ビューティダンガンロンパ女学園 咲き誇る花園と這い寄る絶望 作:カセットコンロォで焼いた豚
「密室殺人……!?」
ドラマや小説ではよく聞くその響き。むしろそういう場面でしか耳にしないので、実感が湧かなかった。
「たしか密室殺人には4つほどパターンがあるって探偵の知り合いから聞いたことがあるわ」
「えぇっ!探偵ってホントに存在するんすか!?」
「日本でも浮気調査とかで良く聞きますね」
過剰に驚いている秋文字さんに追加で説明をする。どうやら心当たりがあったらしく「あ、たしかに……」と呟いていた。そんなわたしたちをよそ目に伽前さんは説明を続ける。
「私が出会った探偵は殺人……しかも不可能犯を担当していたらしいわ」
そんな人もいるのか……世界って広いなぁ……。
「話を戻すけど、その人から聞いたのは……
①犯行後に密室を構成した。
②犯行前からすでに密室状態だった。
③密室が破れた際に犯人が密室内にいた。
④密室じゃなかった。
この4つよ」
伽前さんは真面目な顔で4本の指を順番に立てて語る。そういう枠組みがあれば私達でもなんとかできるかも……!
「死体を見つけた時は全員の場所がわかってましたし③はないっすよね?」
「あと、ドアの鍵が閉まってるのを西田さんが確認してたから④もないと思います」
「となると①か②ね……。仕掛けがあるとすれば、①なら扉、②なら死体周辺かしら。
霧ヶ原は一度死体を調べているのよね?私がもう一度死体を調べておくから、霧ヶ原は扉をお願いできる?」
「はいっ!」
その後も現場を再度調べなおしたが、特にこれといって怪しい点は見つからなかった。伽前さんも少し焦っているようだ。
伽前さんはため息を付き私の方へ「ひとまず密室は置いときましょう」と提案した。
「いいんすか?」
「わからないことを素人な私達で探しても見つからないわ。確実に、地道に証拠を集めるのよ」
「なるほど……」
「そういうことであれば、わたくしのアリバイを教えて差し上げることはできますわよ」
秋文字さんが目を輝かせて詰め寄ってきた。役に立ちたかったのかな……?ちょっと子供っぽくて可愛いな。
にしてもアリバイか……。いかにもって感じでこんな状況なのにちょっとドキドキしてきた。むしろこんな状況だからなのかな……?
「わたくしは昨日の夜はアナウンスの前に寝ましたわ!そして朝はアナウンスで目が覚めたのですが……。恥ずかしながら、二度寝をしていたり準備に時間がかかったりしたので遅くなりましたの」
「あはは、咲ちゃん鈍臭いっすね!」
秋文字さんを指をさしてゲラゲラと笑う久岡さん。まぁ楽しそうでなりより……なのかな?
「も、もう!!……それで、死体が発見されたと聞いてここに来ましたの」
「ということは、犯行可能では無さそうですね。久岡さんは?」
「私もアナウンスの前に寝て、朝3時ぐらいに起きたっす」
その時に
「私に聞かないでくれるかしら……。
話が変わるのだけれど、霧ヶ原は何故秋文字は犯行不可能と判断したのかしら」
「えっ……?」
急にどうしたんですか、そう言いたかったが驚きすぎて声に出せなかった。と、取り敢えず理由を言わなきゃ……。
「えと、死体が濡れてますし身体を引きずった血の跡もあるから、さっき殺されてる……と思ったので。それなら犯行時刻が今朝の7時以降ですけど、秋文字さんはそんな時間の余裕はなさそうだなって。だから―――あだっ!」
「話は聞かせてもらったよ。ホントは完全防音で聞こえてないけ…ど……えっと、ごめん」
勢いよく開かれた扉に吹き飛ばされ、私の言葉は消え去っていった。
扉とぶつかったおでこを撫でながら、入室してきた人物が誰かを考える。この声、そしてマイペースさ。やって来たのはおそらく……。
「佐藤さん。いえ、大丈夫です。次から気をつけてもらえれば」
「うん、ちゃんとゆっくり開けるようにするよ。それで、これは入室してもいいのかな。私も死体を調べたいんだけれど」
久岡さんは秋文字さんや私達の方を見てうんうんと唸っている。……あ、そっか。見張れるのは2人だけだから大人数いたら危ないのか。
「私達がこの部屋から出るわ。いいわよね、霧ヶ原」
「え、あ、はい」
「佐藤詩織、何かわかったら情報を共有してくれるかしら」
佐藤さんは神妙な顔つきで伽前さんを見つめ、一拍置いた後「わかった」と短く返した。
「「あっ」」
部屋を出るタイミングで小島さんとすれ違う。目があったまま固まってしまった……。
「えっと、それじゃあ私は行きますね!佐藤さん、小島さん、頑張ってください!」
私は逃げるようにその場をあとにした。実際逃げたんだけどね。
「あの!どこに行くんですか?」
「え?言ってなかったかしら」
「言われてないです」
「まずキッチンね。刺し傷はおそらくアレでつけられた筈だから」
「あぁ、確かにこんな場所だと刺せる刃物はアレぐらいしか……」
「それと全員の部屋や持ち物も調べたいけど……流石に無理ね。頼むだけ頼むってのはアリだと思うけど」
「まぁ快く招く人もいませんよね」
「あとはそうね……ゴミ捨て場も一応見ておきましょう」
「隠滅しきれていない証拠とかありそうですね!」
「ええ。それじゃあ、まずはキッチンからよ」
キッチンへ向かうために食堂に入ると、そこには松風さんと三山先生、戛戛さんがいた。それぞれ表情は芳しくない。
「……まぁ人が死んだんだもの。こうなって当然よ」
まるで私の心を見透かしたかのように伽前さんは慰めてくれた。
「気を遣わせてしまってすみません、先を急ぎましょう」
キッチンに入るように促し、2人で中へと入る。そこには挙動不審な車田さんがいた。
さっきから食堂のほうをチラチラと見ており、明らかにみんなを心配しているようだ。
「あっ!ふたりともどうしたの?」
「包丁の場所を教えてくれるかしら」
伽前さんはいつものように、何の前フリもなく単刀直入に本題へと入る。
「そう!包丁なんだけどね、実は『今朝から一本無くなって』て……」
「今朝っ!伽前さん、これってやっぱり……」
「凶器は包丁、と考えてよさそうね。最後に見たのはいつ?」
「そうね……昨日の夜、ここが閉まる前にはもう無かったはずだわ」
「誰かが持ってた姿とか……見てないですか?」
「うーん……あ!」
「「!」」
「厨房に入っていった人なら一人いたわ!たしか20時ぐらいだったはず!」
「その人が来るまでは包丁はあったのかしら?」
「そ、そうね……ええ。それまで晩ご飯作りと今日の仕込みをしていたから……」
「早く教えなさい!」
伽前さんに急かされる車田さんは、相対的に中々口に出そうとしない。頭を抱え、眉間にもシワが寄っている。
「もしかして、誰か思い出せない……とか?」
「そ、そういうわけじゃないわ!そう、女の子だったのは覚えてるの!」
「ここは女の子しかいないわよ」
「あ、そうだった。……正直に言うわ。ちょっとお料理に集中してたから誰が入って来たか見れてなかったの。ごめんなさいね」
「……まぁいいわ。無くなったのは20時頃というのはわかったんだし。霧ヶ原、その時間帯のアリバイはある?」
「ふぇっ!?たしか18時半ぐらいに晩ご飯を食べ始めて、19時を過ぎた辺りで外に出て……19時半頃まで食堂前では伽前さんと一緒でしたよね」
「そうね」
「その後はずっと自室なのでアリバイは無いです……」
「なるほど。べ、別に貴女を疑っているって訳じゃないから!単に疑われた時に庇うために知っておきたかっただけだから!」
「庇う……私が犯人じゃないって思ってくれてるんですか!?」
「うっ!」
顔を赤くして目をそらす伽前さん。その姿には先程までの凛々しさの欠片すら残っていなかった。でもこれはこれで可愛いから全然アリなんだよなぁ。
「とにかく!私も霧ヶ原もアリバイは無し!車田亜弥も場所的にいつでも持ち出せる!全員怪しい!それで終わりよ!」
「あらあら照れちゃって。……私、ファングスタちゃんとあんまり話せなかったけど、それでも悲しいわ。だから、この謎を解くのをお願いしてもいいかしら」
「ええ、頼まれなくても自分の、私たちの命がかかってるんですもの」
「ありがとう!またなにかあったら言ってね。私も手伝うから!」
車田さん元気が少し戻ったようだ。笑顔で手を振り私達を見送ってくれた。
車田さんのためにも、伽前さんのためにも、そして何よりファングスタさんの為に、犯人を見つけないと……!