ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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※ 女神様注意報





第311話: ギリギリ、後ろも間に合わなかった模様

 

 

 

 ──結論から言おう、尊厳は破壊された。

 

 

 差し迫るタイムリミット、一瞬の気のゆるみが大決壊を引き起こしてしまう焦燥感──ていうか、ちょっと漏れている最中。

 

 驚異的な集中力によって、なんと『パロパロディ ~イカは銀河を救う~』を2時間強でクリアを果たした。

 

 これには、恐怖の大王である彼女もビックリだ。正直、パロパロディをプレイしている最中で一度決壊すると思っていた。

 

 だが、千賀子はやった、やり遂げた。

 

 ちょっと漏れてオムツの中が黄色くなっていたけど、それでも真っ青な顔に大量の冷や汗を浮かべた千賀子は、続けて2本目のゲームソフトへと手を掛けた。

 

 

 ……千賀子は、知らなかった。

 

 

 パロパロディは、とても難易度の高いゲームである。

 

 この頃のゲームは容量の関係から、そこまで複雑かつ長いゲームを作れなかったのだ。

 

 特に、家庭用ゲームはアーケード版よりも小型化する必要があったため、さらに容量が少なかった。

 

 それがどれくらいって、初期の頃に作られたファミコンゲームの『スーパーマリオブラザーズ』のカセットは40KB(キロバイト)しかなかったのだ。

 

 カセットの構造的あるいは技術的な問題もあって……現代基準で考えれば、そんな低容量でよく作れたのかと誰もが驚くところだろう。

 

 中期になってカセット容量が増えても、おおよそ200KB。後期になってようやく512KB。

 

 ファミコン公式のカセット最大容量は1MB(メガバイト)。平均的な画像データでも入りきらない……それを踏まえると、だ。

 

 子供でも簡単に突破できるような難易度にしてしまったら、下手したら小一時間でクリアしてしまう。

 

 ゲームソフト1本の値段は、けして安くはない。

 

 いくら子ども自身が楽しんだとしても、たった小一時間のために数千円となれば、それを買う親たちが拒否するようになる。

 

 いや、そもそも、子どもだってバカじゃないから、最初の1本2本ならともかく、すぐにクリアして飽きてしまうとなれば、だ。 

 

 だからこそ、この頃のゲームは簡単にクリアさせない=ゲームプレイ時間を伸ばす……という手法が取られていた。

 

 で、この、簡単にクリアさせない……という部分。

 

 高難易度とされて一括りにされがちだが、実は、けっこう種類を細かく分けることが可能である。

 

 単純に、ミスが許されない高い集中力を要求されるモノ。

 

 いわゆる、次から次に敵キャラが出現するため、気を抜くことが出来ないというやつ。

 

 次に、キャラクターの動きに癖があって失敗しやすいモノ。

 

 いわゆる、操作性に難有り系で、この癖の強さがゲームの難易度を引き上げているというやつ。

 

 そして、厄介なのが……製作者が意図して、意地悪な設計にした場合である。

 

 今しがた千賀子がクリアした『パロパロディ ~イカは銀河を救う~』もまた、簡単にはクリアできない類のゲームではあるのだけど。

 

 こちらは、ミスが許されないだけで、ミスさえしなければ初見でもクリアすることは不可能ではなかった。

 

 

 ……しかし、千賀子が手にした2本目のゲームは違う。

 

 

 前世の世界において『魔界村』と呼ばれたこのゲーム……難易度もさることながら、大勢の人々を苦しめたのは……プレイ中に登場する、とある敵キャラクターにあった。

 

 このキャラクターは、製作者たちがわざと『プレイヤーに対して意地悪な挙動を取る』ようプログラムされている。

 

 だから、ミスとか以前に初見で挙動を見切るのは不可能に近く、必ず同じ挙動をするとは限らないので……結果、どうなったのかと言うと。

 

 

「…………あっ」

 

 

 通算4回目の敗北、4度目のゲームオーバー画面を目にした、その瞬間。

 

 ついに、大決壊を迎えてしまった。

 

 心の奥にて『あ、これ無理だ』と思った瞬間、もう駄目であった。

 

 放心したご様子で涙を滲ませながら、なにやらトイレでしか聞かないような音がする中で……女神様はと言うと。

 

 

『──( = ^ ω ^ = )ウ、ウツクシイ……コレホドノゲイジュツガ……』

 

 

 どういうわけか、心からめちゃくちゃ感動していた。あと、なんか全体的に太くなっていた。

 

 あまりにも気の毒な光景に、ロボ子は無言のままに着替えのオムツと濡れタオルなど(バケツなども含め)を用意し。

 

 分身たちは、せめてもの情けだと言わんばかりに顔を背けていたが……が、しかし、この場に居る誰もが忘れていた。

 

 

『──(=^ω^=)ジャア、キレイニシマスネ』

 

 

 そう、女神様は、それ以上だという事を。

 

 それはまさに、悪魔以上の悪魔の所業であった。

 

 放置するとかぶれてしまうから……という理由で、なんと女神様の手でオムツを外され、下腹部を濡れタオルで拭かれたのだ。

 

 しかも、かぶれないようにと、女神様の手で塗り薬まで……この時の千賀子の顔は、完全に虚無であった。

 

 そりゃあ、千賀子はもう40歳になるか、ならないか。受ける羞恥心は桁違いだ。

 

 千賀子がまだ10代の頃だったら寝込んでいたところである。

 

 血の繋がりはなくともエマと春人の母親となり、大なり小なり様々な経験があったからこそ、千賀子は耐えられたのであった。

 

 

『──(=^ω^=)オオ、ナイススメル……』

「…………(絶句)」

 

 

 ただ、それでも、重くなったオムツに顔を埋めて深呼吸をしている女神様を前にすれば、さすがの千賀子も完全に言葉を無くしたくらいだけれども。

 

 ……で、だ。

 

 話は冒頭に戻るけど、尊厳を破壊された千賀子は……色々と気落ちしつつも、ゲームを再開した。

 

 だが、しかし……千賀子は軽く考えていた。

 

 数多のちびっ子たち(大人も含め)をゲームオーバー沼へと叩き込んだ伝説の敵を前に、千賀子もまた幾度となくゲームオーバーへと叩き込まれた。

 

 そう、千賀子は軽く考えていた。

 

 巫女的パワーを使えば、常人を上回る動体視力と反射神経にて事に当たれるけど……相手がゲームとなれば、そう上手くいかない。

 

 どれだけ素早くボタンを押したとしても、ゲームキャラの動きは早くならない。

 

 どれだけ敵の動きが見えていても、ゲームキャラの素早さは変わらない。

 

 ましてや、相手は意地悪な挙動をするようプログラムされているし、なにより、千賀子はゲームのキャラの挙動に慣れていない。

 

 こう動けば、敵キャラはこう動いて。

 

 自キャラをこう動かせば、敵キャラはこう。

 

 そんな感じの知識も経験も無いから、敵キャラが動いてからでしか反応できず……その結果。

 

 

「──押している! 押しているのにキャラが動かない! 壊れているんじゃないの!?」

 

 

 とまあ、難易度の高いゲームをした経験のある人なら、一度や二度は思った事がある言葉を、千賀子も叫んでいた。

 

 これには、女神様もニッコリである。

 

 そして、このあたりで……千賀子は、知った。

 

 恐怖の大王が出した『クリアするまでトイレに行けない』というアレは……ゲームを中断しても、続いているということに。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………その後の事は、さすがに哀れ過ぎるので詳細を省く。とりあえず、オムツを千賀子が外せたのは、それから4日後であった。

 

 おかげで、尊厳を破壊された千賀子の精神が復帰を果たすのは、6月に入ってからだった。

 

 エマと春人の前では完ぺきに普段通りの姿を見せていたけど、あまりにもショックなことだったので。

 

 そうして、ようやく布団から出られるようになった千賀子は──復讐を誓い、実行に移したのであった。

 

 

 

 

 

 ──レッド〇〇ーマー許さねえからな記念:芝・2000m(右・稍重)──

 

 本賞金:1着1億円/2着4000万円/3着1500万円/4着300万円/5着100万円/その他、出訴奨励金や出走手当・計4000万円。

 

 

 

 そう、いつぞやの、千賀子特別記念レースの開催である。

 

 一見すると、今回の記念レースはちょっとばかり賞金額が低いようにように見えるが……実は、今回はそちらがメインではなかった。

 

 メインは『春木競馬場』内の、飲食店である。

 

 そう、このレース日に限って、千賀子はオーナー権限ということで、全店舗メニュー内の商品を一部改名させた。

 

 その名を、『レッド〇〇ーマーくたばれ(商品名)』である。

 

 これの何がすごいって、サービスで七味唐辛子を使い放題だということだ。文字通り、瓶1本分を使い切ってもOKとかいう、力の入れ所が違うだろってやつだった。

 

 また、秋山オーナーが変な事をし始めたぞと囁かれたけど、どこの店も素直に従った。

 

 なんでかって、普段から本当に良くしてもらっているわけだし、他の立地に比べたら2割も3割も低い単価でスペースを貸し出してくれるわけだし。

 

 客側からしても、また秋山オーナーが……とか思ったけど、変な事をし始めた時のオーナーは触らぬ神に祟りなしなアレだったから、誰も触れなかった。

 

 というか、触れる度胸のある者はいなかった。

 

 だって、愛馬がもうすぐ開かれる宝塚記念に出走するというのに、『レッド〇〇ーマー許せねえ!』っと鼻息荒くレースを開催するのである。

 

 いったい、どこの世界に『レッド〇〇ーマー許せねえ!』という思いから競馬レースを開催する狂人がいるのか……いるのだから、なんとも不思議な話である。

 

 これにはタマモクロス関係者も、『まあ、あの人のやることだし……』といった感じで、サラっと流すしかないくらいであった。

 

 なお、一部の者たちは、改名されたその商品名を見て、深々と頷いていたけれども……で、だ。

 

 

 ──そんな流れを経て、『1988年宝塚記念(G1)レース』が開催されたのだけれども。

 

 

 実は、この年の宝塚記念は、競馬ファンたちからいつも以上に多くの注目を集めていた。

 

 それは千賀子が煽ったから……というだけではなく、出走している2頭の馬に理由があった。

 

 まず1頭、タマモクロス。

 

 これまでの戦績によって、客観的にタマモクロスは中距離~長距離に強い、パワーのあるステイヤーというイメージが根付いていた。

 

 実際、この時のタマモクロスの勝ち星は2000m以上。

 

 特に1987年の2500mレースにてレコードを記録し、3000m、3200mでも勝利したことから、すっかりそういうイメージが付いていた。

 

 そして、2頭目の、ニッポーテイオー。

 

 マイルの帝王という異名を持つこの馬は、主にマイル~中距離路線にて圧倒的な強さを見せた名馬である。

 

 長距離ならばタマモクロス、マイルならニッポーテイオー。そんな2頭が、間の中距離2200mにて激突する。

 

 長距離王か、マイル王か。

 

 この2頭の激突を見るために、その日も大勢のファンたちが集まり、大賑わいのレースになったのであった。

 

 まあ、その陰にて。

 

 

 ──ちょっと息抜きがてら、資金調達しないとね……といった感じで。

 

 

 なんか秋山オーナーに似ているっぽい人が、ニッポーテイオーに全賭けして持ち金全部溶かした顔になっている……という話が、千賀子のもとに届いていたりしたのだけど。

 

 千賀子は……あえて、触れなかったのであった。

 

 ……ちなみに、だ。

 

 ニッポーテイオーだが、この馬は……後に生まれる、愛され馬ハルウララの父親としても有名である。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………さて、そうした千賀子の奇策(?)によって、テレビを通じて少しばかり世間に笑いを届けた後。

 

 

「……えっと、つまり?」

『お忙しい中、たいへん申しわけないのですが……どうにか、手を貸していただきたいのです』

「頼む相手、間違えてない? 食の祭典とか言われても、私は美食家じゃないのだけど……」

『いえいえ、そんな事はございません! なにか知恵を、どうにか……!!』

 

 

 6月も半ばを過ぎて、蒸し暑さを朝にも感じるようになった頃……北海道より千賀子のもとへ、そんな連絡が届いたのであった。

 

 

 

 

 

 

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