青春珍道中   作:安部礼司

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月一と言ったのにギリギリになってしまいました。
…2月は28日までだった事をすっかり忘れていた事が主な原因です。


第七話

 合唱祭から一週間が経過した。優勝は結局下馬評でも一番人気だった岸や戸羽たちの3組だった。また、事前の予想とほぼ外れる事もなく1組と4組がその後に続いていた。

 唯一…というか完全に予想外だった事は、我ら8組が最下位ではなく7位というブービー賞を取れたことだった。これは本当に予想外過ぎて結果を知った日の8組全員が呆けた顔をしていた。対して最下位の7組も呆気にとられていたが、すぐに音楽の先生に抗議に行ったようだった。これについては8組の面々も気になっていたようで、2クラスほとんどの生徒が昼休みに音楽室に行ってみると・・・

 

 「あぁ、あれ?原因はクラス紹介と減点だね」

 

 とのことだった。もう少し詳しく訊ねてみて分かったのだが、いわゆる『どつき漫才の禁止』に該当してしまったらしい。これには先生方の中でも意見が別れたが、多数決の結果一票差で該当する事が決定したとのこと。

 加えて、歌う時の姿勢が全員『手を後ろにして』歌っていたようで、実はこれも減点対象だったらしい。

 言われてみれば、自分たちのクラスも含め全員『起立』の姿勢で歌っていたが、手を後ろにやると声の広がりに差が出てしまい、平等性を欠くことから禁止されているとのこと。このルールを知っていたのは芸術科目の音楽選択のみだったらしく、7組の音楽選択はその事を伝え忘れていた。後日彼らは俺たち三人が当日受けていた以上の恨みがこもった視線の数々に悩まされた事は言うまでもない。

 

 

 

 

――――――――――

 さて、合唱祭も終わり残すところは夏休みとその前にある期末テストのみとなった。これまで部活を休んで練習をしてきた生徒がほとんどで、クラス練習に注いでいた力を部活動に入れ替えられる切り替えの早さには正直驚いた。そして我ら生徒会も部活動と同様に活動が活発化している。

 

 「…なぁ戸羽、俺たち生徒会なのに何で『部活動』みたいな位置づけになってるわけ?どちらかというと『委員会』みたいな印象だったんだけど」

 「岸。生徒会の正式名称を言ってみろ」

 「ん?『生徒会執行部』だろ?」

 「ほら、お前も言っただろ?生徒会執行『部』と。大体、委員会は毎日集まらない。精々一月に一回顔合わせがあるくらいだ。活動の頻度や名称からも、俺たちはどちらかというと部活動に近い位置づけになっている事がわかるだろ」

 

 会長や副会長は生徒部主任から呼び出されている。通常生徒部主任というと問題児の説教といった印象が強いけれど、そういった呼び出しではないだろう。恐らく何か先生方との話し合いだろう。庶務の岸と会計で手が空いている戸羽は書類の整理に追われている。

 俺は言わずもがな、合唱祭の期間出さなかった書類及び夏休み期間に向けて買い出しに行っている部活動の会計書類に追われている。これまでで一番書類の数が多く、10枚ほど処理した後で事務課に提出して戻ると、処理待ちの書類がまた5・6枚机の上に鎮座している状況だ。

 さて、またやりますか。

 

 

 

・・・・・

 「「ただいま~」」

 残っていた書類も事務課に提出し、煩雑と広げられていた書類の整理も一区切りついた俺たち三人が休憩していると、先生方との話し合いが済んだのか二人が戻ってきた。

 

 「おう。先生からの呼び出しはどうだった?」

 「大丈夫だったよ。別に怒られたわけじゃないし」

 

 …別にそんな事を聞きたかったわけではないのだが。少し抜けている返答をした木ノ原の返答に苦笑いしながら西川が言った。

 

 「いくつか先生から仕事を指示されてね。意見箱に集まった生徒からの要望を纏める事と、生徒会室の備品について色々と訊かれたかな」

 「…ということは、ここにある漫画とか食い物とかの事について注意されたのか?」

 「いや、それに関しては何も言われなかったよ。まぁ、部活動の部室も結構こんな感じらしいし、ゴミの分別さえきちんとしてれば大丈夫じゃない」

 

 そんなアバウトな。まぁ、この環境も落ち着くし割と好きだからあんまり変えたくはないのだが。

 

 「というわけで、皆一区切りついているようだしお茶を飲みながら意見箱に集まっていた要望を見ようか~」

 

 相変わらず気の抜けたような、ゆったりとした声で木ノ原は皆に指示を出した。

 

 

 

・・・・・

 

 意見箱と言っても頻繁に生徒が利用しているわけでは無い。むしろ存在を知らない生徒が半数以上であり、入れる者はよほどの物好きか本当に意見がある人だけとのこと。去年は生徒会の人数が足りなかった事もあり一度もチェックしなかったようだ。今年でようやくそれなりの人数を確保できたという事もあり、久しぶりに意見箱の中に入っていた要望を審議しようというのだ。

 悪戯として入っていたものなどを除いた結果、以下の3つの要望書が入っていた。

 

 

 

 『二年前にあった生徒会が保持しているボールの貸し出しを再開させてほしい』

 『文化祭最終日の後夜祭を復活させてほしい』

 『文化祭にミスコンを復活させてほしい』

 

 

 

 「ざっとこんなものだね。順番に検討していきますか」

 

 意見書の仕分けに疲れた木ノ原に代わり西川が審議を進め始めた。

 

 「まずはボールの貸し出しか。でも何で今は貸し出さなくなったんだ?」

 「授業に遅れる奴らが多かった事、ボールの回収率が悪かった事、後は扱いが雑すぎた事だったらしいぞ。さっきの書類に書いてあった」

 

 そういえば多くの中学校では休み時間のボールの貸し出しがあったな。と思い出しながら訊ねてみると、先程まで膨大な書類を整理していた岸が返答した。ただ呆然と整理していたわけでは無かったらしい。

 

 「原因が原因だよな…ぶっちゃけ生徒のマナー違反だろ?それに昼間の生徒会室ってお湯やら会計の書類を取りに来る奴らが多い中で、ボールの貸し出しなんかできるか?」

 「でも、『生徒会執行部員が忙しいから貸し出しません』なんて公に返答できないよ。現にボールは未だに生徒会が持っているなら有効活用すべきなんじゃないかな?」

 

 続けて岸と木ノ原がそれぞれの意見を述べ、あぁでもないこうでもないとディベート形式で話が進んだ。貸し出しに賛成派は『今ボールが有るのならば、再開しても良いのではないか』という意見なのに対し、反対派は『再開しても、また同じ理由で中止になる』という意見でまとまっていた。

 その中で我関せずとばかりに黙っていた戸羽が、おもむろに口を開いた。

 

 「要するに、今生徒会がボールを所有している事が問題なのだろう?仮にボールの貸し出しが許可されない場合、このボールはどういった処分になるのか分かる人はいるか?」

 「先生が言っていたには、すべて廃棄処分になるらしいよ?」

 

 「「「「…は?」」」」

 

 木ノ原曰く、ここにあるバスケットボールやサッカーボールは既に使い古されたものらしく、部活動では使えない物らしい。加えて生徒部主任自身が「処分するなら、生徒会全員でこのボールに穴開けてね」と事前に依頼していた。『そういう事は早く言えや!?』と俺たちが突っ込みを入れ、木ノ原は涙目になった・・・・・男がそんな顔するな。仮にも男なんだから。

 

 「じゃあどうしようか~…。捨てるのは勿体ない気がするんだよね~。」

 

 確かにな~…と皆が再び考え込んだ中で、俺はふと思い出したことがあった。

 

 「なぁ、寄付する事ってできないか?」

 「寄付?どこにだよ」

 「いや、地元の児童館に行ったとき、昔はあったボールとかがもう駄目になっちゃって購入しなきゃいけないけど予算が無いとか職員さんがぼやいてたんだよ。児童館って確か市の運営だったから、そこと話を合わせて寄付できないかな?」

 「確かに寄付できるなら捨てるよりは良いが…。そんなことできるのか?」

 「やってみるよ。先生方と話してみよう」

 

 その後少し皆と議論したが、『寄付できるならそれが良い。できなければまた話し合おう』という結果に落ち着いた。さて、残りの二つはどうなる事やら…。

 




残りの二つも、ちゃんと次回で話し合います。続け、八話へ。
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