有職転生〜異世界行ったら…え?三歳で剣を振るんですか?〜   作:KEN・JACK

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ミリス神聖国

 

ドルディア族の村を後にした俺たちは、1本のデカい街道を進んでいた

 

聖剣街道と呼ばれているそれは、大森林を一直線に縦断しており…一切魔物が出現しない。なので特に何をするでもなくメルエムの引く馬車…というか蜥蜴車に揺られていた

 

「にしても…魔物が出ないって不思議ですね」

 

「嘘か真か…聖ミリスの伝説に由来するものです」

 

俺が何となく疑問を口にすると、アレックスが答えてくれた。

 

この街道は聖ミリス…この世界で幅を利かせている宗教のミリス教の開祖が作ったものらしい

 

ミリスが一太刀振るった結果、森と山を両断…だけに留まらずそのまま魔大陸の魔王をもぶった切ってしまったと。

 

その伝説に習ってこの街道は聖剣街道と呼ばれているそうだ

 

そんな訳ないだろうと思ったが、元の世界でもモーセが海を割ったとか生まれた瞬間に歩き出して天上天下唯我独尊とか言ったり無茶苦茶な逸話が多かった

 

魔法が発展して非科学的な事が起こる世界においての伝説何てそんなもんなのかもしれん。実際問題この街道には魔物が出ないしね…原因は別にあるんだろうけど

 

そんな訳で未だに残るミリス様の魔力パワーで舗装された道はぬかるむことも無く順風満帆の旅だ。

 

俺の膝で小さな寝息をたてながら眠るサラの頭を撫でながら貴重な読書タイムである。

 

「…俺もいつか剣皇街道とか作れるようになりますかね?」

 

「流石に無理でしょう。伝説は伝説ですから」

 

もしかしたらこの世界なら有り得ることなのかと聞いてみたが、当然そのような事は無かった。

 

街道には一定の感覚で野宿出来るポイントがあるのでそこで野宿をする。メルエムだって生き物だからね、ずっと走れる訳じゃないのさ

 

飯は脇に逸れて魔物を狩るか、たまにいるジビエを狩る。やっぱり獣の方が美味いので優先的になっちゃうね

 

時折近くの集落から商売に来る獣人から色々買ったりもしたが、特に変なイベントも無く無事に雨季の前に大森林を抜けることが出来た

 

変わった事と言えば、俺が棒持ちのアレックスになら勝てるようになった事だ。破断を習得した事によってようやくだ

 

恐らく剣を持たれたらまだまだ勝てないだろう。だが大きな進歩だ、慢心せずに鍛え続けるとしよう

 

そしてミリス神聖国と大森林の間には、青竜山脈が存在し…そこの谷にはドワーフ、所謂炭鉱族が経営する宿屋街がある。

 

アレックス曰く、ここで売っている武具は安い上に質が良いらしい。炭鉱族の長である鉱神を中心に、彼らはその生涯を鍛冶に費やすそうだ

 

とはいえ玉響を持っている俺に、敢えて剣を持たないアレックス。アトーフェの城にあった業物の短剣を持つサラには特に用の無い場所だった

 

上の方まで行けば温泉があるらしい、今回は行けなかったが…いつか行きたいもんだ。前世でも温泉旅行は素晴らしいものだったしね

 

そこを抜けると遂に人族の領域。ミリス神聖国がその姿を現す

 

「これは凄い…」

 

ミリス神聖国、首都ミリシオン

 

世界で二番目にデカいそこはアスラ王国とはまた違った美しい都だった

 

湖に浮かぶ城、基盤上に並んだ規則正しい街並み…そして街を囲むように設置されている7つの巨大な塔。ファンタジー世界ならではの緑と青の調和

 

「巨大さではアスラの方が上ですが…美しさではミリスが上かもしれませんね」

 

アレックスの言う通り、王都よりも初見の感動は強かった。建築様式の違いとかもあるだろうが、見慣れない物ってのは良く映る

 

「でも…大森林で雨季があるなら湖の上にあるお城は大変なんじゃないですか?」

 

「あの7つの魔術塔が水位等をコントロールしているのです。同時に結界を張る役割も担い、城壁の代わりになっているとか…便利ですね、昔はこんな物ありませんでしたから」

 

サラの問いにもアレックスは即座に答える。妙にジジくさいセリフだったが、まぁ不死魔族くらい長く生きていればそういうのも多いのだろう

 

「明日には出発しますか?」

 

「いえ、魔大陸の通貨を両替して手持ちがかなり減ってしまったので…少しここで稼いで行くことにしましょう」

 

アスラへ帰るまでだ、大金は必要無いが…メルエムを中央大陸へ運ばなくてはならない。幸いミリスは冒険者への依頼料が高いらしいのでここで一気に稼ごうと言う話になった

 

久しぶりの大都市だ、今日は宿のベッドでぐっすり眠らせて貰うこととしよう

 

〜〜〜

 

「やぁ、よく眠れてるかい?」

 

…貴方が居なければよく眠れていたかもしれませんね

 

そんな矢先、俺の眠りを妨害するかのように白いヤツが現れた。そいつは相も変わらず軽薄そうな声でこちらに語りかけてくる

 

「でもあの時はぐっすり眠らなくて良かったろ?サラとイチャイチャしながら旅出来て、君も満足そうじゃないか」

 

言い方は鼻に付きますけど、その節はどうもお世話になりました

 

頭は下げないが、一応は礼を言っておく。実際あの時サラの出奔に気付かなければ…俺はかなり後悔していただろう

 

それより、やっぱ俺勇者じゃないですよね?聖獣様は違うって言ってましたし…まぁ助ける存在だとは言われましたけど

 

「え〜、僕よりあの犬ころの言葉を信じるのかい?」

 

やけに聖獣様に当たりキツイんですね、打倒龍神の仲間じゃないんですか?

 

「いーや全然?アレが言ってる世界の危機は精々魔神ラプラスに対しての話だからね。そりゃ君もそこには噛んでるかもしれないけど…龍神の方がよっぽど危機的状況さ」

 

魔神…確か列強の四位の奴だな。確かに序列で見れば龍神の方が危ないヤツなのかもしれないが、にしてもこの世界は強い奴は悪い奴なのか?

 

にしたってキツすぎません?

 

「動物嫌いなんだよね、話通じないし」

 

神様が好き嫌い言うなよ…と思ったが、全能では無いって話は前にしたし、そこは置いておこう

 

より危険な奴の方に気付かないとかあるんですか?

 

「来るとわかってる危ない事なんて知れてるだろう?対策出来るんだから…本当に危ないのは気付いて無い状態で突然牙を剥いてくる物だ。違うかい?」

 

そう言われればそうかもしれん。聖獣と神なら流石に神の方が上だろうし、コイツの方が多く見えているという話なら納得は行く

 

それで、今日は何を言いに来たんですか?サラはもう大丈夫でしょう?

 

「今回は勇者らしく人助けの機会でもあげようかと思ってね」

 

聞いてみたは良いものの、全然信じてあげる気にならない。だが前回の助言で助かったのは事実…聞くだけ聞くとしようか

 

「ジノよ、サラを連れて昼に商業区に向かいなさい。そこでサラのお願いを聞いてあげるのです」

 

またざっくりとした…と文句を言おうとしたが、いつものように引っ張られるようにして意識が遠のいて行った

 

エコーのように聞こえるヒトガミの声が、非常に不快だった

 

〜〜〜

 

「ジノ、大丈夫?うなされてたけど…」

 

「…ちょっと嫌な夢を見ただけ、なんてことないよ」

 

海の魔物との戦い以降、サラはずっと俺のベッドに入り込んで来るようになった。アレックスに注意してもらおうと思ったのだが

 

「ジノが嫌でないなら別に良いのでは?」

 

と言われて効果は無かった。そう言われたら嫌とは言えず、最近は彼女に抱き枕にされるような形で寝ている…この状態でも熟睡出来る性格で良かったぜ

 

「先生は?」

 

「知り合いに会いに行くって出てった。今日は長旅明けだから自由にして良いって言ってたよ」

 

アレックスが居ないという事はサラと2人だけの状況だ。しかも自由に過ごしていいと言われている…これもヒトガミに仕組まれている事なのか?

 

「そっか。どうしようかな」

 

「折角だし観光しようよ、お城とか綺麗だったし」

 

サラもじっとしておける性格では無い。本を読んでいる俺を退屈そうに見ている時も、出かけようと言えば一気に明るくなる

 

「そうだね、じゃあ準備しよう」

 

ヒトガミの言葉はともかく、折角の自由時間を宿で過ごすことも無いだろう。俺が宿に居ると言えばサラも渋々居るだろうしね、それは可哀想だ

 

首都ミリシオンは四つの地区に分けられている

 

北側にある貴族や騎士の家族や一般市民の民家がある居住区。

 

東側にある商会が取り仕切り、小売店や鍛冶屋、競売場が多く立ち並ぶ商業区

 

西側にあるミリス教会の関係者が住み、墓地や大聖堂がある神聖区

 

そして俺たちが宿を構える冒険者区だ。ここにはギルドの本部があり、路地には冒険者崩れの居るスラムや賭博場があるが、基本的には冒険者向けの店や宿が立ち並ぶ。奴隷市場もあるのだとか

 

「どこか行きたい所はある?」

 

「お城かな、私近くで見た事無いんだよね」

 

アスラにもデカいのがあるのにと思ったが、サラのような辺境の村の人は王都になど行かないものらしい。理由も無いし行くお金も無いからだそうだ

 

「凄い活気…ねえジノ、私達変じゃないよね?」

 

「大丈夫だよ、この辺は冒険者も多いし」

 

魔大陸ではこんな巨大で活気のある国は無いし、サラにとっては初めての大都会だ。辺りをキョロキョロ見回しては不安そうにしている。

 

前世でも初めて都会に来た田舎住みの子はこんな感じだった。ビルを見上げてたら田舎者とかあったしな、この世界でもあるのだろうか

 

「…アトーフェ様の所でも思ったけど、田舎とじゃこんなに違うんだね」

 

コネがないのでアスラと違って中に入る事は出来ないが、近くで見る事は出来た。静謐を是とするミリスを象徴するそれは、美しさと同時にサラに不平等さを実感させているのかも知れない

 

「全員が同じっていうのは難しいからね。でも、努力と工夫で変える事は出来る」

 

「けど、私がどれだけ努力しても…このお城の姫にはなれないでしょ?」

 

なりたいんだろうか、王族とか皇族のしがらみを知っている俺からすれば1ミリもなりたいとは思えないが…この世界でも小さい子の憧れの対象何だろうか

 

「流石に限度はあるからね、憧れそのものになるのが幸せって訳じゃないよ?実際城で王妃になるより、サラを本当にお姫様扱いしてくれる人と一緒になる方がずっと良いと思うけどな」

 

環境も大事だけど、それよりも人だと俺は思う。この人と一緒ならどんな所でも楽しいと思えたり、安心出来たりとか…恋人に限らず友人でも、そういう人と出会うのは大事だと思う

 

「私はジノがお姫様扱いしてくれるならどこでも良いよ?」

 

「…あんまりキザなセリフは言ってあげれないからね?」

 

ここまで純粋な気持ちをぶつけられると流石に戸惑うな…思わずそれっぽいセリフを言ってしまった。

 

だが落ち着けジノ・ブリッツ今はまだ教師と生徒的な関係だ、まずはサラにもっと色んな人間と関わってもらうのだ…その上でサラがまだ俺が良いなら…答えを出そう

 

〜〜〜

 

その後、腹ごしらえを兼ねて俺達は商業区に来ていた。小売店が多いので食べ物を売っている屋台も多い。冒険者の数は減り、商人とその護衛というような人達が増えた

 

「どれも美味そうだな…何にしよう」

 

ミリス大陸に来てからは思わないが、魔大陸の食は正直かなりキツかった。大王陸亀が主食だったのだが、何せ不味い…本場の肉を知っている俺からすればげんなりする程だ

 

「ジノはグルメだからね。程々にしないとダメだよ」

 

サラは村での生活だったからか基本食に不満は無さそうだったし、そもそもあまり食文化が発展していないのだ。剣が頭打ちになれば料理研究家として生きていこう

 

とはいえサラに注意されるほど食うつもりは無い。腹一杯にし過ぎたら太刀筋が鈍るからね

 

「あ!ジノ!私あれ食べたい!」

 

色々な物に目移りしていると、急にサラが何かを見つけてそうお願いしてくる。そちらの方を見ると、卵液に浸したパンを焼いている屋台があった

 

「おお、フレンチトーストか」

 

そういえばミリスは新鮮な鶏卵を扱っている国だったな。卵料理が他とは違って発展しているのかもしれない

 

「ダメ?」

 

「良いよ、あれにしよう」

 

昔よく朝飯で母親が作ってくれたもんだ。懐かしさ補正もあってすぐさまフレンチトーストの気分になった俺は、屋台に行って注文する

 

グルメでは無いと言ってもサラも女の子だ、甘い物は食べたくなってしまうのだろう

 

そこまで考えて、ふと思い出す。ヒトガミの言葉だ…確か昼にサラを連れて商業区に行き、お願いを聞く

 

その状況が再現されているのだ。一回目のアトーフェの時は逆らい、2回目のサラに関しては状況的に従う他無かった。つまり今回意図が分からず選べたにも関わらず、従ったことになる

 

「ジノ!今女の子が攫われた!」

 

思考に耽っていた俺の意識は、サラの声で現実に引き戻される。何の事かと理解する前にサラは路地裏に向かって駆け出していた

 

「ちょっ…サラ!すみません、後で取りに来ますから!」

 

店主に向かって頭を下げれば、お金を置いて俺も急いでサラを追いかける。土地勘が無い所だ、見失えば助けに行けない可能性もある

 

「何で子供が追ってくるんだ…?お前ら!」

 

誘拐犯の男は、溶け込みやすいようにか特徴の無い格好をしていたが、動きは悪くない。そして掛け声と共に武装した男達が現れる。荒事担当なのか黒いローブにマスクまで装着していた…が

 

「邪魔!」

 

その辺の奴らで北神直々に鍛えられているサラを止められる訳もなく、鮮やかな動きで即座にそいつらは無力化される

 

「くそっ…!捜索団に小人族の手練が居るなんて聞いてねえぞ!」

 

誘拐犯は仲間がやられるとは思っていなかったのか表情と声音に焦りが見える。そして子供を抱えてサラから逃げきれないと判断したのか振り返り

 

「近付くな!俺は別にこいつを殺したって良いんだぞ!」

 

「くっ…!」

 

少女の首筋にナイフを突き立てる。サラはそれを見て足を止める…少女は口を手で抑えられているから声は上げれないが、その目は恐怖で歪んでいた。

 

「そのまま動くなよ、幾ら手練でも動きの起こりは分かるんだからな」

 

誘拐犯はサラの一挙手一投足を見逃さないと言わんばかりにゆっくりと後退していく…なので頭上の俺には一切気付いていなかった

 

「光の太刀」

 

壁を走ってきた俺は誘拐犯の上から玉響を振るい、ナイフを握っていた方の腕を切り落とす。痛みと驚愕に男の顔が染まった次の瞬間

 

「はぁぁっ!」

 

入れ替わるようにしてサラの見事な蹴りが誘拐犯の顎を貫き、そのまま意識を刈り取った

 

「大丈夫!?怪我は無い?」

 

「げほっ!げほっ!うん…ありがとうお姉ちゃん…」

 

少女は5歳くらいだろうか。小綺麗な格好をしているから貴族の娘なのかもしれない。サラと似たような金髪に翡翠色の瞳、将来はかなり美人になるだろう

 

「お名前は?お父さんとお母さんはどこにいるの?」

 

サラがそう尋ねると、少女はゆっくりと名乗った

 

「ノルン・グレイラットです。おとうさんは…門の夜明け亭って所にいると思います」

 

アスラ王国の貴族である、グレイラットの姓を

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