ビューティダンガンロンパ女学園 咲き誇る花園と這い寄る絶望   作:カセットコンロォで焼いた豚

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第一章⑩

「あ、皆さんもういたんですね」

 

 私が赤い扉を開くとそこには全員……ファングスタさんを除いた、15人が揃っていた。

 

「なんや遅かったやないか!心配しとったで!」

 

「わっ、園神さん……」

 

 園神さんが勢いよく肩を抱いてくる。目は心配の色だった。

 

「伽前も佐藤も西田、久岡……てかみんなお前んこと心配しとったで。ようこんな短い時間で仲良くなれるなぁ」

 

「ふぇっ!?あ、皆さんが優しいだけですよ。私なんてそんな……」

 

 私なんかが心配させてしまうだなんて恐れ多い。それと同時に嬉しさも感じてしまっているわけだが。

 

 そうこう話していると、目の前にいきなり白黒のクマが現れた。

 

『さぁさぁ、全員揃ったね!』

 

「学級裁判、だっけ。それを今から始めるのかい?会場はそのエレベーターの先ってところだろうね」

 

「ボタンが下しかないから地下に行くのね〜」

 

「じゃあさっさと行くっすよ。犯人を見つける……いや、シュシュちゃんの無念を晴らす、そのためにも!」

 

 久岡さんについていく形でエレベーターへと全員が乗り込む。ただ一匹、モノクマを除いて。

 

『あのさぁ……一応ボクにはゲームマスターだとか説明マスコットとか、そういう役割があるのね。それを取られたらボクの立場が無くなっちゃうよ……』

 

「……一致団結とか、そういう方が燃える展開じゃないかな。モノクマの説明すら聞かずに自分たちで乗り込む、うん。いい響きだと思うよ」

 

『……!言われてみればそうだね!よーし、それじゃあみんなの団結力とやらを見せてもらおうかな、うぷぷぷ……』

 

 モノクマは不敵な笑みを浮かべて去る。

 

 モノクマの姿が消えるのを確認した後、誰かがエレベーターのスイッチを押す。同時に扉は閉まり、下へ、下へと落ちてゆく。

 

 身体に空気が突き刺さる。死ぬ前に死にそうだ。現実を突きつけるには充分な痛みだった。

 

 

 

 

「これは……」

 

 エレベーターを降りるとそこにはステージがあった。

 

 裁判所の証言台が円を描くように並んでいる。学級裁判、なるほど、いい趣味をしている。

 

「あ、名前が書かれてる。ここが私の席なのかな。……小島は私の右隣だよ」

 

 一足先にステージに近づいた佐藤さん。恐怖心というものがないのか、今も表情と声色は全く変わっていない。佐藤さんが少し怖く感じてしまう。

 

「ここが私っすね」

 

「……ここだね」

 

「ワタシ様はここか。あんまり気に入らない場所だが……まぁ良いだろう」

 

「あ、ここですぅ……隣になんか看板あるんですけど……」

 

「シュシュ・ファングスタの遺影……のつもりかしら。悪趣味ね」

 

『ひどいなぁ。ボクの力作なのに!これ作るのに10時間かかったんだからね!』

 

「ひえ〜!こいつ嘘下手すぎばい!」

 

 みんながみんな、無駄口を叩きながら席につく。無言は絶えられないから、だろう。

 

 私が最後に席につくと、『さて!』とモノクマが手を鳴らす。

 

『それじゃあ学級裁判、始めようか!』

 

 その言葉で改めて認識する。

 

 これから始まる、始まってしまう。

 

 

 命がけの裁判。

 

 命がけの騙し合い。

 

 命がけの裏切り。

 

 命がけの謎解き、命がけの言い訳、命がけの信頼。

 

 

 

 命がけの……学級裁判。

 

 

 

 

『まずは学級裁判の簡単な説明から始めましょう!!

 

 学級裁判の結果は、オマエラの投票により決定されます。正しいクロを指摘できればクロだけがおしおき!!

 

 だけど……もし、間違っていたらクロ以外の全員がおしおきされ、皆を欺いたクロだけが晴れて卒業となりまーす!!』

 

「で、結局ここに犯人はいるわけ?カリンは全然疑いたくないんだけど……」

 

「そうね〜……私もこの子達の中に犯人がいるとは思えないわ」

 

 他の人達も根本の部分を疑っているようだ。私も同意見。しかし、理想だけを見ても自分たちが死ぬだけだ。

 

 考えたくない……でも、最悪な可能性も考慮しないと私たちが死ぬ……!

 

「そうや!コイツがあの仮面を殺して、その犯人を私達になすりつける!それで仲違いをさせて殺し合わせる……これでおかしないやろ!」

 

 

「それは、違うと思います」

 

 

「……ララ、一応聞いとくけど、なんでや?」

 

 園神さんの声が明らかに1トーンが下がった。機嫌を損ねたようだ。恐怖で一瞬たじろいだが、なんとか自分の意見を伝えようとした。

 

「モ、モノクマは私達を殺そうと思えば全員殺すことはできるはずです……。モノクマは言わば『何体居るかもわからない、神出鬼没の爆弾』。ここまで準備してコロシアイをさせようとしている人が、そ、そんな簡単に殺すとは思えません!」

 

「んなもんただの想像やんけ。現状殺してる確率が高そうなんはモノクマやろ」

 

「ふむ……しかし園神、君の"それ"もあくまで推論だ。お互いが推論なら全ての可能性を考えるべきだと思うよ。間違った答えを出せば、それこそモノクマに殺されるだろうし、ね」

 

「……そうやな、悪かった。疑うんは嫌やが、それ以上に死にたくねぇもんな!」

 

 黄楊さんのフォローもありなんとか理解してくれたようだ。空気も少し変わったように感じる。

 

「それで、実際何をすればよろしいのでしょうか?いきなり『犯人はアナタです!』とは言えませんし……」

 

「ていあ〜ん、ばい!」

 

 中谷さんが元気に手を挙げる。

 

「はい恋雪ちゃん!発言を許可するっす!」

 

「感謝っす!こういうんは一個一個地道に考えるんがよかって古事記にも書いてあったばい!」

 

「そんな事書いてござらん」

 

「真面目にツッコまなくてもいーと思うよ?」

 

「話を戻すわよ。一つ一つ考えるとして、始めに何について話し合うのかしら?」

 

「うーん……密室の謎は無理やけん、『誰が』『いつ』『どこから』『どんな』凶器を持ち出したか……とか?」

 

「そうね、それに賛成よ」

 

「じゃあ取り敢えず凶器の特定からだね。私が見た限りだと現場には凶器が無かったよ。でも、死因は刺し傷……よく考えたらわかるかもしれない」

 

 佐藤さんは最後まで言い切らない。まるで"私達にヒントを出して答えに導いている"かのように。

 

 違和感はあるが、今は学級裁判に集中しよう。

 

「あの〜。そ、それじゃあ凶器は刃物……ってことです、よね?」

 

「まぁ普通に考えたらそうやろな。死体はちゃんと見てへんけど刺し殺すっていうならそりゃなぁ」

 

「見張りをしていたのですが、あれはナイフのような物かそれ以上の大きさかと思いますわ。深く傷がありましたし」

 

「そうか、ワタシ様にはわかったぞ!つまり凶器はナイフだ!」

 

「いえ、違うと思います」

 

「ワタシ様がナイフって言ったらナイフ以外ありえねぇって!一々否定してくるな!」

 

「耀ちゃん、私も違うと思うよ」

 

「えっ、そうなの?嘘……」

 

「相手で態度変わり過ぎじゃね!?」

 

「あ、あはは……。えっと、まずこの空間にナイフは無いんです。購買部には西洋甲冑と剣がありますけど、あれもレプリカですし。だから、ここにある刃物は1種類しかないんです」

 

「なるほどね、つまり君が指す凶器は【包丁】というわけかい?」

 

 黄楊さんの確認に黙って頷く。この答えには確固たる自信がある。間違いないはずだ。

 

「そっすねー、私もそれ以外の刃物は見たことないっす」

 

「じゃあ決まりね。凶器は包丁。次に『どこから』だけど……霧ヶ原、言わなくてもわかるわよね?」

 

「な、何故私……?」

 

「まぁララちゃんがさっきから中心になってる感もあるし、ここはズバッと言っちゃうっすよ!」

 

「えぇ……?まぁ、えっと、包丁なので【厨房】から、ですよね」

 

「流石にオレでもわかるで」

 

「じゃあ次は『いつ』だね。これは車田亜弥さんから話さしてもらった方がいいよね」

 

 三山先生が車田さんの方を見る。それに応じて車田さんが話し始めた。

 

「私もそう思うわ〜。えっとね?私が夜に明日……今日の支度をしてた時にはまだあったのよ。でも、朝に来たらあら不思議。消えてなくなっちゃってたの!」

 

「……正しくは車田亜弥さんが支度をしている時、そして、私が食堂でアイデアを纏めていた時に無くなったんだよね」

 

「そ、それじゃあ……持ち出した人も、見たって……こと、ですかぁ?」

 

 先生は入蠱さんの質問に黙って首を横に振る。

 

「ごめんなさい。私も車田亜弥さんも集中してて一々確認してなかったの。でも、誰かが来たのは覚えてるよ。【20時】だったはず」

 

「これで『いつ』もわかったってわけだ!さすが春百!ワタシ様が見込んだまではある!」

 

「ありがとう」

 

 三山先生と松風さんのやり取りで少し場の空気が和む。だからといって進展してないわけじゃない。松風さんの言う通り『いつ』もわかったんだ。でも―――

 

「最後の『誰が』ですけど……」

 

「そうね、今のままではわからないわ」

 

 また、行き止まりだった。やっぱり私達には無理なのかな……。

 

「どうすんのよ、正しい答えを導き出さないとカリン達死ぬんでしょ?」

 

「そうですわよね……密室の謎もわからないですし、お手上げ……!?」

 

「えー!流石にまだ死にたくないっすよ!」

 

『あれあれぇ?行き詰まっちゃった?それじゃあもう投票に行っちゃう?』

 

「いやいやいや!短気すぎやろ!なんか他にないんか?オレはなんも思いつかんけど……」

 

 園神さんの問いかけも虚しく、静寂が漂う。そして、モノクマが元気に投票へと移る事を宣言する……その瞬間。

 

 

「まだ終わりじゃないわよ」

 

 

「伽前さんっ!」

 

 全員の視線が伽前さんに向く。彼女は不敵な笑みを浮かべ、議題を出した。

 

 

 

「次は『いつ』殺されたかを考えるとしましょう」

 




見通しが甘過ぎて、もっとサクッと終わると思ってました。が、実際はもうちょっと続くっぽいです。すみません。
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