ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
場所は、『神社』。それも、月にある『神社』だ。
東京の家ではエマたちがいるので、万が一にも絶対に誰の邪魔も入らない場所として、月の神社を選んだ。
──で、だ。
結論から言おう、女神様を倒すのは不可能である。
理由はいくつかあるが、まず、女神様には『死』という概念が存在しない。と、同時に、『生』という概念も無い。
つまり、だ。
仮に千賀子の『巫女的パワー』が通じたとしても、意味が無い。
女神様に怪我を負わせても、女神様にとってそれは怪我でも何でもないからで、怪我を負っているように見せかけるだけ。
おそらく、女神様には痛みが存在しない。これが痛みであると体感はするが、それは女神様そのものにはなんの影響も与えない。
また、女神様には肉体という概念も存在しない。
つまり、だ。
先述したように、肉体的なダメージはまったく意味が無い。
如何様にも増やせるし、かようにも出現させられるし、如何様にも形を変えられるからだ。
今の姿は、あくまでも千賀子が視認できる状態にしているだけで、本来の姿ですらないのだ。
そして、女神様は……千賀子の力の完全上位互換である。
なにせ、千賀子の『力』の本質は女神様由来。
そして、『恐怖の大王』である彼女の力も、結局のところは女神様の足元にも及ばない。
文字通り、出力の桁が違うのだ。
千賀子の全力は、女神様にとっては子猫の爪無しパンチでしかなくて……それでいて、回復力も桁違い。
千賀子が1回復する間に、女神様は億単位で回復する。
いや、そもそも、回復という概念が存在するのか……それすら疑わしい、絶対的な神様なのである。
……。
……。
…………とりあえずは、だ。
「女神様、ちょっと本気で殴るので屈んでください」
『──(=^ω^=)ハイドウゾ』
持っている力の全てを込めて、女神様の頬(?)を思いっきり殴り飛ばした。
常人ならば、粉々に砕ける破壊力。
戦車ですら拳大の穴が生まれるほどの威力で、女神様の顔もぐちゃりと形を変えた。血飛沫っぽいナニカが、辺りに散らばった。
でも、女神様は欠片も堪えた様子が無い。
それどころか、砕けてめちゃくちゃになったソコが蠢いたかと思えば、『ああ、なんて愛らしい、もっとよく見せて』と、肉の蠢きと共にそんな声が発せられた。
なので、踵落としをそこへ叩き込む。言うなれば、傷口への渾身の一撃。
物理法則を無視した挙動、物理現象を超越した加速、瞬時に音速へと達したその一撃は、脳天より下腹部のあたりにまで踵が食い込んだ。
しかし……女神様はまるで堪えていなかった。
それどころか、体内に食い込んだ千賀子の足を愛おしそうに……いや、実際、愛おしいのだろう。
おびただしい数の小さな手が、まるで千賀子の足を抱え込むかのように飲み込み……いや、そんな生易しい反応ではなかった。
『──(=^ω^=)ペロペロペロペロ』
「──うっひぃ!? きっしょくわるいぃ!!!」
『──(=^ω^=)イトオシイ、コンナニカワイイアシガアルダナンテ』
「…………(堪らず、絶句)」
体内に食い込んだ部分全てがペロペロと舐められる感触。あまりのおぞましい感触に、千賀子は全身より鳥肌を立てた。
いったい何が起こっているのか……考えるまでもなく、体内に生じた小さな舌でペロペロしまくっているだけである。
この女神様、傷を治すとかよりも、体内に食い込んだ千賀子の足をペロペロすることに全力であった。
これの何が恐ろしいって、女神様の中では、だ。
千賀子が本気で自分を仕留めに掛かってきていると理解しているのに、そこまで私の事を想っているなんて……か、カワイイ!
と、本気で思っているということだ。
なんなら、自分のためにカワイイおみ足をペロペロさせてくれる愛し子は、なんて可愛くて愛らしくて良い子なのかしらと感動すらしていた。
そう、これこそが女神様である。そして、これが女神様の平常運転でもあった。
……ちなみに、だ。
この攻撃すら、女神様の防御を貫通したというわけではない。
単純に、女神様は千賀子の攻撃が体内にまで食い込む感触を楽しんでいるだけなのだ。
かつて本気でブチ切れて女神様をタコ殴りした時ですら、泣きわめく千賀子が愛おし過ぎるあまりされるがままにしていたくらいで……なお。
あくまでも、女神様に外傷を負わせられるのは千賀子だけである。
千賀子の皮を被っている恐怖の大王は、あくまでも愛し子である千賀子に似せたそっくりさん的な扱いなので、どう頑張ってもノーダメージである。
でも、女神様的には『愛し子の匂いがしますね』みたいな感じでだいぶ対応が甘々なのが、せめてもの救い……か?
で、話を戻すのだけど。
精神的ショックへの耐性が出来ているけど、それでも気色悪さに鳥肌を立てた千賀子は……なんとか、足を抜き取る。
その瞬間、名残惜しむように手や舌が、穴が開いたそこからにゅるにゅると伸びたが……直後、傷は完全に塞がっていた。
『──(=^ω^=)アマエルノ、カワイイ』
「今ので、その反応なんだ……」
千賀子の背後より一連の動きを観察していた彼女は、女神様のあまりのデタラメっぷりにそれ以上の言葉が出てこなかった。
いちおう、千賀子の皮を被ったことで、千賀子の記憶を引き継いではいるのだけど……それでも、実際に体感するのと、データとして知るのとでは、全然違っていた。
頭で理解していた以上の、女神様のおぞましさ。
実際にコレと戦わなければならないと思考を切り替えて向き合ってみれば、コレがどれほど反則的な存在なのかが嫌でも思い知らされる。
実際、女神様に勝てるビジョンを、彼女は欠片も想像出来なかった。
千賀子の皮を被っているので消滅させられたりはしないだろうけど、それは相手にされないだけで、動きを止めることすら不可能だ。
当然ながら、千賀子と彼女でダメならば、他の者たちはもっとダメである。
ロボ子の科学力でもそうだし、分身たちでも無理。なんなら、愛し子との戯れを妨害したとして一瞬で消滅させられそうな気配がする。
というか、ぜったいする。だから、今回はそういった助力は一切得られないと思っていい。
つまり、この戦いにおいては……千賀子と、せいぜいサポート役が限度の恐怖の大王、この二人に世界の命運が託されたわけである。
……。
……。
…………そして、だ。
それは彼女よりも、よほど女神様のヤバさを体感してきた千賀子は……生み出した水で足を洗ってから、女神様に宣言した。
「作戦タイム!」
『──(=^ω^=)ミトメマショウ』
そう、まずは作戦タイム……難攻不落(誇張抜き)の女神様をどう攻略するか、それを考える必要があった。
……とはいえ、だ。
物理的な攻撃では倒せず、神通力の類は女神様由来なので効果が皆無、それでいて、千賀子は女神様以外の……そう、神と呼べる存在の力を借りることは出来ない。
なんでかって、女神様がガチな嫉妬を見せるからだ。
それに、とてもではないが、女神様に通用するレベルの神に心当たりなどなかった。
同様に、悪魔とかそういう類はもっと意味が無い。
なにせ、悪魔以上に悪魔らしい女神様に対して、女神様以上の悪魔が存在するのか……これもまた、千賀子には皆目見当もつかなかった。
では、どうするか……そう、初っ端から暗礁に乗り上げようとしていた、その時であった。
『……あのう、先輩? さすがに大人げなさすぎるので、もう少し加減してあげたらいいんじゃないでしょうか?』
その言葉と共に、ひょっこり姿を見せたのは……何時ぞやの、女神様が後輩と呼んでいた、あのお姉さん(女神?)であった。
いったいどこから……そこを知る意味はない。なにせ、女神様の同類であり、後輩だから。
違うのは、女神様よりもよほど人間に感性が近く、このお姉さんの助言によって気持ちを切り替えることが出来た……千賀子にとって、恩のある相手であった。
だからこその、天啓。
ぶっちゃけ、女神様以上に女神様に思った千賀子は悪く兄だろう。それくらい、見事なタイミングだったのだから。
ちなみに、後輩女神の見た目は女神様とは違い、カワイイ系の女性であった。不思議な事に、誰が見てもカワイイ判定が下される可愛さだ。
『──(=^ω^=)え、なんで?』
『いや、だから、大人げなさ過ぎですってば。どう足掻いても勝ち目0なんですから、ルールを設けましょうよ』
『──(=^ω^=)必要ありません、帰れ』
『先輩……嫉妬深いにも程があるっすよ』
『──(=^ω^=)それが先輩に対する物言いですか?』
『痛いです、ほっぺを引っ張らないで』
そして、女神様は後輩女神に対しては態度がフランクというか、普段の気色悪さがいくらか緩む……まあ、うん。
おそらく、千賀子が頼りにするから嫉妬しているのだろう。
千賀子からしたら、色々と言いたいことがあるのだけど……まあ、その話は置いといて、だ。
実際のところ、後輩女神の言うとおり、何かしらのルールを設けなければ勝ち目は0です。
限りなく0に近いなんて生易しい話ではなく、どう足掻いても、どんな奇跡が起きようとも、0で確定した状態である。
なので、どうにか落としどころが欲しいというのは、千賀子としても大賛成であった。
……。
……。
…………そうして、なにやら女神様と後輩女神さんが、あーでもない、こーでもない、そんな感じで話し合う。
その姿を、千賀子と彼女は固唾を飲んで見つめる。
つい先日まで人類を滅ぼそうとしていたっぽい彼女と、それを食い止めようと長年に渡って戦い続けた千賀子。
この二人が並んで結果を見つめている。
客観的に考えたら、なんか熱い展開に思えるかもしれないけど、ラスボスが本当にラスボスなので、二人とも気にしていなかった。
ていうか、彼女曰く。
なんかもうやる気無くなったので……とのことで。まあ、正確には、気にしている余裕が無かったのだけれども。
『──(=^ω^=)ナルホド、ワカリマシタ』
『ああ……ごめん、落としどころがコレくらいしかなかった』
そうして、何やら後輩女神さんの申し訳なさそうな様子に、一抹の不安を覚えた千賀子に。
『秋山千賀子』
「は、はい」
『女神様を尊死させなさい。死なないけど、それを勝利条件にしました』
「私にどうしろと?」
後輩女神さんは、そう千賀子に告げたので、千賀子はガバッと巫女服の胸元を広げて谷間を見せつけた。
『──(=^ω^=)ヒュ~、カワイイ!!』
「あの、どうやって?」
続けて、千賀子は裾をあげて、チラリと生足を見せつけた。
『──(=^ω^=)ヒュ~、カワイイ!!』
「……あの?」
縋るように後輩女神に視線を向けた千賀子だけれども。
『……私にも、分からない事はあるのよ』
生暖かい目を向けられてしまったのであった。