有職転生〜異世界行ったら…え?三歳で剣を振るんですか?〜   作:KEN・JACK

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冒険者の仲間入り

「では、某はこれにて。いつかまた会えれば、その時は腕を見せてもらうとしよう」

 

「ありがとうございました、オーベールさんもお元気で」

 

翌朝、俺とニナは街の出口まで北帝を見送りに出ていた。オーベールは馬へと跨り、俺にそんな言葉を残す

 

「ニナ殿も精進なされるよう。ジノという巨大すぎる才が身近に居て実感は湧かぬだろうが…貴女の才能もまた非凡である事は間違いない。

北帝オーベールが保証する」

 

「ありがとうございます」

 

ニナは素っ気なく頭を下げる。森での一件の蟠りが残っている訳じゃないが…奇抜なオーベールの剣は真面目で真っ直ぐなニナには理解が難しいのだろう

 

ガルもオーベールが帰ると言った時、「おう、気ぃつけてな」としか言ってなかったし…別れもサッパリなのが剣神流なんだろうか

 

「おおそうだジノ、これを」

 

さぁお別れだ、という直前…オーベールから何かを手渡される。それは孔雀のレリーフが施された金の指輪だった

 

「それは某の弟子である事と同時に、北聖以上の身分を証明する物でもある。困った時はそれを見せれば食いっぱぐれる事は無いであろう」

 

ふむ、身分証か…言われてみればこの世界でそういう物があるとは聞いた事がない。こうやって身に付けた術や称号を示すものが代わりになっているのか

 

「もっとも…お前が食いっぱぐれるような世の中になれば某も野垂れ死んでいる可能性は高いのだが…なんであるか?その顔は」

 

「…いえ、初めて指輪を貰う相手が成人男性なのか…と思いまして」

 

「お前は本当に5歳かと思いたくなる時があるな…まぁ良い、売ってもそれなりに価値のあるものだ、好きに使え」

 

多少不貞腐れた顔をしているが、まぁ売っても良いと言うのは本心だろう。こんなもの無くても、俺が彼に教わった技は消える事は無い

 

ニナは後ろで「ジノは指輪が欲しいのかな…?」とか可愛いことを言っている。近いうちに期待出来そうだ

 

「冗談ですよ、有難くいただきます」

 

軽くそんな口を叩けば、左手の中指にその指輪をはめる。マジックアイテムなのか、ブカブカだった指輪が狭まってピッタリと指に収まる感覚があった

 

確か左手の中指は協調性の印。この世界でも色んな人と上手くやって行けるようにお祈りだ

 

「世話になった!さらばだ!」

 

そしてオーベールは高らかにそう言い放つと、馬を走らせて雪景色の向こうに消えていった。

 

師との別れは初めてだが、そこまで悲しくは無いな。

 

何かオーベールってその辺の穴から急に出てきそうだし…あんまり別れたって実感が無いんだよなぁ…

 

〜〜〜

 

「これからどうするの?」

 

オーベールを見送った後、ニナが小首を傾げて尋ねてくる。可愛い

 

おっといかんいかん。最近ニナが俺の事好き好き過ぎて俺もちょっと危ないんだよな…冷静にならなくては、相手はまだ9歳だぜ

 

「冒険者登録でもしようかなって、お金も稼ぎたいし」

 

身分証としても使えるし…と思ったがオーベールからの貰い物があるからそれはそこまで重要では無くなった。取り敢えずお金が必要だ

 

「冒険者!?はいはい!私もなる!」

 

冒険者という単語を聞いた途端ニナのテンションが急激に上がる。この歳で強くなろうとしてる子なんて冒険者大好きだもんな、御伽噺とかも聞かされてるだろうし

 

「僕は良いけど…ニナは良いの?師匠に許可とか取らなくても」

 

「?何で私がやる事にお父さんの許可がいるの?」

 

これはカルチャーショックというべきか…普通は9歳の娘なんて心配で心配で仕方ないのだろうに、ガルは放任主義何だろうか

 

その割には結構私怨が籠った剣でしたけどね

 

「おお…ここが冒険者ギルド…!」

 

スイングドアを開けると、そこには冒険者たちがひしめいていた。

 

人間だけではなく噂に聞いていた獣族や魔族の姿もある…妖精の尻尾みたいなのをイメージしていたが大体そんな感じだな

 

「すみません、冒険者登録をしたいんですけど」

 

「はい、冒険者登録ですね…あら?ジノ様にニナ様じゃないですか」

 

カウンターにいるお姉さんに声をかければ、何故か顔を知られているようだった。しかも様付け…知らない間に有名人になってしまったのだろうか

 

「僕達を知っているんですか?」

 

「聖地に住んでたら知らない方がおかしいと思いますが…」

 

どうやら剣神の娘であるニナと、史上最年少で剣聖になった俺の名前は聖地に響き渡っているらしい…何か嫌だな、どこ行っても身バレしてるみたいじゃん

 

「ジノ…自分がどれだけ噂になってるか知らないの?」

 

ニナにも自分に興味無さすぎでしょ…みたいな感じで引かれてしまった。別に凄くないって思ってる訳じゃないんだけど、最近3人から扱かれてたし…そんな所に意識向かないよ…

 

「お2人ならその歳でも登録は出来ると思いますが…剣神様に怒られませんか?修行もあるでしょうし」

 

「師匠なら大丈夫だと思いますよ、休みの日には干渉して来ませんから」

 

ニナも同じようにうんうん頷いていたので、受付のお姉さんも納得したのかパーティ登録の手続きを進めてくれた

 

規約みたいなものを読まされたが、特に問題は無かった。ニナは紙をじっと見て疑問符を浮かべていたが、取り敢えず俺が読み上げて必要事項を記入させる

 

「それでは、こちらに手を乗せていただきます」

 

書き終われば、職員のお姉さんは四角い透明な箱を取り出す。下には金属の板が置かれており、箱には赤い魔法陣が描かれているようだった。

言われるがままに手を乗せると、俺が先程記入した内容が読み上げられる

 

読み終わって箱の端をポンと叩けば、魔法陣が下の金属の板へと吸い込まれていった

 

「どうぞ、こちらがジノ様の冒険者カードになります」

 

手渡されたのは先程下に敷かれていた金属の板。そこにはぼんやりと光る文字で種族や年齢、職業が記されていた。

 

さっき身分証明書とかで喜んでいたが、これがあればおそらく大丈夫だろう…オーベールには申し訳ないけど、あんま使うところ無さそうだなこの指輪

 

「なんて書いてるの?」

 

「ニナの種族と名前と年齢、後冒険者ランクだよ。誰かに怪しまれた時にこれを出したら自分はこういうものですって証明になる」

 

とは言っても剣の聖地でニナが職質される事は無いだろうけどね

さっきからギルドの人達が俺達を見て何か話してるみたいだし…誰か聞かれる事は無いだろう

 

「凄い!私もいつか初代様みたいに御伽噺になる日が来るかも!」

 

「それは相当凄いことしなきゃ行けないと思うよ…」

 

まぁあまり現実を突き付けるのも野暮か、やるとしたらベガリットの迷宮でも攻略しないといけないけど…少なくとも後10年は無理だろう

 

「パーティの登録はなさいますか?」

 

「パーティかぁ…」

 

今の所ニナと本格的に世界を回る訳では無いし、別に一々登録しておく必要性は無さそうだが…

 

「パーティって何?」

 

「一緒に依頼をこなしたり、旅をする仲間だという登録をする事ですよ」

 

あ、そんな事言ったらニナが絶対したいって言う…という俺の危惧は的中してしまう。既にニナは目を輝かせていた

 

「します!パーティ登録!」

 

「かしこまりました、ではパーティ名はどうなさいますか?」

 

パーティ名か…別に何でも良いけどニナがどういう名前を付けるかはちょっと気になるな。1回任せてみるか

 

「パーティ名…ジノで!」

 

「ちょっと待ってニナ、流石にそれはおかしい」

 

俺がリーダーなのは良いとしても、パーティ名が人名っておかしいでしょ。そのうち俺が自己紹介する度に「1人なのか?」って聞かれちゃうよ

 

厳正なる話し合いの結果、パーティ名は【光の双剣】という形でおさまり、ニナは私も早く光の太刀を使えるようになると意気込んでいた

 

ちょっと中2っぽいけど、他のパーティ名も似たようなもんらしい。世界が違えばネーミングの常識も違うって事か

 

〜〜〜

 

「何か…あんまり面白そうな依頼ないね」

 

登録を終えた俺達は2人で依頼が貼り付けられている掲示板の前に来ていた。軽く見渡して見たが、オーベールの言った通りしょっぱい報酬でバイトみたいな事をさせられるのが殆どだ。

 

俺が依頼内容を読み上げても、ニナはとても微妙な顔をしていた

 

「最初はこんなもんだよ、いきなりドラゴン退治とかは任せられないしね」

 

Sランクの依頼にスノードラゴンの討伐とかもあるが…流石に竜には勝てないだろう。御伽噺の通りなら魔術とかも使うらしいし、魔術の切り方は習ってない。使う前に切れ、それだけ言われた

 

「やっぱり最初は小さい依頼をこなしていくしか無いかな…ニナ、何か受けたいのある?FとEだけしか受けれないけど」

 

「うーん…じゃあこれ!」

 

ニナは少し悩んだ後、1つの貼り紙を手に取る。依頼内容は母の誕生日にアイスアザレアを採取してきて欲しいとのことだった…Eランクの理由は群生地にたまにスノーウルフが湧くかららしい

 

「お母さんにプレゼントしたいって事でしょ?手伝ってあげようよ」

 

オオカミに興味があるのかと思いきや、どうやら依頼内容に惹かれたらしい。そういえばニナもお母さんと仲良いもんな…ガルがあんなだから母親は甘やかしてあげているのだろうか

 

ニナにはいつまでもこの純粋な気持ちを忘れないで居て欲しいものだ

 

「分かった、それじゃあ行こうか」

 

冒険者としての記念すべき初仕事だ。大した事は無いが、思い出にはきっと残るだろう

 

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