一般モンスターです、通してください。   作:おっぱいは正義

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天気が良くてほのぼのです。


五頁目

 

 

 

 □月√日(2ページ目)

 

 夜中(あるいは早朝)に叩き起こされた。

 色々あったのでもう一度日記を書いておく。イベントが多すぎてもうお腹いっぱいだよ……かつての安寧の日々は戻ってはこないのだろうか。

 

 

 呼び出して来たのは勇者(ブレイバー)だ。

 

 彼の話によると、私が寝ている間に冒険者の一団がこの野営地に加わったとのこと。

 彼らはベル君が所属しているヘスティア・ファミリアの主神、女神ヘスティアが率いるベル君達の救出隊だ。他のファミリアからの助っ人で構成されており、タケミカヅチ・ファミリアからはレベル2が3人、ヘルメス・ファミリアからも団長の万能者(ペルセウス)こと、レベル4のアスフィ・アル・アンドロメダが来ている。

 

 おまけに主神のヘルメス様も来ているそうだ。あの神様は相変わらずアグレッシブだなぁ。

 

 ……なんで神様がダンジョンにいるの?

 神様がダンジョンに入るのはルールで禁止スよね?

 掟はどうなってんだ掟は!私の正体がバレちゃう!

 

 ヘスティアという女神様はアリーゼの記憶にはない。恐らく、この5年の間に下界に降りて来た新顔の神様なんだろうが……善い神様だと思うよ。眷属が心配でダンジョンまで入って来るなんて、中々出来ることじゃない。

 神様達は下界では力を制限していて、恩恵を授かっていない普通の人間並みの身体能力しか持ってない。当然、モンスターとは戦えないし、ダンジョンの中では無防備と言っても過言ではないのだ。眷属であるベル君を心の底から思いやっているのだろう。私の敬愛するアストレア様のように。

 

 

 なお、アストレア様も大抗争の時にダンジョンに入ったことがある。まぁ、あの時はアストレア様が来てくれなかったらアリーゼ達も最後の戦いに勝てなかったし、例外でいいでしょ。むしろファインプレーと言える。

 

 美人で聡明で慈悲深い。

 やっぱりアストレア様は他の神々とは格が違う。

 

 

 ああ、アストレア様は今どうしてるんだろう。集めた情報によると、天界に送還はされてないらしいけどオラリオにはいないっぽいし……ヘルメス様なら知ってるのかな。

 心配だよ……また会えないかな。

 

 

 話を戻す。

 

 今後の私の扱いはロキ・ファミリアが主導で決めていきたいそうで、とりあえずヘルメス・ファミリア等の他のファミリアには姿を見せないでほしいようだ。

 

 私の正体がアリーゼかどうかはともかくとして、私の存在が大々的に知られた場合、間違いなく全方位で大騒ぎになる。紅の正花(スカーレット・ハーネル)らしき人間がいるという情報は、闇派閥の残党を刺激して動きを予測不能なものにしてしまうかもしれないと。

 

 

 色々な事情を考慮した上で、一旦ロキ・ファミリアに任せてくれないか、との勇者の提案を受け入れた。私の知る限り、彼以上に優れた頭脳を持つ冒険者はいないし、アリーゼのかつての戦友なら信じられる。

 2日後にはロキ・ファミリアは地上に向けて出発し、ベル君達は救出隊と一緒にロキ・ファミリアの後に続けて出発する。私はそれまでの間、ヘルメス様達と顔を合わせないようにリヴィラに戻って待機だ。

 

 なお、既にボールスとは話をつけたらしく、今の私はロキ・ファミリアに貸し出されているような形になっているらしい。何も聞いてないんですけど?もしかして、ベル君達や救出隊が来なかったら、ロキ・ファミリアの拠点に連行されていたのでは?

 

 ……一応、地上に戻る予定はないというか、戻れないんだよねーと伝えたら、遠征の後始末が終わったら、リヴィラに勇者(ブレイバー)さんが来てくれることになった。そこで今後について相談しようって。

 

 

 色々配慮してもらってすみません……勇者(ブレイバー)には頭が上がらないよ。

 

 さて、それじゃあ明日と明後日はリヴィラに引き籠って、おとなしくしてますかね。自分から面倒事を起こすわけにはいかないし。

 

 

 

 

 

 □月ρ日

 

 やってしまった。

 

 うわあああああ!私のバカああああああああ!!おたんこなすううううう!!すっとこどっこいのあんぽんたん!!面倒事は起こさないって昨日決めたじゃん!たった1日おとなしくすることすら出来ないの!?なんで!?幼女だから!?美少女すぎるから!?やっぱり不運のアビリティ持ってんじゃないのこれぇ!

 

 

 ……じゃあ反省も兼ねて、やらかしたことを詳細に書き記していこうか。

 

 って言っても、夜までは何もなかったんだよ。宿から出なかったし。問題が起きようはずがない。はずがないんだけど……やっちゃったんだよなぁ。

 

 最近、気になっていたことがあって、宿にいる間はずっと考えごとをしてたんだ。

 

 私の肉体はアリーゼ達の死体が材料となっている。だから私には彼女達の記憶がおぼろげにあって、能力や知識を受け継いでいる。でも、彼女達の魂までは継いでおらず、残ってもいない。この肉体にあるのは私の魂だけだと……下層にいる頃はそう思ってた。

 

 人と関わるようになって判明したけど、私の表向きの振る舞いはアリーゼに引っ張られる。そして知己に会うたび記憶が蘇り、無意識でアリーゼ本人みたいなことを口走ってしまう。他人に向ける感情とか、行動原理とかもアリーゼの記憶から多大な影響を受けている気がする。

 

 他の彼女達の影響が少ないのは、肉体のベースがアリーゼだからだろうか。それはわからない。ただ、最近思うんだ。彼女達の魂は本当に欠片も残っていないのかって。

 

 時折、自分の体が自分のものじゃないような、私自身の意思を離れて動く時がある気がする。気のせいかもしれない。考えすぎかもしれない。でも不思議と、この考えが間違っているとは思えなかった。

 

 そして、この悩みごとに明確な答えを出す方法に、私は心当たりがある。方法は簡単……神様に会えばいい。

 

 ……神様は人の嘘を見抜くことが出来る。それは、人間の魂を観測できるがゆえ。今18階層に来ている神様のどちらかに私の魂を見てもらい、アリーゼ達の魂が残っていないか確認してもらえばいいんだ。ヘルメス様とは昔から対闇派閥で協力し合っていたし、事情を話せば協力してくれる……たぶん。きっと。

 

 でもなぁ、モンスターだってバレたらヤバいし……人類はもちろん、神様にとってもモンスターは敵対対象なんだから。ちゃらんぽらんでいい加減な神様筆頭のヘルメス様でも、さすがに私がモンスターだとわかればアスフィに対処を命じるだろう。

 

 戦友であるアスフィに攻撃されたら……想像しただけで辛い。悲しくてきっと泣いちゃうわ。

 

 

 なんだかどんどん考えが暗い方向へ行きそうだった私は、気分転換も兼ねてアリーゼ達のお墓に行くことにした。皆が寝静まった夜中なら見つかることもないだろうし、そもそもあの場所を知っている人間は限られている。ちょっと行ってすぐ帰ってくればいいのだ(フラグ)。

 

 

 ───案の定、問題はお墓で起こった。

 

 

 お墓を前にした私は、自然と彼女達の名前を呟いていた。

 

 アリーゼと共に笑い、泣き、他愛のない日常を送り、そして戦場を駆け抜けた。アストレア・ファミリアの団員達。彼女達の肉体もまた、私の一部となってここにいる。

 

 

「……ノイン、ネーゼ、アスタ、リャーナ、セルティ、イスカ、マリュー」

 

 各々が使っていた武器が墓標のように刺さっているが、アリーゼの遺品の片手剣だけはない。私が持っているからだ。ダンジョンで生き抜くために装備が必要だったとはいえ、()()には申し訳ないことをしてしまった。

 

「輝夜、ライラ……」

 

 ()()のことを思い浮かべたせいか。私はこの墓を作ったであろうその少女の名前を最後に呟いていた。

 

 

 「リオン」

 

 

 ───リュー・リオン。

 『疾風』の二つ名を持つ、レベル4の冒険者。

 そして、アストレア・ファミリアに一番最後に入団した、エルフの少女。

 

 純粋で、真っすぐで、でもちょっと真面目すぎて、入団したあとは末っ子として団員達から色々と可愛がられていた。まぁ、本人は揶揄われたり、振り回されたりして怒ってよく顔を赤くしてたけど。そういうところが可愛いから皆いじっちゃうんだよねぇ。

 

 ……彼女が生きていることを、最近になって知った。

 あの日、アストレア・ファミリアが壊滅した日。瀕死の重傷を負ったアリーゼ、輝夜、ライラの3人は、リオンを生かすために化物に特攻をしかけた。あの、骨の化物に。

 アリーゼの最期の記憶は、あの化物諸共リオンの魔法で消し飛んだところで終わっている。あれが決まっていたなら間違いなくあの化物はくたばったはず。

 

 この墓を作ったのも恐らく彼女だろうし、生きていると思っていた。けど、確信は持てなかった。

 

 なぜなら、リオンの負傷も軽くはなかったから。あの状態で、たった一人で30階層から地上に戻ることが出来たのかどうか……。

 でも、リヴィラで情報を集めて、リオンが生きていることを知った時は本当に嬉しかった。噂を聞く限り、アリーゼ達が亡くなった後は相当荒れてたみたいだけど。今は冒険者を引退したみたいで、どこぞの酒場でウェイトレスやってるとかなんとかって眉唾な情報もあった。

 

 いやー、リオンにウェイトレスは無理でしょ。接客とか一番向いてないよ。それも酒場。酔っぱらったむさ苦しいおっさんにボディタッチでもされようものなら、即ぶっ飛ばすだろう。接客はちょっとねー。

 

 ……でも、リオンが幸せに生きてるなら、それはそれでいいか。状況が状況だったとはいえ、あの子には重いものを託してしまったし……やりたいことをやって、せめて楽しく生きていて欲しい。

 

───そんな感じで、いつの間にか悩み事が頭からすっぽ抜け、代わりにリオンのウェイトレス姿を妄想して楽しんでいた私は、背後から忍び寄る魔の手に気づかなかったのだ……何回目だこれ。

 

 言い訳をするなら、今回は相手が悪かった。気配の隠し方が凄くうまかったし、なにより……見知った気配だったから。警戒対象に含まれていなかったのだろう。

 

 以下、可能な限り当時の状況を詳細に記す。

 

 

 

 

 

 「動くな───!」

 

 気配に気づいた時には、既に私は背後をとられていた。

 

 声だけで相手が誰かは見当がついたけど、首に突き付けられた刃を見てそれは確信に変わった。

 

 二刀の小太刀『双葉』。かつて輝夜が使っていた第二等級の業物だ。墓にないからわかってはいたけど、どうやら輝夜の遺言通り、武器として使い続けていたようだ。しっかりと手入れもされているのがわかる。

 

 感心感心……って、なにを悠長に頷いてんの私ぃ!?

 

 ヤバいよヤバいよ!どう考えてもリオンだよこの人!なんでいるの!?もしかしてベル君救出隊にいた!?なんでこのタイミングでここに……ロキ・ファミリアの野営地にはいなかったけど、もしかしてこの辺の森で一人で野営してたの!?おま……もっと他人と交流しろよ!

 

 こ、こんな形で再会するなんて……いや、リオンには会いたかったけど。心の準備と言うものが必要なんだよ!なんて言えばいい?どう対応するべきだ?何も考えてなかったー!

 

 と、内心で大混乱だった私だけど、たぶん、リオンも困惑してたんだと思う。だって「動くな」って言ったあとにそのまま何もアクションを起こさなかったから。お互いに固まったまま、たっぷり1分くらい沈黙の時間が流れた。

 

 

 そして、リオンは口を開いた。

 

 

「……アストレア・ファミリアの団員の名前を呟いていたな。ここが彼女達の墓であることは……いや、そもそもこの場所は私と彼しか知らないはずだ。少なくとも今日までは」

 

 最初から聞かれてたわ。気配隠すの上手すぎない……?

 

「以前墓参りに来た際、私以外の何者かがここに訪れたことを知った。彼女達と親しい者しか知らないような、彼女達の好みのものばかりが供えられていたから」

 

 そりゃあ、本人達の記憶があるからね。

 好みのものは網羅しているに決まってる……あ、これのせいで警戒して見張ってた感じかな?やっちまったなぁ!

 

「……腰にあるその剣。私の見間違いでなければ、それは彼女の剣……『クリムゾン・オーダー』だ。色は変わっているが、間違いない。30階層を何度も探したけれど、その剣だけは終ぞ見つからなかった」

 

 柄しか露出してないのになんでわかった。

 まったく、アリーゼのこと好きすぎるでしょこのエルフ。嬉しいけど。

 

 ていうか、途中から声震えちゃってる。小太刀の切っ先も、彼女の内心を表すかのようにゆらゆらと揺れていて……なぜか悲しくなってしまった。

 

「なにより、その声……!お前は、あなたは……いったい誰なんですか?答えてください」

 

 ……まぁ、ここまでの状況証拠が揃っていたらリオンならわかるわよね。

 

 

 さぁて、どうしたものか。

 狼人(ウェアウルフ)の耳を見せて別人だと言い張っても無駄だろう。それほど親しいわけでもなかった、ロキ・ファミリアの3人すら誤魔化せなかったんだから、リオンには絶対通じない。アストレア()様に誓ってもいい。

 

 リオンはレベル4だ。私の身体能力なら逃げ切ることは造作もない。ここは何も言わずに立ち去るのがベスト。

 でも、それはしたくなかった。私は……いや、違う。アリーゼの……彼女達の意思が、リオンから逃げたくないと言ってるから。

 

 ではどうするか。

 

 困った時の直感さんは、

 

『リオンなら事情を話せばわかってくれるわ!全部ゲロっちゃいましょう!』

 

 と言っている。

 

 

 ……ヨシ!直感さんが言うなら間違いはないな!

 

 とはいえ、今はマズい。ここは人が滅多に来ないとはいえ、どこで誰が話を聞いているかわからない。それに、出来れば勇者さんと今後の身の振り方を相談してからの方が良い。そうだ!その時にリオンにも来てもらえばいいんだ。

 リオンと話す時は勇者さんには席を外してもらうことになるだろうけど……うん、そういう流れに持っていこう。

 

 考えをまとめた私は、振り向かないまま話を始めた。

 

 

「答えてください!あなたは───「リオン」……っ!!」

 

 ビクリ、と肩が大きく跳ねたのが気配でわかる。

 そんなリオンの様子に申し訳なく思いつつも、私は一方的に本題を伝えた。

 

「ごめんなさい。今はまだ話せないの」

 

「あ……な、なんで……!?」

 

「今はリヴィラで暮らしているの。何日かしたら、ロキ・ファミリアの勇者(ブレイバー)と話し合いをすることになってるから、その時にリオンも来て。そこで全て話すわ」

 

「ま、待って……待ってください!」

 

勇者(ブレイバー)には話を通しておくから……あなたに会えてよかった。またね、リオン」

 

 一方的に会話を打ち切ると、私はリオンの前から去った。

 

 背後から聞こえる『アリーゼ!!』という、悲痛な叫び声に目を伏せながら───。

 

 

 

 

 

 ───ってな感じのことがあったのだ。

 

 うーむ、こうして改めて当時の状況を書きだすと……うん、私の対応も悪いものではなかったわね。どのみちリオンとは会う予定だったし、こっちから会おうと思って会えるわけじゃないから、むしろ良い機会だったと捉えましょう。

 

 

 ……なお、勇者(ブレイバー)さんにリオンとのやり取りを伝えたら、もの凄く疲れた顔をされた。59階層まで行ったそうだし、今回の遠征は相当堪えたようだ。さすがの私も、深層に一人で行けるとはいえ、51階層より先に単独で向かって生きて帰れる自信はない。

 

 

 次に大規模遠征に行く時は是非連れていってほしいな~。やっぱり元冒険者としては、未知の階層に興味があるんだよね。私の戦闘力はレベル7相当だし、足は引っ張らないから。ダメ?

 

 そう伝えたらすごく微妙な顔をされた。なんで?

 

 

 

 

 




・アリー
本作主人公。野生の幼女(モンスター)。
珍しく色々と悩んでいたが、寝る頃にはもう忘れている。

疾風さんの精神と勇者さんの胃にダメージを与えた後、宿で熟睡した。

・疾風さん
主人公と邂逅した日は寝ることが出来ず、翌日になると精神的に憔悴しきっていてフラフラ状態。
今の状態で格上のモンスターと戦うことになったら……下手したら死ぬ。

ま、18階層は安全だし、ゴライアスはロキ・ファミリアが倒して行ってくれるから安心!

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