青春珍道中   作:安部礼司

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第二話

Side 原田

 やべぇー!や ら か し た!!

 便所から帰ってきたら誰も居なくなって焦って後を追いかけたらまさか3年生の列だとは思わなかった。…初日から遅刻した新入生ってもしかしたら初めてなんじゃないか?そう考えると俺ってすご…くねぇよ!現実逃避をしながら俺は全力疾走で静かな廊下を駆け抜けた。

 

 放課後にようやくなったが…疲れた。肉体的にも精神的にも相当キテるわ。全力疾走したことに続いてクラスの目がヤバい。確かに俺が変に目立っていたことは認める。でも動物園のパンダじゃねぇんだから鑑賞しないで欲しいんだよ、俺は。

 そんな事を考えつつ、唯一周囲で俺を見物していなかった隣の男子に目を向けた。すると視線を感じたのか彼もこっちを見てきた。せっかくだし声をかけとくか。と言うより…

 「俺が居なかった間になんか連絡あった?」

 俺にとってクラスに誰も話す人が居ないのは死活問題だ。

 「特に無かったかな。えっと、原田君?」

 「おう。俺は原田だ。原田黒男。ニックネームは『ジャック』だ。」

 「そ、そうなんだ…。あっ、俺は西川和樹。別にどんな呼び方でも良いよ。」

 「分かったニッシ―。」

 

 ニ、ニッシ―…か。と言いながらニッシ―は少し複雑な顔をしていた。ん?気に入らなかったか?まぁ、大丈夫だろ。俺は悪い奴じゃなさそうだったことに安心し、喋れる人ができた事に安堵した。

 その後ニッシ―にどことなく似ている男が彼に話しかけてきた。眼鏡をかけた如何にも学級委員やってましたって感じの真面目そうな男だ。これはニッシ―にも言える事だが、彼とは違い今来た男は纏っている雰囲気が少し普通の人とは違った。見た感じスポーツマンって感じでも無いから…武道経験者か?後で訊いてみよう。

 気が付いたら二人ともどこかに行く準備をしていたので、俺も一緒について行くことにした。そういえば、『オヤジ』が生徒会に行くとか行かないとか言ってたな。どうなんだろう…?

Side 原田 end

 

 

 

 3人で生徒会室前まで着くと、扉の前に既に何人かの男子生徒が来ていた。…さっきも思ったが、ここって確か女子の方が少し多い学校だよな?何で俺と縁があるのは男ばかりなんだよ。そんな下らない事を考えていると、突然原田が騒ぎ始めた。

 「おいオヤジ!なんでお前ここに居るんだよ!?」

 「あん!?いきなりなんだようるせーな!」

 いや、うるさいのはお前らだよ。っつーかお前らなんだ知り合いか?それにあのバカは何回イベント起せば気が済むんだよと若干苛々しながらため息をついた。原田とギャンギャン言い合っている男の背は俺より少し低い。眼鏡をしていて確かに『オヤジ』っぽい雰囲気を醸し出している。俺も人の事は言えないが。20~30歳に見られる事も多いし。

 「二人ともやめなよー」「とりあえずお前ら落ちつけ」

 さっきまで扉の前に居た…男、だよな?と西川が事態を収拾しようと努めていた。

 「とりあえず、自己紹介からしない?ボクは木ノ原友紀(きのはら ゆき)。1-4だよ。」

 西川と一緒に頑張っていた男が言った。しかし『ボクっ子』かよ…。確かに見た目も顔も中性的だしあってない事もないかもしれないが、なんだか人を小馬鹿にしている感じにもとれる。要するに俺の苦手なタイプだ。

 

 「1-8の相澤雄二だ。」「同じく1-8の西川和樹。」「同じ1-8、原田黒男」「1-3の岸幸弘だ。」

 

 原田と言い争っていた男、岸も原田と一緒に自己紹介した。

 

 つーか

 

 「「なんでコイツ(原田)の『オヤジ』なの?」」

 

 最大の疑問を西川と共にぶつけた。

 「それには海よりも深く山よりも険しい訳g」「要するに、腐れ縁だ。」

 …どうやら昔馴染みの知り合いらしい。という事は岸のあだ名か?まぁ、原田のネーミングセンスは自分のも含め独特なものだからな。

 

 そう自分で納得しながら視線を再び生徒会室の扉に移すと、もう一人この場に居る事に気付いた。扉に寄りかかりながら本を読んでいる。見た感じは俺よりも背が高くやや太っており、のんびりとしたオーラを放っている。あれだ、動物園のパンダみたいな感じだ。

 「そいつは戸羽雅夫。俺と同じ3組だ」

 俺の疑問を感じ取ったのか岸が代わりに紹介してくれた。しかし本人はあまり気にしていないのか、それとも気付いていないのか分からないが微動だにしない。大物なのか鈍いのか判断に困るな…。

 

 

 「あっ!新入生の子がいっぱい来てるよ!」「あーっホントだー。」

 

 

 おぉ、ようやく先輩方が来られたらしい。皆動きを止め声のした方向を向くと、2人の女子生徒が小走りでやってきた。

 「お待たせしました!私が今のところ最後の生徒会役員、田辺真理(たなべ まり)です。」「私は元生徒会役員、新垣由美(あらがき ゆみ)。よろしくね。」

 随分仲が良い先輩方のようだ。田辺さんは美形な感じで、新垣先輩はどちらかというと可愛いに近い人だ。大人っぽい先輩と少し子どm、もとい幼げな先輩方の後をついて行きながら、この学校に入学してようやく女性と知り合えた事にホッとした。

 

__________

 

 「さて自己紹介も終えたしまず訊きたいけど、皆どの役職が良い?」

 あれ?そんな簡単に決められるんですか?というより、田辺先輩が生徒会長なんじゃないのか?

 「私は会計担当だよ。」

 えっ!?心を読まれた…じゃなくて会計!?会計よりも重要な役割があるんじゃないのか?恐らく俺を含めた何人かがそんな事を考えている中、この疑問を解決したのは意外にも戸羽だった。

 「会長、副会長、会計、庶務の4種類の役職があるけど、恐らく日常的な雑務の中で最も忙しく又重要な役職は会計だ。だからこそ部活動や委員会が無くなりそうなんだよ。…主に予算編成や部費、諸費に関してね。」

暇だったから生徒手帳を一読したら理解できたと言う戸羽に拍手を送る原田と木ノ原。彼の完璧さや知識欲を称えている二人だが、俺を含めた他の人たちはむしろ『天才と馬鹿は紙一重』『天才ほど奇人変人が多い』といった言葉を思い描いていた。

 「ま、まぁ、確かに戸羽君が言った通りだけどね。去年は私たちの先輩が居たから何とかできたんだけど、今年はガキちゃんも生徒会やらないし…。ほぼ最初からのスタートだね。」

 先輩達曰く昨年は1年と3年のみの生徒会だったため、今年のような現象が起きたという。なんてこったい…。まぁ、とりあえず6人居るし何とかなる「ちょっ、ちょっと待ってくんさい!俺は生徒会に入らないっすよ!?」

 

 

・・・・・・はあっ!?×7

 

 

 思わず発言者 ―原田以外の全員が彼を凝視した。…そういえばあいつまだここに居たのか。

  ― 生徒会最初の仕事は、まず邪魔者を追い出すことから始まった。

 

 

__________

 

 

 「さて、余分な物も取り除きましたし、決めましょうか。ちなみに俺はどこでも良いd」「じゃあ、会計決定ね。イヤー助かったわー(棒読み)」

…せめて最後まで発言させてください(涙)

 

 先輩直々の推薦(?)により、会計という役職に就いた。岸は「俺は自由にやりたいから庶務やる」とのこと。早速生徒会室のパソコンを起動させたりコピー機を見たりと主に機械類を見ている。西川は副会長、戸羽は俺と同じく会計になったようだ。

 

 そして木ノ原はというと・・・

 

 

 「よーし、ボク頑張るよ!」

 

 

 いきなり先行きが不安な生徒会、及び生徒会長が誕生した。  ん?原田?あいつは…

 

 

 

 

「ちょっ、ま・・・アァッーーーーー」

 

 

 

 

田辺先輩に任した。なんか先輩の友達も一緒にいたがあの竹刀と木刀で今頃絞られているだろう。翌日のあいつは椅子に座るのも痛いのか尻を庇いながら授業を受けていた。

 

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