実に一年近くかかってしまいました。本当に久しぶり過ぎて文体も微妙かもしれませんが投稿します。
あのカオスな意見箱騒動から一週間ほど過ぎた現在。あと一月もしない内に夏休みが始まろうとしている。それを示すかのように最近は気温・湿度が日に日に高まっているように思えてしまう。とはいえ、学業に支障することは無い。生徒会室も含めほとんどの教室にはクーラーが設備されており、熱さを感じるのは廊下や下駄箱、体育館など特定の場所のみである。
本来ならば夏休みになる事を心待ちにしている所だが、殆どの生徒はそんな余裕が無い状態になっていた。
夏休み=学期末=テスト
そう、期末テストなるものが近づいているからだ。
これで赤点といった酷い点数を取ってしまうと夏休みの大半が補講で埋まってしまうという最悪の状況に陥ってしまう。上級生の中には受験対策として自ら補講を受ける人もいるらしいが、せっかくの高校生活最初の夏休みを補講という名の牢獄で過ごしたいとは思わない。だから、普段勉強なんてしないと豪語している相田でさえも進んで放課後勉強をしている。…まぁ、見るからにダルそうにしているが。
生徒会活動、もっと具体的に言えば会計の仕事も他の生徒がそんな状態の為か殆ど仕事が無い。それをいいことに生徒会メンツと先輩勢、相田と原田を加えたメンバーで勉強会と相成っている。各々が得意分野を教え不得意分野を訊くという具合で進んでいるが、案外これはバランスが良い。俺、西川は文系科目。原田、岸は理系科目を中心として教えられる。
特に原田は数学特化と言ってもいいほど数学のみを勉強している。本人曰く「俺は性格的に一点特化型なんだよ」とのことだ。相田は原田と正反対の国語特化型であり、戸羽はすべての教科に強い。木ノ原は本人曰く理系らしいが、かといって理系を人に教えることが出来ない。というよりも、人に教えるのが苦手なのだ。唯一教えられるのは国語と数Aだが、そこは他のメンバーがいるため、完璧にオブサーバーとなっていた。
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そんなある日、朝の担当だった俺は早目に学校に来てポットの準備をしていた。こんな暑い日だというのに、カップ麺を昼食としている生徒は意外に多い。中には激辛麺を罰ゲームのように食べている奴もいる。
一通り準備を終えふとホワイトボードに目を向けると、昨日書かれていなかった問題がそこにはあった。
問) 次の式の解を求めよ
(x-a)(x-b)(x-c)…(x-z)
最後まで残っていたのは確か理系の連中だった。という事は岸か原田あたりが書いた問題なのだろう。しかし見るからに面倒くさい数式だが…。これの答えは何だろう?
10分ぐらい考えていた所で、面倒臭くなった俺はとりあえず別紙に問題を書き写して綺麗に問題を消した…が、右端に小さく書かれた『明日までに発見者が解けなかったら罰ゲーム!!』の文字を見て固まった。と同時に誰かが扉を開ける音が聞こえ更に慌てた。
「おはよー相澤。どうしたんだ?」
「ニシか…。おはよ。いや、朝仕事を終えて一休みってところだ」
最近になって西川の渾名は原田が名づけた『ニッシ―』で定着してきた。俺だけは“にしかわ”を略して『ニシ』と彼を呼んでいる。
「そう。お疲れ様。そういえば先週の数学の小テストなんだけどさ…」
・・・俺はあの問題の事を極力意識の隅に追いやったまま、ニシと始業のベルが鳴るまで話し込んだ。そこ、ヘタレとか言うな。
その後やっぱりあのメッセージが少し怖くなり、授業の大半の時間を無駄にしてようやく解けた。こんな捻くれた問題を出すのは恐らくあの原田(バカ)だと思うのだが…。なんとなく癪に障ったので、放課後全員帰った後でホワイトボードに新しい問題を書いて学校を出た。
Side 西川(ニッシ―)
今日は早目に来て仕事をする日だけど…。
「なにこれ?」
昨日帰る時にはこんな書き込みは無かったのに。
Q) He is a girl . Who is she?
一体彼は何をしたいのだろう?いや、たぶん、というか十中八九答えはわかってるんだけどさ。とりあえず解答を書いたけど
「おはよう、ニッシー」
「うわっ!…岸君か。おはよー」
びっくりしたー!?別に悪い事をしていたわけじゃ無いんだけどね。いきなりだったから変な声が出たな…。そんな僕を少し訝しげに見ていた岸君だったけど、すぐに興味が無くなったようで現文の教科書と睨めっこし始めた。
「だぁ~…何で日本人なのに『国語』なんかやんなきゃいけねぇんだよ」
「ハハハ…まぁ、小学校からある科目だし」
「そもそも、『この時○○の心情と作者の技法で正しいのはどれか』なんて、作者に直接訊いたわけじゃ無いのに分かるわけねーだろ。中には問題を見て『俺の考えとちげーわw』とか考えている作者だって一人はいるだろ!?」
その後もずっと岸君はクドクド文句を言い続けていた。このホワイトボードの問題どうしよう。答えとなっている本人が見たら起こるだろうし。とりあえず裏にしておけばいいでしょう。次の係りの人への暇つぶし用の問題だったのかな?でもそれにしては変な問題だったし。まぁ、ネタのような問題でも出しておきますか。
Side 岸
あぁ、なんかイラつくな。大体古文とか読めて何になるんだよ。現代語訳されてる本なんか山ほどあるわ。テスト、主に国語に対しての面倒臭さにムカムカしながら朝番をしていると、ホワイトボードに何か書いてあるのが見えた。
「あん?何だこりゃ?」
まるで教科書で書いてある「ザ・見本」のような几帳面な文字で書かれているだけに、出題者がニッシ―であることが伺える。
問) 次の漢字の読みを答えよ。
(1)安足間 (2)左沢 (3)酒々井 (4)坂祝 (5)特牛
・・・?簡単じゃん。これ全部駅名だし。そういやアイツも俺と同じ鉄男だったな。こんなん楽勝楽勝。ちょちょっと書いてまた裏返し…そういや、昨日ビックリしてたのこれか。確か次は―
「何やってんの、岸?」
「うを!?」
あ、こりゃビビるわ。俺もニッシ―馬鹿に出来ねぇ。
「いや、とりあえず問題解いてた」
「・・・はあ?」
急に現れた戸羽に一通り経緯を説明すると、少しだけ興味深そうに笑ったように俺は見えた。
「なるほど。ニッシ―がそのリアクションを取ったって事は、少なくともその前に問題を出したヤツから始まったってわけか」
「そういうことになる…のか?まぁ、俺は問題解けたから今度の係りの分を考えなくちゃな」
「ほぅ…。すると俺に対して問題を出すのか」
「・・・ゑ?」
・・・その日の授業のほとんどは、翌日の戸羽の為の問題を考えるだけになった。
Side 戸羽
期末テストまでもう残り数日となった。クラスの大半や生徒会メンバーも必死に勉強をしているようだが、そこまでやらなくてもいいのでは?と思ってしまう。やってきた事さえできれば8割は余裕だろうと思うのだが。
さて、昨日岸が必死になって問題を考えていた事は分かるのだが結局何を出したのだろう。そんな事を考えながら生徒会室の扉を開けると、ホワイトボードに書きなぐったような字があった。
問) 1+1を答えよ
・・・・・・
確か、記憶が正しければ証明するのに700Pもの紙を費やす問いかけだったか。或いは某会社の入社試験の口頭試問か何かで問われた事があると噂されているものだろうか。正直どちらの解も正しく、また誤っていると言われても仕方がないものだ。そもそも1の定義から求めなくてはならないわけで…早い話出題者の意図を正しく読み解かなくてはならない。そういう意味では究極の問いかけだな。そんな事を考えながら、俺はゆっくりとポットを持って扉を開けた。
――――――――――
朝の一仕事を終えた後でじっくり考えたが、やはり奴にはこれが一番の回答だろうと答えを記しておいた。最後は会長か…これは問題を出すよりも面倒くさいかもしれないと一人苦笑いをした。
Side 木ノ原(会長)
「なにこれ?」
今日のボクの第一声がこれだった。いつもよりも早めに来て、誰もまだ居ない中で作業するはずだったのに・・・
問) ある死刑囚3人に対し、3つの赤い帽子と2つの白い帽子を見してこう言った。「自分が白い帽子を被っていると分かったら逃げ出してもいいが、赤い帽子なのに逃げ出した場合は射殺する」その後もう一つ白い帽子を加え、3人全員に白い帽子を目隠しした状態で被せた。自分の帽子が見えず、他人に報告する事も禁じ、一定の距離を開けた状態で彼らを一か所に並べた時、どんな行動をするか。
クイズ?とんち?一体誰が、誰に、どうしてこの問題を、どのような意図で書いたんだろう?
しばらく考えたけど、よくわからなかったから放置した状態で朝の当番を終えた。
Side 木ノ原 end
Side 原田
「・・・ここまでが今日までの経緯なのか?」
放課後、オヤジと雅夫(まさお)(戸羽)に呼ばれ生徒会室に行くと、怒ったような困ったような感じで俺を見てくる相澤やニッシ―がいた。最近は勉強に集中していて何も変なことはしていなかったはずなのに、いきなりこの二人の視線。解せぬ。
訳を聴いてみると、どうやら相澤に問題を出した奴が発端で、ここまで一人ずつ変な問題を朝一に出すことになったらしい。しかも、『出された人以外解いてはならない』や『独力で解く事』『その日の内に解く』と、次々に暗黙のルールが追加されていた…とのこと。
「本当にお前じゃないんだな?」
「しつこい!確かに俺っぽい感じだし前科もあるけど…本当に俺じゃないって!!」
「あの日最後まで残ってたのは、岸と原田と戸羽と先輩方ぐらいしかいなかったぞ?」
「・・・でも俺じゃねえって!証拠も何もねぇだろ!?」
一周グルっと回ったからなのか、はたまた最後の問題に木ノ原が答えなかったからか、もしくは自分たちがやっていた事がくだらなかったと気づいたからなのか。何だか八つ当たりじみたテンションで切掛けを作ったヤツを探し出す事になり・・・今に至る。やっぱり解せぬ。
完璧にオオカミ少年状態じゃん、俺。『前科があり過ぎてなぁ』とか『疑わしきは罰せず。とは言うがこれは…』とか!『証拠はあるのか?っていう奴って大体犯人だって相場が決まってるんだよねー』とか!!
「でも、逆に自分が無実だって事も証明できないでしょ?生徒会室に入れる人なんて限られているし、ましてやホワイトボードに何か書ける人っていうとさらに限られるよ」
「(入れる人)-(関係者)=原田 ぐらいしかいないが…」
「素直にはいた方が、楽になるぞ?」
完全に四面楚歌ですよ、えぇ。あとオヤジ、お前だけ俺がやったと確信してるんじゃねぇよ。
こんな感じでぎゃあぎゃあ皆で騒いでいると、HRが終わったのか先輩方までやって来た。あぁこれからが本番、本当のカオスになるんだろうな。と考えていたが、事態は思わぬ方向に。
「あぁ、あれのこと?書いたの私だよ?」
えぇ、そりゃもう吃驚しましたよ。謎解きって、成〇堂君とか〇剣さんとかレイ〇ン教授だってちゃんと論理構成して徐々に解き明かしていく感じなのにあっさりと結論が出たんだから。
どうやらホワイトボードに最初に書き込んだ犯人は川島先輩で、元々新垣先輩あてに出した問題だったらしい。けどホワイトボードに書き込んだはいいものの、勉強に飽き始めていた先輩方は何時の間にかガールズトークに発展してそのまま帰宅してしまったとのこと。相澤がビビッていた注意書きもなんてことは無く、いつも(?)の悪ふざけの一環だったらしい。
でもってその書き込み自体忘却の彼方に忘れた先輩は、自分の書いたものが今回の問題の出し合いになっていることを知ると腹を抱え笑った。結局それぞれが出したマニアックな珍問題を皆で出し合うことに。一部の問題でゴタゴタはあったものの、それぞれの個性が出ていたモノに仕上がっていて盛り上がっていた。
それ自体は面白かったんだが・・・
「ほら見ろよ、さんざん俺は無実だと訴えたのによぉー誰も信じてくんねーんだもんなー」
『自業自得だ』
ここだけは許せなかった。
ちなみに、問題の答えは気が向いたら投稿しときます。
今度投稿できるのはいつになるか分かりませんが、またポツポツと書いていますのでよろしくお願いします。