ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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いつもより早いですが、明日は暑さでまいりそうなので、こっちにも投稿します


第42話: ミーム汚染にはこの手に限る(byロウシ)

 

 

 

 ボウリングがブームになったのは、その物珍しさ(アメリカちっくな派手さもウケたけど)もあるが、もう一つ別の理由があるとされている。

 

 それは、当時では珍しい、注文すれば洋食が……それも、レストランなどで出されるようなものではない。

 

 ホットドッグやコーラといった、庶民でも比較的手が届くレベルの洋食(あるいは、軽食?)が提供されるというシステムがあったことだろう。

 

 

 

 と、いうのも、だ。

 

 この頃は日本史上でも上位に入るぐらい活発に外国の文化が入って来ている時期だが、様々な要因によって需要と供給のバランスが噛み合っていなかったのだ。

 

 

 具体的には──高いのだ。

 

 

 都心では洋食店に限らず洋食を食べられる場所がいくつもあって、行こうと思えば何時でも行けるが、当時の一般庶民には中々手が出せる金額ではなかった。

 

 

 ……デパートなどでは客で賑わっていたんじゃないかって? 

 

 

 残念ながら、昭和末期に差し掛かり、『一億総中流』と揶揄されるようになるまでは、同じ庶民でもかなり貧富の差が激しかった。

 

 

 見た目には分かり難いが、ひと月に最低一回は親に連れられてお出かけして、洋食を食べに行けた家の子供と。

 

 一年に一回、誕生日というハレの日だから、御馳走として洋食を食べられた家の子供と。

 

 家が貧乏だったがゆえに、一年に一回どころかテレビでしか見たことがない家の子供が、同じ学校に通って同じ教室にいた時代なのだ。

 

 

 デパートに連れて行って貰える子供、ましてや誕生日でもないのに洋食を食べる事が出来た時点で、当時の基準では裕福(余裕がある)な部類なのであった。

 

 ちなみに、物価が違うので断定は出来ないが……現代の価格に直せば、メニューによってはおおよそ数万円……と聞けば、察して貰えると思う。

 

 

 で、話を戻して。

 

 

 そんなわけなので、大衆食堂の値段に比べたら高めだし、日本で言えば握り飯みたいなモノなのだが、それでも、洋食屋に行くよりもはるかに手軽に洋食を楽しめるのであった。

 

 ……現代ではボウリング場によってマチマチで、持ち込み含めて全面禁止なところ、飲み物のみ持ち込みOKなところ、飲食を提供しているところなど、様々である。

 

 なので、現代人の感覚からすれば、『なんだ、そんなことで?』と思っても不思議ではないぐらいの、ありふれたサービスの一つにしか見えないだろう。

 

 しかし、当時としてはけっこう画期的というか先進的なことであり、ボウリングを楽しみながら、外国(この場合、アメリカ)の空気を楽しめることもあって、人気は高まるばかりであった。

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………まあ、それは、あくまでも夕方以降の、サラリーマンたちが利用する時間帯の話であって。

 

 基本的に懐に余裕のない学生が利用する午前中や夕方以前で、そういったモノが売れる事は少なく、誰も彼もがゲームに夢中になっていた。

 

 

「──うんしょ!」

 

 

 いや、一つ訂正する。

 

 いつもならば、誰しもの視線は自分たちのゲームへと向けられていたが、今日この時ばかりは違った。

 

 誰しもが……レーンへボールを転がす美少女……千賀子へと向けられていた。

 

 その注目度合は凄まじく、見惚れてしまうあまり滑って転ぶ者、投げる際の姿を見て立ち上がれなくなる者、呆けるあまり職員から注意の声が掛かるなど、それはもう注目の的であった。

 

 

 ……視線が集まるのも、無理はない。

 

 

 なにせ、形を変えたり、揺れたり、弾んだりするのだ。

 

 なにがって、双子山が。

 

 現代(In 千賀子)とは違い、この頃にはまだ女性用ボウリングボールはなく、規定こそあったが、細かく作られてはいなかった。

 

 また、今と昔とでは幾つかの要因からボールの素材や硬さに違いがあり、この頃のボールはめたくそに固い。

 

 だから、落とすと本当に危ない。現代のボウリングボールよりも固いので、足に落とせば間違いなく骨折するだろう。

 

 神通力を使えば楽だが、不審を抱かれては堪らないので、使っていない。だから、重くて大変である。

 

 一番軽いボールでも、千賀子の細腕では胸に抱えるようにして持たなければ、手首や肩を痛めかねないぐらいに。

 

 そして、それは同時に……周囲に、知らせる事にもなる。

 

 

 具体的には、むにゅ、と。あるいは、たぷん、と。

 

 

 ボールを落とさないように抱えれば、どうしても潰れる。

 

 合わせて、服の上からでも分かる豊かな膨らみが、むにゅっと形を変える。周囲に、その大きさが伝わる。

 

 続けてレールへ向かって小走りになれば、それだけでも、ゆさっゆさっ、と膨らみが揺れているのが分かる。

 

 腕とボールで押さえられているが、それでも分かるし見える。その柔らかさ、その弾力が。

 

 そして……ボールを投げれば、それはもう感無量。

 

 この時ばかりは投げることに集中しているから、当人の注意力も疎かになるようで……そのおかげで、それはもう弾むのだ。

 

 腕の拘束からも、ボールのガードからも開放された双子山が、それはもうハッキリと弾み……見ていた大半の脳裏に、眼福という二文字が浮かぶぐらいであった。

 

 そのうえ、とんでもない美少女ときた。

 

 その姿を目撃しただけで、周りに自慢したくなるぐらいの美少女が、楽しそうにはしゃいでいるのだ。

 

 立派な双子山があるだけでも相当に目が引くというのに、その動きはけして鈍くはなく、むしろ、まるで背中に羽が生えているかのように軽やかだ。

 

 男たちは例外なく千賀子へと視線を向け、いちおう気付かれない程度に視線をそらしてはいたが、傍から見ればバレバレな感じであった。

 

 さすがに、店の中や敷地内で声を掛ける者はいない。

 

 場末のガラが悪い場所ならともかく、こんな場所で問題を起こせば間違いなく警察が飛んでくるし、店もそれを躊躇しないから。

 

 

 あとは……こう、なんか違うのだ。

 

 

 一目で分かる、魅力的だ。笑顔はすごく可愛いし、立ち振る舞いや仕草を見ても、とても可愛らしく優しい子なのは分かる。

 

 ……分かるからこそ、無理強いはしたくない。

 

 強引に連れ出そうとする、そういうのは似合わない。

 

 何もかもが綺麗で無垢なあの子を、そのように穢したくない。麦わら帽子を被り、長閑な空気の中で穏やかに笑っていてほしい。

 

 

 ──こういう子こそ、笑顔でいてくれるのが一番良いんだ。

 

 

 男たちの誰もが、無意識にそう思った。

 

 なので、お近づきになりたい気持ちは多々あれど、不思議と、男たちは千賀子を眺めるだけで、普段とは明らかに異なる紳士的な対応に終始していた。

 

 

「……チッ」

 

 

 しかし、そんな中で、何処からともなく舌打ちの音。そう、もう片方の性別である女たちからの反応は、正直めちゃくちゃ悪かった。

 

 いや、まあ、そうなるのも致し方ない。

 

 男女の立場を変えたら、1人の男子に、その場の女子や女性の視線が釘付けになっているようなものだ。

 

 たとえその女子たちに対して気が無かったとしても、面白くはないだろう。ましてや、年齢的にも異性に強い興味を抱く頃だから、余計に。

 

 とはいえ、男子たちを責めるわけにはいかないだろう。

 

 これまた男女逆なら、機嫌を悪くした男たちの態度に女たちは幻滅するか、逆ギレして機嫌を悪くしただろうから。

 

 

 ……ちなみに、怒ったからといって店を出て行くようなことはしない。

 

 

 だって、この頃のボウリング代(1ゲーム)というのはけっこう高いのだ。

 

 目が飛び出るほど高いというわけではないが、基本的に金欠である高校生の懐では些か厳しい。

 

 大人(あるいは、大学生など)が利用し始める夕方頃……混み合う時間帯までゲームを続けられるなんて余裕はなく、昼過ぎには終了となった。

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………さて、肝心の当人はと言えば、だ。

 

 

(ものすっごい視線が集まっているのが分かる……どこ向いても、誰かしらと目が合うのだけど???)

 

 

 半ば、ヤケクソな状態であったことは、千賀子だけの秘密である。

 

 

 

 

 

 

 ……そうして、ボウリング場を出た一行だが、どうしようかとクラスメイトたちは互いの顔を見合わせた。

 

 

 いったいどうしてかって、この頃はどんどん新しいエンタメや娯楽が生まれていたが、学生のたまり場というのが現代よりも少なかった。

 

 現代では御馴染みのマクドナルドが初めて日本へ出店するのは、数年後のこと。

 

 ちなみに、現代で言うゲームセンターの原形が、この頃にもあるにはあった。けれども、それは主に全国の旅館やホテルなどの一角に置かれていて、あくまでも子供向けであった。

 

 というか、この頃のそういったゲームは本当に子供向けであり、学生がやるにはあまりに子供っぽすぎたのだ。

 

 千賀子の前世の通りに未来へ進むかは不明だが、今は『マクドナルド』という言葉すら、ほとんどの庶民は知らなかった。

 

 

 ……そんなわけで、だ。

 

 

 改めて話を戻すが、子供向けと大人向けはどんどん増えていっているのだが、その中間に当たる年齢の人達に合わせた娯楽というのは、少なかった。

 

 強いて挙げるなら、友人同士で集まって音楽をしたり、部活をしたり、用もなくブラブラしたり……ぐらいだろうか。

 

 その中で、今この場で出来る宇野が用もなくブラブラする……ことなのだが、それをするには、いくらかリスクがあった。

 

 

 と、いうのも、だ。

 

 

 まず、この頃は非行に走る不良少年や不良少女が多く、後に暴走族と呼ばれる集団……の、前身というか、元祖に当たる『族』が生まれていた。

 

 

 その名を、『カミナリ族』。

 

 オートバイを乗り回し、けたたましいエンジン音(この頃は音が今よりも大きいのだ)が、まるでカミナリのようだと名付けられたのが由来である。

 

 他に、信号を無視したり猛スピードを出したりして走りまくるところから『マッハ族』、水平乗りやウイリー走行などの危険な曲乗りをすることから、『サーカス族』とも呼ばれていた、この時代の暴走族である。

 

 この集団が、中学生や高校生が集まれそうな場所(特に、お金の掛からない場所)を実質的に占拠し、あるいは暗黙のルールを作って共有していたのである。

 

 ゆえに、そうではない学生たちは、よほどの理由が無い限りは、そういった場所を避けるのが無難になっていた。

 

 

「……ど、どうしよっか? 秋山さんも、一緒にブラブラする?」

 

 

 けれども、だからといって、そこで『バイバイさよなら~』とはいかないのが、若さというものだ。

 

 誰しもが、特に男子たちは誰かに言われなくても分かっていた。

 

 クラスどころか学校一、いや、それ以上といっても過言ではない美少女と、こうして一緒に行動出来る幸運なんて、早々巡ってこないということを。

 

 仲良くなりたいとか、そんな問題じゃない。いや、仲良くはなりたいけど、今すぐどうこうではない。

 

 とにかく、次に繋げなくては……そう、男子たちの誰もが思った。

 

 だから、尋ねつつも、その言葉の内には『お願いします! どうか行かないでください!』という思いがこれでもかと込められていた。

 

 

(う~ん、どうしようか……相変わらず、女子たちの視線が冷たいし……空気読んで帰れよって目で見て来るよ……)

 

 

 そして、そんな男子たちの内心を察していた千賀子は、女子たちの反応もあって迷っていた。

 

 千賀子としては、男子と遊ぶなんてのは前世以来だから楽しい気持ちが大きい。なんというか、言葉には出来ない懐かしい楽しさを感じていた。

 

 そう、そうだ。前世の己の若い頃も、こうして同性の友達とつるんで遊んでいた……まるで、あの頃に帰って来たかのような気持ちで、楽しかった。

 

 

 ……しかし、何時までも浸っているわけにはいかないだろう。女子たちの事が、気にかかる。

 

 

 なにせ、せっかくのボウリングだったのに、あまり楽しめた様子が見られなかった。このまま付いていくのは、さすがに……そう思えてならなかった。

 

 

(断った方が良いんだろうけど、男子たちの目がなあ……なんか、遊んで欲しそうな子犬みたいで、そっちはそっちでなあ……)

 

 

 前世の年齢を合わせたら、祖父と孫。

 

 場合によっては、ひ孫ぐらいに歳が離れているからだろうか……どうにも、断るのが心苦しくて堪らない。

 

 なんというか、どうにも、男子たちが可愛く思えてならないのだ。

 

 学校に居る時は、気を張っていたので気付く余裕がなかった。けども、こうして接してみれば、彼らもまだまだ子供なのだなとのが改めて分かる。

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………もうちょっとだけ、付き合おうか? 

 

 

 女子たちには悪いが、もう少しだけ。小一時間ぐらいだけ、一緒にブラブラしてあげても良いのではないだろうか。

 

 そんな考えが脳裏を過り、心の天秤が傾こうとしていた……そんな時であった。

 

 

 ──ブフフン! 

 

 

 唐突に聞こえてきた馴染みのある声に、ハッと我に返った千賀子は振り返って──思わず、目を見開いた。

 

 

「ろ、ロウシ!?」

 

 

 何故なら、そこにはロウシが立っていたのだ。

 

 

「え、うわ、なんだこの馬!?」

「ちょ、どっから来たんだ!?」

 

 

 合わせて、気付いたクラスメイトたちも、馬というこの場ではまず見る事がない存在の登場に、堪らず距離を取った。

 

 

 そういう反応を示すのも、仕方がない。

 

 

 なにせ、ロウシのような競走馬(元とはいえ)は、体重が400kgを超える。

 

 老体ゆえに全盛期よりも体重が落ちてはいるだろうが、それでも人間より巨体であることは変わらない。

 

 肉食でないのは知っていたとしても、自分たちの7,8倍以上から放たれる威圧感というのは、相当なものだ。

 

 この頃でも、畜産関係で働いていなければ、あるいは、そういうのが盛んな場所、機会に恵まれていなければ、実物の大型動物なんて見た事がない人は多かったからこそ、余計に。

 

 ……なお、クラスメイトだけでなく、周りからも注目が集まっているが……ロウシが非常におとなしいこともあって、騒ぎにはなっていなかった。

 

 

「あ、秋山……その馬、知っているのか?」

「え、あ、うん、知り合いから譲ってもらったっていうか、事情があって今は私が飼っているっていうか……」

「そうなんだ、でも、どうしてここに?」

「それは私にも分からないよ」

 

 

 そんな中で、唯一普段通りに接する千賀子を見て、滝田が代表する形で尋ねる。

 

 この馬の正体が、千賀子が所有している馬と聞いて、クラスメイト達は少しばかり警戒を解いた。

 

 

「そういえば秋山さんって、噂では馬に荷車を引かせてパンを売っているとか……」

「あ、それ本当だよ。時々休むし、ちょっとの時間だけど」

 

 

 ポツリと女子の1人が呟いたので、それにも返事をしつつ……千賀子は改めてロウシへと尋ねた。

 

 

「ロウシ、いったいどうして?」

 

 ──ヒヒン。

 

「私を迎えに……わざわざ? こんなところまで?」

 

 ──ヒヒン。

 

「ロウシ……」

 

 

 頷くロウシに、千賀子は……呆れたり、怒ったり、感謝するよりも前に、困惑してしまった。

 

 

 ……本来ならば、ロウシは神社に居るはずなのだ。

 

 

 荒れ果てていた以前とは違い、今の山は女神様の御力で整備され、下りようと思えば下りられないわけではない。

 

 老体とはいえ、賢いロウシならば簡単だろう。逆に考えれば、賢いロウシがどうしてそんな事をしたのだろうか。

 

 それに、麓に向かうだけならともかく、そこからここへ来るともなれば、かなりの距離だ。歩くだけなら一日に50km以上が可能だが、それでも相当な負担である。

 

 加えて、山の中とは違い、街の地面は大半がアスファルトで覆われてしまっている。人間で例えるなら、裸足で歩き続けるも同然で。

 

 だからこそ、千賀子は……そこまで無理をして、ロウシがわざわざ迎えに来たことを重く考え……滝田たちへと軽く頭を下げた。

 

 

「ごめんね、滝田くん。ロウシだけで帰らせるわけにはいかないから、私はここで帰るね」

「え、そ、それじゃあ……」

「本当にありがとう。じゃあ、後はみんなで楽しんでね……また、学校で?」

「あ、うん……また、学校で」

 

 

 さすがに、これを引き留める事は出来ないと思ったのか。

 

 また、一緒に付いて行こうと思ったが、それよりも前に女子たちから「秋山さん、また学校でね~」と言われてしまえば、そういう空気でもなくなってしまったのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………それから、神社に戻るまでには少しばかり移動する必要があった。

 

 千賀子の住んでいる場所の辺りならば人目が無い場所を知っているが、さすがに隣町ともなれば勝手が違う。

 

 早く休ませてやりたいが、中々見つからないまま……ようやく見つけて神社へとワープをするまで、小一時間近く歩くことになった。

 

 

 ──ヒヒン。

 

「お水を飲みたいの? ちょっと待って、いま桶を……え、ロウシ、どうしたの?」

 

 

 すると、神社に戻ってすぐ、ロウシは水が飲みたいと千賀子に訴えた。

 

 何時もの水飲み場まで歩かせるよりも、今は少しでも休ませた方が良いだろうと思った千賀子は、適当な桶を探そうと小屋へ……向かうよりも前に、ロウシが歩き出した。

 

 しかし、その行き先は小屋ではない。

 

 困惑する千賀子を他所に、歩き出したロウシ。

 

 放って置くわけにもいかず、千賀子はその後を追いかけ……向かった先は、手水舎であった。

 

 この神社の手水舎は、実はけっこう大きい。

 

 泳げるほど広くはないが、数十名が囲っても余裕があるぐらいには広く、高さ(つまり、深さも)もそれなりにあった。

 

 

「……? ここのお水を飲みたいの?」

 

 ──ヒヒン。

 

「え? なにかあるって……ええっと、どこ?」

 

 ──ヒヒン。

 

「もっと奥? う~ん、私にはそんなの見えないけど……」

 

 ──ブフフン。

 

「あ~、もう、分かりました、もっとよく見ますってば」

 

 

 高さがあるので、馬の身体では飲み難いのではと思ったが、どうやらロウシの願いはそっちではなく、手水舎を見てくれというもので。

 

 

「ん~……ねえ、どんなものなの? 私には何もそれっぽい物が見当たらないのだけれども」

 

 

 とりあえず、言われた通りに、ロウシの言う『ナニカ』を見ようと目を凝らし、服が濡れるのも構わず身を乗り上げ──た、その瞬間。

 

 

 ──ヒヒン! 

 

「──えっ」

 

 

 どん、とお尻に衝撃が走った瞬間、千賀子は頭から──手水舎の水溜りの中へ飛び込んだ──というか、突き出された。

 

 どぼん、ばしゃん、と。

 

 それはもう盛大な水しぶきが辺りに広がったのであった。

 

 

 

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