ビューティダンガンロンパ女学園 咲き誇る花園と這い寄る絶望 作:カセットコンロォで焼いた豚
「あっ!」
その瞬間、私は理解した。
「……私たちにも分かるように説明してくれないかな」
三山先生の言葉に頭を縦に振り、伽前さんに目配せをして、私が説明を始めた。
「まず、死体を発見したのは私と伽前さん、そして西田さんでした。状況としては、なかなか来ない入蠱さんとファングスタさんを心配して部屋までいったという感じです。
その時、伽前さんが入蠱さんの部屋を開けて入り、西田さんがファングスタさんの部屋を開けました」
「ふむ、そういうことか、なるほど。つまりは西田果凛、この子が自分から名乗り出たんだね?」
やはり黄楊さんは察しが良い。黙って頷く。
「どちらの扉も、最初は開きませんでした。しかし途中でモノクマがやってきて、すべての部屋の鍵を開けたんです」
「だから密室、というわけでござるな。今のところ密室は完成しているように感じられるでござるが……」
今度は首を横に振った。
「いいえ、このときすでに私たちは勘違いをしていたんです。犯行現場……ファングスタさんの部屋は密室なんかじゃない。そう、"部屋に鍵は掛かっていなかった"んです!」
「ってことはっすよ?つまり……いや、冗談は良くないっすよ、ララちゃん」
震えた声で、歪んだ笑みで、久岡さんが私を見つめる。嘘だよね、悪い冗談はやめて。そう言いたげだった。しかし、私は言葉を続けるしか無かった。
「つまりこの事件、犯人は――――西田さん、貴女ですね」
◆
「――――は?んなわけないって!」
西田さんは鼻で笑いとばしたが、そこに余裕は無さそうに見えた。声と手は震え、顔は青ざめ、汗をかいているようにも見える。
「それさぁ、証拠ないじゃん!密室の謎が解けないから放置して、その結果がこれでしょ?ふざけないでよ!」
「まぁ一理あるわね。でも、この可能性が否定できないのも、これ以外の可能性が思いつかないのも事実よ。死にたくないのなら、証明してちょうだい」
伽前さんが無慈悲にも反論する。言葉に詰まったようで、西田さんは拳を握ってこちらを睨んでいる。当たり前だ、こんな汚名を着せられるんだから。でも、今はこの選択肢しかない。
「そもそも、密室を作るためには部屋の中に入らなければいけない。シュシュ・ファングスタの部屋にね。それが私や園神もえに出来るのかしら?部屋に入ったのが誰かというのも、西田果凛。シュシュ・ファングスタとの距離感が狭い貴女が一番なのよ」
「くっ……!」
しかしまだ納得していないようで「私は違う!」「うるさいうるさい!」と聞く耳持たずの状態に陥っていた。犯人でも、犯人じゃなくても、どちらにせよ冷静な状態ではなかった。
申し訳ないけど、揺さぶるならここしか無い……!
「西田さん、犯人じゃないんですよね」
「そーに決まってるでしょ!カリンがあんなの殺すわけ無いじゃん!」
「じゃあ捜査の協力、してくれますよね」
「もちろんよ!これいじょー疑われても時間のムダだし!」
「じゃあ、タオルを見せてください」
この場の全員が首を傾げ、何言ってるんだコイツという目で見て、状況が理解できていない様子だった。――私と、西田さんを除いて。
「い、いや、タオルは今無くしてて……」
「じゃあ探しましょう。私の見立てでは重要な証拠になります」
「あーでもほら、今議論中じゃん!むりむり!」
「モノクマ、私は謎を解くためにコレが必要だと判断しました。一時中断し、西田さんの荷物検査をするのは良いですか?」
『そうだねぇ〜……ダメーッ!』
「っ!ほら、無理じゃない!」
『だって既に時間使いすぎてるし、捜査の時に見つけてよそういうのは』
「……」
確かにそれはそうだ。このゲームがコロシアイだということを除けば、モノクマの言う通りだった。
『でも!今回だけ特別に!ご用意させていただきました〜!』
「え…………」
そう言ってモノクマが取り出したのは、黄色のラインが刺繍されているタオル。しかしそれは普通の見た目ではなく、赤黒く変色していた。
「ちちちち、血ばい!」
「念のため血かどうか確かめてみるかい?」
『いいえ、これは血であることを僕が保証します!』
「ならば、このタオルが誰のかという話になるが……言うまでもなかろう」
全ての目が西田さんの方を向く。彼女は小さくブツブツと何か呟いているようだが、反論は飛んでこない。
『じゃあ反論もないみたいだし、行っちゃおうか!』
この場の空気とは正反対な、無邪気な悪の声が響く。
『投票ターイム!』
◆
結果は言うまでもなく、本人を除いた全員の満場一致で西田さんが選ばれた。
『そうです!シュシュ・ファングスタさんを殺し、密室を作り出したのは……西田果凛さんでした〜!』
「おい、どういうことやこれは!」
モノクマの声を聞き切る前に、園神さんが西田さんに掴みかかる。誰も止められなかった。止める気力が、無かった。
先程までは学級裁判ということで気を張り詰めていたが、いざ終わると『西田果凛が殺した』という現実が私たちの頭を押し潰そうとしている。
「カリンはここから出たかった……」
「……あ?」
「カリンはここから出て!パパと一緒に公演して!ママに褒められて!」
それは少女の悲痛な叫びだった。
「友達と遊んで!めっちゃ楽しんで!幸せで!希望に満ちた毎日で……!」
叫びはやがて、嘆きになる。
「それで、高校も、友達いっぱいで……」
彼女を掴んでいた手はいつの間にか無くなっており、掴んでいた本人の怒りは失せているように見えた。
「だからって、殺していいわけないやろ……!」
それは怒りというには弱々しく、悲しみというには浅い、失望のようなものだった。
誰も泣きじゃくる彼女を責めなかった。気力が無いだとか、園神さんが言ってくれただとか、そういうのじゃなくて。
ただただ、やるせなかった。
『何を泣いちゃんてんの!ここから楽しい公演の始まりじゃん!』
「……モノクマ、何を言ってるのかしら」
伽前さんがギンと睨みつけるが、そのクマはお構い無しに言葉を続けた。
『何ってこの後の話だよ!お、し、お、き!』
そこで全員か思い出したらしい。モノクマの説明を。
各々が制止の声を発しようとしたが、それは声の形を作ること無くかき消された。
『それじゃあ張り切っていきましょう!"超高校級の指揮者"である西田果凛さんのための、超高校級のおしおきです!』
ネコふんじゃった・オーケストラ
彼女は磔にされていた。
白黒の物体が腕を動かすと、同じ動きを彼女はする。
不協和音。観客からのブーイング。
彼女の指揮はとても良いものとは言えず、むしろ最悪とまで言えた。
不協和音の中に、一種類の機械音が混じる。
ギュインギュインと鳴るそれらは、乱暴に腕をブンブン振り回す彼女の周りへと集まっていく。
気の所為だろうか、指揮者気取りの少女の目が僅かに潤んでいる気がする。
その円盤はどんどん彼女のもとへと近づいていき、まず一本、さらに一本と、台に立つためのその二本の棒を切り落とす。
悲痛な叫びは不協和音の仲間となり、回る円盤はダルマを作り上げた。
ああ、なんともまぁ酷い指揮だこと。
コロナで更新遅れました。
今は元気です。エピローグ、すぐ更新します。