ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
どうやら、女神様がランダムで出現するようになった『愛し子電話ボックス』に千賀子が入ると、千賀子は千賀子マンに変身するらしい。
何を言っているのか分からない人がいると思われるが、女神様の考える事なので気にする必要はない。
ちなみに千賀子がそのボックスに入りたいと望めばいつでも100%らしい。なんなら、望んだ場所に『愛し子電話ボックス』が出現するようにもなっているらしい。
なんて無駄に配慮が行き届いているのか、悪意たっぷりじゃん。女神様に悪意がマジで無いのが余計に酷い。
千賀子マンというよりは、千賀子ウーマンと呼んだ方が正しいのでは……いや、気にするべきところはそこじゃない。
問題は、どうしてこのタイミングで千賀子マンとかいう女神様得な能力を千賀子が得たか、である。
いちおう、女神様は千賀子を愛しく思っているから、千賀子に大してナニカ危機が訪れようとしている時は、遠回しに手を貸してくれたりする。
ただ、うまくいかなくて千賀子の末路が『見せられないよ!』みたいな状況になっても涙を流して『う、美しい……』って感動しちゃうから、けして油断は出来ないのだけど。
で、話を戻すけど、女神様が千賀子にこういったミラクルパワーを授ける時は、おおよそ二つのパターンに分けられる。
ただの思い付きで与える時と、何かしらの危機が迫っている時、この二つだ。
ただの思い付きならば、厄介ではあるけれども最悪は千賀子が頑張れば済む話だが……危機が迫っているパターンだと、その被害が千賀子以外に及ぶ場合が多い。
たとえば、宇宙からの侵略者とか。
なので、千賀子はロボ子にそういった……宇宙に限らず何かしらの敵意を持っている、あるいは害意を持っている存在が近付いて来ているかどうかを念入りに調査させた。
ロボ子も、いつもとは違うマジな指示を受けていつも以上にマジになって調べ上げ……その結果、分かった事は。
「……敵対あるいは危険性の高い宇宙からのお客さんはいないってわけね?」
「はい、マスター。私が観測できる範囲には、そのような存在は確認出来ておりません」
少なくともロボ子が探知できる範囲には、そういった危険が近付いていない、あるいは存在していない、ということであった。
ある意味、厄介な方を引いてしまったようだ。
敵がいるなら倒せばお終いだけど、女神様の思い付きだとどう足掻いても倒せないし、どうなるかが分からないし。
ぶっちゃけると、巫女的パワーでも抑えられない時は抑えられないから……だから、厄介な方なのである。
「せっかくです、能力の検証をしておきましょう」
とりあえず神社へと戻って来た千賀子は、ロボ子よりそう言われて……えぇ、と嫌そうに顔をしかめた。
正直、エマにも春人にもあの姿を見られたくないし、なりたくないから嫌なのだけど……残念ながら、ロボ子はそれを許さなかった。
曰く、『最低限、能力の把握はしておいた方が良いですから』、とのこと。
まあ、それは一理ある。
使う使わないは別として、自身の事なのだから、何も知らないままでいるよりは、最低限把握しておいた方がいざという時助かるのは明白だ。
そう説得された千賀子は、「確かに……」渋々ながらうなずくと、自身の意思に合わせて境内に出現した『愛し子電話ボックス』へと飛び込み──Tのマークが目立つ例の恰好で出て来た。
「うわぁ……」
「はったおすよ?」
「そうは言っても、客観的に見たらスケベ過ぎますよ、マスターの身体は……」
「自覚しているから、さっさと検証を始めなさいな」
それから、事は急げと言わんばかりに慌ただしく、千賀子マンの身体能力検査は行われた。
その結果、千賀子マンの能力が判明し……コレだ。
『千賀子アイ』
──目から光線を放つ。受けた相手は千賀子マンに恋をして、直後に『捧げる……』と話して自殺しようとした。
ロボ子による手厚い記憶処置により、相手は解放され、何事もなく日常生活を送った。
なお、とっても色々なモノがよく見える。
『千賀子イヤー』
数百万人の中から一人の声を聴き分けることが出来る。なお、耳の形が良いので長時間千賀子マンの耳を見ると耳フェチに開花してしまう。
実験に選ばれた人も、念入りな記憶処理の後に開放され、女性を見る時は無意識に耳を見るようになった。
『千賀子パワー&タフネス』
100万トンの物体をもちあげることが可能、核爆発はおろか、恒星の中を行き来してもノーダメージ。
なお、服はその代わりではなく、ダメージは受けないけど服は徐々に破損し、だんだんセクシーな格好になる。
また、どんな角度から攻撃を受けても、必ず乳がぷるるんと揺れる──といった具合に分かりやすくもすさまじい部分の他に、この姿でも飛行能力を有しており、口から超低温の息も吐ける。
正直に言おう、思っていたよりもヤバ過ぎて、戦闘という面においては純粋に最強な状態……それが『千賀子マン』で確定してしまった。
「でも、この格好はなんとかならんのか?」
「なりませんね、おそらく女神様の御力を帯びておりますので……ほら、こんな感じに」
失礼。
その言葉と共に、ロボ子の張り手が千賀子の尻を叩いた。
痛みはなかったし衝撃も感じなかったけど、何故か胸がぷるるんと揺れて……ピリッと、衣装が破れて素肌の一部が露わになった。
先に言っておくが、ロボ子は破いていないし、千賀子も破れるような素振りはしていないし、衣装だってそこまでピッチリしていない。
ただ、勝手にこうなるのだ。そして、それこそが悲しいことに女神様の御力が宿っているという証明でもあった。
「……かつてないほどに、女神様が私に何をさせようとしているのかが分からないのだけど?」
「今までと変わりありませんね。そもそも、それが分かればマスターは今ほど苦労はしていないかと」
それを言っちゃあお終いよ……という言葉を、千賀子は寸でのところで飲み込んだのであった。
……まあ、それはそれとして。
お遊びの場で着るならともかく、外でこういう恰好はしたくないなと思った千賀子は、だ。
せっかく、フィジカル的な意味での超人パワーを得たのだ。
巫女では出来なかったこと……この力を何かに利用できないかとロボ子に相談を持ち掛けてみた。
「候補はいくつかありますけど、顔を隠したところで例外なくマスターの正体がバレますよ」
すると、無慈悲な答えを返されてしまった。
なんでバレるのか……隠す理由もないので先に白状するが、原因は千賀子のおっぱいである。
というのも、千賀子マンが身にまとっている衣装……どういう素材で出来ているかは不明だが、胸の形がキッチリ露わになっているのだ。
具体的には、ボディペイントには見えないけど、角度によってはそう見えてしまうかもしれない、そんなギリギリライン。
言い方を変えたら、遠目には衣装に見えるけど、近くで見るとペイント……いや、衣装を着ているぞといった具合だ。
ぶっちゃけると、スケベな衣装に見えなくもない。
そして、そんな衣装だから周りは見ちゃう。何をって、Lカップ(Mカップ未満)の豊満なバストを。
バストだけではない。クビレの細さも、きゅっと締まりつつも綺麗な桃型ヒップも……まあ、うん。
顔を隠したとしても、『あ、あのスケベなボディは……!?』と見られちゃうし、それでバレちゃうよ……というわけだ。
実際、千賀子も鏡で確認してみたのだけど……これはバレるなとすぐに首を横に振ったのだから、もうこれはどうしようもなかった。
なんというか、宝の持ち腐れにも程があった。
でも、どうにもならないわけで……まあ、今回は能力の把握が第一で、使えるかどうかは二の次だ。
もしかしたら、女神様パワーでバレないようになっているのかもしれないけど、それを試すようなバカではない。
変に害をもたらすような能力じゃないだけマシか……そう、千賀子が思い、ロボ子もそれで結論付けた。
──その時であった。
唐突に、千賀子の耳が捉えた──それは、子どもの泣き声であった。
「──ロボ子、聞こえた? 子どもが誘拐されたっぽい!」
「──No、私のセンサーは何も捉えておりません。周囲数百メートルのセンサーも同様です」
「行ってくる、これはヤバい、確認してられない!!」
「あ、マスターお待ちにな」
その時点で、千賀子は地を蹴って空高く舞い上がり──泣き声の下へと急行する。
戦闘面に特化した『千賀子マン』の加速度は、巫女的パワーによる飛行能力を軽く凌駕する。
あっという間に音速へと達し、それなのに周囲へ一切の被害を与えることなく──現地へと到着した千賀子マンのパンチが、誘拐犯の車に叩き込まれたのであった。
……。
……。
…………当然ながら、ただ殴っただけでは乗っている全員が大惨事確定である。
それを防ぐために千賀子が取った行動は、特に複雑なモノではない。
まず、走っている車の状況と、周囲を確認。
もしも走っている場所が住宅街や街中だったら、下手に無理やり止めたら間違いなく大惨事になるからだ。
次に、車内の状況を確認。
千賀子アイによる透視によって、どこの席に誰が乗っていて、攫われた子供がどのような状態になっているかを確認。
どこを攻撃したら車を止められ、同時に、子どもに対してもっとも被害が及ばないかを確認する。
そして……最後に、子どもの安全だ。
いくら影響を最小限にしたところで、生身の子供だ。仮にシートベルトなどでガチガチに守られていても、怪我は必至である。
ゆえに──車内に入ると同時に、子どもの身体をマントと自身の身体で包んで守る。
普通のマントならまだしも、このマントは普通じゃない。それは、ロボ子も断言した。
ほとんど勝手に破けるのは肌を包む衣服の方で、マントはその分だけ頑丈というか……とにかく、ロボ子がちょっと引くぐらいの性能なのだ。
なので、それで包んだうえでギュッと子供の身体を抱きしめて脱出すれば……もう、その時点で子供が怪我をする可能性は限りなく0に近かった。
……誘拐犯たち?
それは、千賀子が気にすることではない。
既に千賀子は彼らが反社会勢力の下っ端で、誰かに命令されたわけでもなく、借金と覚せい剤のために短絡的な凶行に走った結果だと把握していたからだ。
そんな者に対する同情も優しさも、千賀子は持ち合わせてなどいなかった。
そうして、だ。
自走不可能になった車がガードレールに直撃し、炎上する。国道から外れている道路なので、その瞬間は誰も目撃していないが……すぐに、人の目が集まるだろう。
ゆっくりと、子どもを抱きかかえたまま着地する。万が一にも子どもが引かれないよう、安全な位置に。
(……うわぁ、ちょっと破片がビシバシ当たっただけで、けっこうな範囲が破けちゃっているなあ)
それから、子どもを下ろそうと──視線を向ければ、素肌だけになっている胸元に気付いて、思わず苦笑した。
偶然にも、むき出しになった先端が子どもの口内へ突っ込まれる形になったおかげで、舌や唇を噛むといった怪我を防げたようだ。
普通ならば、いくら子どもとはいえそんな状態で力いっぱい噛まれたら、乳首の一つや二つは噛み千切られていただろう。
しかし、今の千賀子は普通ではない、『千賀子マン』だ。
乳首の頑丈さも人のソレではなく、思いっきり噛まれても歯形一つ付いていなかった。
「……ビックリさせちゃったね。でも、もう大丈夫……怖いのは私がやっつけたから」
まあ、それでも、子どもの心では受け止めきれない出来事の連続で硬直している、その小さな頭を優しく撫でてやれば……ゆっくりと、落ち着いてくる。
それでようやく自分が女性の乳に噛みついていることに気付いて、静かに口を放して……それを見て、千賀子は……いや、千賀子マンはニコッと笑うと。
スルリと、子どもをその場に置いて──音速以上の速度で離脱し、行方を眩ませたのであった。
後に残されたのは、炎上して酷い有様の車と、後方あるいは前方からやって来た車と。
それから、未だ状況を呑み込めていない、子どもだけであった。
※ 子どもの身体に怪我はありません