ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
さすがに、河童、花子さん、ヒバゴンと来たので色々と察した千賀子は、例の3人組を集めて問い質した。
「──水臭いですぞ、千賀子殿!」
「──そうよ、私たち、仲間じゃない」
「──うが(手を貸そう)」
するとまあ、千賀子は知らなかったけれども、エマの中二病を把握していたようで、どうやらこいつらはこいつらなりに解決しようと動いていたらしく。
「…………(心底嫌そうな顔)」
冒頭の発言に繋がったわけなのだが……まあ、案の定という言い方は少し違うが、千賀子は心底嫌そうな顔で返答した。
これに関しては、千賀子の反応が失礼……というわけでもない。
当人たちに悪気が無いのだけど、このUMAたち3人は、本当に悪気は無いのだろうけど、いちいちやる事が逆効果過ぎるのだ。
なにせ、女神様の奇行にもある程度順応している千賀子ですら、けっこうな頻度でドン引きする生体なのだ、こいつらは。
──たとえば、河童。
普段の見た目は、妖怪の河童に似ている。手足が人間のように長く、頭に皿があって背中に甲羅があるけど、だいたい河童だ。
ただ、違う点がけっこうある。
どういう進化を遂げてそうなったのかは知らないけど、『女』に対して絶望的なまでの虚弱性を持っていて、近くに女がいるだけで弱ってしまうところだ。
それなのに、『男』に対してはほぼ無敵な性質を持っていて、隙あればボーイとボーイの熱い友情(意味深)に対して一人一派なみにこだわりを持っていて、なんかしょっちゅう言い争っている。
また、耐久性も意味不明だ。
常人なら半年は病院への入院コースですら、なんかボーイを見た途端ものすごいスピードで傷が治っていくし、なんなら相撲を取り合うだけで勝手に回復してゆく。
まるで意味が分からないけど、こいつもしかしたら宇宙空間でも生き残れるのではと千賀子が思うくらい、妙にしぶといやつなのだ。
次に、トイレの花子さん。
こいつの場合、見た目は普通の幼い女の子だ。小学生たちに紛れても、なんら不自然さはない。
まあ、あえて不自然な点を挙げるならば、着ている服装が白いワイシャツに赤いスカート、ずり落ちないようサスペンダーで留めているといった見た目くらいだろう。
しかし、こいつも立派なUMA……具体的に、こいつ……女子トイレがあるところより無限に出現すると言っても過言ではない。
それでいて、こいつら……サイコキネシスに似た力を使えるようで、数が集まれば集まるほど、飛躍的にその力を増してゆくのである。
つまり、1体1体倒していってもすぐに復活してまるで意味がないわけで……あと、こいつら意識や記憶が共有されている。
だから、1体でも不遜な態度を取ると、それがすべての『花子さん』に共有されてしまう……おお、恐ろしい。
あと、これは千賀子の推測なのだけど……たぶん、こいつらは群体みたいな存在なのだろう……と、千賀子は思っている。
おそらく、肉体は仮初めの姿であり、本質はエネルギー生命体なのでは……で、だ。
最後に、ヒバゴンだが……こいつはもう、語る必要はないだろう。
なにせ、なんか勝手に満足して死んだかと思ったら、どこからともなく追加で出現してくるし……ぶっちゃけ、見分けが付かない。
哺乳類的なアレなのか、卵生的なアレなのか、それとも別の……ある意味、一番UMAらしいと言えば、らしい存在であった。
(こいつら関わると、ぜったいろくな結果にならないんだよなあ……)
結論を先に言うなれば、それである。
こいつら3人に悪気はない。
出会った当初は悪気が多々あったけど、千賀子がガチ殴りしたおかげで色々と素直になって、今ではあの頃の尖った気配は無くなっていた。
しかし、丸くなったとはいえ、やる事なす事がプラスに働くかと言えば、そういうわけではなく……まあ、うん。
「あんたら、エマの教育に悪いからおとなしくしておいてほしいのだけど……」
「ぐはぁ、ありのままのトゲが痛い……!!!」
正直に伝えれば、河童が胸を押さえてしまった。
もう少し言い方を変えれば良かったかなと思ったけど、半端に取り繕ったところで、実際に教育に悪いから……っと。
「いや、でも、実際のところどうするのよ。私たちのやり方が不味かったってのは分かったけど、なにか妙案でもあるの?」
「……前向きに検討中です」
「えぇ……それ、何も出来ていませんって意味の言葉じゃなかった?」
「止めて、花子……その言葉は私にはよく効く……」
そんな感じで上から構えていたら、斜め下からのアッパーを上手い具合に叩き込まれてしまった千賀子は、声を震わせ視線を逸らした。
そう、これまた実際のところ、この話がグダグダと長引いているのは、千賀子がモチモチもちゃもちゃと手をこまねいているせいである。
本当に夢から覚ませようと思うなら、いくらでも方法が……なので、だ。
「ふむ、とりあえず、河童の精霊として挨拶してきましょうか?」
「止めろ、どう足掻いてもトラウマ不可避でしょうが」
「そうでしょうか? オイルをたっぷり塗って、愛嬌があるとは思いませんか?」
「えぇ……(絶句)」
名案だと言わんばかりに手を挙げる河童に、千賀子は軽く睨みつけた。
客観的に考えて、だ。
オイルをたっぷり塗ったら愛嬌が増すと思っているやつを思春期真っただ中の女子高生には出すのは、あまりにも悪い意味で刺激が強すぎるというものだ。
同様に、花子さんもまたヤバい。
なにせ、こいつは変態だ。
隙あらば同性の道に引きずり込もうとする。出会った当初のこいつのストライクゾーンはかなり狭かったと思うが、いつの間にか幅が広がっていたようで油断ならない。
個人的に、性癖は同じ性癖を抱えている者同士でやれという話であり、間違ってもその気が無い誰かを無理やり開花させようとするな……というのが千賀子の意見である。
いや、まあ、仮にエマが同性愛者だったとしても、こいつは止めとけと止めには入るが……で、だ。
ヒバゴンはヒバゴンで、くそヤバい。
こいつ事態はエマの肉体に関しては無害だけど、性癖が……その、刺激的過ぎるというか、マニアック過ぎてダメージがあり過ぎる。
前世の記憶がまだまだ根強かったのと、幼い時から『ガチャ』のおかげで散々な目にあってきたからこそ、千賀子は鼻で笑って受け流せるようにはなっているが。
とてもではないが、エマにそれは出来ない……というか、体験させちゃ駄目だなと思った。
「じゃあ、どうするのよ?」
「それは、その……状況に応じて高度な柔軟性を保ちつつ、臨機応変にだな……」
「つまり、その場限りでなあなあで場を流すってことじゃないの」
「──ふふ、酷い言われようだ……事実だからしょうがないけど」
いったい、何度目のループになるのか。
自分の事になるとさっさと動いて時には拳で解決する女なのに、娘のことになるとてんでダメ……やる事なす事、あまりにも慎重すぎてお話にならない。
これで、『娘のためになんとか手を貸して!』と縋ってくるのだから、なんとも面倒くさいというか、何というか……とにかく、だ。
「埒が明かないし、もうこのまま放置して当人が手痛い目に遭うまで静観したら?」
「なんだぁ、てめえ……!!」
「いや、しかし、アレもダメ、コレもダメ、それでは如何様にも手が出せませぬぞ。せめて、千賀子殿が手本の一つも見せてもらわなければ、我々もどうしたら良いのか分かりませぬ」
「むむむ!」
花子さんと河童から、ついに真っ向から言われてしまった千賀子は……宣言した。
「明日……いや、明後日……明後日には、結論を出すから!」
「マスター……そこはせめて、今日中にしましょうよ」
これまで陰に隠れて沈黙を保っていたロボ子にまで言われた千賀子は、あからさまに聞こえないフリをしたのであった。
……。
……。
…………だが、しかし。
千賀子は、本当に油断していた。
千賀子は、ある程度未来視が出来る。
さすがに万物の未来を読み解くわけではなく、新聞の一面を飾るような大きな事件や事故くらいだけど、察知することが出来る。
言い換えれば、細やかな未来を読み取ろうと思ったら、そいつの眼前に立って、きっちり集中しなければならないわけで。
遠く離れた場所に居る見知らぬ誰かの未来を読み取れと言われても、千賀子には出来ないわけで。
──前置きはここまでにして、結論から言わせてもらうならば、だ。
「あ、あの~」
「……なに? あれ、私に気付けた?」
「え?」
「ううん、こっちの話。それで、何か用?」
「いや、なんか目が虚ろだし、ジュースが手から落ちても反応しないし、なんか背骨が抜けたってくらい力が抜けていそうで……」
「……ああ、ちょっと、モーターボート記念で素寒貧になっちゃって……お金帰って来ないかなあ~って考えていただけ……」
「ば、博打は良くないよ……」
「そうだよね、ふふふ……(グギュルルルル)」
「…………」
「なんで、私はアレに賭けちゃったんだろうなあ……(グギュゴゴゴ)」
「……あ、あの」
「ん?」
「お腹空いているなら、ちょっと行ったところにたい焼きの屋台があるから、おひとつ奢りますよ」
「あなたが、神か……!!」
エマは、とある人物(?)と接触していたのであった。
いったい、誰と接触していたのか……それはまだ、千賀子が知る由もない話であった。