ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
『──愛し子の同人誌があるのですが、見ます?』
「何を勝手に人を……え、待って、なんでそんなのが作られているの?」
『──有志の方々が共同で制作なさっていました。お会いしたいのであれば、あと30年ほど待てば会えますよ、今はまだ精子にもなっていませんし』
「何が悲しくて自分の同人誌を見ねばならぬのか……」
いつものように唐突に変な事を言い始めた女神様の事は置いといて……ひとまず、千賀子の今の方針は決まった。
──月面へと向かいます、なんかそういう事になりました。
気分としては、別に嬉しくもなんともない。だって、もう既に何度か足を踏み入れているし、なんなら月面に神社があるし。
実際、両親や友人に『ちょっくら月面に行ってくるよ』って先に話しておいたのだけど、それに対する反応は。
『え、月に? そ、そうなの、よく分からないけれども、怪我には気を付けてね』
だいたい、両親の返答はこんな感じで、反応も『なんか娘が変な事を言い始めたぞ』といった感じの困惑っぷりが見え隠れしていた。
その気持ちは、当人である千賀子とて痛いほどに分かる。
だって、当の千賀子ですら何がどうなってこうなったのか上手く説明が出来なかったからだ。
『……千賀子ってばいくつになっても元気ね、そのバイタリティが欲しいわ。あ、月の石が拾えたらお土産ね』
『……え~っと、危なくなったら中止するのも勇気だよ~。私へのお土産は無理しなくていいからね~』
ちなみに、明美と道子に話した時の返答がコレであった。
さすがは、千賀子の友人をやっているだけの事はある。
第三者が聞いたら『こいつ、酔っているのか?』って思われそうな話だけど、この二人は小学生の時からの付き合いである。
どれだけ『なんて???』みたいな話であろうとも、とりあえず千賀子がそう言っているならマジなんだろう……と納得する下地が出来上がっていた。
千賀子当人としては、かなり不本意な話ではあるのだが。
まあ、とりあえず、何も言わずに動いていたらビックリさせてしまうからという程度の話なので、それで終わらせるとして。
とりあえず、ロケットである。
資金関係はもうこの際考えないにしても、兎にも角にもロケットが無ければ何も始まらないわけで……さっそくだが、ロボ子より実物のロケットを見せてもらうことにした。
おまえもうロケット出来ているのかってツッコまれそうだけど、安心してほしい。
既に千賀子から、『おまえもう作ってんじゃねえよ!』って頭を叩かれていたから。
これから作るならまだしも、もう出来上がっている時点で完全に事後承諾ってやつで……千賀子でなくとも拳骨を落とされても文句は言えない所業である。
さて、それはそれとして、既に出来上がっているのであれば、とりあえずは試乗するしかあるまいと千賀子は意を決して乗り込んだわけだが……これがまあ、普通であった。
テレビなどでこれまで紹介された宇宙船内部の光景と、そんなに変わったところがない。
よく分からない機械がいたる所に確認できて、よく分からないチューブやら配線やらがいたる所に伸びていて。
それでいて、室内は……思っているほどに広くはない。
一人だけの行き来なら余裕が持てるが、二人並ぶと……気を付けないと身体をぶつけて大変なことになってしまいそうだ。
外から見る分には宇宙船胴体部分も大きいから、もっと広々としていると思っていたが……う~む、こういうモノなのだろうか?
「その疑問に対しては、Yesです。諸々を気にせず自由に作れとおっしゃるのであれば広々と作れますが、今の人類の技術に合わせるとこれでも広い方ですよ」
「あ、そうなんだ」
「神通力で宇宙空間でも生身でしばらく活動できるだけでなくワープで避難出来るマスターと違って、普通の人間は酸素漏れ=死ですから」
「言われてみたら、そうか」
「宇宙船内部の酸素は有限ですから。0.1mm以下の穴でもそこから船体全域の破損へ繋がったりしますし、そもそも残量が0になった時点で死亡確定ですから」
「う~ん、そう言われると宇宙空間って怖い場所なんだな」
今さらな話だけど、千賀子のその言葉は何一つ誇張ではなかった。
事実として、宇宙空間というのはほとんどの生物が生存できる環境ではない。
海底より吹き出すマグマの高温化でも生存できるような微生物や、乾燥して干からびて生命活動が停止した状態でも30年近く生き延び、水を掛けたら活動再開するクマムシなどであれば。
活動する事はできなくとも一定期間は耐えることは出来るだろうが……それでも、それが限界である。
ましてや、それらのような微小な生物どころか、身長1m後半体重は最低でも50kg以上の生物となれば……その難易度は桁外れに上昇する。
酸素が漏れて足りなくなったら窒息するし、太陽風という名の強烈な放射線に晒されるダメージがあるし、そもそも太陽が生み出すエネルギーを大気などのバリア無くして受けたら即死である。
数多の生物が生まれて繁栄してきた地球とて、生物が生物として誕生するまで何億年という月日を必要としたと言われているのだ。
その何億年分の積み重ねをギュッと押し固めるわけだから……むしろ、シャトル程度の小ささでそれを実現出来ていることが奇跡にも等しい偉業なのである。
「怖がる必要はありません。もちろん、そう見せかけているだけで、安全基準はしっかり私レベルに合わせております」
とはいえ、基本的に機械関係に対してはアホみたいにマウントを取りまくるロボ子からしたら、その程度の話なのかもしれないけど。
とりあえずは、だ。
話が逸れまくったのを戻して、ロケットを見せてもらう。
行き先は種子島か遠いなと千賀子がつぶやくと、ロボ子は不思議そうに首を傾げ……そこで納得したかのように頷いた。
「マスター、勘違いをなされておりますね」
「え?」
「ロボ子宇宙センターは『春木競馬場』より向かうのです」
「はい????」
いまだかつて、これほど理解が及ばない言葉があっただろうか?
思い返せばけっこうあったかもと千賀子は一瞬ばかり考えたけれども、それはそれとして、競馬場に宇宙センターがあるってどういうことだよと本気で思った。
いや、だってさ……そう、千賀子が思ったのも無理はない。
なんで、日本に限らず世界の宇宙センター(特に、打ち上げ可能な場所)が僻地に作られるかって、それは周囲への影響が大きいからだ。
燃料タンクなどの切り離しの時に周囲に民家などがあれば危ないし、そもそもとんでもない騒音だ。
だから、周囲に居住者のいない場所……広大な海や砂漠などが広がっている場所が好ましい。
他には、地球の自転を利用して加速するためや、自転速度は赤道上がもっとも速いため、燃料節約のために条件を絞っていくと……自然と僻地が多くなるわけだ。
その点を踏まえれば、周辺含めて住宅街だらけの『春木競馬場』から何処へ向かえば、そんな場所があるのか……本気で、千賀子は想像すら出来なかった。
「百聞は一見に如かず、とにかく行けば分かります」
しかし、ロボ子がそこまで言うのであれば、疑うのも失礼か。
そう判断した千賀子は、分身たちに留守番を任せ……覚悟を決めて、『春木競馬場』へと向かったのであった。
……。
……。
…………そうして、『春木競馬場』の敷地内……競馬場施設より少し離れ、プール施設などとも離れている、そんな場所に連れて来られた千賀子は……しばし、言葉を無くした。
そこには、地下へと続く大きなトンネルがいつの間にか出現していた。見たままを語るならば、海底トンネルってやつだろうか。
当然ながら、千賀子は何も知らない。ていうか、数日前の記憶が正しければ、そこは駐車場が広がってだけのはず。
それが、いったいどうしたことか。
10t車が余裕を持って通れる車道が片面4つ、両面で8つの車道がある、巨大な海底トンネルがあるのだ。
こんなの、さすがの千賀子も面食らって当然である。
いったい、何が起こったのか……さすがの千賀子とて見当が付かない事態で……いや、待て。
ちらり、と。
千賀子の頭上より『<●><●>オドロイテイルカオカワイイ……』といった感じになんか興奮しながら見下ろしている女神様を見上げ……一つ、ため息を吐いた。
考えるまでもないことだった。
人類基準からすれば、もはや神の領域レベルで科学力を突き放すロボ子といえど、だ。
ここまで一目がある場所で、ここまで大掛かりな事を、ここまで誰にも気付かせることなく遂行なんてのは、さすがのロボ子でも不可能だ。
というか、そのレベルの作業なんてしていたら、普通に千賀子の巫女的シックスセンスに引っ掛かって様子を見に来るから露見する。
あんまり目立たなくなっているが、千賀子の巫女的シックスセンスはスゴイ。実際、昔よりスゴイ。
なにせ、ロボ子が色々と思い立ち、様々な隠ぺい工作を図って秘匿した秘密基地みたいスペースを地下空間に作ったりしても、だ。
『そういえばロボ子、あんたちょっと前に……ほら、〇〇の地下に何か作ってない? そんな気がするのだけど、作るなら事後報告でもいいからちゃんとしてね』
と、完全に隠しきっていると思っているロボ子に言ってくるので……いや、なにそれ、こわ……っ。
まあ、とにかく、だ。
人が全くいない、周囲に気を使う必要がない僻地で穴を掘るだけならば可能だろうが、このトンネルは……海底を進んでいる。
いくらロボ子だって、無理なモノは無理……となれば、これはもう女神様が関与している他ないだろう。
……で、だ。
とりあえず、この先に行けば良いのは察せられた。
しかし、どこまで続いているのかは知らないけど、これって徒歩で行ける距離なのだろうか?
「直線距離にして450kmになります」
「ロボ子……貴女は賢いけど、おバカなところがあるのは玉に瑕というやつだわね……」
思わず千賀子がそう言ってしまうのも無理もなかった。
冷静に考えて、450kmって大阪から東京までの直線距離より長いのだ。
高速道路を使っても休憩なしで5,6時間……往復なら、それだけで1日が潰れてしまうぐらいの長さである。
マジでいったいどこに繋がっているのか……なんか想像すると色々と怖くなるから、そこで止めるけど……で、だ。
どうやら向こうに宿泊用の施設が用意されているらしいけど、さすがにそこまで時間を掛けてはいられない。
なので……久しぶりに、全力の空中浮遊。すなわち、人間ロケット(飛行)である。
ワープが使えれば良いのだけど、ワープは基本的に目印となるナニカ(つまり、マーキング)が必要で、目的地が上手くイメージ出来ていないと失敗してしまう可能性が高い。
なので、全力で飛ぶ。
もちろん、千賀子が本気で飛んだら周辺が衝撃波で大変なことになってしまうから、ちゃんと神通力で防いだうえで行う。
だって、本気の千賀子は音速以上の速さで飛べるし……で、だ。
おおよそ10分ほどで出口へと到着した千賀子は(ロボ子も一緒に連れて来た)減速して……ゆっくりと地上へと出る。
すると、そこにはロボ子が話していたとおり、出てすぐの場所に宿泊施設兼管制塔(?)っぽいのがあって……眼前には広大な、ちゃんと整備された通路やら何やらがあって。
そして、遠く離れたところに……発射台に取り付けられた状態になっている宇宙船が、千賀子の目にも確認出来た。
「お、おお……!」
思わず、千賀子は感嘆のため息をこぼした。
「ようこそ、マスター。ここは『春木競馬場』より南に約450kmほど進んだ先にある島、『チカコチャンカワイイコレハモウユルサレナイデモヤッパリカワイイカラユルス島』です」
「なんて?」
「ですので、『チカコチャンカワイイコレハモウユルサレナイデモヤッパリカワイイカラユルス島』です」
「????????」
でも、そんな感嘆も直後に引っ込んでしまった。そんな場所に島なんてあったっけという疑問すら一瞬でぶっ飛んでしまった。
いや、これは千賀子さん、悪くない。
誰だって、なんか妙に長ったらしくも早口言葉で自分の事を褒めているのか貶しているのか愛でているのかよく分からない……いや、分かるっちゃあ分かるけれども。
とにかく、千賀子は、だ。
遠くに見えるスペースシャトルを見やりながら、なんか今回も面倒くさいことになりそうだな……と思いながらも、ひっそりと覚悟を固めるのであった。
……。
……。
…………まあ、それはそれとして。
「あ、マスター、アレをご覧ください。当ステーションのマスコットキャラクター、『ち~ちゃん』です」
「え、ち~ちゃんって……なにアレ、漫画に出てくる宇宙人の宇宙船みたいなでっかい着ぐるみに見えるのだけど?」
「見たままのとおりです」
「ふ~ん……ところで、中の人ってロボット? それとも、冴陀等村の人でも雇っているの?」
「ああ、いえ、どちらでもなく、どうしましょうかと悩んでいる時に……説明が面倒ですね、申し訳ありませんが顔を出してもらえますか?」
ロボ子がそう告げれば、目の前の宇宙船(いわゆる、アダムスキー型)の下部よりモゾモゾ動いたかと思えば……にゅうっとアームカバーに包まれた手が出てきて、中から人が──って、あれ?
「……あんた、まさか『悪女』の私?」
「お久しぶりですね、『巫女』の私」
思いもよらない人物が出てきて、千賀子は思わず面食らった。
というのも、着ぐるみの中に入っていたのは千賀子と瓜二つ……いや、『ガチャ』の恩恵によって若々しくなった、『ジョブ:悪女』を持つ別世界の千賀子だったのだ。
悪女千賀子は、千賀子の記憶が正しければ……今は冴陀等村にて授かった子を村人たちと一緒に育てているはず。
年齢的には5歳ぐらいだったか……まだまだ手が離せない時期のはずだけど、どうしてここに?
「我が子はカワイイけど、何時までも私が傍でベッタリするのは良くないから……それに、ちゃんと働いている姿を見せたいですし、私が居ない時間にも慣れてもらわないと……」
「──なんで、悪女マスターより巫女マスターの方が我が子への溺愛傾向が強いのですかね?」
「ぐはぁ!?」
なんとも、胸に刺さる言葉である。思わず手で押さえてしまう。
いったい誰の胸にって、それは……ねえ?
「まあ、渡りに船とはこの事。いちいち誤魔化す必要もなくこちらの事情を知っているので、採用させてもらいました」
「採用されました」
「……そ、そう、頑張ってね」
あっけらかんとした様子の二人に、千賀子は……気持ちと話題を切り替えるために、着ぐるみへと視線を向ける
「ところで、その着ぐるみを着て練り歩くの? 詳しくは知らないけど、相当に蒸し暑いって話じゃないの?」
「それが、だいぶマシなんですのよ。なんといってもロボ子さん作ですので……ただ、さすがに汗は掻いておりますし、入っている時は牛柄の薄いシャツと牛柄パンツだけです」
「牛柄? よく分からないけど、それでも大変な仕事じゃないの」
「そう言ってもらえると嬉しいわ……ちなみに、この『ち~ちゃん』、こう見えてコンセプトっていうか、設定があったりするのよ」
「どんなの?」
「『悪い子はキャトルミューティレーションしちゃうよ』っていう感じで……こうやって──」
そう言うと、悪女千賀子は着ぐるみの中へと戻り──にゅう、とアームカバーが付いた腕が飛び出して。
「『悪い子は、キャトルっちゃうぞ~』……といった感じで、中に引き込みます」
「うわぁ、自分がその立場だったら絶対に嫌だわ……」
「お仕置きですからね、しばらく中でぎゅうぎゅうして大人しくしてもらいますから」
あはははは……そう笑う二人は……うっかり、忘れていた。というか、軽く考えていた。
ただの汗ならともかく、変に熱やら何やらがこもった内部は、間違いなく汗臭いとしか感じない空間だろう、と。
そう、軽く考えてしまっていたのであった。
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中へと引きずり込まれた悪い子は、悪女千賀子がヨシと反省したのを認めるまで、両手足で抱え込むようにぎゅうぎゅうにされます。悪い子は谷間に顔を押し込まれて息苦しく、全身が汗でベタベタ、むせ返る汗のせいでサウナに居るかのような感覚を味わいます。なお、コレによって性根の邪気が取り払われるので本当に良い子になります。ただ、その日より毎晩、当人は覚えていませんがぎゅうぎゅうされたことを夢として見るようになります。いわゆる、副作用というやつですね、怖いですね~。