ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
──さて、千賀子フィルターが外された現在のエマはというと、何度も言うが小学生ではない。
現在は中学3年生で、既に受験も済ませて今年(1986年)の4月で高校1年生になる。
そして、千賀子自身は小学生のカワイイ盛りだと思っているが……いや、可愛いのは可愛いのだけど、フィルターOFFのエマは、どちらかと言えばキレイ系の風貌になっていた。
そう、今のエマは、誰が見てもカワイイ小学生ではなく、キレイな女子高生と判断される容姿になっていた。
具体的には、中学3年生の時点で大人顔負けのスタイルである。
単純なバストサイズだけならば、クラスの上位層。
しかし、アンダーとの差をちゃんと計れば、2位をぶっちぎりで突き放すFカップである。
そう、なんとエマは中学3年生にて既に上位〇%に分類されるバストを持っていて、それは今もなお成長中であった。
いちおう、外国人の血が混じっているからだろうか。
腰の位置が高く足も長いことも相まって、そのスタイルは明らかに抜きん出ていて、そのうえ顔も別格であった。
男も女も、やはり顔が良かったりフィジカルが良かったり家が金持ちだったりは色々と嫉妬を集めしまう場合がある。
なので、けっこうエマはあまりよろしくない気性の者たちから目の敵にされているというか……とはいえ、だ。
エマの場合は……本人の気質もそうだけど、この場合は親である千賀子の存在が盾の役割を果たしていた。
なにせ、エマ自身もある程度は理解しているが、客観的に見たら、そんじゃそこらの立場ではないのだ。
一定以上の階級に属する親ならば、『あの人はとても寛容な方だけど、間違っても無礼千万な対応は取るなよ』と子供に釘を刺すし。
そうでない生徒の親でも、千賀子に関わりのある仕事に従事していたならば『あの人は本当にお優しい、失礼な態度を取るな』と忠告するし。
いわゆる、あまり素行がよろしくない生徒の親ですらも、『あの人の娘にだけは、やんちゃはするな』と再三に渡って子供に叩き込むぐらいである。
エマはその事を自覚していたから、意識して親の権威を振りかざそうとはしなかった。
だって、それは自分の力ではないからだ。
あくまでもスゴイのは親である千賀子であって、自分は運良く美人に育っただけの女であると心から思っていた。
それは謙遜でも何でもない。
エマにとって己の美貌は生まれもって得た神様のプレゼントみたいなモノであり、優劣を決めるモノでは……いや、正確には、だ。
美人であるというのが得をするのは身に染みて理解している。ただ、美人だから人間的に優れているだなんてまったく考えてすらいなかった。
それに、エマは己が人よりそれなりに勉強が出来るオツムを持っていると自覚している反面、自分より頭が良い人は数え切れないほどいると自覚していた。
ただ、その二つが揃えば、向かうところ敵なしだなとは思っている。
なにせ、純日本人である己の母親……秋山千賀子という、これ以上ないぐらいの実例を物心ついた時から見ていたのだから。
そう、幼い時から見てきたからこそ、誰よりも母のすごさというやつを知っているとエマは自負していた。
たとえば、家に居る時。
友達の話だと、『家に居る時のお母さん、お父さんが見ていない時はけっこうだらしないし、ズルっこいよ』って感じだけど……千賀子は違う。
少なくとも、エマが知る限り、家に居る時でも外に居る時でも、シャツ一枚といった感じで楽な格好をする事はあっても、だらしない姿は見た事がなかった。
いつ見ても、キレイなままだ。化粧をしているとかではなく、いつも気を引き締めてキレイな様でいるのだ。
特に、一緒にお風呂に入っている時、それを強く実感する。
友達の母親がどうなっているかは知らないが、少なくとも、エマの目から見て……己の母よりも若々しさを保っているお母さんは知らない、というのが正直な感想であった。
なにせ、娘である己の倍は歳上だというのに、おっぱいもお尻もまったく垂れていない。
下手しなくとも、もう既に垂れ気味(というか、太り過ぎ?)な形になっているクラスメイト(名は伏せる)より張りを感じさせる。
そのうえ、所作の一つ一つに普段から気を使っているのが察せられる。
テレビを見る時もしっかり膝を閉じるし、食事の時も音を立てず、魚を食べる時もキッチリ身を取って、エマの行儀が悪ければ普通に怒ってきた。
そう、周りからは優しくて愛嬌のある人と思われているけど、そういう子どもへの躾に関してはけっこう厳しいのだ。
たとえば、だらけていて膝を開けていると尻を叩かれて注意されるし、箸や椀の持ち方が悪いと注意されるし、薄着のままウロチョロしていると軽く睨まれるし。
そんなわけで、エマにとって母は、いつ見ても綺麗で気を引き締めている、キレイな母でしかなかった。
正直、ちょっと複雑な部分はある。
エマにとって、秋山千賀子という女は、どう足掻いても超えられない壁であり、どんな時でも己を見守ってくれる存在でもあるからだ。
だから、エマは一度として千賀子の愛情を疑った事はないし、千賀子へ向ける愛を疑ったこともなかった。
……母親である秋山千賀子という存在は、エマにとっては実の母以上に心から感謝し、愛を注いでくれた存在である。
何故ならば、エマと千賀子との間には血の繋がりが無い。その事は、千賀子から言われたわけではないのだけど、うっすらと察していた。
エマは、バカではない。
自分が母とは血の繋がりがないのではと思った時があったし、子供心に父とは離婚しているのかなと思った事もあった。
その疑問は、小学生の頃に解消された。
自分なりに色々と考え、お母さんが傍に居ない時に、お爺ちゃんとお婆ちゃんに何度も頼み込んで……自分の出生の秘密を知った。
正直、うすうす察してはいたのだけど、ショックだった。でも、納得できる部分も大きかった。
だって、似ていないし。
いくらなんでも、父親の特徴だけがここまで顕著なのも……まあ、千賀子に似て胸とかお尻とかは大きくなったけど……え、実の母親?
エマにとって、母親とは秋山千賀子だけである。血の繋がりなど関係ない。
仮に目の前に実の母親が現れても、エマは欠片の注意も払わず無視しただろう……で、話を冒頭に戻すのだけど。
美しく成長し、もうすぐ高校生となるエマは……それはもう、モテた。
あまりにもモテ過ぎて、知らないうちに『非公式ファンクラブ』が勝手に作られ、なんか知らないうちに『親衛隊』みたいなのが作られたり……ちなみに、だ。
この『非公式ファンクラブ』とか『親衛隊』とかって、現代例話の時代では冗談のように思えるかもしれないけど、昭和のこの頃は実在していたのだ。
公式が一切関与していない非公式ファンクラブが、さも公式のような体でクラブを結成していたり。
別に公式からお許しが出たわけでもないのに、勝手にファンたちの間で優劣を作って親衛隊なんかを結成したり。
小学生の時から察してはいたけど、中学生にもなれば露骨に男子たちの態度が変わり始めたのもあって、エマはちゃんと自分が美人であることを理解していた。
で、理解をしたうえで……結論から言えば、エマもまた異性に興味を抱くようになっていた。
家に、『男』という存在が無いからだろう……春人は弟というか、アレは男じゃなくて、男の子だから例外。
とにかく、どうにも中学の半ばぐらいから思うようになった。
クラスで人気がある男子の運動している姿とかを見て、ちょっとドキドキすることもあった。
男子たちがエマに興味津々で見てくるように、エマもまた男子たちを興味津々に見ているわけで……つまり、エマはちゃんと思春期を迎えているわけであった。
気になる男子と遊びに行きたいなって思うし、近くに座られるとドキドキしちゃうし……だからこそ、エマは思ったのだ。
──お母さん、もしも私が彼氏と一緒に居る姿を見たら失神しちゃうんじゃないかな、と。
そのエマの疑念は、実はけっこう当たっていた。さすがのエマも、想像すらしていなかっただろう。
まさか、千賀子が脳内フィルターによってエマを現在進行形で小学生であるかのように誤認識をしていたとは……あ、いちおう言っておくが、常にそうなっていたわけではない。
ちゃんと、エマも成長していると認識はしていたのだ。
ただ、自分にとって都合が悪くなりそうだと改ざんしていただけで……まあ、とにかく、だ。
中学生になっても子供の頃と変わらずベタベタ甘やかしてくる千賀子に、エマは……そういう方面に対して、淡い危機感を覚えたわけである。
そして、今年で高校生になる段階に至っても、なんだかあまり変わりがないご様子だったので……少しずつ、エマは母である千賀子の考えを改めさせることにした。
例えば、一緒にテレビを見ていた時に、何気なく映し出された男性アイドルの姿を見て。
「──やっぱり、恰好いいよね。彼氏は、こういう格好いい人がいいなあ」
とりあえず、自分もそろそろ男子に興味を抱く年頃だよ……と、暗に訴えかけてみたら。
「…………そ、ソウ、エマモソウイウトシゴロ、ナンダヨネ」
──あ、こりゃいかん。
今にも気絶してしまいそうなぐらいに声と身体を震わせている
千賀子の姿を見て、エマは先を急ぎ過ぎたと思った。
とりあえず、緩衝材として玩具で遊んでいた春人を連れて来て抱っこさせてやる。
さすがに小学生になったので恥ずかしさを覚えるようになった春人だけど、千賀子に抱きしめられるのは好きなのか、途中から「しょうがないなあ~」って感じで力を抜いていた。
その気持ち、分かるなあ……と、エマは思った。
同性なので受ける感覚が違うのかもしれないけど、それを差し引いても、母である千賀子に抱きしめられるのは本当に気持ちが良い。
うまく言葉で言い表せられないけど、兎にも角にも柔らかくて良い匂いがして、全身がぷにょぷにょに包まれているかのような感触がするのであった。
……。
……。
…………さて、いきなり彼氏云々は先を急ぎすぎということで、少し緩めて……今度は、『男子って、男の子なんだね作戦』である。
これはつまり、クラスの男子の話を以前より増やして、貴方の娘が思春期に入ってきていますよ……と、遠回しに察してもらうという作戦である。
エマ自身、これは回りくど過ぎないかなって思ったけど、彼氏云々の話題を出しただけで震えてしまった母には、これぐらいが丁度いいかなって……思っていたのだけど。
「……ママ、そんな泣くほどのこと?」
「うっ、うっ、だってぇ……」
まさか、泣かれるとは思ってもいなかった。これには、さすがのエマもビックリして作戦を即座に注視したほどであった。
ただ、幸いというべきか、千賀子がただ悲しいだけで泣いているわけではなかったことを知れたのは良かった。
どうも、エマが男の子に興味を抱く年頃になって嬉しい反面、こうして親から少しずつ巣立っていくことに寂しさを感じて、思わず涙が出ちゃったらしい。
少なくとも、自分がオバサンになるまで結婚は許さないなんてレベルではない事が分かり、エマは安堵のため息を吐いたのであった。
……。
……。
…………ちなみに、後日のことだけど。
(……あ、今日は別のママが春人の相手をしている)
冷静に考えると滅茶苦茶怖い話だけど。
幼少期よりすっかり見慣れて日常の一部になっているおかげで、分身4号が春人の遊び相手をしていてもエマはまったく気にしていなかった。
そう、エマは自覚してなかったのだけれども。
そういう変なところで図太く細かい事(実際は細かくない)を気にしない性格は、完全に母譲りなのであった。
※ なお、エマは中学校にて初恋泥棒の異名を持っています