病弱剣士がダンジョンに潜るのは間違っているだろうか?   作:病弱系キャラクターすこ

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神はこれをフラグというらしい。

 さて、ベルくんを探すことはやぶさかではないのだが、どこにいるのか……皆目見当もつかない。そもそもなんでベルは飛び出したのか。私が出ていくならわかるが、そもそも君は出ていく理由なんてないだろう。

 

「うーん、今日だけでそこそこの回数発作が起きてるからなぁ」

 

 正直、あまり動き回りたくない。

 …………さて、どうしようか。

 

「ねぇ、そこのあなた」

 

 酒場を飛び出してまで向かう先。

 あの場所にアイズ何某がいた事を考えると、先日のミノタウロス関連で何かあったか。

 …………助けたんだから金よこせとゆすられたか? だとしたら、ベルが逃げ切れるわけないな。うん、これは無さそう。

 

「ねぇ」

 

 じゃあ何? アイズさんの好みが強い男とか聞いて、ダンジョン行きたくなっちゃった? 私を置いて、何より食い逃げまでして? 

 ベルってそんなことする奴だっけ? 違うと思うんだけど。

 

「ねぇ」

「……私に何か?」

 

 さっきから声をかけられているとは思っていたが、まさか私とは。人の気配のないこの通りのことを考えれば、至極当然ではあるけども。

 なんとなく面倒な感じがしたのだ。

 

「今夜は月がとても綺麗ね」

「…………ええ、今夜は特別綺麗かもしれません」

 

 声をした方を振り向けば、外套を纏った一人の女神。

 いきなりそんなことを言われても、それにうまく返事するほどの学は私にはない。答え方のイロハを教えてからテストして欲しいものである。

 

 そんな私の内心など、神の御心の前ではなんの意味もないようで、女神は月明かりの下、身に纏う外套をゆっくりと脱ぎ去る。

 

 顕になったのは圧倒的な美貌。この世の美という美を集めて一つにまとめたかのような、『美』という概念そのものが歩いて回っている、そんな感じ。

 

 …………は? いや、ちょっと待ってください。

 

「少しお話ししない?」

「お話し」

 

 なぜこの神がここにいるのか、どうして私と話などしようとしてるのか、混乱の極みであった私は、訳もわからず発せられた言葉を反芻した。

 それに対して『美の女神』は、まさしく女神の微笑みをたたえ頷く。

 

「ええ、お話し」

「こんないい夜に女神様とお話しできるとは……私は随分と幸運なようです」

 

 どうにか返事をすることができた私を褒めて欲しい。

 残念ながらというべきか、私に断るという選択肢は端からない。

【フレイヤ・ファミリア】の団員に素振りをせがんで、見るだけ見て逃げる、なんてことをしていたのだ。どう考えても逃げることはできない。

 

「…………えっと」

 

 私が何を話すべきか悩んでいる間、フレイヤ様は私の中身を見透かすような風に観察してくる。

 そんなにじっと見られても、何の面白みもないと思う。

 というか、今日の朝不躾に見ていたのはお前か。

 …………ま、まぁ私も? そこそこ失礼なことをしていたので、この辺りでトントンって事にしておかない? 

 

「どうして貴方はオラリオに来たのかしら?」

「はい?」

「貴方は何を求めてオラリオに来たのか、そう聞いているの」

 

 言葉に困る私に、唐突に尋ねてくる女神。

 正直脈略がなさすぎて困る。最早、フレイヤ様に何を言われても困るわ。

 

 そんな事はさておき、なぜ私がオラリオに来たのか、か。

 ベルのお爺さんに言われて、ベルに誘われたから来た。何も言われなければ間違いなくここには来なかった。

 何を求めてと聞かれたら……なんだろうか。

 

 強いて言えば、そう前置きして言葉を続けてみる。

 

「私は幼い頃から大病を患っていまして、オラリオなら治せる可能性がある。そう友人の祖父に言われたのでここへ」

「……あら、大変なのね」

「ええ、道を歩けば発作。食事をすれば発作。ダンジョンに潜れば発作。何をする時も常に体調不良。結構大変ですよ」

 

 私は苦笑してみせた。

 そう、大変なんですよ。

 なので早く解放してください。

 

「そういえば、あなたは私の眷属(子ども達)に、剣を見せて欲しいとせがんだと聞いているわ」

「…………その節は申し訳ございません」

「ふふふ、いいのよ気にしなくて」

 

 子ども達には変なことをしないように伝えておいたから。そう続ける女神様。

 

 …………それ本当に気にしなくていいやつですか??? 

 私純粋な田舎者なので信じちゃいますよ。いいんですよね? 

 というか変なことって絶対報復ですよね?? 変装してたけどばれてたって事ですか? 

 一応匂いでバレないように獣人は避けたし気配も変えてたんだけど。人間でも恩恵があると、私は病人の臭いがして誤魔化しきれないかな? 

 

「私の目は特別なの」

 

 だからと、ありとあらゆる生物を魅了するんじゃないか、そう錯覚してしまうほど美しい笑みを浮かべて続ける。

 

「アレがあなただと知っているのは私だけ」

 

 後は言わなくてもわかるわよね、そんな風に私を見つめてくる。

 

 泣きたい。すごく泣きたい。無理難題を押し付けられて、【ファミリア】を潰されるかも。そう思ったら、今すぐに土下座してでも許しを乞いたい。

 た、助けてヘスティア様。今すぐバイト先の打ち上げから帰ってきて私をフレイヤ様から守ってください! 

 これじゃベルに、ヘスティア様の顔に泥を塗るようなことは〜とか言えないよ! 

 視線を泳がせ言い訳を考える私。

 

「目を逸らさないで、私のことをよく見てちょうだい」

「え? いや、そんなことをするわけには……」

「いいから……しっかりと私を見て」

 

 そういうや否や、私の両頬に手を添えて顔を固定する。そのままフレイヤ様は私の顔に自身の顔を近づけた。

 吸い込まれるような瞳、万物を魅了する人ならざる美貌。この世のものとは思えない、浮世離れした雰囲気。

 そこには圧倒的なまでの『美』が存在していた。

 

 それをこの至近距離で見せられては、流石の私も頭がおかしくなりそうである。

 

「えっと、その、女性とこの距離は恥ずかしいので……離してもらえると嬉しいんですけど」

 

 ヘスティア様もやってくれないかな。やってくれないな。

 

「……そう」

「私のような田舎者は、フレイヤ様までに美しい女性と出会う機会がないので、どうにも緊張してしまいます」

 

 美の女神なんてモノと初対面で超至近距離は誰でもきついと思うけど? 

 私の返答がよろしくなかったのか、興味がなくなったような様子でゆっくりと手を離す。

 

「今日はこれくらいにしておこうかしら」

 

 是非これくらいで許してください。そう言いたかったが、言えるはずもないのでとりあえず苦笑して答える。

 下げたフードを再び頭に被り顔を隠すとこちらに向き直った。

 

「あなたが探しているお友達はダンジョンへ行ったわよ」

「本当ですか?!」

「ええ、向かってあげたらどうかしら?」

「ありがとうございます! 助かりました!」

 

 さっと一礼して、ダンジョンに向かう。早めに解放してくれてよかった。

 

 ふと、なぜ私がベルを探しているのを知っているのか。そして、ベルの行き先を知っているのか。そんな疑問が頭をよぎる。

 …………ま、なんでもいっか。神々の考えることなんて私にはわからないし興味もない。

 あの感じなら私たちをぶっ潰してやる! みたいな雰囲気もないし大丈夫だろう。私の直感がなんとかなるよと告げているので、間違いはない。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、れ? 千都世、どうしたの? こんなに早くから」

 

 ダンジョンの入り口付近でうつらうつらとしていた私に声がかかる。

 切り傷と土、それに返り血とひどい汚れようで現れたのはベル。とにかくボロボロで、目も当てられない。

 

 色々と言いたいことはあったがひとまず。

 

「シャワーを浴びてきたらどうだい?」

 

 

 

 

 

 シャワーを浴びポーションをぶっかけ治療を済ませたベルと、ホームへ向かいながら話をする。昨日店で何があったのか。何を思ったのか。

 

「ふーん、何もしてなかった自分が悔しかったと」

「……うん」

「なるほどねぇ」

 

 なんというか、いや、こんなことを言ったら悪いかもしれないが、青春しているなと。

 

「なんかベルの好きな英雄譚みたいだね」

「そんなことないよ……彼らはもっとかっこよくて……」

 

 なんか語り始めてしまったので、適当に聞き流す。

 ごめん、私英雄譚とか興味ないんだ。ベルのお爺さんにそれを言って悲しまれた記憶がある。

 

 でも、いいじゃないか。

 

 田舎から出てきた少年が、憧れの女に追いつくために弱い自分を振り払って冒険する。そして自分の限界を越える。

 

 うんうん。私は英雄譚や冒険記に決して詳しくないけれど、今日までのベルは実に英雄的で物語的な導入だと思うよ。

 

「そんなことより、ヘスティア様にどうやって許してもらうか考えておきなよ」

「うっ、やっぱり怒ってるよね……」

 

 かもねーと返事をしてみる。どちらかと言えば、心配してるような気がするけど。

 

「あ、ちなみになんで食い逃げしたの?」

「…………僕完全にやっちゃってるよね?!」

「ま、私がお金は払っておいたけど……後で謝りに行っておきなね」

「僕はどんな顔していけばいいんだぁあああ?!」

「とりあえず次行くときは食い逃げやめてね」

 

 はい、ノルマ達成と。私しっかり言ったから。これで問題ないはず。また食い逃げしたらベルのことぶん殴って矯正してやってください。

 

「あれ? そういえば千都世はずっとあそこで待ってたの?」

「ん、ああ。まあね」

 

 一階層で適当にモンスターを切っていた。他に語ることはない。発作が起きないとあんなに楽に戦えるのかと思っただけである。

 そんなことより、入れ違いになるのが面倒で、私もヘスティア様に何も言っていなかったから言い訳準備しないと。

 

 

 

 

 

「君達! どこにいってたんだ! 心配したんだぞ!!」

「「ごめんなさい!!!」」

 

 恐る恐るといつたようにホームの扉を開ければ、そこにはとても怒ったヘスティア様が。

 私とベルはすぐさま土下座を敢行する。

 私の祖父直伝で、極東の偉い人にもこれで許してもらったとか。

 

「それで、何があったんだい?」

 

 玄関から移動して、ヘスティア様はソファに座る。私たちは当然床に正座。

 

「…………ダンジョンに、潜ってました」

「私は帰ってくるのを待ってました」

 

 ポカンとした顔をしたかと思えば、ベルの言葉を飲み込めたのか顔を真っ青にして叫ぶ。

 

「なんて事をしてるんだ! しかも一晩中だろう?!」

「はい…………」

「装備も着けずに…………! 君はどれだけ危ない事をしたと思ってるんだ!」

 

 私はしーらね。

 私も普段、装備という装備を付けずに潜っているので、何も装備していないことに関して言えることはない。

 大丈夫、当たらなければいいんですよヘスティア様。全部見切って反撃で殺せば問題ありません。

 

「千都世君もだよ!」

「え、私も?」

 

 そうさ! とチャームポイントである艶のある黒いツインテールを逆立て、キッと詰め寄ってくる。

 

「なんでベル君を止めなかったんだい? 君なら止められたはずだ」

「えっと、その時はちょうど席を外していて…………」

「だとしても何かあれば気がつくんじゃないか?」

「…………その、発作が起きてしまい店から少し離れていました。それで気が付かず」

 

 私がそう答えるとヘスティア様は、やってしまったという顔をした。

 変な空気になったリビング。

 

「千都世君、ごめんよ……君の口からそんな事を言わせてしまって」

「いえ、気にしてませんので」

 

 ごめんよぉと泣きそうな表情でもう一度謝られてしまい、申し訳ない気持ちになった。

 一旦区切りを付けるために私は『こほん』と一つ咳払いをする。私の意図が伝わったようで、ヘスティア様はベルの方へ向き直る。

 

「それで、ベル君はどうしてそんな無茶をしたんだい? 普段の君らしくもない」

「………………」

「言いたくないのかい?」

「はい。ごめんなさい……」

 

 はぁとため息をついて頭を抑えるヘスティア様。

 

「君は意外と頑固だからね。言わないと決めたら言わないんだろう」

「ごめんなさい」

 

 言われてやんの。私ヘスティア様に聞かれたらなんでも答える自信がある。あ、今言ってるのはそういう事じゃないですか。

 

「ベル君、君も今日はベッドで寝ること。いいね?」

「え? でも神様は……?」

「ボクはこのソファでいいさ。千都世君をソファに寝かすわけにもいかないしね」

「なら、私のベッドと普段ヘスティア様の寝ているベッドをくっつけて、みんなで寝ませんか?」

 

 私やはり天才だ。気遣いをした上に、誰も損をしていない。完全に、完璧に、合法的にヘスティア様と寝れる。

 いやはや、私は私の天才的な頭脳が恐ろしいぜ。

 

「千都世君とベル君がそれでいいっていうなら、ボクも一緒にベッドで寝ようかな!」

「みんなで寝るなんていつぶりだろう?」

「ベルのお爺さんが生きてた時以来じゃない?」

「む、二人だけで通じあわないでくれよ! ボクは初めてなんだぞ」

 

「神様、千都世」

「ん?」

「どうした?」

「…………僕、強くなりたいです」

「……うん」

 

 私はベルの方を見なかったし、それに返事をすることはなかった。

 けれど、そこに大きな想いが込められていることは、わざわざ説明されなくとも確かにわかった。

 

 ああ───私も強くなりたい。いや、強くなる為の時間が欲しい。

 ズキズキと痛み始めた身体を恨めしく感じながら目を瞑り、私は、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 ベル・クラネル

 Lv 1

 力:H143→G241

 耐久:I42→H101

 器用:H178→G257

 敏捷:G274→F333

 魔力:I0

 

《魔法》

【】

《スキル》

【】

 

「おーいいじゃん強くなってる」

「このまいければ千都世にも追いつけるよ!」

「お、言ったな?」

「はい、これが千都世くんのほうね」

 

 ヘスティア様が私とベルの間に、ステイタスを記した紙をおく。

 

 千都世

 Lv 1

 力:H159→G200

 耐久:I6→I30

 器用:C674→B743

 敏捷:E403→D513

 魔力:I0

 

《魔法》

【】

《スキル》

【明鏡止水】

 ・精神は乱れず、決して揺れることはない。

 ・精神力を一定値に固定。

 ・常時、『直感』を発現。

 ・戦闘時、見切りに大幅補正。

 ・戦闘時、『無我』を発現。

 

 ま、こういう訳なんでね。私の天才っぷりを舐めてると痛い目見るぞ? 

 

 ヘスティア様は何かを悟った表情、ベルは口を開いてあんぐりとした表情である。

 私はドヤ顔。

 

「ふっふーん、さすが私だ。私は私の才能が恐ろしいぜ」

「僕は6階層まで何も付けずに行ってあれなのに?!」

「はっはっは! これが『差』だよベル・クラネル君」

 

 私の言いようにヘスティア様がドン引きしてる。

 いや、違うんです。これ小さい頃からのやり取りなんです。

 

「真面目な話、なんで千都世はそんなにステイタスが伸びてるの?」

 

 その伸びは絶対例外(イレギュラー)ってやつだよ。

 真剣な顔でそう問うてくる。

 

 才能だぜ! と言えば、真面目に聞いてるんだよと静かに諭された。

 さーせん。真面目に考えます。

 ふむ、そうだなぁ? 

 

「これはあくまで、私の推測であることを念頭において欲しいんだけど」

 

 そう前置きをして、ヘスティア様とベルに説明する。

 

「私とベルの違いを考えた時に真っ先に思いついたのが、私の患っている病」

 

 常にこの身体を蝕む忌々しい病。

 いついかなる時も頭痛に吐き気、手足の痺れ、全身に走り続ける激痛など、あらゆる障害が私をなぶってくる。

 軽くあげただけでこれ。まったく恐ろしいことこの上ない。

 それで何が言いたいかというと、

 

「おそらく私は、いわば常に『状態異常』になっている判定をされているんじゃないかと思うんだよね」

「ギクッ?!」

 

 視界の端でツインテールが釣り上がったような気がした。どうしたんだろうか? 

 

「複数の状態異常を負ったままダンジョンでモンスターを倒し続けたら、そりゃあ相当な経験値になるんじゃないかな?」

「なるほど…………」

「ま、あくまでも推測、想像ってだけで確証はないから。間違っても毒を呷ってダンジョンに潜るなんてことはよせよ?」

「僕はそんなことしないよ」

 

 でも、無謀攻略においては前科あるじゃん。

 

「要するに、重度の『状態異常』を併発しながら()()()()での適正階層へ潜っていたら、成長するのは当然だろうってことだね」

 

 そう言って私は話を締めくくる。

 しきりに頷いていたので、ベルは納得したようだ。

 私のやり方なんて、良い子は真似しちゃダメだよ。私のような天才がやるから生きていられるのであって、普通の人間だったら簡単に死んでる。

 というか、そもそも私と同程度の病に罹ったら動けないだろう。

 

 常に身体を走る激痛に加えて、頭痛眩暈吐き気のトリプルコンボの上で、健康な人間の同程度動き回れるのが最低限のスタートライン。

 

 

 私たちの会話を聞いていたヘスティア様は、神妙な顔をしたかと思えば、戸棚をひっくり返し何かを探し始める。そうして一枚の手紙を取り出すと、こちらを振り向いて言った。

 

「…………ベル君」

「なんですか、神様?」

「君は強くなりたいと言ったね」

「はい」

「その気持ちは今も変わらないかい?」

「変わりません。僕はもっと強くなりたい」

 

「千都世君」

「はい」

「君はどうなんだい?」

「私も……憧れを超えるために、強くなりたいです」

「そっか…………うん。よし、わかった」

「ボクは今夜……いや何日か部屋を留守にするよっ! 構わないかな?」

 

「わかりました! バイトですか?」

「いや、友人の開くパーティーにね。久しぶりにみんなの顔を見たくなったんだ」

 

 

 

 ヘスティアさまがしっかりとした服を持って家を出て少し。正午を回るかどうかという時間。

 ベルは玄関の前でウジウジとしていた。

 

「さっさと『豊穣の女主人』に行って謝ってきたら?」

「ち、千都世も一緒に……」

「私はいいや、前にしっかり謝ったし……それに体調良くないし」

「だよね……あああ! 僕一人でかぁ」

 

 悪いのは飛び出した君なので諦めてくれ。

 玄関から動く様子がないし、ウジウジしているのを見てても面白くないので、ベルの肩を持ってそっと端に寄せる。

 

「じゃあ私も何日か帰ってこないから」

「ええっ?! 何かあるの?」

「まぁ私もダンジョン攻略しようかなって」

 

 ステイタスもかなり高くなっているから十階層を超えても問題はなさそうだし。

 

 もしかしたら忘れられているかもしれないが、今の私の状態は、発作を起こしてダンジョンで死ぬか、ダンジョンに潜らず残り少ない寿命で死ぬかの二つに一つ的な感じである。

 つまり、ダンジョンに潜ってレベルを上げて寿命を伸ばすって事をせねばならぬのだ。

 

 病気治すよりも簡単でいいね! 

 

 ダンジョンに潜れば、お金を稼げるし延命治療になるんだぜ? ははは、最高だな。

 そんな訳ないだろふざけんな。

 

「なにはともあれ、二日三日帰ってこないと思うけど心配しないで」

「なら僕も一緒に」

「いや、一人でやりたいし」

「発作が起きたらどうするの?」

「普段通り治ったら続きをするだけ」

「…………しっかり毎日帰ってきて」

 

 うーん、なんかこれ友人同士のやり取りじゃない感。

 私もいい大人? なんだし、一日二日帰ってこなくても心配ないだろ。一回くらい酒場に行った後朝帰りってやつしてみたいぜ。

 あ、もう昨日やったか。ベルと二人で。できることなら、シルさんとか女性がよかったぜ! 

 

「わかった。夜には帰ってくるよ。これでいいだろ?」

「うん。千都世に何かあったら神様に顔向けできないからね」

 

 それもそうだ。私も気をつけるとしよう。

 

「忘れずにお店に謝ってくるんだよ!」

「わかってるって!」

「じゃあ行ってきます!」

 

 さぁ、目指すは10階層をソロで攻略。

 エイナさんに知られたら怒られること間違いなしだが、突撃だ。異常事態に連続で巻き込まれなければ、100%生きて帰れる! 

 頑張るぞ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? 千都世、体調悪いって…………もしかして僕騙された?!」

 

 

 

 




千都世くんの憧れ
→祖父。簡単に紹介するなら、屈折しながら飽和させるような剣士。千都世にこれ見せて満足して死んだ。

千都世くんの夢
→祖父を超えること。つまり、屈折しながら飽和させることのできる剣士でも切れないものを切るということ。

ヘスティア様の借金は倍になる予定。
ベルのステイタスの伸びで成長期とか言ってないのは、身近にぶっちぎりでおかしいやつ(千都世)がいるから。言い訳する必要ないなという判断。

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