病弱剣士がダンジョンに潜るのは間違っているだろうか? 作:病弱系キャラクターすこ
戦闘描写を熱くかけてたら嬉しい。
誰だよ、
わ た し で す。
1回目ダンジョンに潜ったときは、他の冒険者? に襲われて返り討ちにした。
2回目に潜ったときは、中層のモンスターであるミノタウロスに襲われて、ベルと一緒に逃げ回った。
3回目、4回目はおかしなことは起きなかったし、昨日一昨日と問題はなかった。なんだったら、今日も調子がいい。
そう、問題なんてないはずなんだよ。
話は少し変わるが、神様は乗り越えることのできる試練しか与えないし、乗り越えることのできる人間にしか試練を与えないそうな。
だけど世界は人を選ばない。誰も区別することなく等しく、平等に理不尽は襲いかかってくる。
つまり何が言いたいかというと、だ。
「なんで
私の現在の階層は8階層。
インファントドラゴンが現れるのは、11から12と聞いていたのにおかしいなぁ。
しかも、おそらく強化種と思われる。エイナさんから聞いていた容貌と違う。体感ではあるが、ごついし大きい。
下手な扱いをすれば簡単に、私の得物である刀の刃が折れてしまいそうだ。
やるなら一撃で首を刎ねるか魔石を潰すかだな。
『グォオオオオ!!!』
インファントドラゴンが私のことを認識したことで、恐ろしい咆哮が階層に響き渡る。
状況把握のために周囲を見渡す。擬態しているモンスターや、隠れているモンスターの気配はない。インファントドラゴンは? とヤツの足下を見れば、無惨に潰されて死んだ冒険者の残骸が。
…………わたし、潰されて死ぬなんて死に方は死んでもごめんだ。死ぬ時は病死か寿命って決めてるから。
『グァアアアア!!!!』
「っ?!」
再びの咆哮と同時に突進。
咄嗟に横に転がることで、巨体から繰り出された突進を避ける。
一本道に追い込まれたら、間違いなく避けることができずに死ぬ。圧死する。
不幸中の幸いと言うべきか、この広間は空間に余裕があるので、余程のことがない限り逃げ場がなくて潰される、なんてことにはならなそう。
とはいえ、インファントドラゴンによって追い込まれればどうなるかわからない。避ける位置も考えなくては。
「つまるところ…………面倒な事に変わりないと」
攻撃は避けることができるので、ひとまずは様子見。明確な隙を理解したならば、そこをついて殺せばいい。
よくわからない敵には無理やり攻めようとしない。これ大事。
しばし観察してわかったのは、攻撃パターンは大きく3つ。
巨体を活かした突進攻撃。
地面を揺らしこちらの体制を崩す倒れ込み。
回避後の隙を潰すように行われる薙ぎ払い。
どれをとっても、装備も何も身につけていない私がまともに被弾すれば一撃で御陀仏確定である。そもそも。私なんて風圧だけで紙切れのごとく吹き飛ばされそう。
とはいえ、結局のところどんな攻撃も当たらなければ問題ない。
私がちょこまかと攻撃を避け、こちらから一切攻撃しない事に苛立っているようで、単調でかつ大ぶりな攻撃を繰り出し続けるインファントドラゴン。
充分に観察したし、これ以上の攻撃パターンはなさそうだ。
一太刀首に入れて仕舞いにしようか。
インファントドラゴンの巨体から繰り出される圧倒的な質量、人間とは隔絶した驚異的な速度。二つが合わさった恐ろしいまでの破壊力を持った突進が私を襲う。
遭遇時と同じように私は左は転がりこれを避ける。
回避された事を理解したらしいインファントドラゴンは、持ち前の凄まじい筋力を発揮し急停止。
巨大な身体を回転させることで、転がり避けた私へ追撃を加える。
風圧と弾けた砂が私の全身を打ち付ける。
が、それだけだ。
回転攻撃を読んでいた私は、既にその場にいない。
攻撃範囲のギリギリを見切ることで、インファントドラゴンが回転をやめた時、ちょうど頭が私の目の前に来るように調整する。
破壊の嵐が止んだと同時、私の目の前に自ら頭を差し出す形となった。
攻撃の反動から動けない無防備なインファントドラゴンの首を目掛けて刀を振り下ろ───?!
「ごほっ!」
発作?! ここで? ふざけんな!
最近は調子が良かったからと、完全に頭の中から消えていた発作が私に降りかかる。
脱力した私の身体から放たれた斬撃は、首を両断することは叶わず深く傷つけるにとどまってしまう。この程度の傷はこのモンスターに対して致命傷に足り得ない。
隙をついて攻撃したつもりが、逆に私が致命的な隙を産むこととなってしまう。
ニヤリと、そうインファントドラゴンが私のことを嗤った気がした。
「っ?!」
目の前にある口が大きく開かれ、爆炎が口元に集まっている事を認識する。
おいおい! まだそんなの隠してたのかっ?!
『グオオオオオオオ!!!!!』
大咆哮と同時、私の視界は真っ赤に染まり全身が熱に包まれた。
───────────────
澄んだ早朝。廃教会から出た僕はメインストリートからバベルへ向かう。
「ダンジョンに行くなら、僕を起こしてくれたっていいじゃないか」
ちょっとくらい千都世の愚痴をこぼしてしまっても許されると思う。いつも僕がどんな気持ちで君のことを見てると思ってるんだ。
ソロでダンジョンに潜ってると思うと、いつ倒れるのか気が気じゃない。
これを言うと「私が死ぬ時は病死か寿命かの二択だから大丈夫!」とか、どこから出てくるのかわからない自信を以って答えられるし。続けて「あ、病死も寿命もどっちも変わらないか! あはは!」なんて、こっちからしたら全く笑えない冗談(?)を言う。
それを面白いと思ってるとしたら、多分だけどセンスないと思うな。
「おーいっ、待つニャそこの白髪頭ー!」
白髪?! 僕は思わず足を止める。
『豊饒の女主人』の店先で、キャットピープルの少女がこちらを向いて大きく手を振っていた。
「おはようございます。えっと僕に何か?」
「ちょっと面倒ニャことを頼みたいニャ。はい、コレ」
「はい?」
千都世みたいな反応をしてしまった。
「白髪頭は黒髪女と同じでシルのマブダチニャ。だからこれをあのおっちょこちょいに渡して欲しいニャ」
そう言って手渡されたのはがま口財布。
話が見えてこない。
これをシルさんに渡すっていうのは……?
「アーニャ、それでは説明不足です。クラネルさんも困っています」
困惑していると、今度はエルフの店員さんが現れた。準備をしていたカフェテラスの方から歩み出して、僕たちの方にやってくる。
「リューはアホニャー。店番サボって祭り見に行ったシルに、忘れていった財布を届けて欲しいニャんて、話さずともわかることニャ」
「というわけです。言葉足らずで申し訳ありませんでした」
「あ、いえ、よくわかりました」
ダンジョンに向かうあなたには悪いのですが、と言われたが、僕は全然構わないです!
それよりも、シルさんがサボったという方が驚きだ。
聞いてみれば、自宅通いのシルさんは例外的な非番を認められているということらしい。
「……
そう呟いた僕の疑問を拾って、アーニャさんは鼻息荒く話し出す。
さっき僕にうまく伝わっていなかったことがよほど堪えたらしい。
エルフの店員さんの説明によれば、モンスターの調教は素質に因るところが大きいらしく、かなり難易度の高い行為のようだ。
流石の千都世でも出来ない……できないよね?
一回見れば真似できる、二回見ればオリジナルよりも上手くできると豪語する彼でも、そう簡単にできるものではなさそう。
「シルは土産を買ってくるとか言って、笑顔で敬礼なんかしてお前のところの黒髪女と向かったニャ……でも財布を忘れてったニャ」
シルはうっかり娘ニャ。なんて肩をすくめて言うアーニャさん。
シルさんそんなところもあるんだ、なんとなく意外だ。
それよりも気になったのは、さっきから出てくる『お前のところの黒髪女』って千都世のこと……だよね?
………………まあ、そう思う気持ちはわからなくない。付き合いの長い僕がいうくらいなんだから間違いない。
とは言え、このまま女の子だと勘違いさせてはまずい気がする。何がまずいかはわからないけど、いつかまずいことになると僕の直感が叫んでいる。
「千都世は女の子じゃなくて、男です」
「「
「その、男です」
あんな顔してるけど……と続けて説明する。
肌も青白いし、手脚は細いし、作り物めいた綺麗な顔をしているが男だと。
病気であまり筋肉がつかないまま成長したとは本人の談だ。常に青白いのはシンプルに病人だから。綺麗な女顔なのは世界様の趣味じゃない? とかなんとか。
どれだけ自分の顔に自信があるのか聞いてみたいけど、好みの問題かもしれないけど、神様よりも綺麗な顔をしてるから何も言えない。
いや、僕が千都世をそういう目で見ている訳じゃなくて……!
「うっそニャろ?! あんな面して男ニャと?!」
「え? だとしたらシルはふたま……いやそんな訳!」
よほど衝撃だったらしく、二人は百面相している。もしかして他の人も千都世のことを女の子だと思ってたりするのかな?
…………その時はその時で、千都世本人がなんとかしてくれるはず。
「ひ、ひとまずそれをシルに頼むニャ!」
「わかりました。しっかり届けますね」
『み、ミア母ちゃんに伝えないといけニャいニャ!』
『アーニャ! いけません! 確定していない情報を無闇に広めるのは!』
『いーニャ! 我慢できニャイニャ!』
『まだ、まだ女性という可能性がっ!』
東のメインストリートへ向かって僕は走り出した。
──────────────────
「っ!?!?!」
爆発の瞬間、無理矢理身体を動かしてインファントドラゴンの口の下と逃れたことで、どうにか直撃を避けた。
ズタボロに身体を焼かれたが、この程度で死ぬ訳ないだろう。これの軽く100倍は常に苦しんでんだよ!!
死なない痛みは痛みじゃないし、死なない傷は傷じゃない。死なない毒は毒じゃないし、癒えない薬は薬じゃない。
とは言ったものの、こちらは重症。
発作が起きてすぐなので目眩やら何やらで身体はもはや死んでいる。身体が耐久値を超えた力を出して避けたことで、それなりの数筋肉が千切れ普段通りに動かすことは難しい。
背中は爛れて酷いことになっているだろうし、今の私の視界は真っ暗。
しかし、インファントドラゴンも首からかなりの血を流し、その上爆炎を放ったことで体力はもう少ないことは明らか。
お互い余裕はない。
私はこのまま一歩踏み込めば、刀の斬り上げで首を刎ねられる。筋肉の壊れた足でどうやって踏み込むか問題だけど。
対してインファントドラゴンは、私を押し潰すように勢いよく首を叩きつければ私を殺せる。それをしたらこいつも死ぬだろうけど。
インファントドラゴンの方が有利かな、といった状況か。
なんにせよ、結局のところ私にできるのは、私がやらなければいけないのは、しっかりこいつの首を刎ねてダンジョンを出ること。
やらなくてはいけないことが分かれば、あとは実行に移すだけ。
火傷で全身が痛む?
いつもの激痛に比べればこんなもの痛みじゃない。
足が壊れて踏み込めない?
そんなわけない。私にできないことはない。気合いで踏み込め。
刀が耐えられない?
上手く扱え。一度だけ、最期に見せてもらった私の祖父の剣筋を思い出せ。
私の憧れた剣戟は、力任せに刀を壊すような下手くそなものじゃ絶対にない。
一歩踏み出す。
身体のどこかの筋肉が弾ける音がしたが、既に踏み込んだのだから問題ない。
同時にインファントドラゴンも首をもたげる。
まだ剣の間合いじゃない。
高く持ち上げた首を、一気に振り下ろすことで重力にしたがってぐんぐんと加速し、空気抵抗をもろともせず私の眼前に迫り来る。
───瞬間、溜めていた刀を切り上げる。
常に悲鳴を上げ続けている身体は、もはや絶叫の域に達した。
しかしそんなことは些事である。
たった一度見て憧れ、追いかけ、幾千幾万と真似て振るった剣は、私を絶対に裏切らないし、裏切ることはできない。
ただ、あの日見た軌跡をなぞる様に振えばいいだけ。
身体に余計な力入れず、正確に精密に一切の揺らぎのなく。
無駄な思考はいらない。ただ目の前のものを切るというそれだけの事を考えろ。
否、考える必要すらない。
私がすべきなのは、普段通り刀を振るう。それだけ。身に染み付いた剣筋は、いついかなる時も決してブレることなどないのだから。
吸い込まれるようにして、私の剣撃はインファントドラゴンの首へと達する。
堅牢な鱗を裂き、強靱な筋肉を切り、最後には強固な骨すらなんの抵抗もなく断ち切り───首を刎ねた。
崩れ落ちた巨体をどうにか避けて、私も地面に倒れ込む。
胸元から奇跡的に残っていたポーションを取り出し、一気に呷る。
「ぷは……ああ、死にそう…………」
死にそうなのはいつも通りのことだったわ。
大の字になって呼吸を整える。
体の状態は最悪も最悪だが、生きているので問題ない。
聖女様に頼めばなんだかんだ傷跡一つ残らず治してくれるだろうし問題ない。
問題は今から上に向かって帰るのが大変だと言うこと。この場で寝転がっていたらモンスターが発生して殺されるであろうこと。
今の所、新たにモンスターが生まれる様子は見られないが
「…………気配を殺して戻るか」
血の匂いや跡は、今の手持ちでは消すことができないので諦める。
私レベルの気配遮断の技術があればそうそう見つからないだろうし、万が一接敵しても少ない数なら、気合いでどうにかする。
あわよくば、こいつの魔石と引き換えに、私を地上まで運んで【ディアンケヒト・ファミリア】に連れて行って欲しい。
よし、これでいこう。
そうと決まれば身体を起こし、死骸を開いて魔石を引き抜く。
するとインファントドラゴンは灰となって消え、手元に魔石だけが残った。
ポーションを飲んだことで多少身体が癒たとはいえ、万全の状態には程遠い。なるべく接敵を避けてその上で早く地上へ出る。
しっかりと方針を決めて、私は足早に地上へと向かう進路を進んで行った。
千都世の身体について。
脳のリミッターが壊れているので100%の力を出せてしまう。そのため全力で動くと身体が自壊する。
すごいわかりやすく言えば、どなたか書いてくださった感想にあったように男版鑢七実。
要するに何が言いたいかと言えば、病弱剣士がダンジョンに潜るのは間違っている。ということ。
よろしければ、感想・評価よろしくお願いします。
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