有職転生〜異世界行ったら…え?三歳で剣を振るんですか?〜   作:KEN・JACK

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【第二章】アスラ王国編
道中での出会い


己の肉体と剣術に限界を感じ、悩みに悩み抜いた結果…彼が辿り着いた先は…

 

感謝であった!

 

己を育ててくれた剣術への限りなく大きな恩…少しでも返そうと思い立ったのが…

 

一日1万回!感謝の素振り!

 

 

いや、皆落ち着いて聞いて欲しい。俺だってふざけている訳では無いのだ…事の発端は数分前、意気揚々と聖地を出立した俺は赤竜の上顎を目指して馬を走らせていた。

 

だがよく思い出して欲しい…俺はこの7年間、馬に乗ったことが無かったのだ!

 

剣王になって調子に乗っていたという気持ちもある。ここまで来て馬に乗れないなどある訳が無い…この身体の才能を舐めるんじゃないという驕りで飛ばしまくった結果…

 

馬がブチ切れて叩き落とされ、荷物と共に雪の中へ消えていったのだ…

(馬は近くを通った剣聖が保護しました、無事です)

 

手元に残ったのは玉響とお金…そして地図ぐらいのもので、馬に巻き付けていたコンパスも消えてしまい…途方に暮れて素振りをしていたという訳である

 

「何とかしないとって思っても…何とかなんないよな…」

 

ここで俺が魔術を習っていれば何とかなったのだろう、だが生憎俺が習ったのは剣術…光の太刀では道を切り開く事は出来ないのだ

 

あぁ…でもやはり素振りは落ち着くな、もはや仕事終わりに家のソファで横になるくらいの落ち着きだ…もうこのまま俺の物語も終わっても良いかな…

 

【第二章】アスラ王国編~完~

 

「おーい、お前そんな所で何してんだ?って、ジノじゃねえか!珍しいなこんな所まで出てるなんて」

 

「と…トリネゴさん!」

 

半分諦めの境地に入っていた俺の前に一つの馬車が現れる。

 

中から現れたのは、俺に本を格安で譲ってくれていた商人であった

 

「いや…それが遭難しまして…」

 

「遭難ってお前…ガハハハハハ!剣王様が遭難してたのか?!こりゃ傑作だ!」

 

くそぅ…バカにしやがって、絶対酒の席で楽しげに話すだろこの人…だが渡りに船とはまさにこの事。この人に付いていけば旅の第1目的地であるアスラ王国に着くはずだ

 

俺は旅に出ていることと、文字通り遭難してて非常に困っていることを赤裸々に伝える。するとふくよかな商人はニヤリと笑みを浮かべ

 

「そうか…丁度今日は護衛が心許なくてな、困ってた所だったんだよ。報酬は無くていいな?剣王様?」

 

足元を見られた…流石は商魂逞しいな、だが背に腹はかえられぬ…生きるためには従うしかあるまい

 

「分かりました…それで良いですよ…」

 

「よし決まりだ!皆聞け!今日はタダ働きの剣王が手に入ったぞ!」

 

その声を聞いて、馬車の裏側から数人の武装した人達が現れる。

確かにトリネゴの言う通り心許ない男達だった

 

男達は予想通り次々と剣王…?この子供が…?というような声を上げていた…なんだ?やるかこのやろう。丁度俺の玉響が血を求めていた所で…

 

「あら、いい男ですわね」

 

勿論真面目にそんな事を思っていた訳では無いが、その考えは少し遅れて彼女が現れたことによって霧散する。

 

「あと5年産まれるのが早ければ…とってもいい思いをさせてあげましたのに」

 

え…エッチなエルフのお姉さんが居る!!!

 

こうして俺は剣の聖地に来ていたアスラの商人団に加わる事になった

 

〜〜〜

 

「にしても凄いですわね、その歳で剣王だなんて…私、剣王に会うのは2人目ですのよ」

 

「え?そうなんですか?」

 

夜になり見張りをする事になった俺は、エルフのお姉さんと馬車の前で焚き火を囲みながら談笑していた。

 

彼女の名前はエリナリーゼ、見た目通りエルフ…というか長耳族で見た目は綺麗なお姉さんだが、年齢は途方もない程上らしい

 

彼女の実力は護衛の冒険者の中でも抜きん出ており、この辺りの魔物は相手にならなかった。タンクとしてのヘイト管理は勿論の事、索敵の腕も見事だ…戦う事しか出来ない俺は指示通り剣を振るうだけで良い

 

「昔冒険者パーティを組んでいた事があったのですけれど…まぁ彼女に比べればジノ、貴方はとても賢いですわ。指示は忘れないし、指示を忘れた事を忘れて暴れませんし」

 

「…それ、もしかしてギレーヌという人ですか?」

 

「あら、知ってましたの」

 

ガルが良く話をしていたからな…才能に溢れては居たが教育を間違えたと。理合を得て飢えた虎が子猫になってしまったと…でも話を聞いてると全然まだ飢えてる感じしますけどね

 

「師匠がたまに話してたので、一度会いたいとは思っていたんです」

 

同じ師を持つ者として、剣王という高みに到達した者として…話せることはある筈だと思っていたが…まさか知り合いに先に会うことになるとは

 

「貴方のような子が話しても得るものはありませんわ、剣以外で役に立つのは2択を当てる時くらいですもの」

 

「いや…まぁ剣の話が出来ればそれで良いんですけどね…」

 

どうも人間に対する評価とは思えない。獣族という話だったが、もしかして俺が想像している感じじゃないのか?〇シアンみたいに剣咥えてる犬だったりするのか?

 

「エリナリーゼさんは何故聖地に居たんですか?僕が言うのもなんですけど。何も無いでしょ?」

 

「たまたま依頼で御一緒した方が剣聖でしてね…剣の腕もさることながら…夜の方もそれはもう苛烈で少々離れ難かっただけですわ…っと失礼、7歳にする話では無かったですわね」

 

なるほど、この人は淫乱なんだな。元の世界だと〇ー横とかで立ちんぼしてる感じの人なんだろう…エッチなお姉さんかと思ったらビッチなお姉さんだったか…

 

「私の事なんかよりジノの事を聞かせてくださいな、その歳で何故聖地を出たのか…教えてくださる?」

 

どうしてか…理由は色々あるけど、やはりこの目で世界を回りたいというのが大きいように思う。あのまま居たっていずれ剣神になって道場でニナとイチャつく未来しか見えないし

 

「外の世界に憧れたからですかね。おかげさまで剣の才能には恵まれていたので、行動に移せただけです」

 

「それは立派ですわね…でも、寂しいとは思わなかったんですの?家族や友達も…居たのでしょう?」

 

後悔が無いと言えば嘘になる。ゼタはやはり寂しかっただろうし…何も言わずに去る事になったニナが心残りだ。きっと失望されている事だろう、もう口を利いてくれないかもしれない

 

「寂しい気持ちはありますが…僕が聖地に居続けるのはあまり良くない気がしたんです。自分にとっても、聖地の皆にとっても」

 

ひたすらあそこだけに居れば俺も剣の腕に物を言わせる嫌な奴になってたかもしれないし…何よりニナも俺に依存してしまう事だろう。それは良くない

 

ニナ以外だってそうだ、この身体の才能と前世の記憶が合わされば反則級であることは間違いない。このままでは俺のせいで剣を置く人も出るかもしれない。ガルはそんな事気にしてなさそうだったけど…

 

「7歳とは思えない思慮深さですわね、ですがその気持ちはよく分かりますわ。私も何度か…そういった経験がありますもの」

 

いやそれは男絡みだろ…と突っ込もうと思ったが、エリナリーゼの表情を見て何故かそうでは無いと思った

 

不思議と俺が旅立ちの話を切り出そうとした時のゼタと…エリナリーゼが重なって見えたのだ

 

「交代の時間だ」

 

背後からの声に振り返れば、いつの間にか見張りの交代の時間になっていたらしい。護衛仲間の2人が少し眠そうな顔で立っていた

 

「あら、もうそんな時間でしたのね。ジノと話していると時間が経つのが早いですわ」

 

「ダメですよエリナリーゼさん、7歳にそういう思わせぶりな事言うのは」

 

茶化すように言うと、エリナリーゼはくすりと笑う。だが彼女とのやり取りは新鮮だ、聖地の人達とは違うユーモアを感じる事が出来る

 

「そうですわね、では7歳らしく私と共に寝ましょうか?ちょっとくらいならエッチなことしても構いませんのよ?」

 

「………結構です」

 

「間がありましたわね」

 

俺も男だからね、仕方ないね

 

〜〜〜

 

「あれが赤竜…」

 

「見るのは初めてですの?貴方ならはぐれ赤竜くらいなら倒せるかもしれないけれど、そう易々とふっかけてはいけませんわよ」

 

1ヶ月ほどで俺たちは赤竜の上顎という渓谷に到達していた。遠方には中央大陸最強と名高い赤竜が何匹も飛んでいるのが見えた…話によればガルでさえ赤竜の群れを強引には通れないらしい

 

「そんな戦闘狂に見えますか?」

 

「見えませんわ、けれど目が興味津々でしたわよ」

 

まぁ俺だって男の子だしな…最強の魔物とか言われたらそりゃそそられるってもんよ。やっぱスノードラゴンより強いんだろうか

 

とはいえこの渓谷は魔物も少なく、非常に通りやすかった。

普通赤竜の上顎なんて大層な名前がついている場所は高難易度ダンジョンだから警戒してたんだけどな

 

「…ジノ、止まりなさい」

 

そしてもうすぐ赤竜の上顎を出るという所で、エリナリーゼが俺を制止する。振り向けば俺以外の皆は少し後ろで立ち止まり…ある1点を凝視していた。

 

その表情は動揺…いや違うな、同じだ、皆同じ恐怖の表情を貼り付けている。エリナリーゼも例外では無い

 

視線の先には、男がいた

 

銀髪、金色の瞳、特に防具はなく、何かの皮で作られた無骨な白いコートを身に着けていた。

 

馬に乗るでもなく、馬車に乗るでもなく、ただ歩いてきた。

 

男がいたのだ

 

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