青春珍道中   作:安部礼司

1 / 9
初めまして。安部礼司(あべれいじ)です。
何を思ったのか執筆を始めました。これから細々と続けていくつもりです。


第一話

 「最後の連絡です。現在わが南高校では生徒会役員が不足しています。今現在一人しか居ない為、このままでは部活動や委員会などが運営できなくなります。新入生で少しでも興味がある方は3日以内に生徒会室までお越しください。」

 

…は?俺は耳を疑った。生徒会役員が現在一人?どんな猛者が最後まで残ったんだよこれ。バトル○ワイヤルか?そんな漠然とした実に変な感想が頭に浮かんだ。

 自宅から近い高校であり進学校でもあった為、ここを選んだのは必然だったと思う。わざわざ定期買って通勤・通学ラッシュで不快指数Maxの電車に乗るよりも爽快な朝を自転車で駆け抜ける方が自分には合っている。それに校風も自由であり何よりも生徒に活力があるように見えたから何かいい出会い…もとい刺激があると思ってここを選んだのだが、どうやら生徒会という場所にはあまり縁が無い生徒が多いらしい。

 ―ふむ。新しい刺激が欲しいなら自ら動かなくてはならないか。ならば部活動や委員会の上である生徒会に入るのも一つの手段か―

 延々と長い話が続く入学式の中で、俺―相澤雄二(あいざわ ゆうじ)はそんな事を考えていた。

 

__________

 

 南高校。創設100年目を迎える歴史ある高校であり地元では結構有名な学校である。国公立大学や有名な私立大学に行く生徒が多いわけではないが、それでも毎年数人は良い大学に行く。それなりに有名である中堅大学の幾つかに合格する事を一つの基準としており、2・3割の生徒はそれ以上の大学に行ける進学校だ。

 けれども勉強のみを売りにしている学校ではなく、部活動や年中行事にも力を入れている事でも有名だ。駅から近く交通の便良いため人気が高い。

 この学校は自宅から自転車で30分ほどの距離にあり、周囲の高校の中で俺の実力と合っていた。茶髪OKだったり、制服もカーディガンの色がある程度自由である所などは若干派手だとも考えたが、真面目というよりも生真面目と評価できる性格を少し変えられるきっかけになるかもしれないと前向きに評価していた。

 

__________

 

 「皆さんこんにちは。今日から担任になる高橋だ。まずは委員会や席順などを決めたいが…その前に、生徒会役員になりたい人はいますぐ挙手をしてほしい。」

 初めてのHRでの担任の問いかけが緊張と期待で張りつめた空気の中に響いた。その空気の中で二人分の手が上がった。

 「二人か…相澤と西川。お前達は優先的に委員会を選ぶことができる。どれが良い?」

 担任の声を聞いて俺は思わず右斜め後ろを向いた。すると自分と同じような眼鏡をかけた、同じような体格の人物と目が合った。どうやら向こうの彼も自分を見ていたらしい。二人でお互いに目礼をしながら担任の言葉をかみしめた。

 放送委員とか他のもこれまでやったことないし、無難に学級委員…ここではHR委員か。それが良いだろう。

 「「じゃあ、HR委員でお願いします。」」

 ん?どことなく違和感を覚え再び振り向くと、同じように訝しげに俺を見る男がいた。

 「お前ら仲が良いな~。よし。二人ともHR委員でいいな?」

おいおい…確かに良い出会いとか刺激とかが欲しいと思ったよ。けどなんかちょっと…これじゃないと思うんだよなぁ!なんかこのままだと友情endというかなんというか…。 

 俺が頭を抱えていると周りの奴らの失笑が聞こえた。恐らく奴―西川だったか?も同じく頭を抱えているのだろう。そういえばこの世界には同じような人間が5人ほどいるとか居ないとか都市伝説があったな。間違いなくあいつはソレかニアピンだろうよ。あれ?でも直接ソイツに会うと死ぬんじゃなかったっけ?あれはドッペルゲンガーk「すいませーん!!教室間違えて遅刻しました!」

 さっきまで張りつめていた空気とは違い異様な雰囲気になった教室の空気をぶち壊したのは、丸刈り、というよりももはやスキンヘッドに近い髪型の暑苦しい男子だった。というか、入学初日から自分の教室間違える馬鹿がどこにいるんだ?

 「原田。お前どこの教室に行った?」

 「3年生の教室に行ってました!」

 やっぱり馬鹿だった。そもそも3年生の教室は別塔だ。何故そっちに行ったのだろうか。そんな事を考えていると、彼は唯一空いていた机…西川の隣に座った。どんまい、もう一人の生徒会候補。

 

 

 

Side 西川

 「すいませーん!!教室間違えて遅刻しました!」居心地悪い雰囲気を払拭したのは、暑苦しい男の声だった。何故教室を間違えてしまったのか不思議に思うのと同時に、この空気が変わったことに俺、西川和樹(にしかわ かずき)は少しホッとしていた。

 ずっと入学したいと思っていた高校に合格してその初日に部活どころか生徒会執行部の存続が危うい事を知った。自分としては将棋部があればそこに入部するつもりだったし、なければ自分で部を創設する事も考えていた。

 ―中学でも生徒会はやっていたけど、恐らく高校では全く違うのだろう。 …俺でもできるかな?―

 どれくらいこの高校の生徒会活動の融通が利くのかはわからないが、とりあえず話を聞くだけ聞いてみよう。その後でも考える事はできる。理想としては生徒会を存続させる事が出来るのを確認した後で部活を創設しよう。若しくは内部に居れば自分で部活の許可を出せるかもしれない。

 考えが纏まったところで生徒会役員に立候補すると、同じように手を挙げている生徒が居た。後姿からは男子としか分からない…あっ、こっち向いた。思わず目が合ったので目礼する。

 しかし…なんか気味が悪いというか何というか……すごく自分とシンクロする奴だ。周りからも失笑されてるし。でも、これから彼とは長い付き合いになるかもしれない。そう考えると仲良くした方が、少なくとも普通に雑談ができるくらいの関係にはなりたいな。そんな事を考えながら遅刻した生徒が横に座るのを眺めていた。

Side 西川end

 

 

 

 そんなこんなで今日やるべき事はすべて終わった。俺は早速これから同じ役員となるかもしれないドッペル、もとい西川の席に向かった。ちょうど彼は隣のスキンヘッドと話していた。

 「ちょっといいかな?」

 「あ?ニッシ―、知り合いか?」

 お前じゃねーよ。心の中で突っ込んだ。彼―確か原…だったか?は先程の一件からしてもかなりおおざっぱな性格だな。ついでに馴れ馴れしい。

 「初めまして。俺は相澤、相澤雄二って言うんだ。さっき生徒会執行部役員の立候補をしててな。確か君も挙手していたよね?西川君。」

 「あぁ、確かにそうだ。俺も挨拶しようと思ってたんだが…」

先を越されたな、と彼は呟いた。俺よりも細面な顔と神経質そうだが人は良さそうな印象を受ける。隣に座っている原はいかにも体育会系のアツい印象で、体も引き締まっている。

 「なに、二人とも。生徒会いくの?かぁーっ、真面目だねぇ。そうそう。俺は原田黒男(はらだ くろお)。気軽に『ジャック』とでも呼んでくれ。」

 いやいや…気軽にジャックなんて呼ぶ奴がどこに居るんだよ。確かに某漫画の医者と同じ名前してるが、そんな呼び方しねぇよ、ふつー。

 しかし、そんな俺の考えとは異なり、原、じゃなかった原田は俺からあだ名を呼んでもらいたそうな顔をしていて、西川も少し苦笑いしている。

 「まぁ、兎に角これからよろしく。それよりこれから早速生徒会室に行ってみないか?どうせ行かなきゃいけないなら、今一緒に行った方が向こうも楽なんじゃないか?」

 「うーん…そうだね、じゃあ、一緒に行こうか」

 二人して生徒会室に向かおうとすると、「俺も暇だし行ってみよー」とのんきな声と共に原田がノコノコとやってきた。

 …遊びに行くわけじゃないのだが。大丈夫なのかこれから先色々と。そう考えながら心の中で俺はため息をついた。

 

 

 

―『青春』という言葉がある。若いからこその活力とは何だろうか。学業?運動?それとも恋愛?その中で彼らは何を手に入れ、何を失うのか?…これはそんな数ある青春の一つの物語―

 




これから生徒会室でのやり取りがあるため、まだ彼らの初日は終わってません。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。