ビューティダンガンロンパ女学園 咲き誇る花園と這い寄る絶望   作:カセットコンロォで焼いた豚

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第一章⑫

「てことは、包丁が持ち出された20時から夜時間前の22時までの間、アリバイが無かったらいいんやね!ウチは20時はずーっと入蠱と購買におったよ!」

 

「あ、えと、はい。そ、そうです」

 

 中谷さんと入蠱さんがアリバイ証言をする。先程聞きに行った時と変わらないし、嘘じゃないだろう。

 

「そういうことなら、私とこの子供はランドリーで議論を交わしていたね」

 

「議論ではなくて口論でござろう!つまり、黄楊殿も拙者と同レベルということでござる!」

 

「ど、同レベルって……」

 

 そんな言い方で良いのだろうか、戛戛さん。

 

「私は夜時間のギリギリまで仕込み作業をしてたわ〜。でも私が持ち出した可能性もあるから、アリバイにはならないわね……」

 

「……私は、20時ぐらいまではずっと食堂にいた。でも、それを証明してくれる人はいないから、車田さんと同じだね」

 

「ワタシ様は一人だった!一人でも強く生きていけるからな!」

 

 ここで、アリバイが無い人が三人上がってきた。しかし、私を含めて何人かは、車田さんはやっていないと思っていた。もし殺したとしたら、包丁を隠し続ける理由がないから。よって怪しいのは二人だ。

 

「私は咲ちゃんと一緒にいたっすよ、私の部屋に」

 

「はい!色々なものを見させていただきましたわ!」

 

「カリンはぼっちだったよ、アリバイ無い」

 

 さらに一人増え、計三人。

 

「私は小島の部屋の前にずっと座っていた。小島は出てきてなかったよ。私自身も何人かに見られてるはずだから、アリバイになると思う」

 

「……」

 

 小島さんは黙って頷く。他の人も何人か頷いていたので、これは本当なんだろう。

 

「俺は一人でぶらついてたんよなぁ。すれ違ったりはしたけど、会った時間に空きがあるからアリバイにはならへんな……」

 

「私は自室にいたからアリバイは無いわ。霧ヶ原ララもそうよね」

 

「はい。、私も、その日はすぐ寝たのでアリバイがありません」

 

 これで、六人。15人から減ったと思えば朗報に聞こえるが、しかし犯人となり得る人物が六人いると思うと先が長すぎる。諦めの心もまたじわじわと大きくなっているのがわけるほどに。

 

「こっからどうすんねん。アリバイない奴らからランダム……ってわけにもいかんやろ」

 

「ワタシ様権限でこいつに投票!とかができないのはわかってるし、さっさと答えだせ!まぁワタシ様はもう知ってるけどな!」

 

「うん、耀ちゃんは静かにしててね。ともかく凶器を持ち出せる人間は絞れたし、あともう一歩なんじゃないかな」

 

「もう一歩、ですか?」

 

 思わず聞き返す。

 

「そう、もう一歩。なんとなくだけど、あと少しで犯人に届く……そんな気がする」

 

「なる、ほど?あの、伽前さん……この後は何かあるんですかね」

 

「……ごめんなさい、私が思いついていたのはここまでなの。犯行時刻がわからない以上、もっと狭めるのは困難……」

 

「ウチも殺人は専門外やし、お手上げばい!」

 

「そうだね、せめて数式や化学式のように簡単なものであれば良いんだが……人間はやっぱり難しいようだ」

 

 裁判が始まり、もう何度目かもわからない壁。『1回目だから』『まだ2回だから』とだましだましやってこれたが、ここまで来て道が閉ざされているとなると、今までの日にならない重さを感じさせられる。そして、裁判所にまたもや静寂の時が音訪れた。

 

『あのさぁ、さっきからウジウジウジウジして、オマエらなんなの?死にたいの?ここは学級裁判なの!すでに生徒が一人死んでいるし、この中に殺した生徒がいるの!

 

 その事実は変わらないんだよ!いつまで逃げるの?それともあれかな、おしっこに行きたいのかな?尿意が限界だったりして?

 

 いいからさっさとそのつまんない展開をやめてよね!』

 

 静けさを打ち破ったのは、モノクマだった。待ちくたびれた、飽き飽き、そんな事を言いたいのだろう。不愉快で耳障りで吐き気がする、そんな声が、この瞬間だけは私の助けになってくれた気がする。

 

 

 

「それに賛成です」

 

 

 

『おひょ?』

 

「ウジウジしてるし、死んだこを考えないようにして、あくまで犯人だけを追いかけようとしていました。死と向き合うように見えて、ただ逃げていただけでした。そして、悔しいですけどモノクマの言う通り、この展開はツマラナイです」

 

「ララ、お前……」

 

「みんなが生きるのを諦めて、どうせ謎は解けないと思い込んで、努力もせず足掻きもせずに死の運命を待つだけ。これの何が良いんですか、絶望の何が良いんですか」

 

「霧ヶ原……」

 

「それと尿意も催してます、ちょっとだけ」

 

「そうだったんすか!?」

 

「でも、絶望も、尿意も、いずれ最悪の未来が来るだけだとしたら、私はそれを回避したいです。どうせ逃げるなら、最良の結果に逃げたい。だから私が、犯人を見つけて、モノクマごとその座から引きずり降ろしてあげます!」

 

 ビシッ!とモノクマに指を向ける。しかしそんな啖呵なんてどこ吹く風といった様子で、普段通りの笑みを浮かべていた。

 

『うぷぷぷ。それってさぁ、結局ファングスタさんの死から逃げてるだけなんじゃないの?』

 

「ええ、そうです。怖いものから逃げるのは否定されるべきことではないと、思います」

 

『自分を正当化したいだけなんでしょ?言い訳をしたいだけでしょ?さすがに自分勝手過ぎるよ〜』

 

「自分勝手でもいいです。それで私が――いえ、みなさんが助かるなら」

 

 これにはさすがのモノクマも呆れたのか、『あーもういいよ、勝手に進めたら?』と興味を失ったようだった。

 

「それで、霧ヶ原。類を見ない傲慢な態度をとったからには何か策でもあるのかしら。まぁ何も思いつけない私が言えた義理じゃないけど」

 

 伽前さんが、笑顔で私に問いかける。私を信用して、私を信頼している、そんな顔だった。初めての友達のためにも頑張らなければいけない、そう思わされる。

 

 けど、別にどうやったら見つけれるかはわからないんだよね……六人の中からさらに絞れる要素とかがあればいいんだけど……。

 

「なんかないでござるか?この際、黄楊殿でも構わん」

 

「この際って……まったく君は学べない子だね、私に勝てないくせに同じように喧嘩を売るとは。理解しきれないが、同時に興味も湧かない程に酷い思考回路だ。一度他人と脳みそでも並べて違いを見てみたいものだね」

 

「ほぉ、言うではござらんか。所詮は知識をひけらかすだけの猿にしては随分とまぁ自分を客観視出来ているようだ」

 

 あー、私が考え込んでいる隙に喧嘩始めちゃった。

 

 水と油というか、ウマが合わないというか……その次元で収まるのかな、あの二人。別にとてつもなく対照的とかそういうわけでもないのに……。

 

「対照的……アリバイ……ああっ!」

 

「なんだと!霧ヶ原殿も拙者の脳みそを他人と比べようとするのでござるか!」

 

「ふむ、どうしてそう思ったのか……興味深い。霧ヶ原ララが私たちのどちらかに傾くとも思えない。なにか深い理由があるのだろう?」

 

「違います!誤解です!私が言いたいのは、夜も朝も、両方ともアリバイがない人を探せばいいんじゃないですかね!」

 

 何人かはこれで気が付いたようだ。伽前さんに至っては「思いつかないなんて恥ずかしいわ……」と顔を覆っていた。

 

「朝……なんで朝っすか?」

 

「さっきの議論で、朝死体が移動したんはわかっとるとよ。やけんあとはその死体の移動が出来る人を探せばいいってことやね!」

 

「はい、その通りです。私は今朝、体育館に向かってそのまま食堂に行きました。移動させる時間はないはずです」

 

 私を皮切りに、夜のアリバイが無い人が語り始める。

 

「オレは朝、伽前と同じタイミングで部屋から出たぞ。ただその時間帯的に運ぶことは出来んでもない気がするんよな……」

 

「それなら私もアリバイ無しのままね」

 

「カリンは朝走ってたから無理だと思うんだけど」

 

「うーん……松風さんはどうですか?」

 

 想像よりも朝にアリバイがある人はいない。この方法だと犯人を絞りきれないのだろうか。取り敢えず先に全員の話を聞こうと思って尋ねてみたが、反応がない。

 

「……耀ちゃん、もう言うよ」

 

「あっ……う、うん」

 

 「?」

 

 頭の上にハテナが浮かぶ。なぜ松風さんのアリバイの話で三山先生が……あ、もしかして一緒にいたとか?

 

「昨日の夜、耀ちゃんは私の部屋で寝ていたよ。そして、朝も私と一緒に起きた。だから、朝のアリバイ完璧」

 

「なるほど、そういうことだったのか。でも私も小島と一緒に寝たりしてるし、そこまで恥ずかしがることではない筈だが……」

 

「仕方ないだろ!布団で漏らしたからハダカで春百のところに行ったとか言えるか!……あっ」

 

 一同、絶句。三山先生は「あちゃー」と額を押さえ、松風さんは顔を真っ赤にしていた。

 

「まぁ君ぐらいの身体の大きさならそういうこともあるさ。むしろ漏らさない戛戛の方がおかしいんだ」

 

「サラッと拙者を愚弄するな!それに拙者のほうがちょっと大きいわ!」

 

「あの、その、えっと……と、とりあえず松風さんのアリバイは成立、ですよねぇ?」

 

 入蠱さんがいい感じにまとめてくれる。ありがとう、入蠱さん。

 

「ほんなら残念やけど……オレと伽前のどっちかが犯人っちゅーわけか」

 

「……」

 

 伽前さんがまた何かを考えている様子だった。

 

 本当にこの二人が犯人?何か見落としてない?

 

 私の直感が語りかけてくる。いや、間違ってないはずだ。だって私も三山先生も松風さんも西田さんも……。

 

「あれ……?」

 

 あの朝、西田さんは私よりも後……競争したときに、ドベで部屋に着いていた。たしか7時10分ぐらい。そして、私も久岡さんも、西田さんが部屋に戻る瞬間は見ていない。なおかつ、久岡さんも西田さんも食堂に来たのは最後で、7時40分ぐらいだった。

 

 つまり、西田さんも犯行は可能……?

 

「西田さん、部屋に戻って食堂に来るまで30分ほど時間がありましたよね、それなら犯行は可能なのでは?」

「んっ!?あー、まぁ私はシャワー浴びてたけど、他から見たらそうよね、うん。アリバイが無いと言えるわ……」

 

 西田さんは素直に認めてくれた。これで合計3人がアリバイ無しということになる。また行き止まりだけど、それでも諦める気はない。他のみんなも同じようだ。

 

「でも、ここからどうしたらいいのかしら〜。これ以上は進めないわね」

 

「ここから進めないなら別の道を使えば良いと思いますわ!」

 

「秋文字さんの言う通りです」

 

「えっ、そうなんですか!?場を和ませようと言ってみただけですのに……」

 

 あ、そうだったんだ……。

 

「でも霧ヶ原。別の道を使うといっても残っているのは……」

 

「佐藤さん、わかっています。残る道は、密室の謎のみです」

 

「つーことはあれか、ようやくコイツを解く時が来たってわけやな!」

 

「気合十分なのは良いけど、解ける算段はあると?」

 

 はっきり言って、またもや何もない。ホントに何回目の行き止まりなんだか。

 

「そうね、この3人の中に犯人がいるとすれば……1つ、思いついた物はあるわ」

 

「「っ!?」」

 

 伽前さんのその言葉に、全員の視線が向く。

 

「そもそも私たちのような女子高生に密室なんか作れると思う?園神もえはあんなだし、西田果凛もあの様子。私が犯人ではないのだから、密室なんて作れないと判断するわ」

 

「なんやひどい言い草やけど、そもそも密室が作れへんかったら謎も生まれんやろ!」

 

「そーだそーだ!てゆーかカリンの事バカにする必要なかったでしょ!」

 

 2人の文句を無視して、続けていく。

 

 

 

「だからね。つまり『密室は最初から無かった』のよ」

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