ビューティダンガンロンパ女学園 咲き誇る花園と這い寄る絶望 作:カセットコンロォで焼いた豚
「裏切り者がいるかもしれない……!?」
突拍子もない……とは言い切れない話だった。
カメラで監視すること自体は可能だが、24時間……しかも複数の箇所となると不可能に近い困難なはずだ。
ここからはわかることは、黒幕は1人じゃない可能性がある、ということだ。そもそも学園1つを占拠している時点で1人とは考えていなかったけど。
これを踏まえて私達の中に裏切り者がいる可能性を考えたわけだが……正直いる可能性の方が高いかもしれない。
そして、裏切り者の価値は監視以外の他にも理由がある。
「コロシアイという非日常に実感が湧いていない人も現在進行系で少なくない。もちろん私自身もよ。
つまり裏切り者がいれば、コロシアイの火蓋を切る事もできるということ……」
そう。ここから出たいという理由で人を殺す人は少ないはず。実際ここにいる殆どの人の切迫感はそこまで高くない。私もそうだ。
実感が湧かない、救助の可能性がある、成功体験に恵まれた人々。この3つにより根拠のない"死ぬ可能性はない"という感情が生まれているのだろう。つまり殺そうとも思っていないと言えるわけだ。
「殺そうと思っていない人間の中に、殺そうとする人間が混じるとどうなるか。あっけなく死ぬでしょうね。
そして根拠のない自信は消えて無くなり、殺人が非日常から日常へと近づき、第二第三の殺人がポンポンと巻き起こってしまう……ここまでは容易に想像できるわ」
「……」
成功体験こそあれど、一番になれないというコンプレックス故に自信が無い私と、過去に何かあったかと思われる伽前さん。私たち二人は現状を正しく理解できている……と思いたい。
「はー……そこまで考えて無かったけど、まぁ確かにオレらみたいなタイプの人間はどこか『どうせなんとかなる』って思っとる節はあるやろな。実際言われるまでオレも……というか、言われてもその気分はそう簡単に抜けへんし」
「仕方ないわよ。私自身も正常かだなんてわからないし、逆にこれと同じような話をする人間の方が怪しいまであるわ」
「……みんな、"コロシアイから生き残る方法"じゃなくて"脱出する方法"を重点にしているもんね。現実逃避と言われればそこまでかもしれないけど、私は『殺してでも生き残る』みたいな思考が産まれないだけ良いと思うな」
「あ……三山先生」
「……先生はよせやい。普通に春百でいいよ」
あくびをしながら三山先生……三山さんが食堂に入ってきた。
時計を見れば時刻は6時半。ちょっと早い夕食と考えれば何ら不思議でもない時間帯だ。
「これ以上の長話はやめておきましょう。三山春百も、いつから聞いていたかは知らないけど周りに言いふらしたら駄目よ。返って不安を産むだけだから。これは、この四人だけの秘密」
伽前さんの言葉に頷く。三山さんなんて口を手で抑えながら何度もコクコクしていた。
◆
「ごちそうさまでした」
晩ごはんを食べ終えた私と伽前さんは食堂を後にする。園神さんは既に食べ終わっており、もういなくなっていた。
三山さんはゲームのアイデアが浮かんだらしく、急にボーっとし始めていた。一応でていく時に声をかけたが聞こえていたかどうか……。
「あれ、ファングスタさんと西田さんですかね」
「……そうね。そういえば西田果凛のお陰で仲直りできたのよね。感謝ぐらいしたほうがいいのかしら」
「た、確かに……!い、一緒に行きますか?」
「ええ、そうしましょう」
私達は早歩きで二人の方へと向かう。
「……そう。だからよろしく」
「ええ、わかりましたよ。ふふふ……」
どうやら何か話し込んでいるようだ。
「あのー」
「ん?キリガハラとトギマエじゃん。どしたの」
「改めて貴女にお礼をしたくて。私達が喧嘩せずに済んだのは貴女のお陰よ。ありがとう」
「べ、別にいーって!当たり前の事言っただけだし!」
西田さんは頬を赤らめて否定する。
「その当たり前の事に救われたというだけではないでしょうか。このは素直に感謝を受け取るべきだと思いますよ、西田さん」
「ファングスタ……ま、コイツに言われてからってのは釈だけど、どういたしまして」
「良くできました」
ファングスタさんは仮面で表情こそ見えないが、不敵な笑みを浮かべているに違いない。小馬鹿にしているような笑い声を発していた。
「だからアンタのそーゆーところが嫌いなのよ!マジ言い方気をつけろって!」
「そう言われましても……私、日本語をあまり使いこなせていないので」
「どこがよ!ちょー上手に喋ってんじゃん!」
「ふふ、お褒めに預かり光栄です」
「〜〜〜っ!!!」
「西田さん!すとぉーーーっぷ!」
そんなこんなで手を出そうとする西田さんを抑え、伽前さん達と解散した。
◆
夕食をテキトーに済ましシャワーを浴び終えたのでベッドに倒れる。
夜時間を伝えるアナウンスが流れた為、このまま眠りにつくことにした。
「にしても秘密、かぁ……。えへへ」
私の胸の中には不安とはまた別の、温かい感情が生まれていた。
◆
三日目。
今日もアナウンスに起こされる。まだこの生活が始まって3日だというのに慣れてしまっている自分が怖い。
「久岡さん達、今日も走ってるのかな……」
服装を整え、外に出る。辺りは静まり返っていた。
取り敢えず久岡さんと西田さんの様子を見に、体育館へ向かうことにした。万が一の可能性もあるし、念の為というやつだ。
体育館前まで着いたはいいが、第一声はなんにしようか。『おはようございます』か『失礼します』か。
悩んでも仕方がないので両方言う事にした。
「失礼しま〜す。おはようございま〜す……」
流石に体育館もの広さになると、声を出すのが躊躇われる。広い空間を持て余している気分だ。
「はぁ…はぁ……あっ!ララちゃんおはようっす!」
「え……?おは……よー……キリガ、ハラ……」
そこまで大きな声ではなかったがちゃんと届いていたらしく、二人は私に挨拶を返してくれた。[newpage]
「ちょうど走り終わったとこっす!汗でびしょびしょっすよー」
「はぁ……さっさとシャワー浴びよーっと」
「私も浴びよっかなぁ。そういや、宿舎の方に大浴場あるっすけどなんで封鎖されてるんすかねー。せっかくならみんなで遊びたいんっすけど」
「大浴場で遊ぶのは危険なのでは……?」
「細かいことは気にする方が負けっすよ!」
細かいことでもない気がするんだけど……。
「そーいや明日の夜パーティするとか言ってたっけ。ヒサオカってそーゆーの好きなの?」
「パーティが好きだからという訳ではないっすよ。あ、でもパーティも嫌いではないっすよ!
それよりも、人と関わることが好きなんす。もちろんそれでトラブルとかも起きちゃったりするんすけど……。
人って、同じ生き物なのに全然違う考え方を持ってて、何人と出会ったとしてもこの世の全ての考え方を離開するどころか知る事すらできないんっすよ!
そう考えたらワクワクしないっすか?」
「いや全然」
「ぐはーっ!果凛ちゃん酷いっすー!」
「自分と全く違う考え方とか疲れるだけじゃん」
「見聞を広めるのがいいんっすよー!」
会話は堂々巡り。まさにこれこそ考え方の違いってやつなのかな?
「ってかそんな場合じゃないっしょ!汗のベトベト落とさなきゃ!」
「そういやそうだったっす!ララちゃんも早くー!最下位は罰ゲームっすよー!」
「ええっ!?ちょっ、待ってくださーい!」
私は大慌てで二人の背中を追いかけた。
◆
「あら、おはようララちゃん。今日は1人なのね」
食堂。今日も車田さん朝食を作ってくれていたようだ。
「はい。二人共シャワー浴びてくるみたいです。
あ、朝ご飯、昨日も今日もありがとうございます。ここから出たらお礼させてください」
「そんなの必要ないわ〜。私が好きでやってることだから」
車田さんはニコニコしながらスープを注いでいく。匂いからして今日はコンソメスープのようだ。
「好きでやってくれてるとはいえ、こちらから何も返せないのは気になるね。折角だし露出の素晴らしさ、気持ちよさを教えてあげようか?」
「遠慮しとくわ〜」
「あ、佐藤さん……と小島さん、おはようございます」
お盆にパンが入ったかごを乗せて厨房から佐藤さんが出てくる。小島さんは佐藤さんの服を摘んでついてきている。
人が怖いというのは聞いているが、それにしても何で佐藤さんとはここまで親しくなったのだろうか。気になるが、面と向かって聞くこともできない為断念することにした。
「おはよ〜!ん、この匂いは……焼けたパンの匂い!余計にお腹空いてきたばい〜……」
空腹で倒れた中谷さんを皮切りに、続々と人が集まってきた。
伽前さんや園神さん、三山さんに松風さん。その後ろから黄楊さんと戛戛さんが喧嘩しながらやって来た。
「だから何故拙者の言ってる事を無視するでござるか!」
「別にいいじゃないか。僕はモノクマやあの扉を調べたい。キミは皆にかっこいいところを見せたい。キミが首謀者を倒せば即人気者だよ」
「拙者は別にそんな事考えておらんっ!ただ日本の文化を知ってほしいだけでござる!!それに、拙者に戦闘力が無いのは一目瞭然でござろうが!」
「いいじゃん、WIN WINの関係なんだし手伝ってよ」
「話を聞けーーっ!!」
一瞬止めに入ろうと思ったものの、関わった第三者は巻き込まれるだけだとわかっているので辞めておいた。薄情者と呼ばれるかもしれないが、これもやむを得ない話だと思って欲しい。
「遅れてしまい申し訳ないっ……です」
肩で息をしながら、黒髪ポニーテールの少女がやって来た。えっと……誰だっけ。
「ありゃ、もしかして私達最下位っすか?」
「うげー、謝んなきゃじゃん。ヒサオカ、私の分も謝ってよ」
「はいっす!……ってなんでっすか!」
二人もシャワーを浴び終わったらしい。ちょっと身体が火照っているのがわかる。
「あ、咲ちゃんもおはっす!」
……あぁ、秋文字さん!面と向かって見たことがほぼ無かったからピンとこなかったのだろう。ごめんなさい、と心のなかで謝っておく。
「……ひぃ、ふぅ、みぃ……ファングスタちゃんと入蠱ちゃん来てないね」
三山先生の言う通り、二人の影が見えなかった。ファングスタさんは元々こういう事が苦手だったのは知っているが、入蠱さんも苦手だったのか……あるいは。
「流石に無いとは思うけど……一応確認はしたほうがいいでしょうね。……霧ヶ原ララ、私と一緒に来てくれるかしら」
「は、はいっ!」
「あ、カリンも行く!アイツにガツンと言いたいし!」
伽前さんの誘いに乗り、三人で様子を確認しにいった。
ここに来て何度インターホンを鳴らしたかすら忘れてしまった。最初の頃にあった緊張感とはまた違った空気の中、ファングスタさんを呼ぶ。
「……出てきませんね」
「入蠱陀子の方を鳴らしてみましょう」
伽前さんが乱雑に押す。5分程待ってみたが、こちらも反応がない。
「寝ているだけなら良いんですが……」
「あーもうじれったい!」
西田さんはそう言うとファングスタさんの部屋のドアノブをガチャガチャとし始めた。しかし、どうやら鍵がかかっていたらしく――。
「開かない……そっちは?」
「こっちもだめです!」
「ふむ……モノクマ、いるわよね」
伽前さんは慣れたようにモノクマを呼び出す。
『呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!伽前さんが言いたいこと、ボクはわかってますよ。うぷぷぷ……』
「伽前さんが言いたいこと……?」
「もし鍵のかかった部屋で殺されていたら、ずっと死体が見つからないでしょう?バレないように殺すと言えど、それだとゲームとしてつまらないとモノクマなら判断するはず……」
『おっしゃるとおり!どんなゲームにも必勝法があるって言われてるけど、そもそもこれだとゲームすら始まらないからね!!』
ゲームすら始まらない?殺人がバレないようにするのがこのゲームなんじゃ?
「モノクマ、ちょっと――」
『それじゃあボクはやることがあるからさっさと退散するよ!"捜査"を頑張ってねー!』
モノクマは私の言葉を無視し、「スタコラサッサ」と口に出しながら去っていった。それと同時にアナウンスがなり始める。
『現在は"捜査"のために、ロックを解除してあります。どうぞ、ご自由にお調べください』
アナウンスが終わると廊下中から『ガチャリ』と鍵が開く音がした。
「捜査……っ!?」
額から嫌な水が垂れる。二人もも同じことを想像したらしく、伽前さんは入蠱さんの部屋の扉を叩きつけるように開いていった。
そして、数秒もしない内に出てくる。
「こっちは寝ているだけだったわ。ほら、起きなさい」
「ふぇ……あ……すみませんん……眠くて……すぅ……」
首根っこの手が離れ、そのまま廊下に倒れる入蠱さん。
「何かあったんですかぁ……?」
「はぁ……置いていきましょう」
「じゃー……開けるよ」
西田さんが恐る恐る扉を開く。そこには――。
ピンポンパンポーン……!
『死体が発見されました!』
『一定の捜査時間の後、『学級裁判』開きます!』
三日目なのに死体が出ました。次回は非日常編です。
誰が犯人なんですかね