ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
──天使に変身って、具体的にどうしろと言うのか?
とりあえず、3号と同じく姿を変えられる千賀子は……イメージ的に黒より金色の神が良いだろうと思って、金髪へ。
顔立ちは……とりあえず、向こうに合わせる。骨格とか細かい部分は、どうしても違いが出てしまうし。
服装は……まあ、いわゆるキトンと呼ばれるやつにする。
言い方を変えればローブとも呼ばれるやつで、キトンとの違いは神聖さや純潔を象徴するとか、古代ギリシャやローマの衣装に由来だとか……まあ、真っ白ならあまり気にしないだろう。
それよりも問題なのは……デデドンと飛び出している千賀子の乳房である。
何故かって、千賀子の胸は『ガチャ』による特別製で、Lカップもあるのに思春期の少女のような張りを保っているのだ。
つまり、ブラジャーなどで補正しなくても垂れ下がらず、ぽよよんと前に飛び出しているわけだ。
これがまあ、すごい。
キトンはその構造上、キッチリ身体に巻き付けるか、あるいは胸を支えるようにして着るかで、だいぶ印象が変わる。
千賀子は最初、身体のラインを出さないよう身体に巻き付けようとした……のだけど、無理だった。
胸だけでなく、尻も含めて、そのような巻き付け方をしてしまうと、息苦しくて立っていることすら辛い状態になってしまった。
それならば要所を締め付けて、ソレ以外は余裕をもってゆったり……といった感じにしたら、コレはコレで、ちょっと見た目がヤバかった。
具体的には、めちゃくちゃ胸が弾む。
張りがあるおかげで、めっちゃ揺れる。あと、普通にデカい。横向きになると、収まり切れなかった乳の脇が、まるで呼吸をしているかのように露わになっている。
ブラジャーなんて付けたら違和感持たれてしまうから……しかし、これはちょっと刺激が強すぎるのではと千賀子は思った。
「うっわ、おもっ!! 何食べたらこんなデカくなるのよ」
「あんたも同じサイズなんだけど?」
実際、キトンの上から何気なく千賀子の胸を持ち上げた3号の感想には嘘偽りなく……まあ、これも千賀子の言う通り、同じサイズをぶら下げている3号が言えることではないが。
とりあえず、このままではあまりにも(一部が)目立ちすぎる。とりあえず、もう少し若く……若く……あ~、これはちょっと難しい。
普段から変身をして慣れていたなら違ったのだろうけど、こういう微調整はどうも……っと、その時であった。
『──うまく変身出来ないのであれば、私の知り合いの天使の姿を教えてあげましょうか?』
「出たな、女神様め」
これまで沈黙を保っていた女神様が、何やら話しかけて来た。
基本的に女神様が話しかけて来る時はろくな事にはならないが……まあ、参考資料の一つとして知っておくぐらいはいいかもしれない。
とりあえず、「参考にしますので、あくまでも、参考ですよ」と念押ししてから……ぽん、と頭に置かれた女神様の手より伝わるイメージを元に、えいやっと変身した。
ぽふん、と。
煙が立ち上り、千賀子の全身を覆い隠す……煙が晴れてから、千賀子は己の身体を見下ろし……げっ、と目を瞬かせた。
キトンの下が、先ほどに比べて明らかに膨らんでいる。
ぶっちゃけてしまえば、一回りも二回りも……ていうか、なんか両足の感覚が……ん?
なんとも表現し難い違和感に首を傾げた千賀子は、シュルシュルとキトンをまとめている紐を外して、ぺらりとめくった。
「──うわぁ!?」
直後、思わず千賀子は驚愕に声をあげた。
いったいどうして……それは、キトンの下にあった身体が一変していて、そこには……乳房が形成されていたからだ。
それも、一つや二つではない。
腰のくびれこそそのままだが、前後左右、まるでブドウのように乳房がいくつも形成されていて、なんとそれは下半身にも広がっていた。
ていうか、よく見たら両足が無い。
両足がくっついて一本の尻尾みたいになっていて、その棒からブドウのように乳房が実っている。ご丁寧に、全部に乳首が付いている。
有り体に言って、めちゃくちゃ気持ち悪い。本当に、自分の身体なのに、思わず鳥肌が立ってしまうぐらいに。
こんなの、子どもどころか大人が見ても恐怖で震え上がっても致し方ない姿だ。
仮に千賀子が第三者として遭遇していたなら、問答無用に攻撃していたぐらいに精神的な嫌悪感を掻き立てる姿をしていた。
「うわぁ……え、なにこれ、本体の私でもこんなに気持ち悪い姿になれるのね」
分身の感性でも同様の意見みたいで、心底気味悪そうな様子で乳房ブドウの一つを手に取って、たぽたぽと揉んだ。
「……一つ、分かった事があるわ」
「なに?」
「たぶん、これらのおっぱいの一つ一つに感覚がある」
「は、マジ?」
「マジよ、あんた今は腰のあたりのおっぱいを揉んでいるようだけど、なんだろう……普通におっぱい揉まれている感触がする」
「えぇ……腰のあたりのおっぱいって、なによ?」
「自分でも意味が分からないけど、腰のおっぱいが揉まれて──乳首を絶妙な力加減で抓むな!」
「おぉ、本当に神経が通っているのか……」
とりあえず、見た目があまりにも気持ち悪すぎたので、元に戻る。いくらなんでも、これは特殊性癖を通り越してクリーチャーの領域だろう。
『──おや、お気に召さず? 意外と似合ってはいましたよ、仮装みたいで』
「これを仮装の一言で終わらせる女神様怖いよ……」
もう、金髪碧眼のムチムチπデカ天使で諦めるとして、次は……頭上に輝く
さすがに、これは変身の範疇ではないので千賀子自身では用意出来ない……ので、代わりにロボ子に用意してもらう。
……で、用意してもらったのは、イメージ通りに光り輝く天使の輪っか。
物質なので普通に触れるし、ほんのり暖かい。
強度は核の熱波を至近距離に受けてもビクともせず、マグマの中に入れても一切ダメージを負わない優れた輪っかである。
なお、反重力だとか何だとかで、スイッチONの状態だと千賀子の頭上からは離れないので、うっかり落として正体が露見……みたいな事にはならないとのことだ。
あと、翼も装着する。機械だけど、見た目は完全に生物のソレで、うっすら光り輝いてキレイである。
あと、とても肌触りが良くて、さわるとフカフカしている。ちなみに、リラックス効果のある音波とかが放たれているんだとか。
ちなみに、これも変身の範疇ではない。
改めて説明することだが、今やっている変身と、サラスヴァティなどになる『変身』は根本から違い、今やっている変身はあくまでも見た目を変える程度のこと。
『変身』の項目に翼が生えた天使があるのならばともかく、『変身』した姿はほとんど人型で……唯一、『ククノチ』は髪の毛が枝葉みたいになるという違いがあるぐらいだろうか。
とにかく、だ。
これで、準備が整ったと判断した千賀子は、翼をはためかせて──ワープし、かの地へと向かったのであった。
……。
……。
…………チェルノブイリに近い場所にある町、『プリピャチ』。
千賀子の前世の世界(現代)においてもなお、政府の許可がないと一切の立ち入りが禁止されている、警戒区域である。
それは今生の世界においても変わらず、1986年のこの時でも、前世の世界と同じセリフを政府より受けた住民たちは、指示に従って避難していた。
そのセリフとは、『少々避難してもらいますが、時期が来たら戻れますよ』、というもの。
当然ながら、政府は初めから戻させるつもりはなかった。
まだまだ原子力に関して研究段階ではあったのだけど、それでも、今回の事故は1年や2年……いや、少なくとも住民たちが存命のうちに戻るのは不可能だと理解していた。
しかし、政府はそれをプリピャチの人たちには伝えなかった。
それを通じて政府批判に動かれるのは面倒だし、どう足掻いても戻れば待っているのは確実な死、それだけだったからだ。
……だからこそ、だ。
プリピャチの人たち……その中でも老人に該当する者たちが、夜の闇に紛れたり、監視の目を掻い潜って、生まれ育った場所へ戻ろうとするのを……大半は止めなかった。
口封じではない。むしろ、哀れみの気持ちが大きかった。
事情を知らない者たちからしたら、もう老い先短い者たちの最後の願いとして受け入れ。
事情を知る者たちからしたら、戻らなくても既に影響を受けている以上は、好きにさせてやるべきだろうという慈悲が大きかった。
もちろん、全員が全員、直ちに死ぬわけではない。年齢的に、高齢者の方が影響を受けにくい面はあった。
様々な条件によって放射線量が低い場所もあるわけで、そういう場所にある村では、ただちに命を落とす……なんて者は少数であった。
けれども、禁止区画に指定された場所に住むということは、政府からの援助も減るわけで……その暮らしは、けして以前のようには戻れないわけであった。
……そんな、ある日の事だ。
基本的に影響を受けにくいとはいえ、まったく受けないわけではない。そして、暮らしが急激に変化したことで、様々な不調が表に出てくる。
同じ老人とはいっても、身体の状態は様々で。
若者には負けないと言わんばかりに元気はつらつな者もいれば、杖をついて日常生活を送っている者もいたわけで。
元々身体を悪くしていた人の中には、それが悪化して……ということもあり、ベッドから出られない人が増え始めていた。
そして、それは村に戻らなかった人たちも同じだ。
なにせ、家も仕事も何もかもを置いてきたのだ。急激な変化に傷ついたりうつ病を発症する者はいて、けして穏やかに避難が続いているわけではなかった。
……。
……。
…………そんな中で、その村では……いや、その村に限らず、人々の中で、とある噂が広まり始めていた。
それは、皆が寝静まった夜に起きる。
急激な生活の変化や、持病などの悪化によって発生した苦痛によってうまく眠れず、痛み止めも効果が無かった……その時だ。
──天使がやってくる、という噂だ。
天使の姿は、不思議と誰もうまくは覚えていない。だが、誰もが口を揃えて、見たこともないほどに美しい天使だと称えた。
その天使は、言葉を発しなかった。
ただ、苦しみ意識がもうろうとしている者の頭に手を当てる。すると、スーッと身体から苦痛が和らぐのだという。
他にも、暮らしが一変して泣いている子どもの傍に現れて、頭を撫でてもらったとか。
昨日まで何も無かった場所に大木が生えていて、見事と誰もが思うぐらいに立派なリンゴが実って……といった具合に。
誰もが……その姿を正確には思い出せなかったけれども。
──天使様が、慈悲を施してくださった。
誰もが、その奇跡を実感し……涙を浮かべ、十字を切るのであった。