ピックアップガチャ(固定)スキル持ちの転生TS美少女が行く、激動昭和なお話   作:葛城

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お盆の最中の初投稿です、なお、9連休じゃありません(半ギレ)


第45話: 因習村開発RTA はい、よーいスタート(震え声)

 

 

 ──時はまた少し流れ、7月末ごろ。

 

 

 再びやってきた夏、ついに突入した夏休み初日を迎えた千賀子は……普段の千賀子を知る者からすれば、ビックリするぐらいに自室にてだらけていた。

 

 なんでかって、単純に気が緩んだからで、色々と精神的に疲れる事が多かった。

 

 

 ……と、いうのも、だ。

 

 

 ボウリングの一件から、多少なりクラスメイトとの距離が縮んだのは良い。それ自体は、とても良い。

 

 危惧していた女子からの苛めや嫌がらせは起こっていない(気を張るので疲れるけど)ので、そういう意味では順調である。

 

 だが、そのせいで、それまで無かった事が彼女の眼前で起こるようになってしまい、それが心労の種になってしまっていた。

 

 

 ──具体的には、男子間の苛めである。

 

 

 以前から発生していたのかは知らないが、明らかに頻度が増えたように思える。それも、千賀子の視界や千賀子の目が届くような場所で。

 

 さすがに一線を越えた暴力まではまだ起こっていないようだが、以前とは明らかに雰囲気が違う。

 

 特定の人物が、特定の人物に対して、明らかに以前より態度が悪くなっている。

 

 悪態をつくどころか、まるで誰かに格の違いを見せ付けるかのような振る舞いをするようになってきていた。

 

 どうしてそんなことが起こったのか……おそらくだが、己の気を引きたいのだろうと彼女は考えている。

 

 いや、おそらく、なんて曖昧な言い回しで誤魔化すのは止めよう。

 

 明確に、千賀子へ『男としての格』を見せ付けるために、あえてそのような振る舞い(素養があったとしても)を取るようになり始めていた

 

 もちろん、千賀子は何一つ関与していない。

 

 勝手に男子が初めて、勝手にアピールして、勝手に自己完結しているだけのこと。客観的に考えたら、千賀子が気にする必要は全くないのだろうが。

 

 

(も、申しわけない……)

 

 

 根っこのところに『男』がある千賀子は、間違いなく己がその一端を担っているのだと理解し、心の中で謝罪するしかなかった。

 

 

 ……千賀子には関係ないだろうって? 

 

 そりゃあ、そうだ、関係ない。

 

 

 だが、千賀子というか、『女』という生き物が、どのような形であれ、格付けの上位の男を好む以上は起こるべくして起こる事でもある。

 

 そして、それを男は本能的に分かっている。分かっているからこそ、強さを見せつけるためにあえて格下を作る者が現れる。

 

 暴力的な男を好かない女はいる。それは、事実だ。

 

 しかし、自分にさえ向かなければ、その暴力性を好意的に解釈する女は居る。それも、事実である。

 

 そして、暴力に晒されて対抗出来ない男を好く女はいない。極々稀に性癖として好む者はいるが、それは例外である。

 

 時代によってそれが暴力であったり、肩書であったり、コミュニティであったり、資産であったり、形は変わるが、本質的な部分は変わらない。

 

 古今東西、『力』を持つ男の傍に女の影がチラついても、その逆に女の影が皆無であり……悲しいかな、昭和のこの頃は『暴力』が一番手っ取り早いアピールなのであった。

 

 ……なお、それが分かっていて千賀子が手を出さないのは、単純に、こういう問題で下手に手を出すと拗れるからだ。

 

 また、教師たちに連絡をするのもあまり意味が無い。

 

 何故なら、この頃の教師は戦場帰りの者が多い。そうでなくとも、一定水準の教育を受けた、家柄の良い者たちが多かった。

 

 なので、苛めに対して、苛める側を叱りつけはするが、同時に苛められる側にも『男なら拳の一つでもやり返さんか!』と叱りつけることが多かったらしい。

 

 いや、場合によっては、苛められた側の方を強く叱責する事もあったのだとか。

 

 まあ、戦場帰りの人からすれば、男がイジイジと腰が引けている様は、『男たる者、少しはやりかえせ!』と言いたくなるのは、仕方がないのかもしれない。

 

 ちなみに、現代では状況が変わってきているが、この頃の学校教育は教師からの暴力が公然と行われており、警察も全く問題視していなかった。

 

 それは、教職というものがある種の聖域として扱われ、警察も司法も基本的には手を出せない(というより、出さない?)状態だったから。

 

 そうなった理由は色々とあるが、戦場帰りという理由もあって、一目置かれる存在だったから……という説があるぐらいには、昭和のこの頃では特別扱いされていた。

 

 まあ、それも時を経て、特別扱いされるのが当然と思う、戦場帰りの兵士でも将校でもない大学を出ただけの教師が増えたことや、『勝てば官軍』と言わんばかりに結果だけを求める世相の影響によって、徐々に全国の学校が荒れ始めてゆくのだが……っと、話を戻そう。

 

 

(下手に私が動いても意固地になるだけだしなあ……まあ、それとなく……苛め格好悪いって雰囲気を出してみるか?)

 

 

 とにかく、下手に手を出せない以上は静観するしかない。

 

 仮に千賀子から苦言を呈しても、暴力性をアピールする相手は千賀子だけではないし、少なからずソレでまいってしまう女子はいる。

 

 そういう点を踏まえても、しばらく物理的に顔を合わせない夏休みという名のインターバルは、渡りに船みたいなモノであった。

 

 ……で、高校一年生の夏休みを迎え、色々な背景から逃れられてすっかり気を緩めていたわけである。

 

 

 が、しかし。

 

 

 むくりと、身体を起こした千賀子は、「……暇」ポツリと、そう呟いた。

 

 そう、暇であった。

 

 気を緩めてはいるが、それはそれとして、退屈であった。

 

 ただし、これは何もやる事がなくて、暇を持て余しているから……ではない。

 

 むしろ、逆だ。やろうと思うのであれば、やれる事は、いっぱいある。

 

 けれども、勘が働くというやつか。

 

 今はなんか視線を感じるというか、東京の店は目を付けられているっぽいから、行かない方が良いだろうという感じがしてならない。

 

 なので、しばらく東京の方へは行っていない。

 

 道子からは、『千賀子がそう言うのなら、仕方がない』という感じで、店から撤退するかどうかはしばらく様子見ということになっている。

 

 曰く、『千賀子がもう止めた方がいいと思った時が辞め時』とのことらしく、判断は千賀子に任されている……というのが現状である。

 

 一方、『ロウシのパン屋』にはそういう気配は感じないが……こっちの場合は、単純に売れ行きが悪いから……という理由である。

 

 それは、暑いから。あと、いくら神通力で和らげているとはいえ、食中毒は怖い。

 

 既にこの頃には国民皆保険が達成されているが、現代のように誰もが気楽に病院へ行けるような余裕はまだ無い。

 

 治療設備や薬だってまだまだ現代に比べたら未開発であり……それを思えば、夏場にパンを売り歩くというのは気が引けた。

 

 

(野菜とかなら売れるけど、出所を聞かれても答えられないのがなあ……ロウシと一緒に散歩はしているけど、夏場は本当にジロジロと見られるからなあ……)

 

 

 他には、1人で外出しても行き先が無いし、明美も道子も用事が立て込んでいるらしく……そんなわけで、暇を持て余しているのであった。

 

 そして、その我慢は限界に達しようとしている。

 

 元々、千賀子はそこまで長くジッとその場で大人しくしていられない性質なのだ。前世でも、若い頃は理由もなく夜の街をぶらついたりしていた。

 

 前世の時のように、体力が中々戻らない中年ぐらいなら、ともかく。あるいは、なにかしらの事情があるならともかく、今は若い身体だ。

 

 それも、良くも悪くも一番エネルギッシュに活動できる時期。

 

 1、2日と静かにしていれば、徐々に若さに任せて衝動を発散させたいと思っても致し方ない……が、しかし、だ。

 

 

(でもなあ、何をしようか……このまえ家にもカラーテレビが来たけど、正直興味が湧かないしなあ……)

 

 

 現在の千賀子には、その暇を潰すためのちょうど良いモノがなかった。

 

 この頃はプロレス全盛期であり、また、野球も大人気。

 

 プロレスでは、何時ぞやに顔を合わせた力道三(力道山じゃないよ)たちがどんどん盛り上げているらしい。

 

 詳しくは知らないが、なんでもアントニオ猪気(猪木じゃないよ)と、ジャイアント馬刃(馬場じゃないよ)が、互いに独立して新たな団体を作ったとかで、凄い事になっているらしい。

 

 

 ──どれぐらいかって、独立の際に力道三たちとの間でヤベーレベルの殴り合いが起きて、何人も病院送りになったのだとか。

 

 

 いちおう顔見知りではあるし、ちょっと様子見しに行こうかとも思ったが、こう、内なるナニカが『絶対に面倒臭い巻き込まれ方をするから止めろ!!!』と訴えてきたので、あくまでもテレビ越しにしか見ていない。

 

 とりあえず、最終的には死者も出ず、ちょっと建物の一部が燃えた程度のボヤ騒ぎで治まって安堵の溜め息を零したのは先日のことである。

 

 

 ちなみに、猪気の方は『真日本プロレス』を。

 

 馬刃の方は『善日本プロレス』なる団体になったらしい。

 

 

 そして、両エース(要は、超人気プロレスラー)を失った力道三の『日本プロレス』は、少しずつ客入りが悪くなっているのだとか。

 

 まあ、それも致し方ない。

 

 これも時代の流れだし、千賀子が見た力道三は、あまり好かれるタイプには見えなかったから……遅かれ早かれ、こうなっていただろうなあと千賀子は思ったのであった。

 

 

 ……で、野球に関してはこの年、混戦模様という言葉が当てはまるレベルで、各球団の成績が拮抗し続けており。

 

 

 後の世にも名が知られているビッグスターたちがしのぎを削ったり、またはミスターとの愛称で親しまれた選手が結婚したり。

 

 また、資本の力による才能の青田買いということで批判が生まれ、後に繋がる『ドラフト制度』が導入されたり。

 

 これまた後の話になるが、プロ野球史上初の三冠王が生まれたりと、それはもう、視聴率が30%越え40%越えが当たり前なぐらいの大人気であった。

 

 

 ……とはいえ、千賀子は野球にそこまで興味が無いので、必要性がなければまず見ないのだけれども。

 

 

 ほかにも、だ。

 

 続々と斬新な放送番組が現れているが……正直、現代の知識がある千賀子からすれば、どれも古臭く思えてならなかった。

 

 唯一、先日始まった『ジャン・グル×❤×大帝レオ』なる、モジャモジャ筋肉(♂)と、白い髪に白い肌の王様(♂)との間に生まれる、笑いあり涙ありの冒険活劇だけは気になっているが……ぶっちゃけ、怖いモノ見たさなアレなので、タイミングが合わなければそこまでな程度の興味しかなかった。

 

 

「う~ん……ブラブラ散歩するのは出来ないしなあ」

 

 

 理由は言うまでもなく、血迷った男たちが出現するからである。あと、なんかクラスメイトっぽい男子の影がチラホラ見え隠れしているっぽいのもある。

 

 というか、影が有ろうが無かろうが、他の時期ならともかく、夏場はヤバイのだ。

 

 何故なら、他の時期に比べて多量の汗を掻く。神通力で抑えてはいるが、そもそもが、完全に抑え込めているわけではない。

 

 加えて、夏場は必然的に薄着でいるしかない。

 

 現代ならば夏場に長袖でも『日焼けしたくない女性』という目でしか見られないが、この頃は下手にそんな恰好をすると、『頭がおかしな娘』という目で見られかねない。

 

 正直、千賀子としてはなんとも堅苦しい話だが、この頃は男も女もそういう考えが根付いていたため、どうしようもないことなのであった。

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………そうして、しばしの間……ぼんやりと、遠くから聞こえてくるセミの声に耳を傾けていた千賀子は。

 

 

「……そういえば、あの村ってどうなったんだろ?」

 

 

 ふと、身体を起こす。千賀子の脳裏に浮かんだのは、つい先日に助けた、災害に見舞われた村のことだ。

 

 村の名は、『冴陀等《さえだら》村』。

 

 千賀子としては、助けたいという気持ちがあったにせよ、能力の確認が目的の大半であったので、その後の事はあまり知らない。

 

 せいぜい、テレビで村の事が放送されているのをチラッと見たぐらいだが……無事にやれているのだろうか? 

 

 

(まだ二ヶ月も経っていな……ん? 経ったか? いや、まあ、どっちでもいいけど、まだそれだけだしなあ……ちょっと心配になってきたな)

 

 

 全くの知らぬ存ぜぬならともかく、理由は何であれ手を出したのは事実。

 

 

 氾濫した河川を整え、溢れてしまった水を河川へ引かせたり。

 

 広がった泥を分離し、作物に掛かった諸々を分離させたり。

 

 折れて駄目になった作物を元に戻し、土壌が受けたダメージを元に戻したり。

 

 さすがに家などは建てられないが、少しでも足しにと、使われていないっぽい空地に、太い樹木を何十本と生やしたり。

 

 

 『サラスヴァティー』と『ククノチ』の力を活用するため、小まめに変身したりしてけっこう疲れたが、後悔はしていない。

 

 実際、放送を見た限りでは元気そうだったが……まあ、なにか問題事でも起こっていたなら、手を貸せる範囲は貸してあげよう。

 

 そう、決めた千賀子は──さっそく、神社へと向かい、ロウシを伴って……冴陀等村へと向かうのであった。

 

 

 ……。

 

 

 ……。

 

 

 …………ちなみに、どうしてロウシを連れていくのか……それはまあ、ロウシにも外の空気を吸ってもらいたいためである。

 

 あと、移動用の足&用心棒代わりも兼ねている。

 

 年老いているとはいえ、体重400kgというのは、ただそこに居るだけで周囲に威圧感を与える。

 

 特に、昭和の時代は、現代に比べてはるかに野生動物を見慣れている者が多い。

 

 つまり、馬を見たことはなくとも、万が一蹴られたらどうなるかというのを身に染みて理解している者が多いこともあって、人間のボディガードよりもよほど頼りになるのであった。

 

 

 

 

 

 ──で、だ。

 

 

 昭和のこの時代、現代よりもはるかに地域間のネットワークが強固で、コミュニティの誰もが顔を見ただけで『○○の所の人』と判別できるぐらいだ。

 

 なので、部外者である千賀子がいくらそれとなく場に溶け込もうとしても、一発でバレテしまう。

 

 なにせ、神通力で認識を誤魔化していても、即座に『……?』といった感じで怪しまれるのだから。

 

 そう、だから、千賀子はロウシと共に村はずれより、こそっと神通力による遠視と盗聴を行った──わけなのだが。

 

 

『ほっ、ほっ、ほあ、ほぁああああ!!!!!』

『仏様! 如来様! ありがとうごぜえます! ごぜえます!』

 

『ほっ、ほっ、ほあ、ほぁああああ!!!!!』

『仏様! 如来様! ありがとうごぜえます! ごぜえます!』

 

 

 なんか、村の奥深い場所に建てられている小屋に、村人たちが集まって、よく分からない雄叫びをあげながら。

 

 ……なんか、見覚えがあるというか。

 

 どう見ても、変身した己の木像(明らかに、手作り)へ向かって祈りや踊りを捧げている、村人たちの異様な姿を見て。

 

 

(──良かった、顔とか隠して、今もバレないよう遠くから見ていて)

 

 

 反射的に安堵の溜め息を零してから……ふと。

 

 

(……え、これ、私のせい?)

 

 

 やべえ事になったぞと、堪らず背筋を震わせたのであった。

 

 

(……な、なんかさ、小屋のさらに奥で、めっちゃ急ピッチで建てられているアレって……もしかして、私の神社とか作ろうとしているの?)

 

 

 本当にやべえ事になったぞと、千賀子はなんだか泣きたい気持ちになるのであった。

 

 ちなみに、どう考えても千賀子のせいであった。善意が必ずしも良い形で返って来ない、良い例でもあった。

 

 

 

 

 







※村の名前はオリジナルです、たぶん、同じ名前の村はないかと
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