ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
──中二病。
今はまだ生まれていないその言葉だが、その言葉の意味は……まあ、よくある思春期特有の全能感だ。
自分にはまだ秘められたナニカがある、自分には目覚めていないナニカがある、と。
別に、大それた事ではないのだ。
大人から見たらバカバカしい事でも、空想的なモノが本当に実在していると本気で信じて行動してしまう。
それ自体は、だいたいの思春期少年少女にとっての通過儀礼であり、いつかは折り合いを付けたり、覚めたりしてしまう……そういうモノである。
仮に……そう、仮に、だ。
空想的なモノが、実在したとして。
心のどこかで当人すら自覚出来ていない、『おばけなんてないさ』な気持ちが壊され、空想が本物だと思い知らされた時……その時の反応は、そう違いは無い。
一つは、歓喜して喜ぶ場合。
そして、もう一つは……『そんなわけがあるか』と、直前まで信じていたのに否定してしまう場合だ。
だからこそ、思春期の取り扱いというのはとても難しく、千賀子もうかつに手が出せないまま様子見するしかない状況が続いていた
「──ゆえに、我らが打って出るべきだと思うのだよ」
そう、『トイレの花子さん』と『ヒバゴン』に宣言をした河童は……まず、冷水にてきっちり身を清めた。
いったいどうして……それは、敬意であった。
思春期真っただ中の少年少女は、とにかく傷つきやすく、熱しやすく、覚めやすく、それでいて誰かを傷つけやすい。
そのため、河童は身を清めるのだ。身だしなみの乱れは心の乱れ、心が乱れるとそれが表に現れる。
だいたいにして、心の乱れと表の乱れはセットだ。
だから、表面上でも身ぎれいにすれば、いくらかそれが心をもきれいにしてくれる。ゆえに、河童は表を綺麗にして、きれいにした心で挑むのだ。
そして──身ぎれいにした後は、粗塩を肌に擦り込んで水で洗い流すことで、穢れを落とす。
穢れと汚れは少し違う。
河童にとって、塩は苦痛である。
それゆえに、塩を肌に擦り込むということは、それだけの敬意の証でもある。
それから……たっぷりと、オイルを身体に塗る。
清めた体に、清めたオイルは実に合う。それは正しくオスとオスの番のように、河童の全身を光り輝かせた。
準備が終われば、ポージングを取る。
ポージングもまた、大事な儀式である。
その歴史は古く、一説によると荒れ狂うスサノオが起こした荒らしを鎮めるために、河童たちが命を賭して舞った動きが始まりとも言われている(諸説あり)。
ゆえに、ポージングを取る河童の邪魔をしてはいけないという不文律がUMA界隈には存在していた。
まあ、無くても唐突に身体にオイルを塗ってポーズを構える河童の姿が怖すぎて、よほど胆の据わったUMAでなければ力寄らないだけなのだが……で、だ。
「──今の私は河童ではない。そう、今の私は……花の妖精である! いざ、参る!!」
すべての準備を終えた河童の身体は、うっすらと光っていた。あと、オイルでぬめっていた。
そして、その言葉と共に、河童は──エマの通学路にて待ち構えるのであった。
……。
……。
…………結果、どうなったのかと言うと。
「ら、らめれひは(だ、ダメでした)」
「oh……」
河童とエマが接触するよりも前に、異常を察知した千賀子の手でタコ殴りにされてしまい、顔面をこれでもかと腫らしただけに終わった。
これには、遠くから見守っていた花子もドン引きである。ヒバゴンは憐れむように両手を合わせていた。
なんとも酷い話だが、こればかりは河童の方に非があり過ぎたので、致し方ない話ではあった。
冷静に考えて、全身オイルまみれの筋肉隆々の、ちょっと生臭さを放つ全身緑色のカッパがポージングしながら近付いてきたら、どう思うだろうか。
エマが相手でなくとも、恐怖と困惑でトラウマ不可避である。大の男ですら思わず泣き叫んでもおかしくない恐怖だ。
それゆえに、千賀子のタコ殴りも問答無用であった。けっこう怒っていた。
これには女神様も動いたのだけど、『──(=^ω^=)ナンカコイツイヤ』と珍しく拒否反応を示したし……見方を変えれば、女神様すらもちょっと引いちゃう……話を戻そう。
「……仕方がない、ここは私が打って出ましょう」
河童の不甲斐ない結果に気を引き締めた花子さんは、準備を始める。
さすがに、UMA河童のようなポージングは取らない。だが、大切な儀式はある。
それは、心身を清めるということ。似ているが、違う。やり方が、エレガントだ。
しっかりと入浴を澄ませ、頭の先端から足の指先まで、徹底的に磨き上げる。集まった花子さんたちの手を借りて、徹底的に洗い上げる。
ムダ毛も抜いていく。一本も残さない。目視にてキッチリ確認し、その目は職人のソレだ。
それが終われば、オイルを塗る。だが、河童が使うソレとは違う、淡い色合いの花を思わせる、優しい香りだ。
濃すぎない、薄すぎない。
肌に塗るのと、髪に塗るのは別のモノを使用する。現在の気温、季節にも合わせて、程よく揮発する種類で合わせる。
合わせて、全身のストレッチを行う。
ポージングとは方向性が少し違い、あちらが筋肉を隆起させて力を示すのであれば、こちらは全身のしなやかさを示す。
180度ペタッと胸が床に付く程度ではなく、胸を逸らして180度近くクニャッと曲げても平気なほどの柔軟性、それは美しさ。
当然ながら、歯磨きもキッチリ行い、粘膜も洗い……そして、こういう時のために用意した、スケスケセクシーな下着に足をピタッとキメると。
「──いざ、桶狭間へ」
大人の玩具や潤滑剤やら何やらをぎっしり詰め込んだカゴを片手に、花子さんは──エマを待ち構えるのであった。
……。
……。
…………結果、どうなったのかと言うと。
「ら、らめれひは(だ、ダメでした)」
「うが……」
花子さんとエマが接触するよりも前に、異常を察知した千賀子の手でタコ殴りにされてしまい、顔面をこれでもかと腫らしただけに終わった。
これには、遠くから見守っていたヒバゴンもドン引きである。憐れむように首を横に振っていた。
なんとも酷い話だが、こればかりは花子さんの方に非があり過ぎたので、致し方ない話ではあった。
冷静に考えて、見た目は別として、『ただいまSE〇相手を狙っています』みたいな出で立ちで、どこから見ても痴女にしか見えない者が近付いてきたら、どう思うだろうか。
エマが相手でなくとも、恐怖と困惑でトラウマ不可避である。男だって、ラッキーとか考えるよりも前に警戒心が出て当たり前。
ましてや、エマは同性であり、そっちの気はないわけで。
それゆえに、千賀子のタコ殴りも問答無用であった。けっこう怒っていた。
千賀子はけっこう男女平等なところがある。
男から女にやると問題ならば、女から女にやる分は問題なかろうと言わんばかりの鉄拳制裁である。
前回の河童の事で『こいつら、最近大人しくしていたかと思ったら……』的な苛立ちもあって、手加減は河童同様無用な扱いにされてしまったのである。
これには女神様も動いたのだけど、『──(=^ω^=)コイツモイヤ』と珍しく拒否反応を示したし……見方を変えれば、女神様すらもちょっと引いちゃう……話を戻そう。
「……うが、うがが、うが(こうなれば、我が出るしかない)」
河童と花子さんの不甲斐ない結果に気を引き締めたヒバゴンは、準備を始め──ることは、出来なかった。
「──おい」
「うが(あっ)」
そうするよりも前に、不穏な気配を察知した千賀子が──ヒバゴンをぶん殴ったからであった。
いやいや、いくらなんでもまだ何もしていないのに……と、思われるかもしれないが、忘れてはいけない。
千賀子は普段読まないようにしているが、他者の胸中を読める。そして、呼んだからこそ、これからヒバゴンが行おうとしている事にキレて、先手を打っただけのことだ。
まあ、それでも、まだ何もしていないのは事実なわけで。
ある意味、一番かわいそうなのは……この場においては、ヒバゴン──あ、いや、違うか。
未遂に終わってはいるけど、エマが一番の被害者(予定)なので……仕方がないと言えば、仕方がない結末であった。