ビューティダンガンロンパ女学園 咲き誇る花園と這い寄る絶望   作:カセットコンロォで焼いた豚

12 / 19
第一章⑦

「まずはこのモノクマファイルを確認しましょう」

 

 ファングスタさんの部屋の前で伽前さんが提案した。確かに先に知っておくことで気付くこともあるか。伽前さんは優しい人だし、私に気を遣った可能性もあるだろう。

 

「被害者は"超高校級の商人"シュシュ・ファングスタ。死体発見場所は被害者の自室、時刻は8時。死因は腰部を刺された出血によるショック死。仮面以外は身に着けておらず、裸の状態で発見された。目立つ外傷は腰部の刺し傷のみ……」

 

「腰部……ということはやっぱり背後から一撃ですかね」

 

「それは調べてみないとわからないわね。……キツかったらここで待っていても良いのよ」

 

 不安そうな顔をしている伽前さん。本気で心配をしてくれている事が伝わってきて、むしろ元気になれた気もした。

 

「大丈夫です。ファングスタさんを殺した犯人を見つけるためにも、頑張らないと」

 

 私は腹をくくって扉を開ける。中には久岡さんと秋文字さん、そしてファングスタさんの死体があった。

 

「うっ……!」

 

「……霧ヶ原、気持ちはわかるけどやっぱり――」

 

「やらせてください」

 

 言葉を遮り、死体へと近付く。

 

 

 死体は裸でうつ伏せ状態になっていた。まじまじと見るのは気が引けるが、それにしてもキレイな身体だ。

 

 また、辺りは血まみれにもなっていた。死体の下に血溜まりが出来ており、シャワー室からその血溜まりまで引きずったような血の跡が残っている。

 

「もし何かあったら私たちも手伝うっすから、どんどん言ってくださいっすね!」

 

「そうですわ!ま、まぁわたくしにできる事は限られていますが……」

 

 秋文字さんはそこで何かを思い出したのか、先程までとはうって変わって明るい顔で私の前に来た。それはとても――とても綺麗な、お辞儀だった。

 

「自己紹介、遅れてしまい申し訳ございません。久岡様から既に聞かれているかと思われますが、わたくしが秋文字 咲ですわ。"超高校級の柔道家"としてここに来ましたわ」

 

 私に優しく笑いかけてくれた。のだが……元々目つきが悪いのか、睨まれているようにしか見えなかった。

 

「咲ちゃんはこう見えてドジっ子なんすよ。ここに来る時もコンタクト忘れちゃってたらしくて、目を細めないと何も見えないらしいっす」

 

「お恥ずかしいですわ」

 

「ああ、それでそんなに目つきが……」

 

「目つきが!?め、目つきそんなに悪かったですか!?」

 

「あはは、咲ちゃんはずっと目つき悪いっすよ!最初睨まれてるのかと思ったっすから!」

 

「えぇ〜!?そ、そうだったんですのね……」

 

 秋文字さんはしょぼくれている。少し和やかな空気にはなったが、それでも私は現実に戻らなければいけない。時間は限られているのだから。

 

 私はなるべくテンションを変えないようにして今後の方針を提案した。

 

「えっと……まずは死体とモノクマファイルを比べてみますね。相違点があればそこがなにかしらの鍵になるはずですから」

 

「そうね。それなら私は……この血の先、シャワー室を調べてみるわ。見張りのどちらか、ついてきてくれるかしら」

 

 そう言いながら伽前さんと久岡さんはシャワー室へと向かった。私も気合を入れてやらなきゃな。

 

「まず死体発見場所と時刻だけど……これは間違ってない。そして、死因と死体の状況。これが正しければ腰部に刺された跡があるはず……うっ」

 

 ちゃんとあるにはあったが、傷口がなんとも生々しくて、少し気分が悪くなる。これは当分の間肉が食べれなくなりそうだ。

 

「……って、あれ?」

 

 おかしい。生々しい傷口が見えている……"傷口に何も刺さって無いし、血で溢れてもいない"。

 

 ファングスタさんはうつ伏せの状態なので、傷口が上にある状態ならそこに血が溜まるはず……。それに、床には流血の跡があるのに身体はそこまで血で汚れていないのも気になる。

 

 シャワー室で刺され、命からがら逃げようと這いずりここまで来たが力尽きた……そう見えるが、どうにもおかしい。

 

 一度伽前さんに報告をしたほうが良いかもしれない。

 

「伽前さん、そっちはどうですか?」

 

 シャワー室を覗いてみると、そこには伽前さん達と濡れた服、そして今も出しっぱなしのシャワーがあった。

 

「ここにはおそらく死ぬ前まで着ていた服が置いてあったから色々調べたわ。着替えが置かれてない所を見ると、寝る時は裸で寝るタイプだったっぽいわね」

 

「そ、その情報いりますか……?」

 

 私は想像してしまって少し頬を赤らめる。この手の話は得意じゃないんです……!

 

「まぁ話を戻すと、服から発見したのは2つ。

 

 1つ目。シャワーが出たままなのに服の濡れ具合が浅い事から"この服が濡れ始めたのは今日の朝"ということがわかるわ」

 

「昨日の夜に濡れていたら、流石に乾いてませんもんね。それに加えて朝復活したシャワーで濡れちゃいますし……」

 

「ええ。ちなみにシャワーのせいか殆ど血が流されているけど、壁やシャワーの水が当たっていない場所には血が飛び散っていた……つまり」

 

「ということは、服も合わせて考えると……今日の朝シャワー室で殺された、ということですか?」

 

「さぁ?どうかしらね」

 

 伽前さんは含みのある反応をした後、置いてあったコートのポケットからあるものを取り出した。

 

「えっ、それは……」

 

「2つ目。これは私が見つけた中でも一番厄介な代物……"この部屋"の鍵よ」

 

 この部屋の鍵、つまりファングスタさんの個室の鍵。

 

 私達が来た時点ではこの部屋は鍵がかかっていた。

 

 ということは、まさか……!

 

 

 

「……コロシアイの火蓋を切ったこの事件は、"密室殺人"よ」

 

 

 

 




証拠(コトダマ)

・モノクマファイル
↳被害者は超高校級の商人シュシュ・ファングスタ。死体発見場所は被害者の自室、時刻は8時。死因は腰部を刺された出血によるショック死。仮面以外は身につけておらず、裸の状態で発見された。目立つ外傷は腰部の刺し傷のみ。

・死体の状況
↳傷口に凶器が刺さっておらず、血も溜まっていなかった。また、死体には血がほぼついていなかった。

・血の跡
↳シャワー室から死体にかけて引きずったような血の跡が残っていた。また、死体の下には血溜まりができていた。

・シュシュ・ファングスタの服
↳濡れ具合が浅い為、濡れ始めたのはおそらく朝。

・シャワールーム
↳シャワーが出しっぱなしになっており、床はきれいな状態だった。しかし、壁には血が飛び散っていた。

・コートに入っていた鍵
↳シュシュ・ファングスタの部屋の鍵。死体発見時はコートの中に入っていた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。