ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第250話: 忘れた頃にやってくる、例のアレ

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そんな感じで、これで一通り回ってスポンサーになったぞと、『神社』にてしばらく休憩するか……と、思っていたけど、そんな暇は千賀子になかった。

 

 いったいなにが……時は1984年の春もまだ到来していない2月半ば。

 

 

「よ~し、ヨおシヨシヨシ!! 大丈夫、大丈夫だって、カツラギエース!! 勝負に負けたからってなんだ、私なんて勝っているように見えてビシバシ負けているんだぞ!」

 

 ──ブフフン。

 

「信じてないね? 私ね、こうみえて拳銃で撃たれたことあるし、嵐の中を航海して港に船をつけたときもあるし、死にかけたこともけっこうあるからね」

 

 ──ブフフン。

 

「そうなのだよ、こう見えて私ってけっこうすごいんだぞ」

 

 

 千賀子は、なにやらションボリしているカツラギエースの首をわさわさ摩りまくって元気付けていた。

 

 今回の購入で最後にすると決めた愛馬2頭(なお、1頭はまだ生まれていない)。

 

 そのうちの片方であるカツラギエースの元気が無いということで、急遽千賀子は駆けつけたのである。

 

 

 元気が無い原因はまあ、色々と重なったから。

 

 

 それまで主戦となっていた騎手が調教師に転向し、違う人が乗るかもしれない……言葉が分からなくとも、気配で何かが変わったことを察知したこと。

 

 そして、去年の11月の菊花賞にて大敗した際の、観客席などから向けられた失望の眼差し……それを理解してしまい、すっかり落ち込んでしまっていたようなのだ。

 

 千賀子もうっすら察知していたのだけど、自分の力で立ち直りそうな気配がしていたので静観していたが……今回は、少し裏目に出てしまったようだ。

 

 基本的には大病など重大なナニカを察知しない限りは静観し、調教師や牧場のやり方に任せるようにしている。

 

 いくら傍から見たら超常的な鑑定眼を持つと一目置かれているとはいえ、実際に馬を育てたわけでも学んだわけでもない素人である。

 

 さすがにそこまで口出しするのは相手の矜持を蔑ろにしてしまうから……まあ、今回は向こうから連絡が来たから渡りに船と言わんばかりに駆け付けたのだけれども。

 

 いくらなんでも、馬の心を正確に読み取ってメンタルケアをしろという無茶はしない。

 

 何故なら、厩務員も調教師も、学んできた技術と経験でもって馬の状態を毎日確認し、あの手この手で元気付けようとしているのを千賀子は分かっていたからだ。

 

 明らかに間違った方向に頑張っているならともかく、彼らのやっている事は何一つ間違っていないし正しいから、千賀子は別に彼らを咎めようとは思わなかった。

 

 

 まあ、しかし、だ。

 

 

 銃で撃たれたことがあるとか、死にかけたことがあるとか、そんな物騒な話を朗らかな笑顔でする千賀子に、ちょっとビクビクしちゃったのは……仕方がない事であった。

 

 そうしてカツラギエースが落ち着きを取り戻し、今年はビッグタイトルが取れるぞと関係者一同を激励するのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………それが終われば、もう片方の愛馬(まだ、生まれていない)が居る牧場へのご挨拶だ。

 

 

 お土産として、各種フルーツと……馬さんたちのご飯代という名目で、分厚い封筒を一つ。

 

 賄賂……いやいや、そんなものじゃない。

 

 千賀子はビビッと来たから購入を決めたわけだけど、どうも種付け依頼が思っていたより少なかったみたいで、苦しくなってきていると話を聞いたからだ。

 

 

 ……金を支払っていないのかって? 

 

 

 馬って、とにかく経費が掛かる。

 

 相場より多額を支払ったとはいえ、老朽化しつづある厩舎や設備などの修理にも取られるし、経営者家族の生活もあるわけで。

 

 これから生まれてくる愛馬のためにも……経営が苦しくて世話が行き届かなくなるということになるのだけは避けたい。

 

 さすがに、無制限に援助するというのはちょっと話が変わってくるから、そこまではしないけど。

 

 

 千賀子自身、人の心を読めるからこそ、それがよく分かる。

 

 

 自分で働いて稼ぐのではなく、札束の山から一束二束をこそっと懐へ抜き取るような事を繰り返せば、例外なく心が腐る。

 

 同様に、与えられるのが当たり前の感覚になってしまえば最後、本当に強く己を律する事が出来る者でないと、ほぼ例外なく心が腐る。

 

 やろうと思えばいくらでも贅沢な暮らしが出来て、それこそ死ぬまで遊び歩いて気ままに生きていけるのに、それをしないのは……そうなった者の醜さを千賀子は見てきたからだ。

 

 人の心を読めてしまうからこそ、時にはその未来をうっすら察知出来てしまうからこそ、千賀子は足るを知るの精神をいつも心掛けている。

 

 まあ、ぶっちゃけてしまえば、何人もの反面教師を目にしてきていたからというわけだけど。

 

 とにかく、そんな感じで競馬関係の挨拶回りを済ませ……さて、今度こそ一休み──かと思ったら、そうならなかった。

 

 時は少しばかり流れて5月。

 

 

「……脅迫状?」

「はい、事前に職員が閲覧する前に私が先んじて回収しましたが……内容から見て、何かしらの脅迫の可能性が極めて高いです」

 

 

『春木競馬場』に届いたのは、封筒に収められた一枚の紙切れ。そこには新聞や本の切り抜きと思われる『ひらがな文字』が張られ、短い文章が作られていた。

 

 その文章は、『むすめ かえしてほしいなら 10おくえん』というもの。

 

 当然ながら、エマは誘拐されてなどいない。

 

 ロボ子から24時間体制でこっそり警備されているから、どうやろうと誘拐は不可能であり、今も元気に学校に行っている。

 

 ならば、春人は……もちろん、息子だけど春人も無事だ。

 

 現状、性質の悪い悪戯か、誘拐が失敗に終わったから悪戯で済んだと認識するべきか……些か判断に迷うところだ。

 

 千賀子も、正直けっこう迷った。

 

 もしも誘拐犯がエマの近くに姿を見せていたら問答無用のギルティだが、今回のコレ……近くはおろか、近辺にすら来ていないのだ。

 

 ……なんで、そんな事が分かるのかって? 

 

 そりゃあ、それらしい人物がいたらロボ子が既にマークしているし、索敵範囲を広げても見つからなかったので……ということである。

 

 

「どうしましょうか?」

「……先月、うちに来た悪戯電話とか悪戯レターってどれぐらいあったっけ?」

「電話が37件、手紙が42件です」

 

 

 多いと取るか、意外と少ないと取るか、あるいは妥当と取るかは判断に迷うところだが、千賀子は少ないんじゃねっていう感想である。

 

 で、まあ、どうして千賀子がノーモーションでギルティ判定を下さず、どうしたものかと悩むのかというと。

 

 

「……これ、『かい人21面相』の関係者だと思う?」

「残念ながら、データ不足で断言出来ません。可能性はありますが、悪戯の可能性もあります」

「だよねえ」

 

 

 そう、やった人が誰か分からないし、性質の悪い悪戯の可能性を捨てきれないのが問題なのである。

 

 相手が成人した50代とか60代なら『てめえ、覚悟できているんだろうな?』って反省を促す呪いを叩き込めるが……万が一、相手が子どもの場合だ。

 

 手紙から、送り主の気配をサイコメトリーをしようとしたけど、到着までに何人もの人間が間に入っている。

 

 そこまで力を込めて読み取ろうとすると、うっかり巫女的呪いパワーが相手へ向かってしまうこともあるから……どうにも、ちゃんと調べられなかった。

 

 

 ……ちなみに、だ。

 

 

 千賀子が呟いた『かい人21面相』というのは、1984年頃に発生した犯罪者グループのことである。

 

 犯人の素性も手掛かりも無く、グループの人数も不明。

 

 とある作家の作品である怪人二十面相から取ったとされていて、そちらとは関係ない。

 

 つい先日、有名企業の社長を拉致したことで話題となり、千賀子もそのニュースを見てはいたが……まさか、競馬場の方に来るとは思わなかった。

 

 

「実際、『かい人21面相』と名乗らなくても、それっぽい感じの悪戯レターってどれぐらいあるの?」

「現時点で8通です。そのうち5通は既に身元を捕捉出来ておりますが、どちらも悪戯の可能性が99.999……%です」

「え、そんなに? なんでまた?」

「理由なんてありませんよ、こちらの反応を見ているだけでしょうね……気になるなら、見てみますか?」

「見てみたいな」

 

 

 あと、今回が初めてではないことが分かり、ちょっと千賀子は驚いた……ので、競馬場に届いた脅迫状というやつを拝見することにした。

 

 まあ、脅迫状とは言っても、大して怖くはない。

 

 既にロボ子によって悪戯判定が下されているし、千賀子の巫女的シックスセンスでも、そこからは悪戯以上の悪意は感じなかったし……で、だ。

 

 内容としては、どれもこれも似たようなモノだ。言い方はなんだけど、ちょっとガッカリした。

 

 とはいえ、それも致し方ない。

 

 冷静に考えたら、この手の悪戯は『かい人21面相』の影響を受けたのは明白で、内容もまた似たり寄ったりになるのは当たり前であった。

 

 せいぜい、もしも文字を本から切り抜いたのならもったいないなあ……と思ったぐらい……っと。

 

 

「あれ? 9通目があるじゃん」

「え? そんなはずは……」

 

 

 何気ない千賀子の視線が、封がしたままの9通目のお手紙を見つけた。

 

 ちゃんと消印があって……ロボ子がめちゃくちゃ困惑しているのをしり目に、千賀子は封筒を手に取って……ちょきちょきと封を開ける。

 

 中には剃刀の類は無く、一枚の折り畳められた紙と──もっとキッチリ折り畳められている紙が入っていた。

 

 

『すきです とっても かわいい』

 

 

 普通に折り畳められた方に貼り付けられた文字はそれだけで、悪戯なのかラブレターなのか……いや、状況的には悪戯なのだろうけど。

 

 次に、小さく折り畳められた方の紙。

 

 かなりぎっちり折り畳められているようで、紙自体が薄いこともあり、よくもまあここまで折り畳められたものだと千賀子は感心し──

 

 

 

『第250話になりましたね ガチャ開催のお時間です』

 

 

 

 ──そして、ポカンと呆気に取られ──ハッと我に返って、傍の女神様へと振り返れば。

 

 

 そこには、『ドッキリ大成功!』の看板を掲げた女神様が、そっと千賀子へ……ダーツの矢を1本差し出してきたのであった。

 

 

 

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