一般モンスターです、通してください。 作:おっぱいは正義
□月◆日(2ページ目)
面倒事は、起こるときは連続して起こるものである。
おっかしいなぁ……もしかして不運のアビリティとか持ってるのかな?
さて、では二つ目の面倒事について記そう。
まず初めに、下層にとあるモンスターが大量に湧いた。
名をポイズン・ウェルミス。「毒持ってるよー」と言わんばかりの毒々しい濃い紫色をした、デカい蛆のようなモンスターである。また虫だよ。
このモンスターの戦闘力は糞雑魚なんだけど、上級冒険者の耐異常を貫通するような劇毒を持っている。おまけに今回は見たこともないほどの群れで湧いて出た。デカい蛆が地面や壁、天井にすら這い回っている光景はまさに地獄絵図。
キモい。生理的に無理。
私の耐異常なら毒は問題ないけど、こいつらを避けてリヴィラに戻るのは不可能に近いだろう。
そこで私は仕方なくヒューマン形態に戻り、火属性の付与魔法を使って手足に炎を纏った。毒液は炎でガードし、可能な限り触らないよう、軽ーく撫でるように腕を振る。それだけで奴らは耳障りな鳴き声をあげながらポンポン吹っ飛んでいく。
勝ったなガハハ。古来から虫タイプは炎タイプにはかなわないと決まっているのだ。でも触るのだけは嫌。
魔石は放置することになるが、こいつらの魔石は凄く小さい。これくらいなら問題ないだろう。
そうして蛆に対処しながら進んでいた私だったけど、途中で冒険者の一団と遭遇することになった。
結構な大人数の彼らは、蛆共に悪戦苦闘しながら必死に上層へと向かっていた。
高レベルの冒険者が隊列の各所で防衛しているようで、凍らされたり切られたり潰されたりした蛆虫がそこら中に散らばっている。それでも隊列全てはカバーし切れておらず、毒にやられて仲間に引きずられている者も多かった。特に手薄な後方は被害が大きそうだ。
正義の使徒系一般美少女狼人(モンスター)としては、彼らを放って置くことは出来なかった。
ちょうど最後列あたりの一団と遭遇した私は、そのまま隊列の護衛に加わって共に18階層まで向かうことを決めたのである。
私は華麗に跳躍し、蛆共の毒液から冒険者達を守りつつ褐色のアマゾネスちゃんの隣に並び立った。
貧乳アマゾネス「え、誰!?」
私「通りすがりの正義の使徒よ!助太刀するわ!後ろは私に任せて!」
貧乳アマゾネス「ホント!?よくわかんないけど助かるよー!」
って感じでかっこよく登場し、貧乳アマゾネス……ティオナちゃんと一緒に冒険者達を守り抜いたのである。
うん、この時点でなんか既視感があるなーとは思ったんだよね。この時にもうちょっと深く考えていれば……せめて18階層に着く前に別れて、時間をおいてからリヴィラに帰ればあんなことにはならなかったかもしれないのに。
18階層に辿り着いた後、私は成り行きのまま彼らの野営地作成を手伝っていた。
彼らとは……そう!ロキ・ファミリアの冒険者達である!
……やっちまったなぁって思ったよ。でも仕方ないじゃん。毒で苦しんでる人がいっぱいいるんだもん。治療もやんなきゃなんないし、18階層は安全階層とはいえ、他の階層からやってくるモンスターへの警戒も必要だし、とにかく人手が全然足りてなかったんだから。
着いて初日はバタバタしていて奇跡的に何も言われなかった。ティオナちゃんがフレンドリーに話しかけてくれていたおかげかもしれない。が、2日目になるとさすがに『誰だこの謎の美少女は……?』という視線を感じるようになった。
さすがにヤバいな、と思ってそそくさと逃げようとしたんだけど……数名の団員に声をかけられ、私はあえなく幹部達がいる天幕へと案内されてしまった。
天幕には小人族とドワーフの男性と、エルフの女性の三人組がいた。天幕に入ってきた私に対し、最初に口を開いたのは真ん中にいる小人族の男性だった。
「君のことは皆から聞いたよ、
そう言いながら頭を下げた彼に、私は物凄く見覚えがあった。いや、見覚えがあったというか、『彼女』の記憶にあったというか。
ロキ・ファミリアの団長にして、神々から与えられた二つ名は
「……おっと、自己紹介がまだだったね。知っているかもしれないが、僕はこのロキ・ファミリアの団長を務めている、フィン・ディムナという。後日、ファミリアとして改めてお礼をしたい。良ければ、君の名前と所属しているファミリアを教えてもらってもいいかな?」
……私に動揺はなかった。なにせ今は狼人形態だし、マスクも着けてるしフードも深く被ってる。ロキ・ファミリアとはそのうち顔合わせをする予定だったし、それが少し早まっただけだと考えればいい。
私に動揺はなかった……。
いやマジで。嘘じゃないから。本当だから。
その証拠に自己紹介は普通に出来たから。
「気にしないで。正義の使徒として、当然のことをしたまでよ!私の名前はアリーz……アリー!今はボールスさんのところで、護衛?使いっ走り?みたいなことをしてるの。ファミリアはアス……じゃなかった。お礼ならボールスさんを通して貰えるかしら!」って。
ね?普通でしょ?声も震えることなく、胸を張って堂々と、ハキハキ喋ることが出来た。文句のつけようのない百点満点の自己紹介と言える。
……まぁ、嘘なんですけどね。問題ありまくりだよ。
この口が!この口が勝手に動くんです!私のせいじゃないんです!なんか言動がおかしくなるんです!くそぅ、人と話すようになったのはつい最近だから、私のパーフェクトボディにこんな欠点があるとは思わなかったよ……。
なんかねー……私の声がすんごい聞き覚えがあるーって
そんで、
「その声はまさか……!アリーゼ・ローヴェル!?生きていたのか!?」って言うの。
『アリーゼ・ローヴェル』……つまりは『彼女』のことだ。
私の肉体のベースとなったヒューマンの冒険者であり、アストレア・ファミリアの団長。誰よりも正義を追い求め、力なき民衆のために戦い、未来にこそ希望があると信じて……そして、友に託して散っていった赤髪の少女。
皆の前では気高く、美しく、そして前向きで誰よりも明るい団長を演じていたけれど、内面は年相応に繊細な少女として悩み、迷い、葛藤しながら生きていた。わりと複雑な人である。
確かに私の声はアリーゼ・ローヴェルと同じだ。
でもさ、もう5年も前の人だよ?なんで声覚えてるの?そりゃあ、対闇派閥との戦いでは共闘することが多かったけどさぁ……おかしくない?なんなのこの人……頭だけでなく記憶力もいいなんて、欠点とかないのだろうか。
ヤバいと思って逃げようとしたけど、天幕の唯一の入り口をロキ・ファミリアの残りの幹部の方々に塞がれてしまった。
懐かしさに浸っている場合じゃなかったんだけどね。私はレベル6の冒険者3人に囲まれ、逃げられなくなってしまったのだ。
さすがに囲まれた状態でこの面子を振り切って逃げるのは無理だ。全力を出したら行けるだろうけど、お互いに無傷では済まない。下手したら戦闘に発展してしまう。
逃げられないと悟った私は、ひとまずフードを脱いで、狼人の耳を見せることで別人だと証明しようとした。冷静で完璧な対処であったと今も思う。
しかし
「
顔を覚えていてくれたんだ。嬉しい……じゃないわ。
私は最後の一人。複雑な顔をしているドワーフの男性、ガレスのおじ様に助けを求めた。
「うぅむ……儂のような老いぼれを『おじ様』などと呼ぶのは、あの馬鹿娘くらいしかおらんのだがなぁ。なぜそこまで否定する。かつては共に戦った仲ではないか……儂等には言えない事情があるのか?」
あかんこれ。
「それに、ティオナから聞いた話では、助けに入った冒険者はヒューマンだったと聞いているよ。火属性の
……くっ、やはりこの3人は手強い!でも私は負けない!
私はアリーゼじゃないんだ。誰が何を言おうとアリーゼじゃないんだ!
っていう感じで、史上最大のピンチを迎えた私は、それはもう必死に弁明した。必死すぎて何を言ったか詳しくは覚えてないけど、最終的には『アストレア・ファミリアが大好きで、特に団長のアリーゼの大ファン』『形から入るタイプだから真似してるだけ』ということで納得してもらった。
いや、たぶん納得はしてなかったけど、とりあえず見逃してくれた。団員を助けてくれた恩があるからって。
私とアリーゼの違いも伝わったみたいで、
「
……な、何も反論出来ない。確かに私は五歳児だし、冒険者としての経験も、人生経験も豊富(男性経験は除く)なアリーゼに比べれば色々と劣っている。相変わらずこの人の洞察力は凄まじいものだ。味方だとこの上なく頼もしいのだが。
ちなみに、
付与魔法で鮮やかな紅の炎を纏い、凛々しく、勇ましく、正義のために戦うアリーゼに相応しい二つ名である。
超かっこいいよね。
だから私もアリーゼの魔法が大好きなんだ。
□月√日
今日は
最初は私も同席してたんだけど、ボールスと二人きりで話したいことがあったみたいで、途中でやんわりと追い出されてしまった。
話し終えたあと、18階層にいる間はロキ・ファミリアのサポートをするようにとボールスからは言われたけど……いったい何を話していたんだろうか。
その後は特に問題は起きず、私はロキ・ファミリアの皆さんと一緒に夜まで過ごした。
剣姫こと、アイズ・ヴァレンシュタインとも会った。
昔はちびっ子ちゃんだった彼女も、今や十六歳の立派な少女に成長。ついこの前にレベル6に到達し、オラリオの冒険者の中でも上澄み中の上澄みと言える実力者になっていた。
十六歳でレベル6とは……剣姫、やはり天才か。
一般的なレベル制のRPGなんかと違い、この世界の冒険者のレベルは簡単には上がらない。ただモンスターを倒したりして経験値を貯めるだけでは、力や敏捷と言った基本アビリティの数値は上がっても、レベルを上げることは難しい。
いずれかの基本アビリティの数値をDまで上げて、さらに自分の限界を超えるような偉業を成し遂げないとレベルを上げることは出来ないのである。
生まれた時から強く、魔石を食べて今の実力を手に入れた私はさすがチート転生者と言えよう。これで人間として生まれていたら完璧だったんだけどね。
さて、大抗争を戦い抜き、その後も闇派閥とバチバチにやりあっていたアリーゼですら、十八歳の時点でレベル4。同年代の中でも才能はあったし、最期の戦いを生き残っていたら間違いなくレベル5にはなってたと思うけど……十六歳でレベル6になった剣姫ちゃんは格が違う。
使う魔法の性能もそうだ。アリーゼとは属性違いの風の付与魔法を使うけど、総合的な魔法の性能は剣姫ちゃんの魔法が上。瞬間的な加速力以外はほぼ上位互換と言える。彼女の『風』はあまりにも万能すぎるのだ。
ま、まぁ?別に羨ましくなんてないけどね?
私はアリーゼの魔法の方が好き!派手だし、かっこいいし。火属性って主人公っぽくていいよね。
剣姫ちゃんとは予備の剣を借りて仲良く手合わせしたけど、いつの間にか他の団員も集まってきてわちゃわちゃすることになった。
凸凹アマゾネス姉妹とアマゾネス流の体術で組手したり、なんか妙にやる気を出してきたガレスのおじ様と、模擬戦という名の殴り合いをしたり……いやまさか、おじ様とガチンコ勝負することになるとは思わなかったわ。そして私の方が腕力が強かったことにお互いショックを受けていた。やっぱりレベル7クラスの力があるという自己評価は間違っていなかったようだ。
しかし、剣姫ちゃんにはバレなかったけど、その代わりに妙なことを言われた。『レヴィスに似てると思ったけど、やっぱり全然違う』だって。レヴィスとは誰ぞ?
あと、どこを見て『全然違う』と言ったんだ。
私は今のサイズがちょうどいいんだよ!スラッとした今の体型がいいの!くっ、背は私より低いのに、胸だけはご立派に成長しちゃって……嬉しいやら悲しいやら。すっごい複雑な気分だわ。
……たかが五年、されど五年、か。
アリーゼが生きていた頃とは変わったなぁ。色々と。
途中で若い冒険者3人が加わりつつ、皆で夕食を囲んでから今に至る。平和な一日だった。
それにしても、あの白髪頭の男の子はいったい何者なんだろう。直感さんがざわざわしてるけど、具体的にどこがどう気になるのかよくわからない。
背は私とほぼ同じ。14歳のヒューマンだから、まぁこんなものだろう。顔立ちは整ってるけど、イケメンというよりは可愛い系。白髪と赤い目も相まって兎を連想させる。あとあれだ、線も細いし女装が似合いそう。
髪を腰くらいまで伸ばしてー、服は……ドレスがいいかな。白髪が映える黒系のドレスとかいいかも。目はキリッとした感じにして、クールで出来る女みたいな?かっこいい系も行けるとは、中々やりおる。女装だけど。
そんな兎系男子、ベル・クラネルが女装した容姿を想像していたのだが……なんだかその姿はある人に似ているような気がした。
大抗争の最後に戦った、『静寂』の二つ名を持つ英雄に。
アストレア・ファミリアが総出で戦い、周りからの援護と団員の奇策、そして相手の肉体が『病』によって限界を迎えたからこそ辛うじて勝利することが出来た、最強の冒険者。
彼女を思い出すと、胸の内に様々な感情が去来する。尊敬、怒り、感謝、恐怖、悲哀。
……不思議なものだ。夕食の際に話したけど、彼は人当たりの良い、心優しい少年だった。纏う雰囲気は『静寂』とは真逆。なんとなく顔立ちは似ているような気がしなくもないけど……もしかしてお子さんか血縁者だったりする?
なーんてね。そんなわけないか。
今日はいっぱい動いて疲れた。明日も朝から団員の看病とか手伝わないといけないし、バカなこと考えてないでとっとと寝よーっと。おやすみなさい。
・アリー
本作主人公。一般正義の使徒。
盛大にやらかしたが、本人はまだリカバリー出来ると思っている。
幼女が大ベテラン3人相手に話術で勝てるわけがないのだ。
え、寝ている間にまた誰か来たんですか?
まさか神様が来てるわけないですよねー。ハハッ。
・勇者、九魔姫、重傑
ロキ・ファミリアのトップ3。
主人公ちゃんのことをアリーゼ本人だと認識している。
そうでなくとも関係者なのは絶対に間違いないだろう、という見解。でも今は遠征帰りで余裕がないので、すぐにどうこうは出来ない……はず。
・ベル
女装が似合う原作主人公。可愛い。