ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
──Q.それで、エマお嬢様が彼氏を連れてきたらどうしますか?
──A.とりあえず、ボディコン着て目線が15回私の胸元に行ったらアウト判定しようかなって。
──Q.やめましょう、冗談抜きでお嬢様から嫌われますよ?
──A.はい、やめます。
さて、冒頭よりとんでもない暴挙に出ようとしていた千賀子だが、ロボ子のすばらしいディフェンスによって防がれた後。
改めて、千賀子は……エマに対して『高校生になってから』という題目で、エマとちゃんと話し合うことにした。
まだ母離れしてほしくないという思いはあったけど、ロボ子の言う通り、エマはもうすぐ高校生……色々と自分で考えて動きたい年頃だ。
むしろ、中学生の時ですら自分の言うことをよく聞いて、問題も起こさず、学校の成績も良いのを維持してくれているだけ十分だと思ったのだ。
それに……思い返せば、己の高校生の時は、だ。
『ガチャ』の影響で抜きん出た美女にはなったのだが、その分だけ嫉妬やら何やらの視線に晒され、ひたすら勉強だけしていた3年間だった。
もちろん、道子と明美という、今も仲が続いている友人のおかげで孤独ではなかったけど……でも、だ。
道子は中学の時点で私立の良いところに行って、明美は下手に自分と一緒に居るとターゲットにされかねないからと少し距離を置いて。
高校生になったら、さらに千賀子の美貌が『ガチャ』によって強化されたため……余計に距離を置いたのだ。
かといって自由気ままだったわけでもなく、男子からはそれこそあの手この手でジロジロとみられ、次から次に悪い噂を流され、不良と呼ばれる人たちがちょっかいを掛けてきたり。
あと、クラスメイトから誘われたのに、参加すると、女子たちから睨まれたり……まあ、とにかく、だ。
思い返せば、千賀子が友達と楽しくやれていたのは小学生の時ぐらいで、中学、高校と進むにつれて、そういった青春とは無縁であった。
なので、だ。
エマが母離れしてしまうのは寂しいけど、自分の学生時代のような境遇にはなってほしくはないわけで。
かといって、何でもかんでも自由にさせるというのは少し違う。
何故ならば、エマは母である千賀子のひいき目を抜きにして、美女あるいは美少女と断言する育ち方をした。
自分が美女になったからこそ身に染みて実感したことだけど、美女というのはただそこに立っているだけで有象無象の注目を集めるのだ。
千賀子の場合は、『ガチャ』による弊害があると同時に、『ガチャ』によってそれらを振り払うことが出来たのだけど……エマは違う。
だから、千賀子はちゃんと話をしておくわけだ。男は狼だから、気を付けなさいよ、と。
「エマ、貴女の思う『ヤバい男』って具体的にどんな男?」
「え? う~ん……クラスに居る、オタクくんとか?」
「いいえ、違います。それはヤバい男じゃなくて、ただのオタク。そのオタクが、エマに何かしたの?」
「ん~……特に何もされていないけど、時々ジロジロ見てくるかな」
「見てくるのはオタクだけ? いわゆる、不良とか爽やか君とか、みんな見てくるでしょ?」
「うん、見てくる」
「なんで、オタクだけジロジロ見てくると思ったの? むしろ、話しかけてくるその二つの方がよほど近くから貴女を見ているのに」
「それは、そうだな……なんかこう、視線がいやらしい、とか?」
「残念だけど、それは勘違い。不良も爽やか君も、貴女をしっかりいやらしい目で見ています。じゃあ、なんで貴女がその二つをいやらしい目で見ていないと判断すると思う?」
「え、う~ん、隠すのがうまい?」
「半分はそうでしょうね。しかし、もう半分は、エマの中にある基準をクリアした男が、肉欲で自分を、顔や女体のおかげで最初から好意的に見られる……という事実を認めたくないだけです」
「え、ええ……そ、そう?」
「そうです。後は、単純にプライドでしょうね。格下だと思っている男からそういう目で見られる……つまり、格下から値踏みされているということに、プライドが傷付くからです」
そして、だからこそ、千賀子は己のこれまでの経験から培った事を、エマに教えるのであった。
「いいですね、エマ。男は一部の例外を除いて、貴女の顔やおっぱいやお尻を見て、キスしたい揉みたいと考えますし、普通にちん〇を入れたいとか考えます」
「そう、なの?」
「そうです。そして、エマが男子たちから優しいとかされるのは、9割以上貴女が女であり、その中でも美形に該当するからです」
そこで、改めてジッと……困惑するエマに、千賀子は念押しする。
「たとえば、女子たちから男子たちみたいな優しい対応をされたりする? 男子たちのように至れり尽くせりみたいなことをされないでしょ?」
「あ、うん、そういえば……」
「そのうえで思い出してほしいのだけど、クラスメイトに、あまりパッとしない女子がいるでしょ? その女子たちにも、その男子たちは優しい態度を取ったりした?」
「それは、別に……」
「眼中に入っていないから。女子に優しいんじゃないのです、その男子にとって基準をクリアした女子に優しいだけで、他はついでみたいなものです」
「…………」
「もちろん、すべての男子がそんな男ではありません。だからこそ、エマは男を見る目を養ってほしい。私の高校の時にも居たのよ……男とやって妊娠してどうのこうのってなった女子が」
「…………」
「いざという時、自分の身を守れるのは自分だけ。自由にやるということは、その分だけ私の助けも遅れるということ。それを、忘れては駄目だからね」
「……うん、ありがとう!」
「あと、やる事やったら妊娠するからね! エマぐらいの歳頃かは本当に妊娠しやすい時期だから! 絶対に大丈夫な避妊なんて、それこそ手術しないと無理だってことは頭の片隅に入れておきなさい!」
「そ、それはまだ気が早くない!?」
それは、千賀子なりの愛情であり、少しずつ母離れしてゆく娘への助言でもあった。
……。
……。
…………実際のところ、この頃の日本は『若年層の乱れた性』といった感じで、若年層の性の乱れが度々話題に上がっていた。
これまでにも幾度となく語られてきたけれども、理由は変わらず『性教育の不足』、これに尽きた。
現代でも性に関する教育はセンシティブな目で見られがちだけど、この頃の性の扱いは現代の比ではなかった。
知らないから真面目に勉強するだけで、『エロ男子』とか『エロ女子』とか言われたり、テストで高得点を取っただけでからかわれたりする者がいたりとか。
もちろん、これもすべてではない。ただ、そういう扱いをされやすかったのは事実である。
あと、普通に教材も現代に比べて不十分で、教える側も思春期の生徒に対してどのように教えるべきかという段階であったのも、要員の一つであった。
実際、この頃は『コーラで洗えば避妊できる』とか、『〇〇を食べたら妊娠しない』とか、『これ一粒で避妊効果!?』といった感じの怪しい避妊サプリが売られたりとか。
冷静に考えたら怪し過ぎて誰が買うんだよってな話だけど、実際にこの頃はこの手の話が続出して警察が捜査に乗り出したって話がチラホラ……まあ、そんなわけで、だ。
「……エマにゴムを渡した方がいいかしら?」
「マスター、極端から極端に走り過ぎです。せめて彼氏が出来てからじゃないですか、そういうのは」
エマも高校生になるわけだし、言うべき事は言ったから……ということで、一旦は落ちついたのだけど、やはりまだ普段通りとは言い難い様子であった。
なにせ、何やら考え込んでいるかと思ったら、おもむろに『思春期に入ろうとしている娘に避妊具を渡すか否か』とか言い出したのだ。
そんなの、思春期の女子にやったら喧嘩確定である。親心を通り越して、過干渉の域だ。
「でも、大事だと思わない?」
「大事でしょうけど、今はまだ早いです」
うっすら分かってはいるけれども、それでも、抑えきれないのが親心というやつか……まあ、とにかく、だ。
「……え、待って、春人もあと10年もしたら彼女を連れて……(絶句)」
「マスター、気が早過ぎです。その頃はマスターも50歳間近ですよ、男の子ですし、さすがに子離れしましょうよ」
千賀子の暴走を、この日もロボ子が事前に食い止めているのであった。
……まあ、そんな、どこにでもある家庭のアレやコレやを他所に、1986年の4月。
真新しい高校生の制服を身にまとったエマの晴れ姿を見て、人知れず涙をぽろぽろしていた千賀子だったが……なんと、この月には大変なことが起こった。
後の歴史書にも、それどころか現代でも語り継がれている世紀の大事故……『チェルノブイリ原発事故』の発生である。
これは原子力発電の歴史において、史上最悪となる炉心融解(メルトダウン)と爆発事故が発生した……現在でも解決に至っていない事故であった。