎ登りだ。

 

 

 ……で、なんで『基本的』という注釈を入れているのかと言うと、だ。

 

 

 客観的な要素を正しく評価したら、本来は高くなるはずなのだ……アニメーションというものは。

 

 しかし、日本のアニメ業界はとにかくアニメーターを酷使することで……具体的にはアニメーターの給料をべらぼうに下げまくることで制作費用を抑えているのだ。

 

 現代では少しは改善された(それでも悪い)のだけど、この頃は現代とは比べ物にならないぐらいに酷かった。

 

 神業的なごく一部のアニメーターが家族を養えるぐらいに貰えていたぐらいで、大半の人たちはそうではなく……困窮していたのであった。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………で、だ。

 

 女神様からの希望もあってアニメ制作をする事になった千賀子だが、アニメの事など何も知らない千賀子は素直にロボ子に聞いたのだけど。

 

 

「どれくらい安上がりにさせられているの?」

「有名俳優を1時間1本のドラマに出演させる費用より、アニメーター十数人を一ヵ月雇う方が安いぐらいです」

「えぇ……(ドン引き)」

「先に言っておきますけど、まだ良くなった方ですよ。白黒アニメの時はもっと酷かったのですから」

「えええぇぇぇ……(超ドン引き)」

 

 

 想像していた以上にヤバい話が出て来て、これまた素直にドン引きしたのであった。

 

 

 

 

 

 ……とりあえず、ドン引きしたのは置いといて、だ。

 

 

 餅は餅屋という感じで、千賀子はアニメーション制作を業者に頼もうとしたのだが……そこで、ロボ子より待ったが掛かった。

 

 というのも、昨今はどこのアニメーション制作会社も既に仕事を受けている最中であり、依頼したからといってすぐに製作が始まるわけではない。

 

 人気がある制作会社は四方八方から引っ張りだこというやつで、来年までぎっしり予定が詰まっているような状態である。

 

 目が眩むような大金を積めば……いや、契約書を交わしているから……でも、一人や二人は腕の良いアニメーターを動かしてくれるかもしれないが……ん? 

 

 

 では、有名どころじゃないのは……って? 

 

 

 そういうのは一般には知られていないというだけで、実際は有名どころに雇われていたり、委託を受けていたりで同じこと。

 

 結局のところアニメーターとは技術職であり、そう簡単な話ではないのだ。

 

 

「じゃあどうするのさ? 私に描けって言われても、絵心無いよ?」

 

 

 さすがに、生きるチート生物みたいなアレになっている千賀子とて、専門外。

 

 美男美女はだいたい能力も高かったりするのだけど、さすがに本職のアニメーターレベルを即座にこなせというのは無理な話である。

 

 

「もちろん、マスターが描けという無理な注文は致しません──私が描きます」

 

 

 当然ながら、それを理解していたロボ子もそんな無茶は言わず……代わりと言わんばかりに、いつの間にか掛けていた眼鏡がキラッと光を反射した。

 

 

「こういう時のために開発&量産しておいた、自動作画ロボットの出番です。こいつらを活用して、アニメーションを作りましょう」

 

 

 その言葉と共に、ロボ子の背後よりノソノソと姿を見せたのは……全長が子ども程度のロボットだった。

 

 腕が4本あり、頭部が2つ……言うなれば、オフィスチェアのような外観のそれが、何体も居た。

 

 ロボ子曰く、これは『アニメ描きまくるロボ』という名前で、その名のとおり特化した性能を持っているらしい。

 

 リーダーとなる『原画くん』の指示に従い、なんと1時間に50枚というペースで描き続け、それを24時間無休で行うとのことだ。

 

 使用する紙がもっと頑丈ならば、100枚でも1000枚でもいけるらしい。

 

 なんでも、一般的に使用されているやつだと50枚が限度、それ以上にするとペンの圧に紙が負けて破損してしまうことがあるのだとか。

 

 

「……性能は分かったけど、それだと本末転倒じゃない?」

 

 

 一通り話を聞いた千賀子は、そこで首を傾げた。

 

 そもそも、アニメを作るという目的は『広く薄くお金を使う』というのが前提で、その次に女神様のご希望があったからだ。

 

『アニメ描きまくるロボ』を活用するのは構わないのだが、そうすると女神様の要望は叶うけど、肝心の目的が……と、千賀子は思ったのだ。

 

 実際、『アニメ描きまくるロボ』はバッテリーで動いているし、その充電もロボ子が自前の発電機にて行っている。

 

 なので、使えば使うほど本来の目的とは逆方向に進むばかりで……しかし、ロボ子はそこで首を横に振った。

 

 

「これは、撒き餌です」

「撒き餌?」

「これを使うのは最初の間だけです。ある程度有名になってきたら、向こうの方からコンタクトを取ってくるでしょう」

「向こうの方って? テレビ局とか?」

「いいえ、違います。間違ってはいませんけど」

 

 

 クイッと、ロボ子は眼鏡の位置をわざとらしく整えると。

 

 

「どちらかと言えば、制作会社……そうですね、いずれは日本を代表する、後のアニメ監督たちです」

 

 

 そう、答えたのであった。

 

 

 

 

 

 ──さて、そんな感じで始まったアニメーション制作だが、いきなり30分のアニメを作るのは大変である。

 

 これは実際に作ってみないと実感できない事だが、アニメーションというのは5分間を作るだけでも相当に大変である。

 

 なんでかって、アニメーションは動くからだ。

 

 動きを見せるからこそアニメーションである以上は、質を上げれば上げるほど、労力は右肩上がりなわけだ。

 

 それに、いきなり30分のアニメを作ったとしても、それを放送する枠がテレビ局には無い。

 

 それは、有名だとか、無名だとか、関係ない。

 

 視聴率が低迷している現代ならばともかく、80年代のテレビはまさしく黄金期……朝から晩までぎっちり枠が詰まっている状態なのだ。

 

 なので、狙うとしたら5分の短編アニメ。

 

 5分程度ならば、どこか隙間があればねじ込める……疎い千賀子でも、新聞のテレビ欄とかでそこらへんは察していたので、最初はそれぐらいかなと思っていた。

 

 

「では、初回として70分程度の長編アニメ映画にしましょう」

「ロボ子さあ、初回から強気すぎない?」

 

 

 だから、いきなり映画館から行くのは攻め過ぎじゃないかなあ……と千賀子が待ったを掛けるのも、当然と言えば当然であった。

 

 ……が、しかし、冷静に考えたら、この提案はけして無策というわけではなかった。

 

 普段から千賀子がテレビ業界と懇意にしていたら話が違っていたかもしれないが、そうではない。

 

 知名度はあるけど、業界としては無名なやつで……そう都合よく、CM分などを入れて約90分の枠を開けるというのが無理だろう。

 

 でも、上映用として制作し、そちらに流すのであれば……わざわざ開けてもらうといった手間を踏む必要が無くなる。

 

 なにせ、この頃の映画館は……言ってしまえば、業界としては冷たい風が吹いていた時期だ。

 

 テレビ放送の充実や、80年代後半に入ってから徐々に各家庭にビデオデッキが普及し始めたのが原因とされている。

 

 それでも盛況なところは盛況だったのだけど、全体としては……という状況で、交渉次第ではかなりやりようがあった。

 

 

「──というわけで、勝算はあります。初回が大事ですので」

「ふ~ん、まあ、そこまで言うなら……」

 

 

 熱心に営業トークを掛けられた千賀子は、そういうものかなと了承した。

 

 幸いにも、資金はある。

 

 『春木競馬場』の利益だけでなく、もはや蓋を開けたら世界経済がヤバい事になりそうな『お賽銭箱』もある。

 

 そのうえ、当の女神様からGoが出ているのだ。

 

 

「ところで、映画ってことはいっぱい描くわけでしょ? 何枚ぐらい描く予定なの?」

 

 

 赤字になってもOKだよという程度の感覚で、千賀子はそう尋ねれば。

 

 

「そうですね、初回なので60万枚ぐらいの予定です」

 

 

 そんな返答をされたのであった。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………まあ、お金などの問題は置いといて、次だ。

 

 

 何をするかって言うと、映画の内容だ。

 

 

 自由気ままにやれと言われても困るが、今回のように『女神様と愛し子の話を描け』とかいう無茶ぶり案件もまた困る。

 

 なんでかって、本当に女神様の要望通りに制作してしまうと、『R-18指定』確定の作品が生まれてしまうからだ。

 

 この『R-18指定』というのは、18歳未満は見ちゃダメよという意味ではない。

 

 18歳以上ならば、まだ精神的には耐えられるかもしれないという意味で、覚悟召されよという意味での『R-18指定』である。

 

 

「あの、ちなみになんですけど、女神様はどういう作品をご所望なんでしょうか? 大まかでいいんで、全体の流れを言っていただければ参考に致しますが?」

『──そうですね、まずは愛し子の肉体の元である受精卵が成長して出産に至るまでの行程を流しましょう』

「ははぁ、初っ端からフルスロットルで行きますね、女神様は……」

『──愛し子の可愛らしさを隅から隅まで堪能していただくために、まずは約7300時間ですね』

「女神様、今回の映画は約70分ぐらいの予定なんですけど???」

『──安心してください、時間軸を調整して肉体は5分程度の時間経過に留めます』

「拷問かな???」

『──もちろん、途中はダイジェストにしますよ? その次は愛し子がおねしょをしなくなるまで、約20000時間です』

「拷問だよ???」

 

 

 実際、女神様に映画監督を任せたら、こんなモノである。

 

 いったい何が悲しくて、受精卵から胎児に至るまでの成長過程を7000時間も見なければならないのか。

 

 常人なら普通に発狂してしまうようなレベルであり、狂人でも一周半回って精神が正常化してしまうような話である。

 

 

 ……ちなみに、だ。

 

 

 ちょっと詳しく聞けば、そこから千賀子がガチャを使うようになるまで約20000時間。

 

 ガチャを手に入れてから、とあるシーンを除いて約180000時間。

 

 千賀子が初めて生理を迎えて慌てふためく時は、なんと256万カメとかいうバカみたいな数の別角度バージョンがあるらしく。

 

 なんと、そのシーンだけで2800万時間も尺を取るというのだから、もうどう足掻いても気が狂うような作品である。

 

 なにせ、見た瞬間、強制的に上映が終わるまで見続けなければならないのだから。

 

 当然ながら……そんな作品は流せない。

 

 流したら最後、見た者を例外なく廃人にしてしまうような作品なんて、やっていることは殺人も──ん? 

 

 

 その映画のどこに女神様が入るのかって? 

 

 

 主に、ナレーターだ。

 

 例えば、受精卵のシーンではずっと小声で『ああ、良いですね、愛し子が分裂していきますよ、可愛いですね』って感じの事を呟いているし。

 

 おねしょシーンでは、『泣いている姿も愛おしいですね、でも大丈夫ですよ、私がトイレですから』とか意味不明な慰め方をするし。

 

 極めつけは初めての……止めよう、考えるだけで精神的なダメージが……とにかく、ずーっとナレーションという名の実況が入りっぱなしである。

 

 なお、視聴者の精神が限界に達して気絶したり思考が空白になると、画面から手が伸びて来て強制的に正気に戻されるようにするつもりだとか。

 

 

「……その、子どもにも見てほしいですし、もっと無難にロボットとか出しましょうよ、その方が良いですって」

『──そうなのですか?』

「体感とか時間軸とか小細工せず、普通に70分に収めてくれたら私が見ますから……」

『──うふふ、そうですか、愛し子がそこまで言うのであれば……』

 

 

 結局、千賀子のファインプレー(という名の、千賀子の犠牲)によって、女神様の手出しは無しになったのであった。

 

 

「ところで、ロボ子はもう脚本とか考えてあるの?」

「残念ながらノープランです。なにか、コレはという感じで作って欲しい題材はありますか?」

「いきなり言われても……えっと、女神様は何かあります? もっとこう、子どもが見ても大丈夫なやつで」

『──ふむ、何が大丈夫なのかは判断できませんが、私の後輩が若かりし頃の話ならば、少しは話せます』

「へえ、どんなのですか?」

『──かぐや姫に扮する後輩が、己に求婚してきた5人の貴族から見覚えのない石板を持って来られ、その石板の力によってロボテッカーなる合体ロボットが出現し、帝を打ち倒す話です』

「なんて????」

 

 

 その際、女神様からめちゃくちゃ気になる話をされたのだが……そんな感じで、ドタバタアニメーション。

 

 後に、『スタジオプレシャス』と呼ばれるようになる、伝説的なスタジオは、あまりにもグダグダなままスタートしたのであった。

 

 なお、真偽不明だが、最初は『スタジオ千賀子』という名前になるはずだったのだけど、当のオーナーが強く拒否した結果、プレシャスが使用されたとのこと。

 

 

 

 

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