有職転生〜異世界行ったら…え?三歳で剣を振るんですか?〜   作:KEN・JACK

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ナナホシのツバサ最高でしたね


サラの決意

 

「まずは冒険者ギルドですか?」

 

「いや、ギルドにはしばらく行きません。パーティが組めませんからね…私はSSですから」

 

街へ入りアレックスにそう尋ねると、首を横に振りながら返事が返って来る。SSて…と思ったが先生だから身近に感じるだけで彼は大英雄だ、おかしなことは無い

 

「では…どうやって稼ぐんですか?」

 

基本的に冒険者の稼ぎはギルドの依頼だ。確かに修行の合間に上げてCランクの俺とまだ登録もしてないサラではアレックスと組むことは出来ないが…かと言ってどう稼ぐんだ?

 

「簡単です、迷宮に潜れば渡航費の10回や20回すぐに稼げます。勿論サラが問題ないレベルになってからですが」

 

迷宮か…確か踏破すれば貴重な魔力付与品や魔力結晶が手に入る所謂ダンジョンだ。しかし危険だ、魔物が大量に居るのは勿論罠もある…魔大陸の迷宮ともなれば一筋縄では行かないだろう

 

「でも…先生が依頼を受けた方が早いのでは無いですか?修行はジノとだって出来ますし」

 

俺が危険性を考えていると、サラがそんな事を口にする。目線は遠慮がちに俺の方を向いているところを見るに、俺を早く帰すためにアレックスを使ってでも最善の方法を考えているのだろう

 

「確かに北王のジノにも北神流を教えることは出来ますが…生憎Sランクを超える依頼は長期に渡ります。いつ終わるか分からない依頼よりサラを鍛える方が結果的には早いのですよ」

 

アレックスの言葉に偽りは無いが…サラにはそこまで可能性があるのだろうか?俺にはまだ才能を見抜く目は無いから分からないけど…サラも不安そうだ

 

「今すぐに北帝になれという話ではありませんからね、迷宮もそこまで危険な物に行くつもりはありません。戦力として数えれるようになれば後は直ぐに帰れますよ」

 

良く考えればそうか…今はサラが旅で足手まといにならないレベルになれれば良いのだ。迷宮とか言うから変に身構えてしまった

基本は俺とアレックスが戦い、サラは的確に援護できるようになる…それだけでこの3人ならパーティとして完成するのだ

 

「けど…」

 

「大丈夫だよサラ、期限がある訳じゃないんだ。焦らずに行こう」

 

納得行かなそうなサラだったが、俺がそう言うとサラはそれ以上言う事は無いのか力強く頷いた。

 

「それではまず先に拠点となる宿を取りましょうか。」

 

こうして俺とサラの魔大陸での修行が本格的に幕を開けたのであった

 

〜〜〜

 

街に腰を据えての修行では、基本的に三人で行う方式に変わった。街の近くの広い所で一日中修行に明け暮れる日々…金は魔物を狩って稼ぐ事で得ていた

 

まずは俺とアレックスが本気で戦い、それをサラが見る。

 

剣を使わないとはいえ、当たり前だがアレックスの動きは北神流の理想形だ。俺が光の太刀を放てばずらし、いなし全力でそれを喰らわないように動く

 

反対に水神流の技を使えばこちらのカウンターをものともしない体幹で強引にその技を押し通してくる。捉えようによっては泥臭いとも取れる戦術だが、明確な技が少ないとは思えない完成度は…待ちに入った水神流をも崩す

 

言わずもがな北神流では相手にならない。同じ土俵に立てば彼との差は明白だった。王級を貰ったのに、彼の前では児戯にも等しい程度の物だと思い知らされた

 

「とまぁ、このように理想的な動きが出来れば剣皇でさえも下すことが出来ます。と言っても、私がジノに先生面出来るのも後5年程でしょう」

 

「…今の所勝てるイメージは湧きませんけどね」

 

初日に戦った時よりかは善戦したが、まだまだ差は大きい。5年は言い過ぎだ、10年は勝てまい…俺は弾き飛ばされた玉響を拾いながら突っ込みを入れる

 

「…正直、あんまり分かりませんでした」

 

サラは申し訳なさそうにそう呟いた。まぁそりゃそうだろう、自分で言うのも恥ずかしいが今の戦いは剣士の中でもトップレベルだ…習ってるとはいえそう簡単に理解出来るはずも無い

 

「今はそれで構いません。続けていれば自分とは何が違うのか自ずと分かるようになります…必ずしも同じようにする必要はありません。差を埋める為に工夫し、自分なりに強くなれる方法を模索すること…それが北神流の全てです」

 

勿論基礎はありますけどね、と言うふうにアレックスは笑った。人より長く生きて様々な弟子を取ってきた男の言葉には不思議な説得力があった。

 

「はい!」

 

サラも納得出来たのか、良い返事を返していた。素直で真っ直ぐな所は彼女の美点だ…アレックスも中々居ないと称していただけの事はある

 

「次はサラとジノで戦いましょうか、ジノは北神流だけを使うようにしてください」

 

勿論加減はしたが、次は俺とサラでの稽古が始まった。サラは二本の短剣をアレックスに与えられていたようで、それと弓を合わせた戦い方で行くらしい

 

太刀筋に見覚えがあるなと記憶を探ってみれば…長耳族の双子が脳裏に浮かんだ。そういえば彼等も小さいから二刀流だったな、アレックスも前例があるからある程度教えやすいのかもしれない

 

そして決着が着けば次はアレックスの指導タイムだ。主にサラに対しての基礎的な事や弓の効率的な使い方の案を伝えたりという時間だが、サラがあれこれ考えている間に俺も奥義の指導を受けた

 

「破断は文字通り全てを乗せた一撃を放つ技です。不治瑕の名前の通り、相手を確実に死に追いやる最高の奥義…それが母さんの放ったものの正体ですね」

 

朧十文字は奇抜派の奥義とすれば、破断は現在アトーフェとアレックス、そしてその息子のカールマン三世しか使えない不治瑕北神流…その最高技ということらしい

 

「全てを乗せて…光の太刀とは違うんですか?」

 

「光の太刀は闘気だけですからね、破断は文字通り全てです。闘気も、力も、技術も…心もね」

 

剣技に精神論か…?とも思ったが、この世界の剣って言うのはそういう所がある。ガルも剣王になる時に面談するくらいだしな

 

「母さんが破断を放つ前に何と言っていたか覚えていますか?」

 

言われて記憶を遡れば、確かにあのヤバい一撃の前…何やら詠唱みたいな物をしていた気がする

 

「右手に剣を…みたいなやつですか?」

 

「そうです…実際に喰らったなら分かるでしょうが、あれより威力の出る技を私は知りません。実際父さんも母さんを倒す時に使い、私も王竜王を倒す時に使いました…1人では無かったですが」

 

確かにあれを使えれば火力不足に悩む事は無さそうだが…何をどうしたらあんな威力が出るのか全く分からん

 

「あの口上をすれば破断が使えるってことですか?」

 

「そういう訳でもありませんよ、ただ…決意を表すという意味では必要かもしれませんね」

 

その後も色々な指導を受けたが、俺は掴むことが出来なかった

 

光の太刀の時もこんな感じだったな

 

〜〜〜

 

「ねぇジノ、ちょっと散歩しに行かない?」

 

一日を終えて安かったので買った魔神語の本で勉強をしていると、サラに散歩に誘われる。一応アレックスに目線を送れば、好きにしなさいというように頷いた

 

「中央大陸とは全然違うよね、当たり前だけど」

 

街中を歩きながら、サラがそんな事を話し始める。サラが居た村とは勿論違うし、アスラとも全く違う。すれ違うのは魔族ばかり、風土も常識までもが通じないのだ

 

「そうだね、見たことの無い事ばっかりだ」

 

日本に慣れている俺からすれば聖地やアスラでもかなり違った場所だったのだ、とはいえそこはまだ異国と思えば何とかなったが…ここは本当に異世界感がある

 

「修行はどう?辛くない?」

 

「大丈夫、当たり前だけど先生は教え方上手いし…ジノも残ってくれてるから」

 

サラからすれば、俺は一人でも帰れるけど修行に付き合ってくれているように見えているのかもしれない…けどそれは買い被りすぎだ

 

言葉が分かって強いからと言って慣れてない場所から遥か遠くに帰れる訳では無いのだ、正直アレックス無しでアスラまで帰れる自信はない

 

「仕方なく残ってる訳じゃないよ、流石に魔大陸から自力で帰るのは難しいし…北神から剣を習える機会なんてそう無いからね」

 

「でも、先生はジノを探してたんだから…いつかは教えて貰えたでしょ?」

 

そう言われればそうだが…アスラで修行するのと魔大陸でするのではまた違ったテイストだろう。元々世界を回るつもりだったがそれが早まっただけだ

 

「ちゃんと謝らないとって…ずっと思ってたの。転移に巻き込まれたのって、完全に私のせいだから」

 

「それは違うよ、サラをロアまで連れていったのは俺の意思だし…転移の責任がサラにある訳でも無い。だから謝らなくていい」

 

俺は立ち止まり、即座に彼女の言葉を否定する。あの災害が起こる事をどうやって予想出来ただろうか…そもそも俺がサラの意思を汲み取ってアスラまで連れていけばという話でもある

 

「ほんと、ジノは優しいね…それでも、ごめんなさい。事の発端は私の村を助けに来てくれた事だから。それとありがとう…アトーフェ様と戦ってくれた事もそうだけど、私の為に色々危険な事もしてくれて」

 

サラはそれでも俺に謝罪し、礼を言った…俺はサラにまだ一直線で向かっていなかった事を話せていない。言えずにいたのだ、柔らかに微笑む彼女の口から…非難の言葉を聞きたく無かったから

 

「私、頑張って強くなるよ。ジノに助けて貰った命だから…ジノの為に使うって決めたんだ。今はまだ弱くて何も出来ないけど、迷惑ばっかりかけるけど…絶対恩返しするから」

 

「…ありがとう、でも無理はしないようにね」

 

月明かりに照らされる彼女の横顔は綺麗で、言ってくれた言葉も凄く暖かい物だった

 

けれど俺の胸の中には、少しばかり重い物が残ったままだった

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