有職転生〜異世界行ったら…え?三歳で剣を振るんですか?〜   作:KEN・JACK

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最近皆様に色々とご指摘を頂き自分の至らなさと不甲斐ない気持ちでいっぱいでございます…投稿が遅くなっているのは学マスのせいです…


王竜王国と食文化

 

その後2週間程度ミリスで金を稼いだ後、俺達はまたメルエムに乗って旅を再開していた。

 

俺もサラも空いた時間でノルンと遊んだり団の仕事を手伝ったりしていたので、別れの時は久しぶりに寂しさと言うものを覚えた…サラとかちょっと泣いてたしね

 

久しぶりの旅とはいえ、ミリス大陸は魔大陸に比べて危険はほぼない。魔物も賊も滅多に出ないし道も安定しているので…魔大陸でピリピリしていたのが懐かしく思える程だ

 

結局あの後もヒトガミは現れなかったのが気になる。俺とオーベールを戦わせたかったのか、捜索団と出会わせたかったのか…真意は分からずじまいだ

 

「港までどれくらいかかるの?」

 

サラはいかにも暇そうにしている。安全なのは良いことじゃないかと言っているのだが、刺激が足りなくて嫌だという気持ちも分かる

 

「2ヶ月ほどでしょう。暇ならイメージトレーニングはどうですか?するのとしないのでは動きに差が出ますよ」

 

対照的にアレックスは何とも思って無さそうだ。そもそも時間の感覚が違うし大人だから当たり前なのだが

 

「本当ですか?」

 

「私やジノの動きはもう嫌という程見ているのですから、イメージの我々をどう出し抜くか考えるのはとても重要ですよ」

 

気付けば転移から一年以上経っている。もしかしたらレイダ辺りには死んだと思われてるかもしれない…

 

この世界は連絡手段が手紙くらいしか無いのが欠点だよなぁ…携帯とは言わず固定電話でもあればな。電話線を引く計画でも立ててみるか、あんま詳しくないけど

 

「また難しい事考えてる」

 

気付けばサラが下からこちらの顔を覗き込んでいた。イメトレしているのかと思いきや、まだ理解できなかったらしい

 

「いや、手紙しか連絡手段が無いのは不便だと思ってさ。離れた相手と直ぐに連絡が取れたら良いと思わない?」

 

「なにそれ、そんなのファンタジーでしょ」

 

うーん、元の世界と真逆だな…俺からすれば今自分が水面走ったり何も無い所で踏み込める方がファンタジーなんだけど

 

「いやでも、転移とかあるんだし。やりようによっては無事を伝えたり短いメッセージを送るくらいなら出来そうじゃない?」

 

「確かに大戦時は転移魔法陣という技術もあったので、近しい事なら出来るかもしれませんね。今となれば禁術ですが」

 

禁術…穢土転生みたいだな。この世界にもそうやって失われた技術があるのなら、元の世界の知識で利便性を高められるかもしれないな

 

「私には想像もつかないけど」

 

「でもサラ、遠く離れて寂しい時に声を聞けるのって良くない?」

 

興味無さげに目線を離したサラにそう言うと、再びこちらの顔を見る。そして少し考え込んだあと

 

「…それは良いかも」

 

と返して来た。通話の良さは利便性だけではないからね、それが伝わったようで何よりだ

 

そしてアレックスの言った通りに、2ヶ月ほどでミリス大陸を踏破(ほぼ進んだだけ)し、ミリスと中央大陸を結ぶ港、ウェストポートに到着した。

 

ザントポートに似たような街並みだが、規模は大きい。ミリスからアスラにかけての道筋は、交易に置いて重要な道になっているいわばシルクロードだ。故に安全なルートも多く商人でさえ無事に通れる

 

まぁ何が言いたいかと言うと、二度目の船旅は特に問題らしい問題が起こることも無かったということだ

 

メルエムとアレックスの渡航費は相も変わらずに高額であったが、ミリスでの稼ぎがある分そこも問題にはならなかった

 

こういう物語にありがちな先に進めば進むほどに困難になるということはなく、最初の魔大陸での旅が最も危険だったという訳だね

 

初対面で最強の魔王と戦わされた俺の運がいかに悪かったかを思い知りながら、1年半振りに俺達は中央大陸の大地を踏みしめたのだった

 

〜〜〜

 

現在地は王竜王国最東端イーストポート、この世界で3つ目の港町だね、まぁ雰囲気はどこも似たようなもんだと言っておこう。

 

「これからの事について話し合いましょうか」

 

宿屋で一通りの準備が終わると、アレックスが突然そんな事を言い始める。メルエムは例によって馬屋に預かってもらっている

 

「これからというと…中央大陸まで来たから先生が居なくなるとかいうあれですか?」

 

アスラまで行ってないとはいえ、俺とほぼ北聖に近い実力を持ったサラであれば問題なく旅を続けられるだろう。ノウハウもアレックスに叩き込まれたしね

 

「まさか、送り届けると言った以上はきちんとアスラまで同行しますよ。どういうルートを行くかという話です」

 

それを聞いてサラも少し安堵した表情を浮かべていた。1年半も居たのだ、突然別れるのはそら寂しいだろうし当然か

 

「このまま街道を通るルートを行くのでは無いのですか?」

 

馬車じゃなくてトカゲに乗っているのは俺達だけだが、ウチのメルエムは優秀だ。馬に行けてメルエムに行けない所は無いだろう

 

「アスラへ向かう道は3つあるのですよ。1つはジノの言った街道を通るルート、1つは密林地帯を抜けるルート、もう1つはベガリット大陸に渡るルートです」

 

ベガリット大陸…確か魔大陸に次いで過酷な土地だ。大半を砂漠と迷宮が占め、変わりやすい気候に凶暴な魔物…わざわざそんな所を通る必要性無いと思うが

 

「まぁ、ベガリットに関しては早く着くか微妙なんですけどね。ただ修行にはもってこいでしょう。サラも王級くらいになれるかもしれません」

 

それは凄いが…サラは今でさえ冒険者の中でも上位に入る実力者だ。俺みたいに不殺を目指してる訳では無いし、そんな強くなりたいんだろうか

 

「サラは強くなりたいの?」

 

「なりたいけど…今じゃなくても良いよ、それ先生が行きたいだけじゃないんですか?」

 

「バレましたか、あそこは良いですよ。冒険で溢れていますからね」

 

サラのジト目に対して涼し気な顔でそんな事を言う。不死魔族の感覚で話を進めるのは止めて頂きたいね、そんなんだからオーベールに若干話通じない扱いされるんだろう

 

「密林地帯を抜けるメリットは何ですか?」

 

「速さです。道は舗装されていませんし、多少危険はありますが…道は分かるので半年程で王竜王国を抜けれるでしょう」

 

正規ルートはここから10ヶ月ほどかかるという事だったから…4ヶ月程度は短縮できる計算か。こちらは悪くない…けどメルエムが通れるかどうかだな

 

「トカゲは通れそうですか?聖剣街道とはまた違うんでしょう?」

 

「メルエムの事ですか…前例が無いので何とも言えませんね。まぁそれは東の街道も同じですが」

 

当たり前だが魔大陸のトカゲをここで乗り回してる奴は居ないらしい。とはいえ聖剣街道も問題なかったし、メルエムの事を考えるなら街道を通るルートが安牌だろう

 

「では東の街道を進みましょう。時間はかかりますが、急いで何かが変わる訳でもないですし」

 

恐らく俺の知り合い達は転移には巻き込まれていないしね。サラもメルエムに何かあったら悲しむに違いないし

 

「サラもそれでいい?」

 

「私はジノが良いなら」

 

サラはそう言って頷く。信頼してくれているのは勿論ありがたいが、俺に頼りきりになっても良くないし…何かしらサラが自立できるような方法を考えなくちゃならないかもな

 

「わかりました。では東のルートを通ってアスラを目指しましょう」

 

話は纏まった。何かしらの危険があるとは思えないが、念の為に気を引き締めていくとしよう

 

〜〜〜

 

王竜王国はアスラ、ミリスに次ぐ世界第三位の大国だ。

 

かつて北西に位置する王竜山の王、王竜王カジャクトを倒してその豊富な鉱山資源を使ってのし上がってきたらしい。ちなみにそのカジャクトを倒したのが…

 

「どうかしましたか?」

 

ここにいる北神二世ことアレックス・カールマン・ライバックだ。詳細は以前彼に聞いた通りである

 

因みに玉響を含めた48の魔剣の発祥の地でもある。まぁカジャクトの素材から作られたからそりゃそうなのだが、アレックス曰く魔剣は北神が持つ王竜剣の練習で作られたものに過ぎないらしい

 

重力操作だとは聞いているが、アレックス程の剣士が自分の強さに疑問を持つ程だ…凄まじい事は間違いない

 

「いえ、伝承の土地に伝承の主人公と訪れるという中々凄いことをしているなと思いましてね」

 

「大抵ああいうのは尾ひれが付くものですよ、強い竜を倒した。そこに語られるような特別な何かは存在しません…たまたま私の方が立っていただけです」

 

とはいえ色々と思う所はあるのだろう。アレックスはメルエムの背でじっと王竜山の方を見つめていた。

 

首都ワイバーンには剣術道場が多く開かれていたが、教えているのは良くて上級。恐らく実戦形式でやればサラが勝つくらいのものだ…アレックスのお眼鏡に叶う剣士は居なかった

 

転移事件の情報も探ってはみたが、何分大きな街では捜索はされ尽くしているらしい。有益な情報は何も無い…手伝うと言った手前パウロには少し申し訳なさがある

 

だがバッドニュースばかりでは無い。久しぶりに米を見たのだ、ゼタやニナが俺に提供してくれていた黄色いヤツだが、何とも懐かしい

 

「そんなに美味しい?このお米ってやつ…」

 

「中々珍しいですね、聖地の出身で米が好物とは」

 

店ではサラとアレックスに不思議そうな顔をされたが、日本人のDNAが入っていない君達には分かるまい。魂が求めて止まないこの米の魔力は

 

一応卵も売っていたので卵かけご飯の作成を検討したが、流石に断念した。どう考えても生食は基準外だろうし、俺の腹痛で治癒魔術のスクロールを消費する訳にも行かん

 

治癒魔術を覚えようと脳内のやることリストに卵かけご飯を加えつつ、王竜王国の首都を後にした

 

〜〜〜

 

首都を北上すると、サナキア王国とキッカ王国という2つの小国が現れる。これはどちらも王竜王国の属国という立場で、様々な指示を受けているらしい

 

サナキア王国では米の栽培が盛んだった。進んでいるだけでも水田が多く見られ、恐らく王竜王国での米もここで作られた物なのだろう

 

店での食事は魚介の炊き込みご飯風の食事がよく出た。今まで食べたパエリア風の米よりもかなり理想系に近い

 

とはいえそれは異世界という色眼鏡をかけているからだ、俺が当たり前のようにかっこんでいた白米には遠く及ばない

 

「…ジノが今までにないくらい満足そうな顔してる…」

 

「好物を食べるのは良いリフレッシュになりますからね、ここまで好きな物があるのは幸せなことです」

 

でもまあ、他人から見てそんな感想が出てくるくらいだし…密林地帯を行かなくて良かったと思わなくもないね

 

一応自由時間に宿の人にコンタクトを取って炊き込みご飯のレシピと、この国での稲作に付いてのメモを取らせて頂いた。アスラ付近での栽培は難しいかもしれないが…老後はサナキア王国民になる可能性もあるしな

 

もう1つの属国、キッカ王国はアブラナ風の植物が盛んに育てられていた。白っぽい花が大量に咲いているのが街道からも確認出来る

 

ここも同様に米が主食になっていたのだが、段々とクオリティが上がっている事が分かった。紛争が無ければもっと上の方にある国が白米を育てていた可能性もあったが…たらればの話をしても仕方ない

 

だが米以上に俺が衝撃を受けたのは、流行していたある食べ物だった

 

「どうだいそこの冒険者の方!最近大流行のナナホシ焼きだよ!食べたことあるかい!?」

 

街を歩いていれば、元気よくそう声をかけられる。米を食える間は米を食いたいと思っていたが…大流行と聞くと少し興味をそそられる

 

「先生、あれを買っても良いですか?」

 

「構いませんよ、私も初めて聞いたので興味があります」

 

ほう、長く生きてるアレックスでさえ初めて聞いたのか…どこの世界にも新しい物を作る奴は居るもんだ

 

渡されたのは肉に米粉や麦粉で衣を付けて高音の油で揚げた…そう、唐揚げである。

 

肉が羊や豚だったり下味が甘かったり油の温度が適正でなかったり…突っ込み所は多いが、よく出来ている。

 

洋風な食文化であるこの世界にしては毛色の違う…日本食に近い考え方をする料理人が居たもんだ。もし接触し、俺の知識と組み合わせればこの世界に新たな風を吹かせれるかもしれん

 

「美味しい!」

 

「これは見事ですね、母さんにも食べさせてやりたいくらいです」

 

流行しているだけあって、サラとアレックスの反応も上々だ。これは是非情報を集めておこう

 

「すみません、このメニューを考えた人の名前は分かりますか?」

 

「なんだ坊主、そんなにナナホシ焼きが気に入ったのか?何だったかな…突然現れて特許を取った不思議な名前のやつなんだ」

 

屋台のおじさんは数秒うんうんと頭を唸らせたあと、引き出しを探し当てたのかパンと手を叩き

 

「そうだ!サイレント・セブンスターだ!っても俺も聞いただけだから詳しくは知らないけどな」

 

…サイレント・セブンスター?おかしい。この世界の人名で、そこまで意味のある羅列の名前があるのか?今まで会った人は…ここまであからさまな名前は無かった

 

勿論英語では無く人間語だが…音としては静かと七つの星を意味する。そしておじさんも珍しい名前だと言った。そこまでならギリギリ有り得なくは無い、が

 

この唐揚げと読んで差し支えない料理を作り、あまつさえセブンスターの和訳…ナナホシという音をこの料理につけている…つまり

 

「この世界に唐揚げを広めた転生者がいるのか…?」

 

俺の一言は、街の喧騒に掻き消された

 

 

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