ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
──最初は、隠す場所を隠さないバニー姿に羞恥心を爆発させていたが……途中から、あまりそれを感じなくなっていた。
それは、慣れた……というのとは、少し違う。
いや、まあ、少しは慣れもあるのだけど、それよりも千賀子の気を引いたのは……基地内部における、ウサギ宇宙人たちの視線であった。
せめて、変態を見るような視線だったならば少しは違ったのかもしれないが……ウサギ宇宙人から向けられる視線は、そうではなかった。
有り体に言えば、『とても奇妙なモノを見る』かのような、そんな視線であった。
なんというか、エロとかそんな話じゃなくて、『なんでコイツそんな恰好で?』とかいう、そういう目であった。
というか、そういう視線だけではない。
巫女的シックスセンスによって、ウサギ宇宙人たちの内心というか、感情とかを読み取っているからこそ、色々と察してしまう。
──私、もしかして頭のヤバい変態扱いされてないか、と。
これには、千賀子とて言い返したい気持ちでいっぱいだった。
だって、望んでこんな格好になったわけではなく、少しでも無駄な争いをしないための策……だったはずなのだ。
それなのに、いざ蓋を開けてみたら『なんでコイツ裸なの?』みたいな感じの、奇妙なモノを見るかのような……ちょっと、想像していた反応とは違う方向性にダメージを受ける。
しかし、隠すわけにはいかない。
いちおう、下手に隠すとナニカを企んでいると思われかねない行為と言われていたからだ。
「ロボ子、本当にこれで友好的なアレになっているわけ?」
『いちおう、そのはずなのですが……』
けれども、あんまりな反応に思わずロボ子に尋ねたら、当のロボ子も不思議そうに首を傾げるばかりで……ちなみに、だ。
千賀子の頭上より、ジーっと千賀子を見つめ続けている女神様が、何やら顔の手を蠢かせながらも、その中から赤く光る瞳を……って。
「──女神様、目なんて付いていたの!?」
『──おや、御存じだと思っておりましたが、知らなかったのですか?』
「い、いや、目が付いているのは知っていたけど、いつも手で隠しているから、てっきりそういうものかと……」
『──普段は出す必要がありませんので。今回は特に可愛らしい恰好になっている愛し子を見るため、こうして目を剥き出しにしているわけですよ』
「そ、そうなんだ……」
『──現時点で約9000京kの画質です、愛し子の細胞内のミトコンドリアの動きもしっかり……うっ、あまりの可愛さに鼻血が出そうです、血などありませんけど……』
「…………(ドン引き)」
あまりのおぞましさに、千賀子は思わず背筋を震わせた。
ちなみに、だ。
女神様は千賀子だけを見下ろしていて、目のあたりも蠢く手で隠されているから千賀子以外誰も気付いていないが。
もしも、その『瞳』を第三者が(映像越しだとしても)直視してしまったら酷い事になっていただろう。
あまりの女神的アトモスフィアを処理しきれず、約7割の脳が物理的に破裂してしまうか、致命的な物理的損傷が発生するか、機能停止に陥るか。
残った約3割は物理的損傷を避けられても、脳機能に致命的なダメージ……具体的な症状として完治不可な精神崩壊を引き起こしていただろう。
その3割の大半はソレを認識しようとする前に精神崩壊を引き起こさないために衝動的に自殺を図るので、実際にその状態になるのは……話を戻そう。
とにかく、女神様から向けられる熱視線と、ウサギ宇宙人たちの変態を見るかのような眼差しに千賀子は辟易しながらも、ロボ子の指示を受けて……この基地のトップである司令官が居る場所へと向かっていた。
その際、ロックが掛かっているっぽい扉とか色々とあったけど……遠巻きでこちらを見てくるウサギ宇宙人たちがいっこうに反応しないので、とりあえず巫女的パワーで扉を開ける。
宇宙空間だからなのか、ちょっと手ごたえが重い気がするが……慣れれば、どうということはない。
ウサギ宇宙人たちから、驚愕とか驚きとか……あと、若干の恐怖を感じ取れるが……それでも近付いてこないので、そのまま中へ。
千賀子としては『不法侵入ちゃうの?』ってな感覚だけど、ロボ子から『遠慮するな、行け』と指示されたので、素直に従う。
強引過ぎじゃないのって思うけど、基本的に力で格を示すのが宇宙のやり方らしいので、これぐらいは大丈夫とのことらしい。
穏便に済ませるのが正解なのか、強引に済ませるのが正解なのか、絶妙な塩梅が必要なのか。
宇宙のルールはどうにも分かりにくいと千賀子は思った。
なお、ロボ子は現在全力で姿を隠した状態で千賀子の傍に居る。傍から見たら、今のロボ子は完全な透明状態である。
下手に己がセンサーなどで調べられてしまうと、間違いなく余計な緊張を与えてしまうので……という理由からである。
で、話を戻すが、通常、司令官が居る場所は関係者の中でも伏せられた情報ではある。
自国内ならばともかく、月の周辺に敵の存在が確認されていないとはいえ、絶対に安全とは言い難い。
索敵範囲外から地道に調査されていたり、あるいは内通者によってピンポイントで攻撃されたり……まあ、別にこれは軍以外にも当てはまることだ。
中小零細ならともかく、大企業の社長がどこに居るのかを常に公表するわけもなく……ましてや、基地の幹部以上ともなれば、一般には伏せられて当たり前であった。
……。
……。
…………だからこそ、千賀子たち(というか、千賀子だけ)は気付いていなかったのだけれども。
『──っ!? ど、どういう事だ、あいつ、まっすぐ基地の最深部へと……ロックを外して入ってゆくぞ!?』
『信じられん! あのメスのサイキック、我が基地の防衛プログラムをあっさり突破していくだと!?』
『どういうことだ、我が基地は対サイキック用コーティングを施されているのではなかったのか!?』
『──測定結果、出ます!』
『な、なんだコレは……これが、たった一体が生み出したサイキックパワーだと言うのか!?』
『司令官! ダメです、この出力の前では、対サイキックコーティングだけでは歯が立ちません!』
『司令官! アンチ・サイキックフィールドの許可を!』
『ならん! 傍にいる超高次元存在をうかつに刺激はできん! なんとか個体Xだけは抑え込めても、そこからどうにもできん!!』
『しかし、このままではここまで素通りだぞ!』
『そもそも、個体Xを抑え込めるかどうかすら分からんではないか! 抑え込めるという希望的観測は止めるのだ!』
『そうだ、測定出来ているのはあくまでも現時点でのサイキックパワーのみ。もしも、これが全力で無かったのだとしたら……』
『それはネガティブ過ぎる考えだ!』
『現実を見ろ! 超高次元存在を伴っている時点で、我らの想定のはるか上を行っていると思うべきだ!』
『そうは言うが、向こうの出方が分からぬのだ……個体Xがどうして繁殖用装備をしたまま向かって来るのか、それすらも分からぬのだぞ』
『……ま、まさか、我らを襲って繁殖するつもりなのか!?』
『いや、それはありえぬ。もしもそれが狙いならば、ここへ向かう途中で兵士たちが襲われているはずだ』
『そうだ、だからこそ奇妙なのだ。繁殖するのが目的な可能性が高いのに、どうして繁殖を行わないのか……』
『……やはり、目的は司令部との対話か?』
『コンピューターが弾き出した結論ですと、その可能性が高いですじゃ』
目的地と思われていた司令部(あるいは、ブリッジか)は、てんやわんやの大騒動であった。
それも、致し方ない。
その歩調は緩やかではあるものの、ほとんど止まらず迷路のように入り組んだ基地の地下へと進む様は、恐怖以外の何者でもなかっただろう。
実際、客観的に見たら、だ。
敵性宇宙人を前にした前線基地ではないが、軍仕様の様々なセーフティが組み込まれているはずの、その基地を。
あまりにも怪しいやつがたった一体で、装備無しで、気軽なご様子で次々に突破して、まるで初めから基地の全容を把握しているかのように迷いなくまっすぐシークレットへと進んでくるのだ。
こんなのウサギ宇宙人たちからしたら、冗談のような悪夢である。
そのうえ、自分たちが総力を結集したとして一瞬で返り討ちにあってしまう『超高次元存在』が居るとなれば……これはもう、即座に全面降伏という判断を下しても……という段階にすらあった。
……。
……。
…………そんなわけで、だ。
双方が双方とも誤解したまま、物理的な距離が縮まり……ついに、千賀子と基地司令部(つまり、幹部クラス)とのご対面になった。
そこは、なんというか……SFちっくな空間であった。
千賀子が目にしたことがないコンピューターっぽい機械が並び、専門の軍人と思われる者たちが席に座っていて……中央のブリッジと思われる場所には、高官と思われる者たちが数名座っていた。
なお、武装した兵士は居ない。
千賀子を刺激させないためか、女神様を刺激させないためか、あるいは両方か……どちらにせよ、いきなりドンパチはなさそうだ。
その際、周囲の機械やら設備やらを見て、『ぷぷ、なんとも原始的な……』と、またもやマウントを取っているロボ子の姿があった(ステルス状態)があったのだけれども……まあ、それは置いといて。
『……名も知らぬ者よ、ここへ踏み入れた責は問いませぬ。しかし、何用でここで踏み込んできたのか、その理由を教えてはもらえぬか?』
ひとまず、この基地の中でもっとも位の高いと思われる、なんか偉そうな雰囲気を醸し出しているウサギ宇宙人が話しかけてきた。
それを聞いた千賀子は……無言のままに頷くと、異空間より……そっと、ある物を取り出した。
その行為だけで、『ぶ、物質転移、だと!?』なにやらめちゃくちゃ驚愕している者が居たけれども、それも横に置いといて。
千賀子が取り出したのは……千賀子が子どもの頃より密かに今も購入している、地元の和菓子屋の饅頭(12個入り)であった。
なんというか、それは昔ながらの味というやつで。
千賀子にとっては思い出の味でもあり、子供の頃は祖父がおやつとして買い与えてくれた……個人的には今も大好物なやつである。
「……え~っと、言葉が分からないので、巫女的シックスセンスで貴方達の頭の中に言葉とかイメージを送ります。とりあえず、まだるっこしい話はすっ飛ばして、結論から話します」
その言葉と共に、ソレをそっと差し出して。
「あなた達が自分のモノだと思っているあの神社、いちおう私のというか女神様のモノというか……とにかく、私たちのモノなので……それについて、異議申し立てをするのでしたら」
合わせて、千賀子は……ムキッと、あるいはムチッと、細くもなんだか触り心地がよさそうな二の腕で、力こぶを作ると。
「仕方がありませんので、語り合いましょう……この、拳で」
にっこりと、笑みを向けたのであった。
※なお、現在の千賀子の恰好は逆バニー(局部丸出し痴女仕様)です。怖いですね~
誰だよ、こんな格好を考えたやつは……