有職転生〜異世界行ったら…え?三歳で剣を振るんですか?〜 作:KEN・JACK
シルフィも可愛いしリニプルも可愛いしアリエルも可愛いしルイジェルドも可愛いです
「サラ、立てる?百足を引き受けてくれて助かったよ」
「うん…ありがとう、ごめんね」
守護者が動かなくなったのを確認すれば、まだ上手く立ち上がれないサラに肩を貸して起き上がらせる。玉響も拾いに行かないと
「見事ですジノ、一瞬手を貸そうかと思いましたが…無事に切り抜けたようで何より」
すると、いつの間にかアレックスが玉響を拾って俺の腰へと納刀してくれていた。顔は非常に満足そうだ
「サラも、初めてあのレベルと戦ったのに良く出来ました。しっかりと自分の役割を果たせていましたね」
目を伏せていたサラに対しても言葉をかける。確かに彼女のおかげで雑魚は一匹たりともこちらに向かってこなかったし、注意を逸らしてくれたおかげで光の太刀をぶち込むことが出来た
「…ありがとうございます」
サラはまだ吠魔術の余韻が抜けていないのか浮かない顔をしていた。
だが今日の事で分かった。これなら魔大陸を行軍しても無理に気遣う必要は無いだろう
「さて、それでは宝物持って帰りましょうか…B級とはいえかなりの額になりますよ。ジノとサラは休憩していてください」
そう言うとアレックスは懐から小さな袋を取り出して奥にある魔力結晶や魔力付加品を詰めていた。不思議なことに袋のサイズが全く変わっていない…そういうアイテムなのだろう
「これだけあれば渡航費も問題ありませんね、トカゲも買えます。かなり移動が楽になりますよ」
詰め終わったアレックスがホクホク顔で戻ってきた、意外と現金なのかもしれない…良く考えればこの人オーベールの師匠だもんな
「そんなに高いんですか?渡航費って、魔大陸とミリス大陸は戦争でもしてるんです?」
「種族によって渡航費が違うのです、人族は鉄銭五枚ほどで済みますが…魔族は一律で高く設定されているのですよ。不死魔族の血族は…その中でも割高なのです」
「あぁ…」
理由は言わずもがな、ミリスという国には未だに魔族差別が根付いている。俺の脳裏には高らかに笑う女魔王の姿が浮かんだ…確かにあれが有名なら高いだろう
「まぁ、北神二世の名前を出せばタダなんですけどね。スペルド族よりはマシです」
それでも名前を使わないのが英雄ということなのだろう。俺の英雄像は金ピカの鎧に身を包み、慢心せずして何が王か!とか言ってるから随分違うね
「ス、スペルド族…いるんですか?」
その名前を聞いた途端サラが急に青ざめて尋ねる…そういえばゼタにもスペルド族には気を付けろと言われたな。食べられるとか何とか…なまはげみたいなもんかと思ってたが、まさか実在したのか
「どうでしょうね、まぁ実際のスペルド族は…貴方達人族が考える程凶悪ではありませんよ。父さんが褒め倒してましたからね」
帰り道はもういいでしょうと、俺の腰から玉響を奪ったアレックスが全て薙ぎ倒しながら、魔神殺しの三英雄+スペルド族の戦士の話をしてくれた
早く帰れたのは良いが、心做しか魔物が泣いていたような気がする…流石に不憫だな
〜〜〜
「やぁ、初の迷宮攻略お疲れ様。流石に強いね〜」
3ヶ月振りくらいですね、また変なお告げしに来たんですか?
その日の夜、夢で久しぶりに詐欺師からの連絡があった。正直な所こいつに関する信頼はほぼゼロだと言っていい
「寂しいこと言わないでくれよぉ、言葉足らずだったことは謝るからさぁ…時間の都合とか色々あったんだって」
そんな風には見えませんでしたけどね
ヒトガミは反省している風な声音をしていたが、全くそうは思えん。謝ったなら許してやるかと、大抵の事は流せる俺らしくもなく…全然許す気にならない
「こんなに反省の顔してるのにかい?」
顔見えないじゃないですか、ていうか反省してる人はそんな事言わないですからね
「あそっか、ごめんごめん」
もう良いですか?揶揄うだけならわざわざ夢に出ないでくださいよ
後頭部に手を当てて愉快そうに笑うヒトガミに、話す気を完全に無くす。何とかして夢から覚めようとするが…上手くいかん、主導権はこいつが持ってるのか
「ホントに反省してるんだって、態度で表すのが苦手なんだよ僕は…ほら、今回はちゃんと言うからさ…聞いとかないと損だよ」
おやすみなさい
「いやもう寝てるでしょ…良いの?サラがどうなっても」
…サラになにかしたのか?
自分でも驚くほど低い声が出た。ジノの身体ならば間違いなく斬りかかっているだろう
「あ〜今のは言い方が悪かったね、そうじゃなくて…サラがもう限界なんだよって、そう言いたいんだ」
限界…?何でですか、今日だって良く動けてたし…体力も付いた。もうサラの為に特別な時間を割く事も無いのに
「鈍感だねぇ、サラの視点で良く考えてみなよ。命を助けて貰って、自分の為に動いた結果遥か彼方に飛ばされて、修行して強くなったと思ったら…今回また君を危険に晒したんだ」
…いや、そんなはずは無いアレックスだって褒めたし、俺だって礼を言った。その言葉に嘘偽りは無い
「君と北神しかいないんだよ、どうやったって劣等感は生まれる。同じレベルで鍛えてる者が居ないんだ、当然だろ?ましてや君は彼女より年下なのに」
それは…でも俺が特別だってサラも分かって…
「別の世界から転生して特別ですよ〜って君は喧伝してるのかい?才能が圧倒的な人間に対してなら劣等感は生まれないのかい?」
………
サラは…そこまで責任を感じてるんですか?
俺は言葉が出ずに、そう尋ねるしか無かった。こいつが言ってる事が本当なのかは分からないが、今はそうするしか無かったのだ
「後は本人の口から聞きなよ、特別に場所は教えてあげるからさ」
そう言うと俺の脳裏には、荒野を歩くサラの姿が映し出される。まさか…こんな夜中に俺とアレックスに黙って街の外に…!?
「いつも修行してた場所のすぐ近くだよ。君の足ならすぐ追いつくさ」
…今回はやけに協力的ですね、気持ち悪い
「酷いな…前回のお詫びも兼ねてね、特別サービスさ」
…礼は真偽を確かめてからです
「それでいいよ、頑張ってね〜」
そんな間延びのする声と共に、俺の視界はゆらぎ…意識がブラックアウトした
〜〜〜
目を開けると、そこは宿屋のベッドの上だった。
隣を見るとアレックスが綺麗な寝相で眠っていた…殺気には敏感だが物音程度では一切起きないのだ、流石は不死魔族である
反対側のベッドを見ればやはりサラの姿は無い。俺は急いで玉響と短剣を装備して宿を出る…目指すのはいつも修行していた場所だ
「サラ、こんな夜中に何してるの?」
「ジノ…何でここが…」
闘気をフルで使って走れば、直ぐにサラは見つかった。そこは夢で見た修行場の近くと全く同じ場所にいたのだ…何をしていたのかは分からないが、きっと良くないことのはずだ
絶対にバレていない自信があったのか、気付くのが早すぎたからか、サラは戸惑いの表情を浮かべていた。まぁ実際あの詐欺師が来なければ気付いてなかったかもだけど…
「サラも強くなったから1人で行動するなとは言わない。けど、無闇に危ない事をするのは良くない」
咎めるつもりはないが、夜の魔大陸だ…ともすれば予想外に危険な魔物だっているかもしれない。それはサラも分かっているはず
にも関わらずこんな行動に出たのは…やはりヒトガミの言う通りなのか…?
「…大丈夫だよジノ。私、もう迷惑かけないから」
消え入りそうな声でサラは言った、夜の帳はその表情を隠していたが…声音だけでサラの悲しみが伝わってきた
「迷惑だなんて思ってないよ、何度も言ってるけどあれはサラのせいじゃない」
「転移はそうかもしれないけど…それでも魔大陸に来たことも、魔王と戦ったことも…迷宮でジノを危険に晒したことも…私のせいでしょ?」
確定だ、サラは責任を感じているのだ…これ以上俺に迷惑を、自分のせいで命を危険に晒すことに対しての責任を
「…ごめんね、助けてくれたのに。これじゃ私、助からない方が良かったよね…」
そんな事無いと…そんな言葉だけで納得出来るような所に、サラが居ないのは明白だった。話すしかない、俺が遅れたことを…サラが生きていてくれて、俺が救われたことを
「私の事は気にしないで、ここまで強くしてもらえたら…もう1人でも生きていけると思うから。先生にもありがとうって伝えておいて」
彼女の頬には涙が伝っていた。幾ら強くなったとはいえ、魔大陸で1人になる事が大丈夫な訳が無い…彼女はまだ魔神語も満足に出来ないのだから
それだけ伝えて踵を返し、立ち去ろうとするサラの手を…俺は掴んだ
「…サラに言ってなかった事があるんだ」
抵抗は感じられなかった、する気力も失われていると言う方が正しいのかもしれない…けれど好都合だ、話は出来る
「…それは、聞かなくちゃ行けないこと?」
「聞いてほしい、というか…俺がサラに言わなくちゃいけない事…かな」
正直、言いたくは無い。だが関係が深まれば深まるほど言い辛くなる事が分かっていたにも関わらず伝えてなかった俺の落ち度だ…そのせいでサラをこんなにも悩ませた
「…間に合ったかもしれないんだ。俺が道中で別の依頼をこなしたり、武芸者の相手をしなければ…村が無くなったのは、俺が依頼の緊急性を理解出来ていなかったせいなんだ」
…息がし辛くなっているのが自分でも分かる。サラの顔を見るのが怖かった…それでも謝らなくてはならない。彼女の言葉を、受け入れなくてはならない
「いつかは言わないとって思ってたんだけど…言うのが怖かった。それだけの理由で俺は、謝りもしなかったんだ…本当にごめん」
悪いことをして謝る。普通の9歳にも出来ることが俺には出来ていなかったのだ、記憶を持っているのにも関わらず…情けない限りだ
サラは言葉を発さずに、ただ俺に手を握られていた。こちらを見ている様子は無かった…俺は言葉を続ける
「こんな事を言うのは違うのかもしれないけど…俺はそれでもサラが生きていてくれて嬉しかったんだ。取り返しのつかない事をしたのは分かってる…けど、俺が来た事で助かった人がいるって…その事実に救われたんだよ」
だから許して欲しいというつもりはない…けれど、サラの存在が俺の助けになっているという事を知って欲しかった。迷惑をかけてるばかりでは無いと…分かって欲しかった
「だから、一緒に帰ろう。いや、俺と一緒に居て欲しいんだ…サラ」
お互い様と言えば烏滸がましいだろうか、それでも…今はサラと一緒に魔大陸から帰る。そうしたいのは紛れもない俺の本心だった
「…良いの?私、これからもジノに迷惑かけるよ?危険な目に合わせるかもしれないし、私のせいで帰るのが遅くなるかもしれない」
絞り出すようにサラは言った、答えは決まってる
「当たり前だよ…サラは、俺を許してくれるの?」
「許すも何も無い、あんな量の魔物が来るなんて…転移事件と同じで、ジノのせいじゃない…そうでしょ?」
サラはこちらを振り向けば、そう言ってくれた。俺が何度もサラのせいじゃないと言ったように
「ありがとうジノ…助けてくれて。こんな私と居たいって言ってくれて…ありがとう」
俺はそのまま涙を流しているサラを抱きしめた。どこか感じていたサラとの距離が…本当の意味で縮まった気がした
月明かりに守られていたのか、近くには魔物が一匹たりとも寄り付くことが無かった