稀代の火影にオレはならない   作:ナルトスは私の青春そのもの

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スーパーオリジナル設定で突き抜けて参ります。


体に触るから障るのか?体に障るから触るのか?

こう……チャクラいっぱい使えると遊んでみたくなるじゃん?多重影分身とかしてみちゃったり?3人になった時は感動したよね。オレが3人……!害悪が3倍じゃんすぐ消した。

3人が限界?とか言うなよ……エドテン状態の先生と同じレベルなんだが?つまり火影レベルにオレはすごい?そう言うワケではない。3分割して十分戦えるチャクラ量がアレな感じなんだろう多分。先生が3人で限界なワケない……!オレはチャクラ枯渇が怖いのでこれ以上は出せそうにないけど。

うちは名物火遁・業火球!はねぇオレには火遁適性がなかったせいで出なかった。志村ダンゾウくんさぁ……無念……。でもでも風遁は適正あったからナルトごっこができるってばよ!くらえ風遁・螺旋手裏剣〜!

手がズタズタになるってわかってて使えるか!うずまき一族じゃなかったら1発使っただけで2度と手が使えなくなりそう。怖……ノーマル螺旋丸でお茶を濁す。普通に螺旋丸もチャクラ消費ヤバすぎぃ……。

オレのチャクラ量も悪くない筈だけど、人柱力と比べられると象と蟻みたいなもんなのだ。

仙術も存在はかねがね……。石になりたくないのでやらないよ?作戦は命大事に。

 

知ってる術をあらかた使ってみたりして満足した。この時代の術は物理的に殺意高いよねぇ。

 

そういえばオレがこの時代に飛んできた目的について語っていなかった気がする。興味ない?じゃあいいよ……しがないモブが志村ダンゾウに憑依したってことで……。

え?聞いてくれるの?本当?へへっじゃあ語らせてもらうぜ……!

えーと、まずは今の銀河の状況を理解する必要……はないんだけど、未来の惑星の状況を理解してもらう必要はある……。

どんだけ未来?ずっとずっとずっと未来だよ。オレ達の住む惑星の寿命が迎えそうになるくらい先。

実は惑星って寿命があるんだぜ。寿命で人類ピンチなのに戦争おっぱじめて収拾つかなくなったからオレが送り込まれた、てワケ。

いつの世も戦いかぁ壊れるなぁ(惑星が)

こっちに来て驚いたよチャクラ量が多すぎて。前の体は雀の涙並みにチャクラ量少なかったからね。影分身使ったら確定死が待ってるレベルに少ない。マジで禁術なんだよね……。印が少ないのがヤバい。事故死とかザラにある。NARUTOでは規制が入って印の修正されたくらい。

オレのチャクラが特別少ないワケじゃないよ。みーんな少ない。たった1つのチャクラの実を仲良く分けて分けて分けたせいだ。

だからこの時代の忍を見かけるたびに使う術のチャクラ量に目を剥くというかぁ……。気絶しないし全然ピンピンしてるしおかしいよ。経絡系が頑丈すぎんだろ。

 

まあそんな感じで、オレは過去の志村一族の誰かに憑依することになったのだ。オレの個人的な目標は『志村ダンゾウ』をぶっ殺すこと。

憑依した瞬間に達成しちゃったのは大誤算だった。

 

タイマースタートは憑依した瞬間から!

タイマーストップは志村ダンゾウが死んだ瞬間!

 

『志村ダンゾウ復讐RTA』はオレが1位ってことで良いか?

やったぜ。

 

別にこれが全てってワケじゃない。オレをこっちに送り込んだ人達の思惑ってもんもある。オレは運良く選ばれただけだ。

未来で、偉い大人達から与えられたミッションは以下の通り。

 

・旧人類抹殺

・千手扉間の暗殺or穢土転生の術開発阻止

・無限月読成功

 

大体この三つ。

意味分からん?狂ってる?それ褒め言葉ね。

 

そもそも『旧人類』ってなんだよって言う声が聞こえてくる気がする。定義は『チャクラを持たない人間』だよ!簡単だろ?

チャクラの実を食った大筒木かぐやとイチャパラして繁栄した人間。の逆。

チャクラを持たない人と延々イチャパラし続けた人間。

経絡系を持たないし木登りも水面歩行も自力でできない貧弱な人間がいるんだぜ。驚きだろ。そいつらが旧人類。まあ未来では水面歩行できるほどのチャクラ持ってるヤツはめちゃくちゃ限られたけど。

チャクラ持ちは『新人類』て言う。『オレらは古くない旧人類って呼ぶな』って顔真っ赤にする人が沸くぜ。この時代には浸透してないから……ままええか。

そいつら抹殺するミッションについてはハナから諦めてる。何人いると思ってんだよ。無理だよ。遠くの別大陸にいるから、まず会いに行くのが大変なんだよ。

と言うワケで一個めのミッションは忘れてくれていいぜ。

 

じゃあ二つ目。先生の暗殺?術開発阻止?やらんやらん。これも忘れていいよ。オレが先生を殺せるワケないだろ!いい加減にしろ!

エドテン開発阻止は別にいいかなって……だって史実通りにやるなら無限月読に必須じゃん?CPHに使わないといけないし。

 

じゃあ三つ目。満を持して無限月読だ。幸せな夢を見られるんだぜ。最高だろ。オレも夢見たい。白ゼツになったら皆一緒だ。オレをシイタケ呼びするヤツはいなくなるし。バカにしてくるヤツも何もかもが分からなくなるんだ。超最高!

大筒木が宇宙からやってくる。大筒木の問題は大筒木かぐやに解決して貰えばいいだろ。何で子孫のオレらが苦労しなくちゃいけないんだ。何で子孫のオレらが割を食わなきゃいけない。オレが何をしたんだよ。何もしていない。していないのにご先祖様のせいで全部無茶苦茶なのだ。遥か未来の子孫のことなんかどうでも良かったんだろうな。

分かるよ。この時代に来て、明日も生きていられるのかも分からない日々を過ごしてちゃ1000年先のことなんて、考えられる筈がないんだ。別にそれが悪い事だとは思わない。だからオレがここに来たことも悪いことじゃない。

託したんだろ。託してこうなったんだ。一回でも間違えたら終わり。常にギリギリで勝ちを手にしてきたんだ。奇跡的だな。でもついに運が尽きた。ついに間違いが致命的になってやってきた。

 

木の葉隠れの里ができる。マダラが里を抜ける。それから色々あって無限月読だ。無限月読で全部まるっとハッピーになろうぜ。オレはCPHを全面的に応援するつもりだ。

未来の、『無限月読教』信者の父と母も喜んでくれるだろう。ああいや、生まれてこないかな。それがいい。ザマァみやがれ。

 

CPHはそろそろ弟の目と馴染んだ頃だろうか。インドラ転生体とアシュラ転生体の兄弟喧嘩が見れるぜ。白眼の準備はできたか?この日のために訓練は欠かさなかった。遠見はバッチリだ。白眼の扱い方は噛ませになった青のおっさんにも負けないぜ。

さあ張り切っていこう。

 

 

 

某日時、某時刻。某場所にて。千手柱間とうちはマダラの一騎打ちが行われようとしていた。

実況・解説はオレ、志村ダンゾウでお送りします。映像は白眼の性能によって白黒で、音声は都合によりございません。あらかじめご容赦ください。

選手入場。柱間選手とマダラ選手が対峙します。おっと何やら話し始めたぞ、マダラ選手。音がないため口の形で判断するしかない。『o o a e o i u a……』

 

モノマネのちくわとロボ。ほぼ風呂ヤギや(このまえのきずがもとでおとうとはしんだ)

 

……?何を言っているのかさっぱりです!弟が亡くなり正気ではない様子!

実況を続けさせてもらいます。

弟からぶん取った万華鏡写輪眼を見せびらしながらブチ切れたマダラ選手。スサノオを召喚!鎧のように身に纏います!実際の鎧はどうしたうちはマダラ!劣勢のせいで買うお金がなかったのでしょうか!?

鎧を初めから着込んだ柱間選手も構えます!クソデカ巻物から武器を口寄せしました!あの馬鹿力に耐えられる武器は存在しません!一回の戦でどれだけ武器を鉄屑に変えているのか……!解説の志村さん、いかがですか!?

 

「恐らく並の忍一族の年収を超えるほどにはお金がかかっていそうですね……」

 

そんなにですか……!?恐ろしい……恐ろしいぞ千手柱間!経済を回す男!これが忍の神……!金持ちで羨ましい……!

マダラ選手のスサノオの刀が一閃!山が真っ二つです!すぐに二太刀目が来ますよ、柱間選手はどうするのか!おお!真っ二つになった山からでっかい木人が現れました!山は見る影もありません!志村さん、これをどう見ますか!

一人頷く。

 

「直轄地のお山がこんな目にあったとなったら……あの国の大名様、黙ってませんね」

 

まずいですよ……!

木人と柱間選手は、スサノオを左右から挟み込みます。しかし黙って見ていないのは大名だけではありません!マダラ選手、持ち前の写輪眼による見切りで木人の攻撃をいなします!すげぇ!

でかい上に素早いスサノオの攻撃にタジタジな木人!しかし木人は囮!蜂のように柱間選手が距離を詰めます!拳による攻撃はスサノオを吹き飛ばしまし……なんで!?スサノオにヒビが入っています!威力おかしくない?隣の山にぶつかり停止したスサノオ。刀を構え直します。柱間選手は追撃をせず対話を試みているようです!コミュニケーションを欠かさない姿勢には敬服します。マダラ選手の返事は……刀を振って山がまた犠牲になりました!交渉決裂!試合続行!試合続行です!

木人が悪質タックルを仕掛けます!躱したスサノオは木人の腰をバッサリと切り落としました!どうする柱間選手!?おおおお!?いつの間にか仙人モードになっている柱間選手!両手を合わせ、いただきますのポーズだぁ!!スサノオをバクっといってしまうのか!?

ここまで響く地鳴りに、チャクラに震えが止まりません!

そして現れたのは……?

デカァァァァァいッ!説明不要!!身長デカすぎんだろ!!!体重超ヘビー級!!!木遁・真数千手だ!!!

その千の手は一体何のためにある!?世のため?人のため?いいや、違う!友をタコ殴りにするため!千の手がスサノオに迫ります!

これは勝負あったかー!?!?

 

「決まりましたね」

 

土煙でよく見ることができませんが、あれだけの火力を叩き込まれて無事であるとは到底思えません!三日三晩続いた戦いだと歴史の授業で習いました!あれは一体何だったのか!?

 

「思ったより呆気なかったですね」

 

ですね!……おっと?煙が晴れてきました。見えるのは……え?

そんな……嘘でしょう……!?

煙を断ち切り柱間選手に肉薄するは……スサノオ!?無傷!?どうゆうことですか志村さん!解説の志村さん!?

 

「お、驚きました……マダラ選手の万華鏡写輪眼の能力については散々考察がされてきました。ですが、残念なことに判明していませんでした……そして今明かされる……うちはマダラの万華鏡写輪眼、それは——!」

 

何です!?

 

「——神威。でしょうね」

 

衝撃の事実!衝撃の事実です!有名な六代目火影の代名詞『写輪眼のカカシ』の目の元持ち主であり、第四次忍界対戦の戦犯兼英雄と名高いうちはオビトと同じ万華鏡写輪眼ですか!?しかも両目!カカシオブ写輪眼を一人でセルフ実装!永万になっているおかげで一生使えますよ!?これ、柱間選手ヤバいんじゃないですか!?

 

「オレはもうヤバいと思う」

 

そこから泥試合が始まった。

透過時間いっぱい殴り続けないと攻撃が一切通らず決定打に欠ける柱間選手と、圧倒的手数を捌きながら反撃するも印を結ばず無限回復され決定打に欠けるマダラ選手。

二人のチャクラが切れる前にオレのチャクラが切れて観戦できなくなった。バケモノどもがよぉ。

休憩を挟んで食事をとって、寝て起きて二度寝した。試合は終わっていた。三日もかからなかった。一日で終了していた。

見逃しちゃった〜!あ〜あ〜あ〜!

 

名場面を見逃し人生のやる気をごっそり削られた。なんでこんなことになるのぉ?誰か録画してない?ないよねぇカメラが最近できたぐらいだもんねぇ。

写輪眼使ったカカシ先生みたいに指一本動かなくなるレベルじゃないけど。白眼もやっぱ日向仕様の体じゃないと体の負担もチャクラ消費も激しいよ。まーだ体だるい。頭痛が痛い。遠見で脳の負荷がキツイし酔いが抜けない。これを楽々使える日向は木の葉において最強。はっきりわかんだね。でもまだ木の葉ないから最強じゃないんですねぇ。

 

……久々に心にズドンときた。ううん、まあこれで同盟は確定だろ?それでなんとか元気だそ……。争いは終わって平和になるんだ。

一時的にね?

一時的にでも気が休まるなら喜んでも間違いはない筈だ。

 

……だめだ超絶ナイーブぅ……第一次忍界対戦どうしよっかなぁ。事前計画では参戦しない予定だったけど……その頃には高校生並みにはなってるだろう。き、厳しい……。法律で20歳以下は戦争に参加できないようにしないか?絶対無理だ……。

ズレにズレて第二次忍界対戦は三忍がどうなるかなぁ。

第三次忍界対戦は起こさないと神無毘橋の戦いが発生しないからなぁ。わかってんだよおじさんがいないと結構困るよなぁ。

はたけサクモは勝手に自殺するし、大蛇丸はヒルゼンに任せるとして。

薬師二人をアレすんのはオレだろ?ペインもオレだし?あ、ついでに半蔵も?闇落ちさせなきゃいけないヤツらが多すぎる!オレは善良な方の志村ダンゾウなのに!

 

失意のどん底にいたオレは気分転換に地獄に来ていた。

通称『血の池地獄』。赤煙が上がっている様は八門遁甲で死門を開けたガイ先生みたい。

比喩比喩。温泉だよ。前までは死体の流す血で赤いのか、湧き出すお湯の成分で赤いのか分かんなかったけど。

今はちゃんと整備されて血のように赤いだけの温泉になっている。せっかく作ったのに人気がない。不思議〜!

オレだけしかいない。独泉ってこと。最高!

熱めの湯船に肩まで浸かってぼんやりする。最近は爆発もほとんどしなくなった。すっかり穏やかな温泉街だ。

温泉作ってよかった。

国民は温泉に入って衛生的で病気から守られるし、大名は土地を荒らされずに温泉の収益でウハウハだし、オレは温泉に入れるし硫黄の採掘権を独占できてwinwinwinだ。

誰でもデイダラみたいに『喝!』できるわけがないので火薬とチャクラ紙を用いた起爆札が主流。今はバカみたいに素材が高騰して誰も使わない。それだけで耳に優しい環境に早変わり。毎日汚ねー花火をぶちまけられるのは迷惑だよまじ。ソロキャンで捕まえた鳥の腹に何かの肉と人っぽい歯が入ってた時の衝撃わかる?爆発で飛び散ったのを食ったんだろうな。そのせいで野生の動物食えなくなっちった。山菜主義にはならないよ。山菜も人の血を吸ってる可能性全然あるから。野外じゃなんも食えないよぉ;;

 

「いででっ」

 

右目がズキズキする。手で押さえれば血がついている。血の池地獄と言えど、手ですくって見れば薄い赤色だ。すくってもどこまでも真っ赤かな血と見分けぐらいはつく。今日は平穏に死体も降ってこないし普通にオレの血だった。拭っても拭ってもダラダラ出てとまんねー。だらしない右目ですまない……。

血行が良くなったせいかな?さっき白眼とはさよならバイバイした。傷が開いた……?バカな、手術は成功した筈!

日向某氏の呪いか?そんなのありえないんですけど。

温泉からあがって石畳に転がる。ひんやりとしていて気持ちいい。

この石畳は裸足でも歩き回れるように頑張って作ってもらったのだ。温泉巡りが捗るだろ。そう、志村一族はすごいのだ。

寝転がって空を見上げる。今日も晴天。雲一つない真っ青な空。血の池地獄から上がる湯気が風流な感じ。

あ、食えなくなった鳥が飛んでいる。

今日は三寒四温の『三寒』の日だ。あっつい体が風で冷やされて丁度良くなって……そこから更に冷えて今度は寒くなってくる。

その感覚がたまらなく好きだ。好きなんだけど……ううーん。

めまいがする。吐き気もだ……。完全にのぼせていたし、久々の片眼の状態は白眼を使った時とは別の酔い方をする。

血も止まらないし。参ったなぁ。

手で目を覆った。空の青さも苦しい。

 

 

書状が届きダンゾウ様にお伝えしようとしたが屋敷にいない。また温泉に行っているらしかった。

温泉と言われても種類が増えすぎてどこら辺のどの温泉かも分からない。探し当てるのは一苦労だ。平民と麻雀をしている時もあったし、サウナで我慢比べしている時もあったし、卓球で遊んでいた時もあった。

しかし今日は珍しくおひとりのようであった。『血の池地獄』というネーミングのせいで誰も寄りつかない温泉にいらっしゃった。

オレの作った石畳にべったりと寝ている。血のように赤い色水のせいで一瞬血塗れに見えて心臓に悪い。

 

「ダンゾウ様。こんなところで寝ていると()()()()()()()()。お屋敷に戻りましょう」

「!?」

 

ダンゾウ様に声をかけるとパッとこちらに顔を向けた。起きていたらしい。

 

「も、もっかい、もっかい言って!」

「はい?お屋敷に戻りましょう」

「その前!!」

()()()()()()()()

「wwwwもっかい!」

 

しきりに「もう1回」とねだるので何度も申し上げる。

何が琴線に触れたのか分からないが、ダンゾウ様が喜ぶのであればそれでよい。

笑い転げるダンゾウ様の右目から涙のように血が流れていた。

 

「ダンゾウ様。失礼します」

 

お顔に触れ、チャクラを流す。医療忍術によって血の流れは止まった。義眼が合っていないのか?調節しなくては。

 

「ww……ん?あ、ありがとう……。痛くなくなった」

「恐縮です」

 

右目をこつこつと指でつついている。まだ違和感が残っているのだろう。……そもそも施術後すぐに温泉に入りに行くのはどうかと思われる。

大人しく布団の中で寝ていていただきたい。言っても聞かないためここにいらっしゃるのだが。

 

「……ねぇ、さっきのは『失礼します』じゃなくて、……っww『お体に触りますよ』!!って言ってくれたら完璧だったかなぁってぇ」

「はぁ以後気を付けます」

「うん。次はオレが雨の中で黄昏てる時に言ってほしいなぁ」

「かしこまりました」

 

自分で言った言葉すら面白いのかにまにまと笑うダンゾウ様。

一際強い風が吹いて、寒くなったのか血の池地獄に入ろうとする。

 

「また血が出ますよ」

「だいじょぶだいじょぶ〜温泉は健康に良いんだぜ」

「限度があります」

「ふっふっふ温泉に限界はないのだよ。エツ兄さんも入ったら?あったまるよ」

「既に妻と入ってきたので十分です」

「なんで急に惚気けた?」

 

ダンゾウ様は「リア充爆発しろ!」と言って温泉に飛び込まれた。ぶくぶくと気泡が溢れ、浮かび上がれば遊泳し始める。マナー違反と禁止していることを自らお破りになっている。

 

「千手から書状が届きましたよ」

「ふ〜ん。代わりに読んで〜」

「かしこまりました」

 

封を切る。中の檀紙を取り出して読み上げた。

 

「『拝啓

春風の侯 ますますご清祥のこととお喜び申し上げます

平素は格別のご高配を賜り厚く——』」

「要約して!?要約!」

「『千手とうちはが同盟を組みます。よろしいでしょうか』」

「あ、うん。よろしいんじゃないかな……」

 

ざばりと湯船から上がり帰り支度をし始めたダンゾウ様。飛び上がって喜ぶかと思っていたのが外れた。

 

「あんなにも『同盟まだ?同盟まだ?』と仰っていた割に嬉しくなさそうですね」

「え?……そう?嬉しい……嬉しいよ?わぁーい。やっとだぁ。ははは……」

 

ぺたぺたと濡れた足跡を追う。朱に染まった湯着は洗ったとて白には戻らないだろう。

血の池地獄は人気が無いとはいえ、貸し出しの湯着が朱色になって返ってくるのは困る。はて、どうしたものか。

ダンゾウ様は右目が見えていないために石に足を引っ掛けて転びそうになっている。

 

「いったぁ!!誰ここに石置いたやつ!?」

「風ですね」

「自然がオレを殺しにきている!?」

 

今日は風が強い。風で石が石畳の上を転がっている。

 

「草履を履けば良いではないですか」

「温泉に草履ってなんかイヤじゃない?温泉入るたびに脱いだり履いたりすんのがさあ」

 

足をさすりながらぶつくさおっしゃる。こだわりの強いダンゾウ様はよく合理を無視する。

追い討ちのように雨が降ってきていた。晴れているというのに。天気雨か。

 

「オレがこうやって石につまずくのも、雨に降られるのも千手とうちはが同盟組むの早かったらこうはならなかったんじゃないかな」

「そうですね」

「そこは違うって言うとこじゃなぁ〜い?」

「善処します」

 

ため息をついたダンゾウ様はまた横に転がった。

 

「血を流しすぎちゃってぇ。もう全然動けなくってぇ」

 

先程まで普通に歩いていたではないですか……。

ん?ちらりちらりとこちらを伺うダンゾウ様の期待のこもった眼差し。

これはまさか——!

 

()()()()()()()()

「Whoooo!!!!」

 

抱え上げながらそう言えば大歓声をあげるダンゾウ様。

黄昏ているかは不明だったが望みを叶えることができた。

湯冷める前に急いでお屋敷まで運ぶことにする。機嫌の良くなったダンゾウ様は鼻歌を歌っていた。

 

 

エツ兄さんにドナドナされ家に帰ってきた。イェーイ。

濡れた髪を拭く。ドライヤーはない。風遁は?あれは人を切り刻むための術しかないゾ。冷風はいざ知らず、温風は血継限界を要求されてしまうわね……開発するのもアホらしい。ヨシ、こんぐらいでいいだろう。布をエツ兄さんに返した。

 

「お体に触りますよ」

「!っwww」

 

最高すぎる!!!と思えばエツ兄さんに頭をめちゃくちゃにされる。ぎゃ〜。

 

「もう拭いたじゃん!」

「ちゃんとできていないからしてさしあげているのです」

 

エツ兄さんから逃げ布団に身を隠す。こじ開けられる。大人の力には勝てぬ!

分家のくせに宗家に対する扱い悪くない?

 

「……ちゃんと髪を拭けないオレより、エツ兄さんが頭首続けてくれたらいいのになー。なんて……」

「オレはあくまでも代理です。志村一族を率いるに相応しいのはダンゾウ様以外おりません」

「期待が重すぎる……!」

 

枕に顔を埋めた。頭をまた拭かれる。無限に拭いてくるジャン……。未来を知っていなかったら禿げる可能性に震えていたところだ。オレの将来はふさふさが確約されている。これが知識チートの真髄。ちな爺もふさふさ。父もふさふさ。父は禿げる年まで生きてなかったからワンチャン将来禿げだった可能性があるけど。ままええわ。あ、前世は知らないよ。顔も見たことない。

要するに、オレの毛根は安泰である。

 

「あの日のことを後悔していらっしゃいますか」

もごもご〜??(あの日〜??)

「千手柱間と一騎打ちをされた日のことです」

「www」

 

改めてそう言われるとかなり面白い。なに?千手柱間と一騎打ちって笑笑

なんでそんなこと急に聞いてくるのかわけ分かんないぜ。

確かにあれで右目見えなくなっちゃったし、戦が長引きまくった原因のような気もしなくもなくもないけど。誤差だよ誤差。オレの行動ひとつで転生体をどうこうできるわけないジャン?殺し合いが終わらないのは大人たちの怠慢が原因。けどそれもやっと終わった。CPHの敗北によってだ。嬉しいね。

顔を横にしてエツ兄さんを見る。志村ダンゾウそっくり。しかし顎にシイタケがない。つまりただのイケメン。美人の奥さんに三人の子供もいる。人生勝ち組すぎ。

 

「後悔するわけないじゃん」

 

なんだか喉につっかえたかのようだ。それでも絞り出す。

 

「エツ兄さんも、爺も、他のみんなも、死んだ方がよかったなんて思うわけない」

「……愚問でした。申し訳ありません」

 

イケメンの笑顔はサマになるでござんすねェ〜?オレも顎に傷がなけりゃこんなかんじだった筈なのに……どうしてこうなった。玉に瑕。顎に傷。

ゴロンと寝返りを打つ。あ〜も〜!顔面の熱をぶつけるように大きな声を出した。

 

「奥さんと仲良くな!!」

「はい。ああ、ご報告が、妻が4人目を妊娠いたしました」

「えっもう!?」

 

末長く爆発しとけ!!くそが!!




志村ダンエツ
エツ兄さん。分家。宗家のダンゾウが成人するまでの代理で頭首を務めている。3児から4児のパパになる。
宗家分家あるけど血継限界があるわけではない。多分どこの一族も宗家分家あるんじゃないかな知らんけど。
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