ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
──基本的に、千賀子はUMAに対して当たりが強い。
理由は考えるまでもなく、ほぼほぼヤベー事をしているか、存在そのものがヤベーからだ。
冷静に考えて、だ。
女性が近付くだけで『メス臭い』と言って血反吐をこぼしたかと思えば、健康的な男を見れば『相撲しようや(意味深)』なんて言いながら近付いてくるやつ。
男性が近付くだけで『汚らわしい』とか言い出して、血反吐はこぼさないけど機嫌は悪くし、女の子の傍に近寄っては一緒に遊ぼう(意味深)とするやつ。
あと、命を捨ててまでおしっこを浴びようとするやつとか……嗜好は人(?)それぞれにしても、こいつらはあの手この手で滑り込んでくるのだ。
そりゃあ、千賀子でなくとも扱いが邪険になるというものだ。
しかもこのオリジンとか頭に付けたUMAたち、オリジンとか名乗っているけど単純に長生きしているだけのUMAだっただけだったのだから、余計に千賀子の怒りを誘った。
いや、別に、ガッカリとかそんな話ではないのだ。
ただ、そういうつまらない嘘はつくなという話であって、そういう嘘は相手を楽しませ、相手のためにつく嘘であれ……という話である。
だって、千賀子は……正直、ちょっと嬉しかったのだ。
そんな偉いUMA(あるいは、ご先祖?)が出て来たなら、最近のUMAたちを躾けさせてやろうと……けっこう本気で考えていた。
それが蓋を開けてみたら、ただの爺UMA&婆UMAときたものだ……訂正しよう、やはり千賀子はガッカリしていた。
だからこそ、お仕置きの拳骨ラッシュは自称オリジンUMAたちを震え上がらせた。
もしもこの場に千賀子を知るUMAたちが居たら、『静まりたまえ! 怒りを鎮めたまえ!』と五体投地して祈りを捧げていたことだろう。
けれども、オリジンUMAたちは千賀子を知らなかった。中々人間にしては骨のあるやつだとナメて掛かった。
その結果が、顔面アン〇〇〇〇である。
ていうか、最後のやつなんて去年ぐらいに、なんか排水溝に入ろうとして、『用水路は僕さ!』とか獣の言葉で言い始めて、超ドン引きしたのは記憶に新しかった。
そのせいで、そいつだけは他の2体より1.4割増しぐらいにボコボコにされていたのだけど、誰もその事には触れなかった。
で、話を戻すけど、『かい人21面相』だ。
お前ら人間社会に多大な迷惑を掛けて何をしているのかと、頭にタンコブを作り、おたふくのように顔を腫らしたオリジンと名乗るUMAに問い質した。
すると……驚いたことに、彼らは何もしていないと答えた。
こいつらこの期におよんでまだしらばっくれるのかと、握りしめた拳に千賀子マンパワーをぎゅんぎゅん集めてゆく。
ぎゅい~ん。
そんな音と共に千賀子の拳が光り輝き始める……のを見て、さすがに本当にヤバいと思ったのか、オリジンUMAたちは必死に……それはもう酷い顔のまま、話を続けた。
……その話をまとめると、だ。
まず、確かにこいつらは『かい人21面相』を名乗りはしたが、自分たちが最初に行ったわけではない。
元々別のグループというか、先に『かい人21面相』を名乗っている人たちがいて、自分たちはそれに便乗しただけ、とのことだ。
そりゃあ脅迫文とか送ったり悪戯したりして世間を困らせたりはしたけど、さすがに誘拐などはしたことない……とのこと。
「本当に? ジュースのボトルとかに毒を混ぜて放置とかしてない?」
「食べ物をわざわざ毒にするなんて変な事をするのは人間だけです、マジで意味わからないんですけど……」
念のために尋ねてみたら、手痛い反論をされて、千賀子マン言葉を無くす。
たしかに、変な話だけど嫌がらせのために食べ物に毒を混ぜてわざと食べられないようにするなんてのは、人間の専売特許みたいなものだ。
思い返せば、千賀子マンがまだ学生だった頃。
初めてUMA河童とコンタクトを取った際、『牛が居なくなったら大騒ぎ、同じ人間が居なくなっても知らんぷり、人間とはよく分からないですな』と不思議そうに言われた覚えがある。
まさか、オリジンUMAからも似たような事を言われるとは……痛いところを突いてきた褒美として、千賀子マンはこいつらを許すことにした。
そもそも、別に今回のコレは千賀子自身に迷惑が掛かっていた話ではないのだ。
あくまでも、『かい人21面相の正体がUMAだったなら』止めるべきだと動いたわけで、止めるのであれば、それ以上のナニカをするつもりはない。
巫女的パワーによる判定でも、こいつらは性質の悪い悪戯はしたけど死傷者の類は出していない……というのが分かったし。
それが実は人間に便乗しただけですと分かれば、もう後は人間の領分、警察たちが頑張って捕まえろ……というのが千賀子の本音であった。
なお、もしもこの悪戯にエマや春人を始めとして、千賀子の知り合いが被害を被っていたら……まあ、そんなわけで、だ。
──乳もデカいうわキツ衣装の巫女(子持ち&未婚)には絶対逆らってはいけない。
そう、固く固く胸に誓って手を振るオリジンUMAたちを……笑いつつもけして笑っていない目で見つめてから、千賀子はその場を後にしたのであった。
ちなみに、ここから先は千賀子が知る由もないことなのだけど。
千賀子にちょっかいを掛けようとしたというのが他のUMAに知られたことで、『な、なんて命知らずなやつなんだ!』と一目置かれたり、あるいは畏怖の面を向けられたり。
トイレの花子さんだから歴史としてはかなり短いのではって話が出て、でも私たちは古事記にも載って……いや、トイレの花子さんとは……みたいに目がぐるぐるし始める花子さんが続出したり。
それもまたワビサビよとかいう、なんか深い事を言っているようで何も言っていないUMAたちの姿があったけど……まあ、知らなくてもよい話であった。
……。
……。
…………さて、そんな感じで、だ。
降って湧いたかのような『かい人21面相事件』はひとまず、千賀子にとって、己が関わることではないと区切りを付けたのだけれども。
それはそれとして、当初の目的である『広く、浅く、お金を使ってバブル崩壊のダメージを抑えよう』は途中の段階であった。
とりあえず、競馬のレースを変わらず開催した。アニメは作ったし、出資もしたし、大学とかにも寄付はした。
あと、日本全国の孤児院にも寄付した。
その際、なんか話を聞いたどこぞの市長が千賀子の銅像を建てようとかし始めたので、ちょっとお話して黙らせ……問題は、そこからだ。
無制限にジャブジャブばら撒くと、この国は『もう足りているから予算減らすね』とか当たり前のようにしてくるし。
それだけでなく、あの手この手で理由を付けてタカリに来る者が無限に表れるから……いや、それぐらいならば、まだ可愛い方だ。
厄介なのは、他人の財布を使って善行を成そうとする者たちだ。
タカリに来るやつはまだ自分たちがタカっていることを自覚しているが、善行を成そうとする者は、その意識が欠片も無い。
むしろ、自分は本当に善人で他人のために動ける者だと自認しているので、他人の財布に平気な顔をして手を突っ込むのだ。
これの何が酷いって、手を突っ込まれた側が拒絶すると、『君はなんて酷い人間だ、恥を知れ!』と本気で怒るところだろう。
女神様から与えられた金銭ではあるけれども、そんな輩にくれてやるほど粗末に扱うつもりは千賀子にはない。
せめて、他人の金で善行を本当に成してくれるならばまだ話は違ったのだけれども……そうでないから、千賀子は考えるわけだ。
その結果、どこに寄付をしたら良いか……と、千賀子は考えるばかりで、寄付する先を決められなかった。
与えた女神様からしたら『──どうぞお好きに、悩んでいる顔も愛おしい』といった感想しかなく、どう使おうが欠片も気にしていなかったりする。
とにかく、従来通りのお金の使い方をしつつも、とりあえずは平穏な日常を千賀子は送っていた。
……。
……。
…………そうして少しばかり月日が流れ、1984年の11月頃。
カツラギエースが『ジャパンカップ(G1)』への出走を前に、最終調整に入っている最中……千賀子は、親としての一大事に直面していた。
「──来ましたよ、ロボ子」
「それは、まさか……」
「ええ、そうよ──授業参観の日っっっっ!!!」
「毎度のことですが、今回も気合の入り方が違いますね」
そう、それは、年に数回行われる、保護者を対象にした、生徒の普段の姿や授業風景を確認する……授業参観である。
たかが授業参観、されど授業参観。
子どものうちは『来ても気恥ずかしいだけ』と思うかもしれないが、大人になって気付くのだ……それもまた、思い出なのだと。
もちろん、親と子の関係が破綻していたり、家庭環境に深刻な問題が生じていたり、あるいはそれに匹敵するナニカが起こっている時はその限りではない。
ただし、理由も無く来ないという時点で、学校側からしても『〇組の××は、家庭環境に問題アリ』と密かにマークしたりするので……話を戻そう。
とにかく、授業参観だ。
そうとなれば、千賀子の予定はガラリと変わる。
具体的には、表には出せないアイテムを多数使用した、ロボ子のエステを当日まで行うと同時に、食事制限も行って塩抜きを行う。
塩抜きとは、その名のとおり摂取する塩分量を制限することでむくみなどを解消する、食事療法のこと。
健康にも良いとされているが、現代食……日本人は歴史的に濃い塩分食に慣れきった民族なので、実践するには中々大変な事である。
しかし、大変なだけあって、その効果は抜群だ。
濃い味付けが常態化しているほど効果が分かりやすく、それは千賀子とて例外ではなかった。
そうして……参観日当日、千賀子はビシッとスーツを決めて、姿見で最終確認を行っていた。
千賀子の体形に合わせたオーダーメイドなだけあって、ピッタリ体形に噛み合っている。念入りに全身をコーディネートしたおかげだ。
だからこそ、その姿は完ぺきで……が、しかし、千賀子は気付いていなかった。
入念に、いくつものパターンに分けてポーズを取り、変なところが無いかを確認している千賀子……を、無言のままに見つめていたロボ子は、思った。
(……どうしましょう、どの角度から見てもエロい以外の判定が出ません)
それは、敬愛するマスターである千賀子の後ろ姿が、どう言い繕っても『スケベな尻だぜ!』以外の感想が出てこないこと。
別に、極端に丈が短いとか、布地が薄いとか、そんな事はない。むしろ季節が季節なので、ちょい分厚いぐらい。
だが、そんな分厚さで隠しきれるほど、千賀子のボディはおとなしくはない。
まず、顔は言うまでもない。
これは手抜きとかではなく、『美形! 説明不要!』の一言で終わってしまうから。色々と美しさを表す言葉があるけれども、美人の一言で済むのは楽と言えば楽だろう。
次に、胸はまあ、言うまでもない。
これも手抜きとかではなく、『デカい! 説明不要!』の一言で終わってしまうから。ていうか、メートル越えのπはどう頑張ってもデカいのだから、諦めが肝心である。
そして、ケツもまあデカい。
またもや手抜きとかではなく、『形も良い! 説明不要!』の一言で終わってしまうから。ていうか、キッチリ鍛えてあるからこそのラインは、そのせいで隠せてなかった。
結論……どう足掻いてもエッチやん……な、スーツ千賀子の完成である。
当然の結果と言えば、当然の結果だ。
もしもこの場に映画狂いの例のヤツが居たならば、無言のままにカメラを構え、契約書をそっとテーブルに置いたぐらいには……こう、目に毒な姿になっていた。
「ロボ子、髪って上げた方がいいかしら?」
「(あ~ダメダメ、うなじを見せるのはエッチすぎますね、全身エッチ過ぎるエッチ人間だってもうちょっと自覚してくださいよマスターは)普段通り、下ろしたままがよろしいかと」
「??? なんか、変な間がなかった?」
「ありませんよ」
そして、当の本人はまさかうなじを出す事で変な色気を発揮していることにも気づかず……ヨシっと、淡い色合いの口紅を塗って、最後の準備を終えたのであった。