ビューティダンガンロンパ女学園 咲き誇る花園と這い寄る絶望   作:カセットコンロォで焼いた豚

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第一章1⑪

「いつ……って、普通に7時以降じゃないんですか?」

 

 高らかに言い切った伽前さんには悪いけど、引っかかったので質問をした。しかし、それも想定内だったらしくニヤリとしたまま話を続ける。

 

「私もそう思ってたわ。でも、よくよく考えなくてもおかしいのよ。死体発見時刻は8時。その20分前にはほぼ全員が集まっていたわ」

 

「てことは……イリコは寝てたフリしてて実はその間に殺してたってこと?」

 

「ふぇっ!?な、なななんで私なんですかぁ!」

 

「まぁその可能性も今は否定しきれないわ。でも、誰にも見られず外に出てまた戻る事が出来るのかしら?返り血を流す時間は?私が見た限りだと入蠱は今起きたと言わんばかりの姿だったわ」

 

 伽前さんがここまで言って、ようやく理解した。おかしい、密室を除いても、おかしいんだ。

 

 

「つまり、そもそも朝に殺せる程の余裕が……ない……!?」

 

 

「そう。それこそ殺しの才能を持っていれば可能かもしれないけど……流石にそんな才能は無いわよね?」

 

 全員がお互いの顔を見るが、誰も手は挙げない。そもそもとして国に殺しの才能を認められ、ここまで来た人なんているわけが無いのだから、当たり前だろう。

 

「いやいやいや!8時の20分前ってことは7時40分やろ?ほんなら最後に来た果凛と優月が40分で殺すことぐらいは出来るやろ!」

 

「いえ、出来ないはずです!お二人は20分頃まで体育館で走ってて、その後シャワーを浴びて来てるんです。20分未満で人を殺せるとは思えません」

 

「あらあら……じゃあ結局、密室殺人が不可能殺人になったってことかしら?」

 

「いや、そうとも限らないと思うでござる」

 

 車田さんの不安げな質問を、いつもの声色で戛戛さんが宥める。しかしそれは取って付けたものでは無く、意思がこもっているように思えた。

 

「そもそも起きている以上不可能殺人ではござらん。どこかに鍵があるはずでござる。

 それに、伽前殿が言ったのは『朝の殺人』だけでござる。つまり……」

 

「ええ、殺人が起きたのは朝……7時以降ではない、ってことよ」

 

 そこまで聞いて、ふと疑問が浮かび上がる。それは中谷さんも同じだったらしく、呆れが混じった声を出す。

 

「あのさぁ、ファングスタの身体は濡れてたんよ?直前までシャワー浴びとったってこと。しかも、身体を引きずった跡もあった。つまり、シャワーが動いている7時よりも後に殺された……そうじゃないって言いたいと?」

 

「そうよ」

 

「ワタシ様には間違っているとわかるぞ!矛盾だ!『死体が濡れている』ことと『殺人は朝ではない』が矛盾している!」

 

「一見するとそうね。でも、別に不思議なことではないはずよ」

 

「いーや、これは間違った真実だ!なんてったってワタシ様が言うんだからな!」

 

 自分を指差し、勝ち誇った笑みを見せる。しかし、行動こそあれだが私も同じ意見だった。

 

 そもそもとして、身体が濡れて裸の状態であるのはシャワーを浴びている時だけ……。そして、そのシャワーを使えるのは7時から22時……。

 

 確かに朝に殺す余裕がある人がいるとは思えないが、それでもシャワーと矛盾してしまう。この矛盾を砕くような【証拠(コトダマ)】があれば……!

 

「確かに矛盾している。でも、ここと密室さえどうにかできたら……わかる気が、する」

 

「どういうことっすか、詩織ちゃん」

 

「自分が犯人だとバレたくない。だから謎を用意した。つまり、【密室の謎】と【殺害時刻の矛盾】は真相を覆うベール。この2枚の布をどかせば、中身は見える。私はそう思った」

 

「つまりゴールは近い……ってことで良いのかしら?なんだかやる気が出てきたわ〜」

 

「しかし車田殿、その2枚の布はとても大きいでござるよ」

 

「そうね〜、洗うの大変そうだわ」

 

「物理的な布ではないでござるが……」

 

「てゆーかさ」

 

 西田さんが疑問と疑惑を含んだ険しい表情で、伽前さんを見つめる。

 

「そもそもとして、朝に殺されてないってショーコ、弱くない?殺したこと無いけど、頑張ったらいけるんじゃないの?」

 

「そうね、もしかしたら間に合うかも知れないわ。でも、それ以外にも理由はあるのよ」

 

「じゃー先に言えし!」

 

「それはまぁ、西田様の言う通りですわね」

 

「うんうん」

 

「なっ!」

 

 みんなに立て続けに責められ、伽前さんはちょっと涙目になっていた。頼もしいけど、ちょっと打たれ弱い……。こういう時こそ私が頑張らなきゃ、だよね。

 

 朝に殺されたわけではないという証拠。おそらくあの現場に残っているはず。例えば、殺されて時間が経っていないとならないような状況……それは……

 

「【血】……ですよね」

 

「ちちちち、血ぃ!?」

 

「入蠱、驚きすぎばい」

 

「……あー、確かにおかしいね、うん」

 

「春百もそう思うか!ワタシ様も気づいていたぞ!」

 

「いやいや、オレはわかんないんやけど!説明してくれへんか?」

 

「あ、はい」

 

 私はゆっくり、心のなかでも矛盾がないかを考えながら、話す。

 

「ファングスタさんの傷口に、血が溜まっていなかったんです。もし殺してすぐ移動させた場合、まだ出血は止まっていないので傷口に血が溜まり、死体も血塗れになるはずなんです。

 でも、仰向けだというのに傷口はくっきり見えて、しかも身体は血で汚れていませんでした」

 

「……なるほど?」

 

「つまり、ファングスタさんが運ばれたのも濡れたのも【出血が止まった後】なんです」

 

「なるほど!わからん!」

 

「ダメじゃないっすか」

 

 園神さんへ冷静にツッコむ久岡さん。だが、一息ついた後にはその軽い雰囲気は無くなっていて、その神妙な顔つきで切り出した。

 

「じゃあ、なんで床は血で濡れていたんすか?血溜まりまでにも跡があったし、意味不明っす!」

 

「それはおそらく、ファングスタさんが這いずってあの場で息絶えた、という勘違いを私達にさせたかったからだと思います。それによってファングスタさんが死んだのは朝だと勘違いしていましたし」

 

 私の説明にみんなが黙る。反論が飛んでこないところを見るに、少なくとも一旦は納得してくれたようだ。

 

「では、殺されたのは朝ではないとわかったわけでござるが……実際に殺されたのはいつでござるか?深夜だったりすると各々が自室に籠もっているからアリバイも何もござらん」

 

「そうね、それに関しては私は22時よりも前と推理するわ」

 

「ふむ、今回はちゃんと理由を言ってもらおうか。私もその意見は気になるからね」

 

「まず、今回は大量出血による失血死なのは知ってるわよね」

 

「そりゃまぁ知っとるけど……だからなんやねん」

 

「そして外傷は刺し傷。刺した時に返り血を浴びているはずよ」

 

「今朝シャワーを浴びてきたのは久岡と西田の2人だけ。かつ、その二人は朝お互いの姿を見ていた。つまりは、夜時間中に殺していたら返り血がついたままの人間がいるはず」

 

「えぇ。でも、いなかった。だから夜時間が始まる22時よりも前だと思ったわ」

 

 伽前さんの推理と佐藤さんのサポートにより、また1つ謎が解けた。でもまだ犯人まではたどり着いていない。このまま謎は解けるのかな……。

 

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