ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話 作:葛城
──女神様を尊死させるとなれば、どうすれば良いのだろうか?
そんな疑念が二人の脳裏を過ったが、それに合わせて、二人のお腹がぐ~っと鳴った。
お腹が空いたし、宇宙空間は静かでだんだん気が滅入ってくるので、いったん地上の『神社』へと戻り……ご飯を食べてから、再開。
とにかく、女神様を尊さのあまり死んだと思わせるくらいに感情を揺さぶれば……という話で、ひとまず終わったのだけど。
じゃあ、どうやってそこまで揺さぶれば良いのでは、という話である。
だって、何もしていないのに勝手に涙ぐんで、勝手に存在しない乳房が疼いて母乳が出るとか騒いで、愛し子のせいで陣痛が……とか騒ぎ出すのである。
言っておくが、大げさに言っているわけではない。本当に、千賀子からしたら何もしていないのだ。
なにせ、千賀子がいつものように朝食を取れば、だ。
『──う、うう、愛し子が白米を噛んでいる……ああ、なんでそんなに可愛いの!? (涙ぽろぽろ)』
なんか襖の向こうでそんな声が聞こえるとともに、大量の腕が蠢いて原形が無くなっていたかと思えば。
『──そ、そんな、足を組み替えた──せ、セクシー! こんなの目に毒だわ、さあ、私の目に入ってきて! (恍惚の笑み)』
なんか唐突に変な事をわめいたかと思ったら、蠢いた顔の手の向こうから、蠢く真っ黒な眼孔が脈動していたり。
『──はわわわ、愛し子が排泄している……黄色いわ! ああ、なんて元気な……生まれてきてくれてありがとう!』
覗くどころか、もはや『覗く』という言葉を知らないのではないかといった勢いで、堂々と真正面から眺めてきたり。
情緒不安定とかそれ以前に、そもそも、こいつの情緒が安定している時が稀なのではってくらいの平常運転なのが……ゆえに、千賀子は宣言した。
「作戦タイム!」
『──(=^ω^=)ミトメマショウ』
今回は非常に機嫌良さそうだったので、こいつの余裕を引っぺがしてやるぞと意気込みつつ……千賀子は、分身たちも集め、彼女も参加させて……『千賀子会議』を開いた。
内容はまあ、わざわざ語るまでも無いだろう。
やった事は、情報共有も兼ねた話し合いであり、少しでも思いついたら……と、前置きをした後で。
「とりあえず、『魅力』を全力開放してみたら?」
分身たちから、そんな意見が出た。
その程度でどれほど効果があるのかと千賀子は疑問に思ったが、分身たちの意見をまとめると、だ。
曰く、『本体の私は、全力開放と思っていても無意識に加減している、相手を仕留めるつもりで本気で魅力を開放してみたらいい』とのことだ。
言われてみて、あまり否定できないな、と千賀子は思った。
なにせ、20歳くらいの時点で、常人相手なら強制射精を発生させてしまうレベルの魅力だったのだ。
例外中の例外である土師田ですら、耐えられつつも鼻血を吹いて影響が出てしまって……そして、現在。
おそらく、千賀子の生涯において『魅力』がピークを維持出来るのは、今が限界である。
そう、実は『魅力』と『巫女パワー』は別物。『巫女パワー』はまだまだ上昇してゆくだろうけど、『魅力』はそうではない。
肌のしっとり具合と、肌の艶やか具合と、肌の若々しさ。
肉体的な部分、この三つをピークの状態で保てられるのも、おそらく今が限度なのだ。
つまり……今を逃せば、長く見ても今年中がタイムリミットだろう……というのが、分身たちの意見であった。
「……冷静に考えたら、もうすぐ40歳というか、もう40歳? その年齢で20歳前後の女より肌がキレイで若々しさを保っているの、気色悪すぎじゃない?」
「ふふふ、分身から酷い事を言われる……まあ、事実だからしょうがないけど」
なお、分身たちの感想に、千賀子は本当に何も言えなかった。
実際、客観的に見たら、だ。
千賀子の若々しさは、誰が見ても異常なレベルである。
なにせ、シミ一つ無い。40歳にもなれば当たり前に出て来る小じわの類は一切なく、肌の弛みも無く、筋肉の衰えも無い。
むしろ、そこらへんのティーンエイジよりよほど見た目がキレイであり、逆にそれくらいの年代の子が老けて見えるくらいだ。
加えて、それは肌という見た目だけではなく、匂いにも表れる。
おおよそ成人を境に減少の一途を辿るとされている、若い女性特有の香りである『ラクトン』という成分が、常にピークを維持され続けているのだ。
しかも、その量も桁違いで……普通ならば濃厚過ぎて異臭に感じるところを、『ガチャ』による様々な恩恵によって、常に好ましい匂いとして受け入れられる状態にある。
つまり、見た目の若々しさ、匂いの若々しさ。
この二つが組み合わさることで、余計に千賀子は若々しく見られ……実際、服を脱げば相応の美しさが保たれている状態にあるわけで……そりゃあ、分身たちより気色悪いと称されても不思議ではなかった。
なお、もっとも勢いがあったのは18歳前後の時ではあるが……まあ、それはそれとして。
後先考えず、全力で己の『魅力』を抑え込んでいる枷を開放し……解き放つ。
それも、無意識化の加減を一切排除した状態での、正真正銘千賀子ですらどうなるか分からない全力開放。
正直、危険ではないか……とは、思う。
でも、攻撃ではどうにもならない以上、少しでも通じる可能性を模索しなくては始まらない……ので。
「……いきます」
場所は、再び月の神社へ。
万が一にも周辺に被害が及ばないようにと、合わせて、神社の四方に分身たちが構えて、『魅力』の影響を抑え込む。
ひとまず、これで……準備が終わったのを分身たちからの念話で確認した千賀子は……巫女服を脱いで裸になると──すべての枷を開放した。
──それは、第三者からすれば、とても地味な光景に見えただろう。
周囲は何一つ壊れていない。まあ、当たり前と言えば、当たり前だ。
だって、服を脱いだわけだし。『魅力』という不可思議なナニカが人知を超えているとはいえ、それで砲弾が防げるわけではない。
風が吹いたわけでもなく、ナニカが弾き飛ばされたわけでもないし、控えているロボ子も無表情のままだ。
ボケーっと、突っ立っている恐怖の大王もそのままだった。女神様は、なんか感動して震えていた。
そう、愛し子が急にカワイイポーズを取った、その尊さのあまりなんか全身が蠢いていた。
あれ、なんか効果が……いや、変化は起こっていたのだ。そこには……確かに、変化が起こっていた。
だが、それは……神社の中ではなかった。
まず、変化が起こった──というか、影響を受けたのは、月の裏側にある……ウサギ宇宙人たちの月面基地であった。
それは、千賀子はもちろん、分身たちも気付けなかった。何故ならば、完全に抑え込んでいると思っていたわけで。
まあ、ぶっちゃけてしまえば、普段から身体に染みついたモノだったがゆえに、気付けなかったのであった。
……。
……。
…………異変はまず、月面基地の出入り口……ゲートの開閉業務を担当していた兵士に起こった。
──う、うわぁぁぁあああああ!!??!?! (ドピュドピュドリュリュリュリュ!!!!!!)
それは、突然の事であった。
ウサギ兵士は、直前まで何も起こっていなかった。前日のチェックもパスして、健康状態は正常を保っていた、はずだった。
それなのに、そのウサギ兵士は突然射精した。
しかも、ただの射精ではない。
素人の目から見ても尋常ではない量、命の危険を察知してしまうかのような、恐ろしい勢いの射精であった。
射精する直前、なにか……そう、言葉には出来ない、とても甘くて、暖かくて、なんだかムズムズする匂いをどこからともなく嗅いだ直後、ソレが始まっていた。
──おい、いったいどう──うぉおあああああ!!?!??! (ドピュドピュドリュリュリュリュ!!!!!!)
そして、その異変は同じ部屋に居た別のウサギ兵士にも起こった。
それも、一人や二人ではない。
室内に居た全員が、ほとんど間を置かずに突然射精、室内は一瞬にして独特の臭いが充満した。
……でも、異変はそこでは終わらなかった。
──どうした、悲鳴が聞こ──ああああああ!??!?! (ドピュドピュドリュリュリュリュ!!!!!!)
部屋の外、通路に居たウサギ兵士たちが、下腹部を粘液で汚しながら気絶してゆく。
それは、性別オスに限った話ではなかった。
性別メスもまた、突然発情からの超激烈脳内物質異常によって気絶、失禁のダブルコンボが発生していたのだ。
誰も彼も、いったい何が起こったのか理解する前に気絶していった。全ての計器が何一つ反応しない、未知の異変であった。
……。
……。
…………そして、それは宇宙空間を飛び越えて、地球にも起こっていた。
ただ、一般人のほとんどは気付けなかった。
気付けたのは、ごく一部の……そう、各国の、いわゆる指導者、あるいは首相、世界規模の大企業のトップ、あるいは……厳しい修行を重ねて勘を研ぎ澄ませた者たちだけであった。
彼らは、彼女らは、反射的に頭上を見上げた。
──理由は、分からない。根拠だって、無い。
ただ、それでも、彼ら彼女らは反射的に……察したのだ。
──今、何かが……とんでもなくどエロイやつが、現れたのだと。世界のエロイやつランキングが、自動的に一つ下がったのだと。
そして、それは奇しくも。
2月11日……そう、建国記念日であった。