ビューティダンガンロンパ女学園 咲き誇る花園と這い寄る絶望   作:カセットコンロォで焼いた豚

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1話丸ごと捜査フェイズまでの導入です。
ここまで長くなると思わなかったんです……!


第一章⑥

「うっ……」

 

「……っ!西田果凛、霧ヶ原ララを別室に連れて行ってあげて」

 

 伽前ナコト(わたし)は、死体を前にしてダウン状態な2人をこの場から引き離す。

 言い方は悪いかもしれないが、このまま居られて吐かれるのは困る。現場保全の為にも一度落ち着いてから来てほしい。

 

「にしても、学級裁判ってなんなのよ……」

 

 

 

 

 

◆三日目 非日常編◆

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど、わかった。刺激が強いだろうからなるべく近づけないようにはするけど……伽前は大丈夫なの?」

 

「それはこっちのセリフよ。流石に慣れ過ぎじゃない?」

 

 先程のアナウンスでほぼ全員が廊下に集まっていた。この場にいないのは霧ヶ原ララと西田果凛、それと久岡優月。

 

「久岡優月がいない理由は本人から何か聞いてないかしら」

 

 私は隣で死体を観察している佐藤詩織に尋ねる。止めたのにも関わらず1人だけ率先して中に入って来たのだ。

 佐藤詩織の緊張感の無さは傍から見ると死体なんて見慣れている、と言わんばかりだった。

 

「ああ、私たちが来る途中に霧ヶ原と西田に出会ってね。霧ヶ原、気分悪そうだからって久岡が部屋を貸してた」

 

「なるほど。話は変わるけど……こんな状況ってのにやけに冷静ね。どうしてかしら?」

 

「私も伽前と同じ理由思うんだけど……過去に色々あった、それだけ。覚悟があるなら続き話すけど、聞く?」

 

 意味深な眼差しでこちらを見据える佐藤詩織に、一瞬たじろぎそうにもなったが平然を装う。

 

「別にいいわ。今関係ある話とは思えないもの。それも先にこの死体をどうするかって話からしましょう」

 

 佐藤詩織は小さく「わかった」とだけ返事をした。一体何を考えているのやら。

 

「……さっきの『学級裁判』って単語について何か知ってることはある?モノクマから聞いてたりだとか。ちなみに私は何も聞いてない。名前からある程度予想はできてるけど」

 

「何も聞いてないわ。どうせこのあと説明があるでしょ。……ふっ、話をすればなんとやらってやつね」

 

 私が話していると、アナウンスが鳴り響いた。

 

『えー、学級裁判について説明させていただきます。至急、体育館にお集まりください』

 

 この場にいる全員で体育館に向かうことにした。霧ヶ原ララ……早く元気になればいいんだけど……。

 

 

「うっ……おぇ……」

 

 霧ヶ原ララ(わたし)は久岡さんの部屋の、シャワールームで吐いていた。

 

「ゆっくり、落ち着いて。慌てなくていーから」

 

「大丈夫っすか?モノクマに頼んで吐き気止めでももらうっすか?……もらえるんすかね?」

 

「流石にもらえるんじゃない?」

 

 胃の中は空っぽだというのに、吐き気は治まらない。理由が理由なので仕方のないことだとは理解しているが、それでも周りに申し訳ないと思ってしまう。

 

「モノクマには呼ばれてるっすけど、さすがにこの状態のララちゃんを見捨てるわけにもいかないっすね……モノクマ!いるっすかー?」

 

 久岡さんの問いかけの答えは、静寂だった。

 

「なんでこんな時に限って出てこないんっすか!使えないクマっすね」

 

「むしろこんな時だからでてこないんだと思うんだけど……」

 

 そんなやり取りを聞いている内に、少し体調も良くなってきたようだ。私は便器から顔を離し、口元を手で拭きながら立ち上がる。

 

「すみません……私はもう大丈夫なので、行きましょう」

 

「でも――」

 

「ヒサオカ、こー言ってるんだし一緒に行こ。キリガハラ、カリンの肩貸すよ」

 

「ありがとうございます」

 

 私は二人に支えられながら体育館へと向かうことにした。

 

 

 

「っ!大丈夫だった?」

 

 宿舎から出て校舎に入ったタイミングで、伽前さん達と合流することができた。

 

「顔色が悪い……ホントに大丈夫?」

 

「だ、大丈夫です……そ、それよりも皆さんは?」

 

 伽前さんの碧い目に耐えきれず、目線と話をそらしてしまった。 こんなに顔が近いんだし、目をそらしても文句は言われないよね……?

 

「他は全員体育館よ。私は心配だったから様子を見に来たの。西田果凛と久岡優月、感謝するわ」

 

「別に感謝なんていーって!てかトギマエこそ大丈夫なの?あんな部屋にあの後もいたの?」

 

「そんなにひどいんっすか?」

 

 久岡さんが興味半分怖さ半分と言った表情で尋ねてくる。そういえば久岡さんはまだ見てないんだっけ。

 

「そうね、その話は追々するとして……まずは学級裁判について知ることが優先よ」

 

 学級裁判……名前を聞くだけで、嫌な予感がする。これから何が始まるというのだろうか。

 恐怖を抱えながらも真っ直ぐ体育館へと向かう。

 

 

 体育館に着くと伽前さんが言った通り既に全員揃っていた。……ファングスタさん以外だけど。

 

「全員揃ったな。モノクマ、学級裁判?ってやつの説明始めろや」

 

『まぁまぁそんな焦らないでよ!もしかして……そんなに死体を調べたいの?』

 

「な、なんでそうなんねん!」

 

 園神さんがモノクマと言い争いを始めそうになった時に、松風さんが割って入った。

 

「そこのネコミミヤローなんて無視してさっさと説明しろ!ワタシ様の時間は有限なんだよ!」

 

「……まぁ松風ちゃんの言う通りだね。言い方はアレだけど、こんな所に時間をかけるのは私は反対かな」

 

「うっ……すまんかった」

 

 うなだれる園神さんは、どこか苛立っているようにも見えた。おそらく、以前モノクマに突っかかった松風さんにも思うところがあったのだろう。

 そういえば三山さん、前まで"松風耀さん"って呼んでたのにいつの間に仲良くなったんだろ……。

 

『じゃあこれも単刀直入に要点だけ伝えていくよ!』

 

 それからモノクマは連々とルールを伝えていた。誰もがその説明を黙って聞いていた。

 

「……なるほど、概ね予想通りね。『一定時間後に開かれる議論で、正しいクロを見つけて投票しなければいけない』……簡潔に言えばそういう事でいいかしら」

 

『その通り!正しいクロを指摘した場合はクロが、間違ったクロを指摘した場合はクロ以外の全員が処刑(おしおき)されるんだ!』

 

 確かに、ゲームとして考えるのならば出来は良いだろう。だが、私は想像よりも怒っていたらしい。

 

「……なんで、こんな事させるんですか」

 

『ん?』

 

「どうして、私達にこんな酷いことをさせようとするんですか!」

 

 私の怒声が響く。大きな声を出したのって何年ぶりだっけ……。いや、今はそんな事どうでもいい。

 

『なんでって……。霧ヶ原さんは食事や睡眠をする時に何か理由がある?』

 

「……は?」

 

 モノクマがより一層意地の悪い笑みを浮かべたように見えた。急に何を話し出しているんだ?

 

『もちろん"お腹が空いた"だとか"眠い"だとか色々あると思うけど……これも同じなんだよ!!

 

 ボクはオマエラが絶望するところを見たいと思ったからやってるんだよ!!』

 

 何を言っているんだ、こいつは。そんな理由でやっていい理由がないじゃないか。

 

「霧ヶ原っ!落ち着きなさい!」

「っ!」

 

 モノクマに掴みかかろうとしたところで、伽前さんが止める。そうだ、私怒りに任せて……。

 

 自覚した途端、背筋が凍った。

 

 感情に任せて校則違反をしかけていたのだ。モノクマがどんなに危険なものなのかを知っているというのに、だ。

 

「取り敢えずこの場は解散、それでいいよね。それともこれ以上話ある?無いなら私は調査に戻るけど」

 

『佐藤さん、せっかちは良くないよ!オマエラにとって凄く有用的な情報があるっていうのに……』

 

 モノクマはしょぼくれているが、どうせ見た目だけだろう。

 

 その予想は当たっていたのか、すぐに切り替えてどこからともなくタブレット型の電子端末を取り出していた。

 

『オマエラにこのモノクマファイルを配ります!』

 

 各々がモノクマファイルと呼ばれたそれを受け取り、中身を確認する。そこには死体の発見時刻や発見場所、死体の状態の説明などが記載されていた。

 

 つまりこれは、検死ができない私たちのための救済アイテムと言ったところだろう。

 

「なるほどね……ちなみにこれに虚偽の情報は記載されたりはしていないよね?」

 

『もちろん!そんな事したらゲームがツマラナくなっちゃうからね!!』

 

「ま、まぁ細かい点は……お、追々確認すればいいとして……。死因だとか、し、死亡時刻みたいなものは記載されてないんですね……」

 

『書いていることは本当だけど、それ以外は自分たちで調べてください!!それに、そこまで書いちゃったら大ヒント過ぎてつまらないからね!!』

 

 黄楊さんと入蠱さんが立て続けにモノクマへ質問を投げかける。少なくともここに記載されている内容は信じてもよさそうだ。ゲーム感覚で楽しんでいるモノクマへの怒りを抑えながら、私はなるべく冷静に判断していた。

 

『じゃあ諸君!また学級裁判でお会いしましょう!』

 

「うわっ、一方的に会話を切り上げてとんずらしたばい!捻くれた性格しとんね!」

 

 モノクマが去り、体育館には静寂が訪れた。そんな空気に耐えかねたのか、久岡さんが言葉を発した。

 

「取り敢えず私は何も出来ないと思うっすから、死体の現場の保全に努めるっす!怪しい行動してる人は全員投げ倒すっすよー!……あっ、咲ちゃんには負けそうっすけど!!」

 

「わ、わたくしも久岡様と一緒に現場の保全を担当させていただきます!では、先に向かっていますので!」

 

 久岡さんと秋文字さんは風のような速さで去っていった。それを皮切りに、それぞれが今後どう動くかを話し始めたようだ。

 私は伽前さんに話しかけた。

 

「あの、伽前さん。さっきはありがとうございました」

 

「感謝されるようなことはしてないわ。貴女が怒る気持ちもわかるし、実際に私も許せないと思った。

 

 でも、その感情を行動として爆発するのは今じゃない……でしょ?」

 

 私は黙って頷いた。そして、私達はそのまま何の躊躇いもなく、ファングスタさんの部屋へと向かった。

 

 絶対にモノクマの正体を突き止めて、後悔させてやる……!

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