ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第251話: 梅干しは食べなくても良い

 

 

 

 今回は1発限りの大勝負。

 

 

 泣いても笑っても一回限りの一投……それが、今回の『ガチャ』であった。

 

 言い換えれば、前回のガチャより溜まっていたモノを全部搔き集めて1回分に集約しただけで、その分だけハイリスク&ハイリターンなガチャになっただけなのだが……まあいい。

 

 いや、良くないけど、気にしたところでどうにもならないから、諦めて受け入れるしかないわけで。

 

 とりあえず……今回出して来たルーレット盤を見やる。

 

 今回のルーレット盤は、まるで原点回帰と言わんばかりによくある円形のアレだ。

 

『UR』から『R』までの単語が書かれたスペースがランダムに設置しており、刺さったところが当たり……というわけだ。

 

 

 それは、いいのだ。

 

 

 見たら分かるし、書かれている『UR』から『R』のそれらには、どのような当たりになるのかは記されていない……でもまあ、それはいい。

 

 問題なのは、その合間に設置されている、『女神様の顔のマーク』だ。

 

 かつて、これほど禍々しいマークがあっただろうか。

 

 少なくとも、一般人がこのマークを見たら、その場で絶叫した後に強い寒気やケイレンや嘔吐を始めとして様々な症状を発症し。

 

 最終的には失神……うまく失神できないまま直視し続けてしまうと心不全を起こして死亡してしまう。

 

 そんな、まともな神経をしていたら見る事すらヤバいようなマークがけっこう設置されているのだ。

 

 正直、滅茶苦茶嫌な予感を覚えずにはいられなかった。だが、千賀子に逃げるという選択肢は存在しない。

 

 逃げたところで強制的なガチャだし、無理やり失神しても夢の中に出現してガチャをさせてくるから……ならば、意識あるうちに真正面からガチャと戦うしかないわけだ。

 

 

「女神様、あの気色悪い顔のマークはなんですか?」

『──うふふ、顔をしかめている愛し子もカワイイ……』

「聞いてね?」

 

 

 ちなみに、『女神様の顔のマーク』のガチャはどういうものかと尋ねたら、当たってからのお楽しみとかいうふざけた返答をされた。

 

 この女神様の度し難いところは、そんなの当てたくないから聞いているんだよと聞いても、なんかカワイイカワイイって見悶えてまるで堪えないところだろう。

 

 まあ、根本的に生物とは格が違うというか、命という概念すら存在しない可能性が極めて高い女神様に、そこらへんの機微を理解しろという方が無茶なのだけど……話を戻そう。

 

 

 ダーツを渡された千賀子は、無言のままに構える。

 

 

 既に、ルーレット盤は回り始めている。千賀子が回したのではない、ダーツを受け取った瞬間からだ。

 

 毎度の事だが、ある意味己を一番苦しめているのは女神様では……ダーツを構えるたびに思うけど、考えるだけ無駄なので……そっと、狙いを定める。

 

 瞬間、ルーレット盤が黒一色になった。目で狙って当てさせないようにしたのだろう。

 

 現在の千賀子の動体視力なら、高速回転しているルーレット盤の狙ったところにダーツを当てることが可能なので、当然といえば当然の処置。

 

 ご丁寧に、巫女的シックスセンスでも読めないようになっているし、おそらく回転速度も配置もシャッフルされている。

 

 

 ……いざ、ナムサン!! 

 

 

 これはもう、やぶれかぶれ。

 

 お願い神様と祈りかけたけど、その神様が用意したルーレットなのだから逆効果じゃん……と、寸でのところで思いとどまり。

 

 えいや、と投げて──トスっと軽い音を立ててルーレット盤に当たった。

 

 そして、回転が……なんとなくしか分からないけど、ゆっくりと……そして止まってすぐに、フッと黒一色から元のルーレット盤に──っ!? 

 

 

「ひ、ひぃぃっぃ!!!!???」

 

 

 直後、千賀子はその場にしりもちを突くように倒れた。

 

 震える足腰はまるで役立たず、この時ばかりはロボ子も分身も助けには来ず、千賀子は無力のまま床に足を滑らせることしかできなかった。

 

 

 いったいどうして……答えは、たった一つ。

 

 

 千賀子が投げたダーツが……『女神様の顔のマーク』に命中していたからだ。

 

 それも、一切の言い逃れが出来ない、顔のど真ん中。

 

 ノーカンだと騒ぐことすら許されない現実を前に、千賀子は恐怖に恐れおののくしかなかった。

 

 そんな千賀子の両肩に、女神様はそっと手を置く。ああ、逃れられない。

 

 よりにもよって一番ヤバい気配を見せているルーレットで外すとは……あまりにも信じたくない現実だったが、残念ながら、これが現実である。

 

 

『──安心してください、愛し子よ』

「え?」

『──貴女を苦しめる、そんなガチャを私が用意すると思いますか?』

「思うけど?」

『──ああ、その冷たい眼差しもカワイイですね』

「なんだこいつ……」

 

 

 思わず辛辣な言葉が出る千賀子……しかし、そんな態度すらも心地良さそうに身体をくねらせる女神様が指を鳴らせば、ポンとルーレット盤が消えて……後には、『女神様の顔のマーク』が一つだけ残された。

 

 

『──裏返してください、そこに内容が書かれています』

「…………(心底見たくねえなあ、という顔)」

 

 

 でも、見ないわけにはいかない。

 

 震える指先で……意識してもなお震える指先に気合を入れて、ナムサンと念じながらペラっとめくり──。

 

 

『かい人21面相ならぬ、女神21面相ですよ』

 

 

 ──そこに記されていた文字を見て、千賀子は首を傾げた。

 

 

 レアリティの表記が無い、初めてのパターン。

 

 いや、というか、これってガチャなのか……もしかして、女神様マークはハズレという意味で、私にとっては当たりなのか? 

 

 そう思い、何気なく背後の女神様へと振り返った──瞬間、千賀子は目を瞬かせた。

 

 なんでかって、そこには女神様たちがいた。

 

 そう、たち、だ。つまり、複数形。

 

 具体的には、1,2,3……数えて21体(柱?)の女神様が、千賀子の視界を埋め尽くさんばかりに──そこで、限界だった。

 

 

「い」

『──い?』

「嫌だ──!! やだぁぁ──!!! やだあああ!!!」

『──まあ、元気な泣き顔、愛おしい……』

「こんなのやだぁぁ──!!! 戻してぇぇ──!!!」

『──ああ、こんなに泣いて、泣いている顔も可愛くて……うっ、母乳が出そう、乳なんてありませんけど』

「やぁあああ~~!!!」

 

 

 千賀子は泣いた。

 

 それはもう、もしも声が届く範囲にエマが居たらすっ飛んで来るぐらい、恥も何もなく大泣きした。

 

 まあ、当たり前である。

 

 ただでさえ1体だけでも胃に穴が開いていないのが不思議なぐらいの心労を掛けられるというのに、それが一気に20体も増えたのだ。

 

 こんなの、千賀子じゃなかったら即座に猟銃で脳天をぶち抜いているような話である。

 

 ていうか、その千賀子ですら大泣きして嫌がるぐらいなのだから、いかに女神様が増えたという事実を受け入れられないのかが察せられるだろう。

 

 ……とはいえ、そこは長年女神様に振り回されてきた千賀子だ、経験値が違う。

 

 ひとしきり泣いた後で気分を切り替えた千賀子の頬にはもう涙は伝ってなくて、少し目が充血していたけど、すっかり持ち直していた。

 

 

『──なにやら勘違いしているようですが、私が増えたわけではありませんよ。ただ、愛し子に対する溢れんばかりの愛情を分割して会議を行い、愛し子にプレゼントを渡しましょう……というものです』

「よ、良かった……安心し過ぎて、しっこ漏れそうになるぐらい心から安心した……!!」

 

 

 と、同時に、千賀子は本当に心から安堵していた。

 

 もしもこの場に第三者が居たら、感極まって思わず頬にキスをしてしまうぐらいに、心から安堵した。

 

 

「つまり、どういうことですか?」

 

 

 そして、安堵した後は疑問が湧きおこってきたので、率直に尋ねた。

 

 

『──もっと、愛し子の可愛らしさを人々に知ってもらおうという結論が出まして』

「つまり、いつもの事ですね」

『──たとえば、『愛し子電話ボックス』という公衆電話が日本全国のいたる所に出現するようになりました』

「待って、いつものことじゃないね、それ」

 

 

 すると、久しぶりに女神様から聞き慣れない&邪悪な単語が飛び出したので、詳しく話を聞くと……だ。

 

 どうやら、日本のどこかの電話ボックスがランダムで『愛し子電話ボックス』というやつに変化するようになったらしい。

 

 変化するタイミングは不明で、外観の変化は無し。中に入って扉を閉めて初めて判定が行われるらしい。

 

 最低でも15分は通話をしないと出られない。電話の相手は千賀子で固定されている

 

 ただし、それは千賀子自身ではなく、『夢の中の千賀子』が数分程応答してくれるというもの。

 

 千賀子自身にその記憶はなく、肉体的にも精神的にも、千賀子自身には負担が掛からないとのことだ。

 

 ……なお、夢の中の千賀子は、全てのリミッターが解除された状態らしく。

 

 ぶっちゃけてしまうと、一声聞くだけでほとんどの場合腰が抜け、同時に、ボックス内に千賀子の匂いが充満する……とのことだ。

 

 

「え、それ、普通の人って耐えられるの?」

 

 当然な疑問に、女神様は何も答えなかった。

 

「女神様?」

 

 当然な疑問に、女神様は何も答えなかった。

 

「あの?」

 

 当然な疑問に、女神様は何も答えなかった。

 

 

『──あ、それと、一つ言い忘れておりましたが』

 

 

 その代わり。

 

 

『──愛し子電話ボックスに、新しい力を置いておきました……愛し子の未来の助けになるでしょうから』

 

 

 とんでもねえ爆弾を残し……ぬうっと姿を消したのであった。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………あ、言っておくけど、見えなくなっただけだからね。

 

 声を掛けてもしばらく雰囲気に合わせて返事しないだけで、普通に襖の隙間とか戸棚の隙間から熱視線バンバンだから。

 

 

 

 

 

 ……で、だ。

 

 

 そういう時の女神様は、マジで何も言わない。

 

 千賀子が何を言おうがどれだけオネダリしようが『言わぬ……』の心で本当に口を閉ざしている(口はないけど)ので、自力で探すほかない。

 

 しかし、それは中々の難問であった。

 

 何故ならば、例の電話ボックスは女神様パワーによって作られているので、ロボ子が用意するあらゆる機械を使っても、探知できないのだ。

 

 それは千賀子とて例外ではなく、結局のところは入るまでそれが例のボックスなのかが分からないのだ。

 

 ゆえに、取れる手段はしらみつぶし、これ一択。

 

 本音としては何も無かった事にして放置しておきたいが、わざわざ『新しい力』とかいう不吉なワードを残したのだ。

 

 たぶん、放置するとそのうち向こうからやってきそうな気がする、変なペナルティ(たぶん、女神様的には愛情)付け足されそうだし。

 

 なので、せめて一回ぐらいは確認しておかないと……ということで、とにかく手の空いている分身たちとロボ子の手を借りて、日本中の電話ボックスを片っ端から調査した。

 

 そうして……調査を始めてから、しばらくして。ようやく女神様が設置した当たり(千賀子は認めない)ボックスを引いたのであった。

 

 それがあったのは、寂れた公園の脇。人通りは全くなかった。

 

 外観は本当に他の電話ボックスと変わりなく、なんならガラスの内側にはピンクチラシが張られ、電話機の上にはグシャグシャになったタバコの箱が放置されていた。

 

 

 ……ピンクチラシとは何かって? 

 

 

 スケベな読者のために改めて説明をするが、要は性風俗関係のチラシのこと。

 

 目立たせるために色合いがピンク系だったり、エッチ系=ピンクというイメージが先行してそのように呼ぶようになったとか……まあ、そこらへんは所説あるから置いといて。

 

 千賀子の前世、あるいは令和の時代においては色々と厳しくなり、そういったチラシを見かけることは皆無になった。

 

 ただ、昭和のこの頃はちょうど全盛期、あるいは規制が厳しくなり始める直前であり、電話ボックスだけでなく、電柱などにもベタベタ張られたりしていた。

 

 なお、このピンクチラシ……普通に女性の裸体(おっぱい見える)がプリントされていたりしていたので、規制されるのもさもありなんである。

 

 

 さて、と。

 

 

 長話はこれぐらいにして、千賀子はさっさと中へ入る。虎穴に入らずんば虎子を得ずということわざとはまったく関係ない。

 

 そもそも虎子を得たいと思っていないのだから……で、いちおうは外部からカメラをこっそり設置し……確認スタート。

 

 扉を閉めてもまだ変化無し……受話器を取って耳に当てて、10円を入れる──っと、そこで変化が現れた。

 

 具体的には、ガラスがスモーク……つまり、外からは見えなくなった。もちろん、千賀子の方からも確認出来ない。

 

 異変を察知した千賀子は素早く受話器を戻して、急いで外へ──不思議なことに扉はあっさり開いて、外へ出られた。

 

 

「──え?」

 

 

 それから、すぐさま自分の身体に異変が起こっていないかを確認──しようとして、服装が変わっていることに気付いて目を瞬かせ。

 

 続いて、無言のままにロボ子が用意した姿見にて、己の姿を確認した千賀子は……しばしの間、無言であった。

 

 

 ……見たままを語るならば、だ。

 

 

 それは、主に青と赤でカラーリングされた衣装であった。

 

 胸には、千賀子の見事な膨らみによって横に伸ばされ、あるいは深い谷間を強調するかのように伸びた『T』の文字がプリントされ。

 

 肩口から背中へと垂れ下がる赤いマントに、赤いスカート……そう、その姿は、この時代の者なら誰もが知っている、その名は。

 

 

「……なんかどっかで見たことあるような格好になっているけど?」

「マスター、胸のマークがTですので、千賀子マンかと」

「ダサいよ、あまりにも!!?? しかもなにこれ、脱げねえけど!?」

「いよっ! 千賀子マン! 悪の秘密結社を倒す時が来ましたよ!」

「合いの手なんていらないんだよ、ロボ子ぉ!!」

 

 

 あまりにも予想外で、あんまりな格好に、千賀子は……いや、千賀子マンは、久方ぶりに覚えたどでかい羞恥心に、思わず身体を縮こませたのであった。

 

 なお、衣装は30分ほどで勝手に元に戻ったので一安心であるる。

 

 

 

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