一般モンスターです、通してください。   作:おっぱいは正義

1 / 10
ほのぼのです。


一頁目

 

 

 

 〇月×日

 

 転生してから幾年か過ぎた今日この頃。

 最近は暇なので、なんとなく日記を書くことにした。

 

 私はごく普通の異世界転生者だ。

 よくある神様からチート貰って転生、と言うやつだ。詳しい説明は面倒なので省く。

 

 

 最初にぶっちゃけてしまうが、私が転生したこの世界はクソだ。いや、世界というか、私が転生した環境とか境遇がクソというべきか。

 

 私が生まれたのは迷宮……ダンジョンの中だ。

 このダンジョンは『迷宮都市』あるいは『世界の中心』とも呼ばれる都市、オラリオの中に存在している。それも地下だ。

 ダンジョンは一番上が1階層、そこから2階層、3階層と下へ続く。各階層は異世界ファンタジー定番のモンスター、ゴブリンやコボルト、オークやミノタウロスと言った多種多様な怪物達の天国となっている。

 そして、ダンジョンには夢と理想を追い求める(?)冒険者達が日々挑戦し続けているというわけだ。世はまさに大冒険時代である。すごく雑な説明だが、ここは重要じゃないからいいだろう。

 

 重要なのは、私がこのダンジョンの30階層で誕生した、しがないモンスターであるということだ。

 

 

 ……そう、私は人外になってしまったのである。

 外見こそ人間、ヒューマンと変わりないが、体内にはモンスターにしか存在しない『魔石』と呼ばれる核のようなものも確認しているし、身体能力とか色々人類を超越してしまっている。

 冒険者の中でもかなりの上位に食い込むだろう。少なくとも数多の怪物達がひしめくダンジョン内で、単独で生き抜くことが出来るくらいの能力はある。

 

 うん、確かにチートではある。

 さっきも述べたように私はとても強い。ファンタジー定番の魔法だって使える。それも複数、見た目も派手で超強力なやつもある。

 モンスターの特性もあるのか、他のモンスターの魔石を食えば自己強化も可能。寿命も、たぶん殺されない限りは死なないだろう。

 

 あと可愛い。

 美人……美少女? 燃えるような赤髪がチャームポイントだ。

 

 

 しかし残念ながらモンスターである。

 大事なことなのでもう一度言う。私は人類の敵、モンスターなのである。

 

 見た目が美少女だろうと、言葉を話せる知性があろうと、私はモンスターなのだ。地上に出ることは出来なくもないが、もしも正体がバレたりしたら大変なことになる。

 殺されるだけならまだしも……いや、殺されるのも嫌だけど、捕まって解剖されたり、モンスターに恨みを持つ人達の憎悪のはけ口にされるかもしれない。想像するだけで寒気がする。

 

 だから私は決めた。そうだ、ダンジョンで暮らそう! と。

 

 馬鹿なことを言っていると思うかもしれないが、正体がバレることを恐れてビクビク生きていくより、このダンジョンの弱肉強食の環境の中で、一人自由に生きていく方が良いと思ったのだ。

 なぁに、私は元々孤独を愛する一匹狼。世捨て人のような生活には憧れもあった。前世からの夢が叶うチャンスと捉えれば、中々悪くない境遇かもしれない。

 

 ……決してぼっちではないよ。

 友達がいなかったんじゃない、あえて作らなかっただけである。本当だ。

 

 

 これだけははっきりと真実を伝えたかった。

 

 

 

 

 

 〇月△日

 

 今日も今日とて日記を書く。

 なお、この日記はダンジョン内で拾った冒険者の落とし物である。遺品ともいう。

 

 ところで、私は30階層の『密林の峡谷』を拠点としている。

 ここは私が生まれた階層であり、この体の持ち主? である『彼女』が死んだ階層でもある。何を言っているのかわからないと思うが、私もあまりよくわかっていない。

 

 

 私がわかっている範囲で説明すると、今生の私の体は、どうやら人間の死体が材料となっているらしい、ということだ。それも複数の冒険者の死体だ……キメラかな? 

 

 私は生まれて早々に他のモンスターに襲われたのだが、それを難なく返り討ちにすることが出来た。前世では喧嘩のひとつもしたことがなかったのにもかかわらず、徒手空拳と魔法を自在に操って戦うことが出来たのである。

 階層内の構造も把握しており、地図なしでどこに何があるのか、どこが比較的安全な場所なのかもすぐにわかった。少なくとも1階層から41階層までなら大体把握している。

 

 おまけに、私には私ではない誰かの記憶があった。穴だらけではあったが、その記憶は確かにこの世界で生きていた人間の記憶だった。しかも、内容によって視点が違うので複数人の記憶が混ざっていると見ていいだろう。

 人数は十人前後。種族はヒューマン、アマゾネス、エルフ、ドワーフ、小人族、狼人。全員が女性であり、彼女達は同じパーティーで、とても親しい関係にあったようだ。まぁ、ここに私がいる以上、彼女達は全員お亡くなりになっているわけだが。

 

 私の容姿はその中の一人、パーティーのリーダーであった赤髪の少女……『彼女』と酷似している。ていうかほぼそのまんまだ。

 

 せっかくなので、私は彼女の名前から一部を取って『アリー』と名乗っている。名乗る相手は話しの通じないモンスターだけなのだが。

 

 ……断じて名前を考えるのが面倒くさかったわけではない。

 彼女の名前が一番しっくり来たからこの名前にしただけである。

 

 

 これだけははっきりと真実をry

 

 

 

 

 

 〇月□日

 

 今日は嬉しいことがあった。

 なんと、推しのアイドルのライブを見ることが出来たのである。なにを言っているのかわからないと思うので説明しよう。

 

 私は基本的に30階層を拠点としている。

 とはいえ、ずっと30階層にいるわけではない。主に情報収集を目的として、各階層にちょこちょこ移動しながら暮らしているのが現状だ。情報は武器、古事記にも書いてある。

 

 

 で、今日は25階層へ行ってきたのだが、そこで推しのアイドル……とある人魚(マーメイド)が歌っているところを見かけることが出来たのだ。

 

 25階層は水源の多い階層となっていて、人魚はそこに出現する希少種のモンスターだ。『マーメイドの生き血』という状態異常も疲労も怪我も全て回復する、超希少なアイテムをドロップする。

 ただし、25階層付近にいる水棲モンスターの中ではトップクラスのスピードを誇り、低級のモンスターを魅了して操ることも出来る。迂闊に手を出すのは危険が危ないモンスターでもある。

 

 さて、推しの人魚ちゃんな彼女であるが……なんと見た目が超可愛いのだ。本来の怪物然とした人魚とは違い、上半身が人間とほぼ同じで、可愛い上におっぱいも大きい。しかも当然、ノーブラなので丸出しである。丸出しである。大事なことなので二回ry。

 

 おいおい、最高かよ。これだからダンジョン生活はやめられないぜ。

 

おまけに歌もとっても上手。透き通るような歌声はいつまでも聞いていたくなる。もうアイドルのライブみたいなものだよ。これがタダで見れるってマジ? 

 

 とはいえ、見た目は可愛くてもモンスターはモンスター。

 

 当然ながら、話しかけたりするようなことはしない。

 ただ遠くから見守るだけ……イエスロリータ、ノータッチというやつである。別に彼女はロリではないし、私自身ロリコンでもないけど。本当だよ。

 

 万が一、接触して戦闘になったりしたら嫌だしね。

 いつかは彼女も他の冒険者に狩られたり、逆に冒険者を殺したりする時が来るかもしれないけど、それは自然の摂理ってやつだ。

 

 私は中立なのだ。

 モンスターにも人間にも肩入れしない。全てをあるがままに受け入れるだけさ。

 

 

 これだけははっきりとry

 

 

 

 〇月◇日

 

 今日は墓参りに行ってきた。

 墓参りがここ最近のマイブームなのである。趣味と言ってもいい。いわゆる墓マイラーというやつだ。

 

 目的地のお墓があるのは18階層、通称『迷宮の楽園』。

 安全階層である18階層には冒険者達の手によって町が作られており、荒くれ者達にとっての楽園となっている。まぁ、私は身バレを防ぐために町には入らないようにしているので、毎回スルーしているが。

 

 

 さて、早速だが本題に入ろう。

 墓とはそもそも誰の墓なのかというと、私のボディの素材となった彼女達の墓である。

 

 彼女達はこの18階層にある、とある場所を憩いの場として利用していたらしい。ある日、記憶を頼りにそこへ向かった所、彼女達が生前使用していた武器が墓標のように刺さっているのを発見した。

 どうやら、どっかの誰かさんが奇特にも墓を作ってくれたようだ。『彼女』の最期の記憶や、刺さっている武器を見る限り、誰が作ったのかはなんとなーくわかるのだが……まぁいい。私には関係のないことだ。

 

 今までは手ぶらで来ていたのだが、今日は彼女達が生前好んでいた、迷宮内で採取できる花や植物なんかをお供え物として持って来ている。

 私のボディは彼女達の体を元に作られている。私が使う魔法やスキル、冒険者としての知識、戦闘技術も元々は彼女達のもの。私が迷宮内で悠々自適に生きて来れたのは彼女達のおかげといっても過言ではない。だから、せめて感謝を伝えたくてこうして墓参りに来るようになったのだ。

 

 故人への感謝を忘れてはならない、古事記にもそう書いてある。

 

 墓参りを終え、私はそそくさと30階層へと戻って来た。

 18階層付近は冒険者が多い。というか、上層から中層(1層から24層)までは結構人が多いのであまり長居できない。だから、墓参りだけをしてとっとと帰るのが基本となっている。私の活動領域は主に下層(25層から36層)だ。

 

 顔を見られたらアウトと思ったほうがいい。

 私の顔は『彼女』と瓜二つ。『彼女』はそこそこ有名人だったみたいなので、死後数年が経っている現在でも顔を覚えている者は少なくないと考えている。

 

 拾い物のフードを被ったり、マスクを着けて誤魔化してはいるが。

 さすがにこれだけでは人前に出る勇気はない。なんか都合の良い認識阻害的なアイテムがあればいいのだが、都合の良いものは欲しい時に限って手に入らないものだ。

 

 ……ま、まぁ? 別にいいけどね? 

 私は孤高の一匹狼。群れることも、馴れ合うことも好まないのだ。

 

 

 これだけはry

 

 

 

 

 

 〇月☆日

 

 今日は修行のために深層へ行ってきた。

 深層は非常に危険な場所だ。レベル5以上の第一級冒険者でも単独で行くのは自殺行為のようなものだ。

 

 しかし! 私はチート転生者! 

 たとえ深層の地獄のような環境であろうと、迫りくるモンスター達をばっさばっさとなぎ倒し、ノンストップで突き進むことが可能なのである! 

 

 炎属性の付与魔法を発動! 

 うおォン! 私はまるで人間火力発電所だ! 

 

 

 ……この世界にはレベルと言う概念が存在する。

 簡単に説明すると、レベル1が下級冒険者、レベル2が第三級冒険者、レベル3~4が第二級冒険者。そしてレベル5から上が第一級冒険者に分類されている。

 

 そして初めに述べたように、深層(37層から先)はレベル5以上の第一級冒険者でも油断すれば簡単に死ぬ危険地帯。最低でもレベル4以上の冒険者がパーティーを組んだうえで、入念に準備して向かうのが常識と言える。私はそんな危険地帯で無双出来る実力を有しているわけだ。

 

 これには当然、理由がある。

 私のボディは複数の冒険者の肉体が素材に使われている……そのせいか、私の能力値は彼女達の能力値を合算したものになっているのだ。

 レベル4が二人。残り八人はレベル3。これらの能力値を合算しただけでも凄まじいのだが、さらにさらに、毎日魔石をバリバリと食って強化を続けた。

 

 その結果、私は深層でも無双出来るチート戦闘力を手に入れたのだ。

 

 レベル7の上位。付与魔法を使って強化すれば一時的にレベル8に匹敵すると思う。

 楽して強くなったので他の冒険者達にはちょっと申し訳ないが、生まれた環境がクソだし、地上に出れないデメリットを考慮すれば、せめて戦闘力チートくらいは許してほしいものだ。ていうか強くないと迷宮内では生きていけない。

 

 しかし、深層は良いな。なにせ広い上に人があまりいない。

 さすがにここで暮らしたいとは思わないが、修行も兼ねて一時的に滞在する分には中々に良い環境と言える。遠征に来る連中にさえ気をつければ、私が伸び伸びと戦える貴重な領域だ。

 

 おまけに、深層で拾える武器は質の良いものが多い。

 一応、『彼女』の遺品である片手剣もあるが、これはもったいなくてほとんど使っていない。もっぱら素手か魔法、その辺で拾った武器を使うのが基本だ。

 

 ……元の持ち主達には申し訳なく思っている。

 代わりに、亡くなった冒険者の死体を見かけたときは積極的に安全階層に運び込むようにしている。倒れて意識のない冒険者も、他のパーティーが見つけやすい場所に連れてったり、回復魔法で最低限治療してあげている。

 

 ちょっとやりすぎかもしれないが、どうにも我慢できなくて体が勝手に動いてしまうのだ。彼女達の魂はこの体にはないはずだが、記憶に影響を受けているのかもしれない。

 

 ……中立とはいったいなんだったのか。

 

 

 私が悪いのではない! この体が悪いのだ! 体が勝手に!! 

 

 

 

 

 

〇月●日

 

 今日は散々な日だった。

 修行を終え、深層にある安全階層で休んでいたところに、ロキ・ファミリアの連中がぞろぞろとやって来たのだ。危うく見つかるところだった。

 

 調子に乗って50階層まで来たのが悪かったのだろうか。

 ロキ・ファミリアは大規模遠征で来たらしく、数が多すぎて上の階層に戻ることが出来ない。いや、強引に行けば戻れるかもしれないが、高確率で見つかってしまう。もしも万が一、第一級冒険者を多数擁するロキ・ファミリアと戦うことになったら……さすがに無事では済まないだろう。

 

 

 ていうか、冒険者とは戦いたくない。

 今はモンスターだけど、中身は人間だからね?闇派閥の連中ならともかく、『彼女』の同僚である真っ当な冒険者達と敵対したくない。殺すのも殺されるのも勘弁である。

 

 そういうわけで、彼らから見つからないように51階層まで逃げた。そこで潜伏して、彼らが引き上げるまで待とうと思ったわけだが……そこでアクシデントが発生した。

 

 なんか変な芋虫に襲われたのである。

 彼女達の記憶にもない未知のモンスター。この芋虫達には非常に厄介な性質があった。体液が腐食液となっており、近接武器で攻撃すると武器が溶かされてガラクタになってしまうのである。

 

 ロキファミリアに見つかるわけにもいかなかったので、魔法を使った派手な戦いは出来ない。しかし、素手で戦えば体や貴重な防具が溶かされてしまう。仕方なく、私はコツコツ集めた武器で戦わざるを得なかった。

 

 結果、所有していた武器は『彼女』の片手剣以外全て溶けてしまった。

 

 

 武器が!! 武器がおしゃかになったっ!!

 

 

 クソモンスターすぎる……いや、悪いことばかりじゃなかったけどさぁ。

 他の拠点にも武器は隠してあるし、ロキ・ファミリアもこのクソモンスターのせいでどったんばったん大騒ぎ。おかげでどさくさに紛れて上の階層へ戻ることが出来たのだから。

 

 ……とりあえず、しばらくはこの辺に来るのは控えることにした。

 迷宮では何が起こるかわからない。彼女達の記憶でそれは十分に理解していたつもりだったが、まだまだ甘かったようだ。

 

 見た目はともかく、この世界では私は生まれて数年の幼女にすぎない。

 

 

 謙虚になろう。謙虚に生きよう。

 心の底からそう思った日であった。

 

 

 

 




・アリー
本作主人公。自称一般モンスター。原作開始時5歳の幼女()。
すっとこどっこいのポンコツ転生者。無駄に高いサバイバル適性を発揮して、今日も今日とて迷宮内でたくましく生きている。最近のマイブームは墓参り。
奇跡的に冒険者達にも異端児達にも愚者さんにも見つかっていない。なんか変な噂は広がってるけどまだ大丈夫。たぶん。

・人魚ちゃん
主人公が推しているアイドル(?)の人魚。
ちょくちょく視線を感じていて警戒気味。でも悪意は感じないので最近は慣れて来た。ご立派なものを持っている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。