有職転生〜異世界行ったら…え?三歳で剣を振るんですか?〜   作:KEN・JACK

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謝罪の話なんですけど、文字数稼ぎが違反ってことで削除しました
すみません


水神の頼み

 

「お初にお目にかかります…水神様」

 

名乗りを上げたレイダに向かって、剣神流の礼で頭を下げる。水神流に対してこれでいいのかどうか分からないが…これしか知らないんでね

 

「なに、誰も見てやしないんだから…そんな堅苦しいのは要らないよ。さぁ皆修行に戻りな、試合は終わったんだから」

 

老婆は面倒だろうと言うように首を振れば、パンパンと手を叩いて観衆を散らせる。にしてもこの空気の変わり方…流石水神だな、きっとガルとも戦えるのだろう

 

「さて…申し開きはあるかい?イゾルテ」

 

「申し訳ありません、剣王と戦える機会に居ても立っても居られず…」

 

水神に詰められて頭を下げるイゾルテは心做しか先程よりも小さく見えた。なるほどね、水神に言われたってのは口実で…実際はそれが本音か

 

「回りくどいことをしたもんだねぇ…対抗心があるってのは悪いことじゃないけど、それで負けてちゃ世話無いよ」

 

「………返す言葉もごさいません」

 

回りくどい?となって思い返して見れば…なるほど、あの剣士はイゾルテが集めたものだったのか。皆の前で剣王を打ち負かし、自分の強さを喧伝したかったって所だろう

 

イゾルテは余程悔しかったのか、頭を下げたままにも関わらずその拳には強い力が篭っていた

 

「少し頭を冷やしな、あたしは剣王と二人で話をしてくるからね」

 

「かしこまりした。失礼します」

 

イゾルテは短くそう言うと、そのまま踵を返して去っていった。

悔しさ故か潤んだ目でこちらを睨み付けながら…嫌われたもんだな

 

「…大丈夫なのですか?」

 

「良い刺激になったろうさ、すまないねぇいきなり巻き込んで」

 

いや…案じて欲しいのは俺の身なんだけどな。だが彼女もまた剣士として堂々と戦ったのだ、仲良くは出来ずとも後ろから刺される事は無いだろう

 

「さて、折角アスラまで来たんだ…奢るよ、何か好きな食べ物はあるかい?」

 

「…米でお願いします」

 

聖地でもたまに出たが、ここは世界の中心…是非ともレベルの違う米料理を堪能させて頂こう。

 

「米って…随分物好きだねぇ、出す店あったかね…」

 

二つ返事で奢ってもらおうとしたのは恥ずかしい事かもしれんが、弟子の稽古も付けてやった事だし…飯くらいは良いだろう

 

〜〜〜

 

「これはこれは水神様、ようこそいらっしゃいました…こちらは?」

 

レイダと共に来た店は城にほど近い何ともお高そうな料理屋だった

 

にしても流石は水神、顔が広いな…さっき馬車乗った時も話しかけられてたし、今回も店に入ったら店主が近付いてきた

 

「客人だよ、丁重に扱っとくれ」

 

「剣王ジノ・ブリッツです」

 

客人か、今のところそういう扱いになってるんだな俺って…まぁこれからのレイダの要件如何で変わるかもしれないけどね

 

「おぉ…その歳で剣王でいらっしゃるとは…流石水神様の客人ですな」

 

軽く自己紹介を済ますと、店主の表情が驚きに染まる。だがどちらかと言うとレイダを褒めた感じだな…まぁ別に良いけどね?

 

「世辞は良いよ。それより今日は客人が米をご所望でね…何か作れるかい?」

 

「米…でありますか、出来なくはないですが。剣王様はシーローン辺りの出身で?」

 

まぁこの世界で米が好きと言えばそうなるわな。だが生憎俺の出身は日本だ…いや聖地か、ややこしいな全く

 

「そういう訳では無いですが、好物なんです」

 

「左様ですか…では海鮮パエリアをご用意致しましょう。水神様はいかがしますか?」

 

「一緒で構わないよ」

 

レイダの返事に店主はにっこりとした顔で返事をすれば、奥の席へと案内される。

2人で使うにはかなり広いように感じるが、この国での彼女の立ち位置を考えれば妥当なのかもしれない

 

「有名人扱いも困ったもんだねぇ。あの店主は昔ウチの道場に居たもんだから、神格化されちまってんのさ」

 

「いや…実際水神様のお名前を考えれば妥当なものでしょう」

 

「物には限度ってもんがあるさね…行き過ぎれば何事も立ち行かなくなるもんさ」

 

…何か同じ神級なのにガルと会話する時と全然違うな。年の功とか性格とかはあると思うけど、剣以外はこんな深みのある会話できないしなあの人

 

「それより、ガルの坊やは元気かい?ニナが生まれた時一度会いに行ったが…それきりだからねぇ」

 

「元気ですよ、まぁあの人がどうにかなる事なんて無いです。水神様もご存知かと思いますが」

 

坊やってか…まぁ歳考えたらそんなもんか、にしてもこの人くらいだろう…剣神ガル・ファリオンを坊や扱いできるのは

 

「よーく知ってるよ、坊やが死ぬとこは想像できないくらいにはねぇ」

 

レイダは少し楽しそうに笑い、言い終わると真剣な面持ちへと変化する。恐らく用件とやらを伝えてくるのだろう

 

「さて…回りくどいのも好きじゃないんだ、単刀直入に言うよ…あんたを探してたのは、イゾルテを鍛えて欲しかったからなんだ」

 

「鍛えるって…あの水聖の方をですか?」

 

何を言われるかと思いきや、まさかの弟子を鍛えると言う内容だった。

とはいえ水神流は全く知らないし、彼女に剣神流を習いたいと言う意思があるとは思えない

 

「1年ほど前だったかね、坊やから手紙が来たんだよ。とんでもない剣士が産まれたってね…それがあんただよ、ジノ」

 

外様に自慢してたのかよあの人…嬉しいのは嬉しいけど何か恥ずかしいな、親バカ…ってか師匠バカじゃん

 

「正直もうすぐ7歳の子供に王級を与えるって書いてた時は流石に冗談だと思ったけどね…実際に見て分かったよ、あんたは充分に剣王に相応しい実力はある」

 

「あんたなら、天狗になってるウチの孫を良い方向に持ってけるんじゃないかと思ってね…アスラに来たら声をかけるように門下生に言ってたのさ」

 

なるほどね、だがレイダもそんなに早くアスラに来るとは思って無かっただろう。ガルがそのうち飛び出すだろうみたいな事を書いてた可能性もあるけど

 

「話はわかりましたけど…水神流はからきしですよ?北神流の心得はありますが…」

 

ましてや相手は水聖だ…俺が教えられる事なんて有るのだろうか。

いや無いな、多分イゾルテは俺の事がまぁまぁ嫌いになっていると思うし…出来ることは無さそうだ

 

「別に剣を教えてやれって言ってんじゃないよ、一緒に水神流を習ってくれりゃあ良いのさ…今のイゾルテに必要なのは対等に競い合える…言わば好敵手だからね」

 

そうなるのか…だが話としては悪くない。剣神流は皆伝を貰った事だし、どうせ宛の無い旅だ…ここで水神から直々に水神流を学べると考えたら大分お得なのでは無いだろうか

 

「分かりました。ただ僕もそんなに持ち合わせが無くてですね…宿代や生活費を稼ぐ為に仕事を斡旋して頂けるとありがたいのですが」

 

聖地とは違って家もなければ飯も出ない。修行していれば良いという訳では無い…しかし水神の紹介とあれば割のいい仕事も貰えるだろう、剣王の称号もある事だし

 

「そこは心配いらないよ、剣王を引き留めるんだ…報酬として月に金貨一枚出すつもりさね」

 

金貨一枚って…10万くらいだよな?剣の修行が出来て金を貰える…最高だ、しばらくアスラに滞在することにしよう

 

「そこまでして下さるのであればこちらとしても文句はありません。これからよろしくお願い致します」

 

俺が頭を下げると、レイダはにこやかに頷いた。こうやって見ると水神という感じはなく、編み物してるおばあちゃんって感じだ…ばあちゃん元気かな…

 

「お待たせ致しました、海鮮パエリアでございます」

 

そこでタイミングを見計らったかのように店主が料理を運んでくる。

おぉ…何とまぁ豪華な、烏賊、海老、貝、パプリカといった具材がこれでもかと並んでおり、中央にはレモンが乗せられている…流石アスラだな

 

「遠慮はいらないよ、好きなだけ食べるといい」

 

「ありがとうございます!いただきます!」

 

日本で食べるパエリアとは違うが、旅が長くて質素な食事しかしてなかった俺には染み渡るほど美味かった…ここはリピート確定の店になりそうだ

 

〜〜〜

 

「ご馳走様でした…とても美味しかったです」

 

店を出て、レイダに深い礼をしながらお礼の言葉を述べる。レイダは本当に孫を見るような目付きでこちらを見れば

 

「満足して貰えたなら良かったよ、米を出す店は少ないからねぇ」

 

と言ってくれる。この世界の住人は米をあまり食べないし…まぁ当然か、西洋の辺りじゃ全然食べられてないだろうしな

 

「では…明日から僕はどこに行けばよろしいのでしょうか?」

 

「どこにって…それは明日伝えるつもりだよ」

 

明日…?いや今日教えて貰わないと出勤出来ないじゃん。さっきの道場って事なら分かるけど…違うんでしょう?

 

「いや、それでは遅いのでは?」

 

「んん?あぁ、あんたもしかして宿でも取るつもりなのかい?」

 

いやそらそうでしょうよ、野宿する訳にも行かんでしょ…いくらアスラが治安良いからって…玉響もあるのに

 

「そんなもん取らなくても、家に住めば良いじゃないか、幸い部屋は多いんだ」

 

「あ、よろしいのですか?」

 

って事はイゾルテとは別に住んでるんだな、よしよし…宿代、引いては飯代も浮くかもしれん…これは僥倖だ

 

「さっきも言ったけど、あんたは客人なんだ…相応のもてなしはさせてもらうつもりさね」

 

「それでは…お言葉に甘えさせて頂きましょうか」

 

そうと決まれば、今日はもう日も落ち掛けているという事で俺はレイダと共に帰路についた…水神の旦那とか居るんだろうか、やっぱ強いのかな

 

「ここが家だよ、アスラは聖地と違って広いから迷わないように気をつけな」

 

「おぉ…流石に豪邸ですね…」

 

道中で聞いた話によれば昔は王宮の剣術指南役であったらしく…確実に資産は莫大と思っていたが、その通りであったらしい

 

「気を使わず自分の家だと思って寛げば良いからね」

 

「お邪魔します」

 

いきなりこんな豪華な家に住むことになるとは驚いたが、やることは剣術の修行…まぁすぐに慣れるだろう…

 

そんな呑気な事を考えてながら家の玄関に入れば、俺の目に1人の少女が映ったのだった

 

「お帰りなさいお祖母様、今日は早かったです…ね…」

 

その少女は、俺の顔を見た瞬間固まってしまった…そらそうだろうな…俺も実際固まってる

 

「ただいまイゾルテ、タントリスは帰ってるかい?」

 

イゾルテおるやないかい!!!!

 

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