ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第247話: 千賀子「そら、そうなるでしょうね」

 

 

 さて、そんな感じで約一ヵ月程度で作品を完成させたロボ子だが……もちろん、そんな短期間で完成させられたのにも、理由がある。

 

 まず、次から次に『アニメ描きまくるロボ』を増産して作画速度を上げ続けたから。

 

 次に、人間とは違いロボットである『アニメ描きまくるロボ』は常にリアルタイムで互いの状況を確認し合っている。

 

 これによって互いの進捗具合を調整しており、また、作画の乱れもほぼ(99.999……%)起こらなかった。

 

 つまり、手直しがほとんど必要ないのだ。

 

 そのうえ、その手直しすらもロボ子の優れた頭脳ユニットによって瞬時に行われ……人力ならば何日もかけて行う作業を、ロボ子は数分で終わらせていた。

 

 また、ロボットであるがゆえに、人間には必要な休息というモノが必要ではない。

 

 もちろん、機械も定期的に休ませる(メンテナンスの事)必要はあるのだけど、そんな短期間でダメになる設計をしていないので、完成までノンストップである。

 

 その結果、時間経過と共に制作速度が右肩上がりになってゆくという、業界人からしたら血走った目で石を投げられそうな事をし続けて……約一ヵ月で完成である。

 

 

 タイトルは、『かぐや・竹取りと呼ばれた者 ~MIKADO 帝の逆襲~』というものに決まった。

 

 

 正直、タイトルからは何一つ内容が想像できないと千賀子は思ったのだけど、あえてその事には触れなかった。

 

 ロボ子に任せると決めた以上は、下手に口出しするのは良くないと思ったからだ。

 

 まあ、さすがに『子供には見せられないよ!』みたいなモノを出されても困るから、それぐらいの確認はするのだけど。

 

 

 ……そんな事よりも、千賀子は女神様が制作した映画を見るのに忙しかった。

 

 

 女神様は、ちゃんと約束を守った。

 

 時間にして約70分強の映画で、変に時間軸を操作されるわけもなく、ちゃんと体感70分強の映画であった。

 

 ただし、作られた映画が1本だけではなかったけど……でも、常識的な範囲だったから、千賀子は何も言わなかった。

 

 女神様はちゃんと約束を守ったので、千賀子もちゃんと約束は守る。

 

 すなわち──女神様制作の映画を視聴する、というものだ。

 

 それがどれだけ退屈でも、どれだけ苦痛でも、千賀子は寝落ちしたりもせず、早送りなんかもせず、きっちり最後まで視聴した。

 

 

 ……内容? 

 

 

 一言でいえば、思っていたよりも……こう、千賀子の心をがっちり掴んだ。

 

 もっと具体的に語るならば、今に至るまでの『千賀子の人生映画』だったので、つまらないよりも、『懐かしくも気恥ずかしい』という点が大きかった。

 

 だって、客観的に考えてほしい。

 

 最初のシーンは受精卵が細胞分裂して胎児へと成長していくという、どんな思いで見れば良いのか分からなかった。

 

 ただ、そこが終われば……そこから先は、千賀子すらはっきりとは思い出せない昔の思い出ばかりだ。

 

 今よりもずっと若々しい両親に、今よりもずっと綺麗な実家にて、客から声を掛けられる自分。

 

 かつては当たり前だったむき出しの地面に、最近はほぼ見かけなくなった三輪自転車、ぬかるんだ、あの時代特有の空気。

 

 元気に自転車をこいでいる祖父の背中にもたれる自分の姿に、祖母から裁縫の手ほどきを受けている自分。

 

 かつては自分にチマチマと意地悪をしていた兄の姿と、負けじとやり返そうとする自分。

 

 もう会えない人、もう居ない人、映像の中とはいえ、再びその姿を見ることが出来たのが……素直に嬉しくて。

 

 木造校舎へと通う幼い頃の自分と、幼い頃の明美に、幼い頃の道子……何もかもが懐かしかった。

 

 

「……女神様」

『──はい』

「ありがとう、この映画はとても嬉しかったわ」

『──まあまあ、喜んでくれるその姿も愛おしいですね』

 

 

 おかげで、テンション上がった女神様からずーっと頭をナデナデされっぱなしだったのだけど……上映中は、おとなしくしていたのであった。

 

 

 

 

 

 ──話を戻すが、ロボ子が監督を務める映画の事だ。

 

 

 事前に話を通していたおかげもあって、けっこうな数の映画館が二つ返事で了承し、上映を許可してくれた。

 

 今さらだけど、『秋山千賀子』のネームバリューは相当なモノで、どこの映画館も好意的に受け入れてくれた。

 

 まあ、千賀子はそうでなくとも、チラホラと噂話で伝わっているから、ネームバリュー無しでもある程度は……で、だ。

 

 そんな感じで、宣伝もほとんどないまま上映が始まった。

 

 もちろん、客が入らないのは想定済みだったので、一回上映をするたびに報酬金を出すという契約は結んだ。

 

 映画館の契約内容にもよるけど、映画館側はあまりにも利益が見込めない作品があると、途中で上映を中止する時がある。

 

 それを見越したうえで、客が入らなくても黒字になるようにしたわけなのだけど……初週は、本当にポツポツという感じであった。

 

 見に来たのは映画通ぐらいで、子どもは一人もいなかった。

 

 だが、それが変わり始めたのは二週目、三週目に入ってからで。

 

 どうやら口コミで広まり始めたらしく、徐々に子どもの数が増えてゆき……四週目の半ばぐらいには、大半の映画館に子供が集まるようになり。

 

 そして、五週目の終わり頃には……なんと、満員になる映画館が出始めたのであった。

 

 いったい、どうしてか……なんと言っても、作画の動きが良かったうえに、内容が完全オリジナル作品だったからだろう。

 

 

 と、いうのも、だ。

 

 

 実は現代に限らず、この頃の映画は毎年のようにアニメ映画が作られ上映されていたのだけど。

 

 ほとんどの場合は、先に原作があった……いや、それも現代と変わらないのだけど、違う点が一つある。

 

 それは、現代のようにインターネットが無かったから、気軽に原作やテレビ放送されているそちらを見てから……というのが出来なかったのだ。

 

 もちろん、中にはそうではない作品もあったわけだが、そういう作品はだいたい大人向け(子供向けではない)が多かった。

 

 そんな中で……唐突に湧いて出て来た『かぐや・竹取りと呼ばれた者 ~MIKADO 帝の逆襲~』とかいう意味不明なタイトルは、実に客の興味を引いた。

 

 なにせ、絵柄はキレイなのだ。その時点で、まず興味を引かれ。

 

 奇抜過ぎるタイトルに興味を失う者も居たけど、映画通を自称する者は真っ先に入り……そして、度肝を抜かれた。

 

 なんでかって、それがフルアニメーションで制作されたアニメ映画だったからだ。

 

 フルアニメーションとは、1秒24コマ……すなわち、秒間24枚の画像を流して表現するアニメーションのこと。

 

 これは映画の基本フォーマットである1秒24コマを基準にしているのだが……実は、日本のアニメは1秒8コマのリミテッドアニメーションと呼ばれる手法が主流になっていた。

 

 これは静止画の漫画をアニメーションにするわけだからそこまで綿密な動きは要らないとか、作画枚数の削減による費用の軽減とか……とにかく、だ。

 

 費用と労力と時間の関係から、すっかり日本では廃れてしまったフルアニメーションが出てくるとは、どの映画通も想定していなかったのだ。

 

 

 そして、内容を見て、再び度肝を抜かれた。

 

 

 アニメーション技法の一つ一つが未知であり、それでいて、そんな方法があったのかと目を剥くだけでなく。

 

 奇想天外ながらしっかりストーリーが練られており、終盤の怒涛の展開からの大団円には、王道ながら飽きさせないと手を叩いた。

 

 それからは……乾いた身体に水が染み渡るかのように、ジワジワと噂が広がって……そして、5週目の満員御礼である。

 

 そして、6週目になる頃には……業界の著名人、あるいは、後に売れっ子となる卵たちが噂を聞きつけ……そして、言葉を無くした。

 

 日本という国で、フルアニメーションを作っただけではなく、内容の質そのものがけして引けを取らない……そんな作品を前に、誰もが打ち震えた。

 

 

 ある者は、『そうだ、俺はこんなアニメーションを作りたかったんだ!』と、感動と嫉妬に唇を噛みしめ。

 

 ある者は、『これを作った人に、是非とも私の作品をアニメ化してもらえたら……』と心から賞賛し。

 

 ある者は、『すごい……すごい作品が日本から生まれた……!』と、それ以上の言葉を出せなかった。

 

 

 まあ、中には。

 

『……僕なら、僕だって、やればこれぐらい描けるんですよ!!』

 

 そんな言葉を残して映画館を後にした有名漫画家の姿もあったが……とにかく、この作品がもたらした衝撃はとてつもないモノとなった。

 

 それは業界を飛び越え、一部では『あの映画を作ったのは誰だ!?』と騒ぎにもなったほどで。

 

 

『なに、秋山オーナーが100%出資……あっ、そっかぁ……』

『金持ちはすごいなあ……いったい、いくら出したんだろう?』

『秋山オーナー太っ腹らしいから、給料良かったんだろうなあ』

 

 

 すぐに、そんな感じに鎮静化はしたけど、それでも、人々の関心を引き付けるには十分過ぎた。

 

 そして、8週目を超え、10週目を超えたあたりで。

 

 

「……マスター、想定外の事態です」

「はい」

「仕事の依頼が来るかと思ったら、ヘルプでこっちに来て欲しいとあちらこちらから電話が……」

「でしょうね」

「私の方からは、秋山オーナー以外の下では描きませぬと四方八方に伝えているのですが、電話が……」

「どこもかしこも制作環境は火の車だから、猫の手を借りたいぐらいに人手が足りないのでしょう」

「ど、どうしたら良いでしょうか? 私としては、二作目に取り掛かろうかと考ええていたところなのですが……」

「とりあえず、スポンサーになれるかどうか声を掛けてはみるから……待って、なんで二作目を作ろうとしているの?」

「前作では、どうも表現に納得がいかず……次に生かさねばと思いまして」

「前作って、既に作っている言い回しだよね、それ?」

 

 

 いよいよ、千賀子の下へと連絡が来るようになったのであった。

 

 

 






※ 今回、ちょい短めです
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