ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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第253話: 古代種ってだいたい強いイメージ

 

 

 ──今さらな話を言うのもなんだけど、千賀子の年齢は30歳を超えている。

 

 

 令和の現代なら30代なんて若いの範疇に入れられそうだけど、1980年代のあたりでは、30代は立派にオバサンである。

 

 これは単純に、この頃は老人の数が少なく、若年層の数が多かったからだ。

 

 若年層の割合が増えれば増えるほど、老人層の割合が減れば減るほど、必然的にオジサン&オバサンのラインが上下するだけのこと。

 

 そして、千賀子もこの頃の感覚では立派なオバサン年齢に該当していた。

 

 そしてそれは、千賀子の感覚でも同じであった。

 

 つまり、千賀子はもう己をオバサンだと思っているし、若者が着る衣服を見ても『今の私が着る服じゃないな』と思うようになっていた。

 

 別に、不思議な事ではない。それが正解というわけでも、間違っているというわけでもない。

 

 ただ、千賀子の中では年齢に合わせた格好という認識があって、30代の自分には30代の恰好の方が良いだろうという考えがあった。

 

 

「あのさ、ロボ子……」

 

 

 ……だからこそ。

 

 

「この千賀子マンとかいうダサい恰好、本当に滅茶苦茶恥ずかしいんだけど、なんとかならない?」

「魔法少女をやるよりはマシではありませんか」

「あの頃より歳を取っているのに、それに引けを取らないコスプレって精神がヤバいのだけど!?」

 

 

 さすがに30代も半ば、どこぞのコスプレみたいな恰好が恥ずかしくて堪らなかった。

 

 以前の魔法少女うわキツも大概だが、この千賀子マンの恰好はそれ以上に恥ずかしい。

 

 なんというか、己の中にある美的センスの羞恥的な部分をダイレクトに刺激されている気がしてならない。

 

 というか、刺激されている。

 

 露出度的には、もしかしたら魔法少女の時よりも少ないぐらいなのに……精神的な負担は桁違いで、正直頼まれても変身したくなかった。

 

 でも、初めて変身した日から一か月後……千賀子は再び変身し、『千賀子マン』になっていた。

 

 その恰好はいつも変わらず、赤いマントをたなびかせ、胸には大きく伸びた『T』の文字が……ちなみに、だ。

 

 千賀子なのだから『C』と思う者がいるかもしれないが、これには女神様による深い事情がある。

 

 それは……『T』だと、文字のラインに沿って千賀子の爆乳が強調され、女神様的には可愛らしさUPだということ。

 

 特に、わざわざ内側から押し出される胸の膨らみに合わせて横線のラインがキレイに見えるように、縦のラインも谷間の形に合わせている。

 

 しかも、よく見ると横のラインの終端に乳首の位置を合わせているという徹底ぶり。緊張などして乳首が立つと、それが良く分かる。

 

 着ている千賀子自身は鏡を見たくないから気付いていないが、ロボ子はしっかり気付いていた。

 

 なお、『C』のマークでも可愛らしいじゃないかという意見が21体に分かれた女神様たちの間で発生し、誰も気付いていないし、人知れず世界が修復されているからなのだけど。

 

 実はハルマゲドンがごとき自分自身との戦いが行われていたりしていたのだが……まあ、それを知る者は女神様以外にはいなかった。

 

 なお、初期案は胸に『T』、下腹部の子宮がある辺りに『C』のマークを付けるべきという……話を戻そう。

 

 必要性もないのに、どうして千賀子が『千賀子マン』に変身しているのかというと……それは、必要になったからである。

 

 では、どうして必要になったのかと言うと。

 

 

「……かい人21面相が人間じゃないってマジなの?」

「その可能性が徐々に高まりつつあります」

 

 

 それは、少し前より巷を騒がせている『かい人21面相』と呼ばれる者たちの存在であった。

 

 と、いうのも、だ。

 

 『かい人21面相』が関係各所に送ったとされる手紙……それを秘密裏にすり替えて検査した結果、紙の表面には人間以外の遺伝子情報が付着していたのだ。

 

 かといって、それは一般的な野生動物のソレではない。つまり、人間でも動物でもない、未知の遺伝子情報だったのだ。

 

 しかもそれは一つだけではなく、確認出来たモノだけでも7体分の異なる遺伝子情報……すなわち、未知の存在が最低でも7体確認出来たというわけだ。

 

 そして、その遺伝子情報を基にロボ子がシミュレーションを行い、『このような姿をしているだろう』という暫定的な姿をCGで作った。

 

 その姿は……どう言い繕っても、人のソレではなかった。ましてや、動物のソレでもない。

 

 見たままを語るならば怪物あるいは怪人、そうとしか言い表しようがない姿であった。

 

 そして、あくまでも推測ではあるのだけど、怪物あるいは怪人のそいつらの身体能力は人間を凌駕していて、場合によっては完全肉食の可能性もある。

 

 もしもそいつがら秘密裏に人に害を成して、あるいはこれから行おうと企んでいた場合……『巫女』の千賀子では、少々相性が悪い。

 

 搦め手で来る相手にはめっぽう強いが、真正面からまっすぐ向かって来る相手、万が一が起こる可能性は否定できない。

 

 なので、現状では物理的な戦闘においては他の追随を許さない『千賀子マン』が適任……というわけだ。

 

 

「……いちおう聞いておくけど、UMAじゃないのよね?」

「それは何とも……河童たちにも確認は取りましたが、心当たりは無いとのことです」

「まあ、心当たりがあったら真っ先に私のところへ相談に来るでしょうね」

 

 

 聞いてみただけ、それでも想像していたとおりの返答に、千賀子はため息を吐いて……それから、眼前に表示された立体映像へと視線を向ける。

 

 それはロボ子が用意したモノで、『かい人21面相』より犯行予告が届いた場所、あるいは次元が発覚した場所を立体化した地図である。

 

 とりあえず、先日からロボ子はそれらを中心にスパイロボットの目を増やし、ネズミ一匹逃がさないと言わんばかり……だが、それでも見つからなかった。

 

 そう、ロボ子の警戒網すらも、『かい人21面相』は掻い潜ったのである。

 

 だからこそ、ロボ子もそうだけど千賀子も一気に警戒レベルを引き上げ、どのような存在なのかを一目確かめておかねば……と考えたわけである。

 

 なお、今日を選んだ理由は、巫女千賀子の状態にて『……今日の夜、来るかも?』と予感したからである。

 

 そして、千賀子マンになっている今の千賀子は……ロボ子ですら捉えきれないそいつの位置を、正確に捕捉していた。

 

 

 そこまできたら──後はもう、動くだけ。

 

 

 能力の使い方は、誰かに教えられなくとも、変身した時点で身に付けている。それはまるで、自転車の乗り方を覚えた後の感覚に近い。

 

 一息で、千賀子マンの身体は上空高くへと飛び上がり、目的地点へと向かう。

 

 時刻は夜。既に、エマも春人も深い眠りについている。

 

 実は昼間でもそいつらの気配というか、そういうのを感じ取ってはいたのだけど、千賀子はあえて夜を選んだ。

 

 理由は言うまでもなく、人目を避けるためである。

 

 ロボ子の指摘は事実で、顔を隠したところで首から下の特徴があまりにも特徴的かつ目立つし特徴的だから……せめて、夜にしようと思ったわけだ。

 

 その間、なんか『かい人21面相』はチラホラと事件を起こしてはニュースになっていたが……それに関しては、千賀子が関与するところではない。

 

 千賀子は警察官でもそういう役職に就いているわけでもない一般人である。

 

 その千賀子が『かい人21面相』を確認するのは、ひとえに、どのような危険性を秘めているか、それを知るため。

 

 極論を言ってしまえば、自分たちに悪影響が来なければ、警察組織が頑張れよって話である。

 

 

 ……それで、『恐怖の大王』に影響を与えるのではないかって? 

 

 

 その可能性はあっても、いちいちそういった事件に千賀子が関与していたら、分身を何体出しても手が足りなくなる。

 

 千賀子としては、もう十分助けたんだから……という気持ちであった。

 

 そうして……空を飛んで、わずか数分。

 

 どういうわけか、そいつの気配は街中を離れ、県境の人通りもいなくなった国道沿い道路……より、少し山の中に入ったところ。

 

 考えるまでもなく、誘われているというのは察していた。

 

 言い換えれば、向こうも千賀子マンの動向を察知していて、そのうえで誘い込もうとしている可能性が高い。

 

 一瞬ばかり罠の可能性が脳裏を過ったけど、いつまでも怖気づいていてはいられない。

 

 ロボ子の援護ロボットが後方より追いかけてくるのを感じながら……千賀子マンは、山中にてひっそりと建てられている、倉庫のような建物の傍に降り立った。

 

 

 ──途端、ライトが千賀子マンを照らした。

 

 

 四方八方から向けられるライトは、普通なら目も開けられないほどに眩しい……しかし、千賀子マンはそれを物ともせず、仁王立ちにて迎え撃った。

 

 

『ふっふっふ……無謀というべきか、勇猛というべきか……さすがは、千賀子マンだ』

 

 

 どこからともなく聞こえてくる声。男なのか、女なのか、分からない。

 

 こちらの素性を、どうやって……やはり、罠なのか。

 

 隠されたスピーカーより聞こえてくる声に、千賀子マンは視線を向け……出てこい、と怒鳴った。

 

 

『ふっふっふ、焦ることはない。言われずとも、すぐに姿を見せてやろう──』

 

 

 その言葉と共に、どこからともなく影が飛び出して──千賀子の眼前に降り立つと同時に、ライトの方向が変わった。

 

 照らし出されたのは、3人……いや、3体の……あれ? 

 

 その姿を見て、千賀子マンは首を傾げた。

 

 何故ならば、現れた3体は……微妙に恰好とか顔立ちとか違うけど、これまで幾度となく顔を合わせてきた、『河童』、『花子さん』、『ヒバゴン』だったからだ。

 

 だが、同一人物でないのは見ただけで分かった。

 

 顔が違うとかではなく、気配が違う。その身より放たれるエネルギーが、千賀子の知るソレとはけた違いに高かった。

 

 

「ふっふっふ……おまえの考えは手に取るように分かるぞ、千賀子マン」

「そう、私たちは貴女の知る『河童』、『花子さん』、『ヒバゴン』ではない」

「うきゃ(左様)」

 

 

 警戒する千賀子マンを前に、3体は……堂々と宣言した。

 

 

「我らは、古代より生きるUMAの始祖。さしずめ我は、河童オリジン!」

「私は、花子さんオリジン!」

「うきゃ(ヒバゴンオリジン)!」

 

 

 そして、その直後。

 

 

「我が眷属の不甲斐なさを憂い、そして、眷属を顎で使うキサマを成敗するため、こうし──ぐはぁ!」

 

 河童オリジンは、その場で血反吐を「な、なんてメス臭さだ、想定を軽く超えて……」……まあ、うん。

 

 

「私も眷属の不甲斐なさを憂い、そして、眷属を顎で使う貴女を成敗するため、こうし──おや、絶景かな」

 

 花子さんオリジンは、目にも止まらぬ速さで千賀子の足元へスライディングして……頭を、千賀子のスカートの下へ。

 

 

「うきゃ(不甲斐ないのう)」

 

 そして、ヒバゴンオリジンは……どこからともなく取り出した櫛にて全身の体毛を素早く整えると、その場にて正座し。

 

 

「うきゃ(さあ、準備は出来たぞ)」

 

 両手を広げ、ナニカを待ち構える態勢になった。

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………その瞬間、千賀子が浮かべていた表情は……遅れてやってきたロボ子しか知らなかったのだけれども。

 

 

『……マスターのあんな顔、初めて見ました』

 

 

 そう零したぐらいだから……よほどの表情だったのは、説明するまでもないことであった。

 

 

 

 

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