有職転生〜異世界行ったら…え?三歳で剣を振るんですか?〜   作:KEN・JACK

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帰還

 

「あれが王都…」

 

そして俺たちは、約3年の時を経てアスラへと帰還した。まだ少し王都まで距離はあるが、それでもシルバーパレスが視界に入るような所まで来たのだ

 

サラからすれば都市よりも更に大きい王都だ、見慣れた俺とはまた違った情景が見えていることだろう。地方との貧富の差という観点ではあまり美しくないかもしれないが

 

「ここまで来れば危険も無いでしょう。私は王都に行く用事は無いのでここでお別れですね」

 

メルエムから降りながら、アレックスはそう告げる。王都まで来れば最低限のもてなしは出来たが…それをさせない為というのもあるのだろう

 

「これからどうするのですか?」

 

「また紛争地帯に戻りますよ。ジノを鍛えたことで私もまた学びがありましたし、やり残した事もありますからね」

 

北神としてなのか、修行の一貫なのか分からないが、アレックスはまた戦いに身を置くらしかった。想像は付かないが、かなり過酷な環境ではあるだろう

 

「ありがとうございました、先生。先生が居なければここまで来ることは出来なかったと思います…この御恩はいつか、必ず」

 

俺も同じようにメルエムの背から降りて、深々と頭を下げる。剣神流のではなく、1人の人間として感謝を表する物だ

 

「貴方なら私の助けなんてなくても帰れていたと思いますがね、母さんから逃げるのは時間がかかったかもしれませんが」

 

序盤が1番ピンチだったからな…マジでアレックスが来ていなければ今頃親衛隊として剣を振るっていただろう。アトーフェと戦うような奴と戦うなど、平和には行くまい

 

「ありがとうございました、先生。私何かが先生に返せるものがあるか分からないけど…いつか必ず」

 

サラも俺に続いて礼をする。言ってることも俺の真似っ子という感じだが、こういう格式張った物は村育ちのサラには難しいだろう

 

「恩を返すなんて、2人とも考えなくて構いませんよ。ただ私の弟子として、強く息災であれば…それ以上望むものはありません」

 

アレックスの言葉に、俺達2人は力強く頷く。御伽噺の英雄の名前を、汚す訳には行かない

 

「では最後に、先生らしい事を少しだけ言っておきましょうか」

 

悲しげな俺達とは違い、アレックスはいつもと変わらない様子だった。不死魔族として長く生き、このような別れも何度も経験してきたのだろう

 

「まずはサラ、貴女には北聖を名乗る事を許可しましょう。この3年間良く私とジノに付いてこれましたね」

 

その言葉にサラは目を丸くする。三年間北神と剣皇の修行に付いてきたのだ、その資格は十分にあると言えるだろう

 

「しかし貴女はまだ若い…その強さがあればどこへでも行けるでしょう。色々な物を見聞きして、体験し、自分の道を探してください。ジノは頼りになりますが、全てを任せてはいけませんよ」

 

「…はい!」

 

サラは目尻に涙を溜めながら、はっきりと返事をする。あの時2人で話し合った時の事を要約してくれたようだ

 

「ジノ、貴方には特に言うことはありません」

 

「ええ…」

 

なんでだよ、もっとあるだろ奥義まで仕込んだ弟子に対して別れの言葉が…フルスピードで剣を振るのが俺の人生だったとでも言えば良いのかよ

 

「とまぁ冗談は置いておいて…貴方は強さも精神も、その歳では考えられないほどに完成しています。サラより年下の貴方に言うのは違和感が凄いですが」

 

まぁそれは仕方ないね…前世合わせたら俺ももう三十路だし…けどまだ若さは忘れちゃいないぜ、朝まで飲めるしクラブではっちゃけられるもんね!

 

「ですが、その分貴方が背負う物は非常に大きいでしょう。不殺の選択にしても、その名声が呼ぶ戦いも…生半可なものでは無い」

 

それはそうだな、この世界は向こうよりも色々と早い。言ってる間に子供である事を利用して自由には生きていけないかもしれない…この剣の重みと切っ先を、考えて行かなくてはならないのだ

 

「心配はしていませんが、力に溺れる事の無いように。貴方はこれから更に強くなるでしょうが、強さだけでは生きて行けませんから」

 

「肝に銘じます」

 

俺より強く、永く生きている英雄の言葉だ。分かってはいるつもりだが、この言葉は忘れないようにしようと誓ったのだった

 

「それでは、またどこかでお会いしましょう」

 

こうしてあっさりと、俺は四人目の師匠と別れたのだった。サラと2人で、偉大なる背中が見えなくなるのを見送った

 

〜〜~

 

「これからどうするの?」

 

メルエムの背中に乗って再び王都を目指していると、ぴったりと俺の背中にくっついているサラにそう問いかけられる。そういえばまだ大学の事を話していなかったな

 

「一旦は水神流の本家に戻るよ。お師匠様達も心配してるだろうからね」

 

そう言うとサラに緊張が走るのが分かる。俺が元の場所へ帰るというならば、サラは完全に部外者だ…このまま1人になる可能性を危惧しているのだろう

 

「心配しなくても王都に付いてはいサヨナラ何て言わないよ。ただ無事を伝えるだけ」

 

「そっか…ありがとうジノ」

 

サラが明らか安堵の息を着いたと思えば、くっつくを通り越して背後から抱き着かれる。

 

「…嫌な訳じゃないんだけど、サラもそろそろ年頃なんだから距離感とか考えた方が良いと思うよ?」

 

「大丈夫だよ、ジノにしかしないから」

 

こいつ、先生が居なくなって遠慮が無くなったな…海でも似たような事を言っていたが、この肉体がもう少し成長したらサラのような美人に言い寄られて我慢出来る保証など無いと言うのに…

 

ここは大人の男性としてガツンと注意してやらなくては…サラが俺とどうなろうとなるまいと、このままでは良くないからな!

 

「誰彼構わずするのは本当にダメだからね?」

 

「はーい♪」

 

サラが可愛いからそんなに強く言うのは無理だったよ…

 

最低だ…俺って…

 

〜〜~

 

「ミリスよりも大っきい…それに人も多い…」

 

王都に到着すると、サラはミリスの時のように忙しく辺りを見回していた。

 

関所でメルエムが大騒ぎになったりしたが、剣皇の名前とメルエムのクレバーな対応によって何とか入国に成功した話もあったが…そこは割愛しておこう

 

「折角だし観光しておく?」

 

宿も取り、メルエムも預けた所で挨拶に行くのは良いが…正直サラを連れて行っても仕方ないしな。何となく今のサラとイゾルテを会わせるのは危険な気がするし…

 

「そうしようかな、色々と気になるものもあるし…水神流に行っても肩身狭いし」

 

という訳でサラとは宿から別行動する事になった。もう15とは言え女の子を1人にするのは…という理屈は北聖の彼女には通じないだろう。

 

「…何か緊張するな」

 

そして水神流本家道場の前に来たのは良いが…3年のブランクがあると入りづらい…というより誰だっけ?というような反応は辛いし、めちゃくちゃ心配されてたというのも申し訳無い

 

どちらにせよ穏やかには再会出来ないのが決まっているのが俺の足を止めていた

 

「ジノ…?まさか、ジノなのか!?」

 

そんな俺の背後から声がかかる。久しぶりに聞くこの声は…

 

「お久しぶりです、タントリスさん」

 

そう、イゾルテの兄のタントリスだった。3年前は共に暮らしていた彼は、もう青年と言った感じだったので特に変わりは無かったが…

 

「また見違えたな…いや、そんな事より今までどこに居たんだ?やはり転移事件に巻き込まれたのか!?」

 

放たれたのは怒涛の質問攻めだった。気持ちは分かるがどうせ長くなるんだから座って話そうぜ…

 

「詳しくお話ししますから…取り敢えずは中に入っても良いですか?」

 

「あぁ…すまない、ジノも疲れているだろうに…気遣いが足りなかったな」

 

こうして俺は久しぶりに水神流の敷地へと足を踏み入れるのであった

 

〜〜~

 

「そうか…魔大陸に、良く無事に帰って来てくれた。とても嬉しく思う」

 

道場を通り越してレイダの屋敷へと入った俺は、リビングでタントリスと向かい合うように座り、これまでの経緯を話した。魔大陸へ飛ばされた事、不死魔王のアトーフェと戦ったこと、北神二世に同行して貰ったことも全て

 

「ありがとうございます。そういえばイゾルテとお師匠様はどちらに?お仕事ですか?」

 

ここに来たのはタントリスを含め、レイダ一家へと無事を伝える為だ。いずれ伝わるとしてもせめて顔は見せておきたい…そう考えて尋ねたのだが

 

「2人は今はアスラには居ない。ジノ、君を探しに行ったんだ」

 

「え…?」

 

まさか…入れ違い?しかしレイダが国を空けてまで俺の捜索に乗り出すとは思わなかった。水帝達が居るから業務に支障はないのかも知れないが…

 

「イゾルテが探しに行くと言ったのを最初はずっと止めていたんだが…あまりにも落ち込んでいたからな。お祖母様が見かねて探しに行く事になった」

 

レイダが探しに行くと言い出すことは無いと思っていたが、やはりイゾルテが言い出した事だったか…なるべく急いで帰ってきたとは言え2人には申し訳無い事をしたな

 

「それは…すみません…」

 

「そう落ち込まなくてもジノに非は無いですよ。あんな事件誰も予想出来ないし、魔大陸からなら早い方ですしね」

 

手紙を出した所で、俺達の方が早く着く以上は連絡手段も無い。どうしようも無い事とは言え責任を感じずにはいられない

 

とはいえ今の俺に出来る事も無い。探しに行った所で今2人が何処にいるかも分からないし、入れ違いになる可能性もある。捜索団やシーローンの人に会えば無事はわかると思うが…

 

「それより、またこの家で暮らすのですか?剣皇で魔大陸の冒険の経験もあるとなれば、水神流の師範としても申し分無いので私としては大歓迎ですが」

 

「いえ、これから学校に通おうかと思いまして」

 

サラのこと、前々から俺が魔術についても興味があった事なども含めて大学へ行こうとしていることを話す。

 

ここでイゾルテを待ちたい所ではあるが、無事ならタントリスが伝えてくれるだろうし、帰ってくるまでサラをアスラで待たせるのも忍びない

 

「なるほど…あの時の依頼の生き残りの子が…確かにその子の為なら学校へ行くのが良いと思う。それに初代水神も優秀な魔術師の側面も持っていた、ジノならそれの再現も出来るだろう」

 

流石に魔術はそこまで上達すると思えないが、場合によっては剣に組み込めれる可能性はある。ともあれタントリスが納得してくれて良かった

 

その後は三年間の空白を埋めるようにタントリスと語り合った。俺は魔大陸での話や培った技術について。タントリスは俺のいない間の王都の話や、道場での出来事について話してくれた

 

「それでは、イゾルテが帰ってきたら知らせてください。会いに戻ってきますから」

 

「任せてくれ、必ず無事を伝えよう…最も、イゾルテがジノの居場所を知れば来るより先に会いに行くと思うけどね」

 

そこまで想ってくれるのは嬉しい限りだが…魔大陸に比べればラノアからアスラはそこまで遠くない。出来れば会いに来たい物だ

 

「時間があれば聖地にも顔を出すといい。ラノアに向かうなら近いだろうし…親御さんも会いたいはずだ」

 

「そうですね…ありがとうございました、タントリスさん」

 

最後まで誰かを慮るタントリスの温かさに触れ、最後に固い握手をして俺は水神流の本家を後にしたのだった

 

〜〜~

 

「それでは、我々のこれからについてお話しします」

 

サラの元へ戻り、夕食を済ませてさぁ寝ようという直前。改まってサラに大学の事を説明するべく俺はそう切り出す

 

「私はジノとならどこでも行くよ、ベガリット大陸でも、もう1回魔大陸へでも」

 

覚悟ガンギマリな所悪いが、そんな危険な道はもう歩むことは無い。勿論強くなる事は第一優先ではあるが…正直もう迷宮に潜ったりしてもこれ以上は強くなれないだろうし

 

ていうかサラ俺の事危険な戦闘ジャンキーみたいに思ってない?まぁ経歴考えたらそう思われてもおかしくないんだけどさ…

 

「気持ちは嬉しいけど…もう冒険は良いかな…次はお勉強の時間です」

 

「お勉強…?」

 

サラはピンと来てないようだった。この3年で人間語を読めるようにはなったサラだが…何を学ぶのか分からないのだろう

 

「俺的には魔術を学んで初代水神みたいな事が出来れば良いと思うんだけど…サラには学校でいろんな物に触れて、色んな人に会って欲しいんだ。先生も言ってたでしょ?」

 

先生の言葉と合わさってサラも納得してくれるだろう。まぁ危険な場所に行くほどの覚悟が決まってるなら別に嫌とは言わないだろうが…

 

「それは…本当にジノのやりたい事なの?私の為じゃなくて?」

 

「サラの為じゃないと言えば嘘になるけど、魔術の勉強は前からしたかったんだ。正直剣を振ってもこれ以上は中々強くなれそうにないからね」

 

中途半端に繕うよりは真っ直ぐに言う方が伝わるだろうと思い、心の内をそのまま話す。これ以上強くなってどうするんだみたいな顔をされたけど、納得はしてくれたようだ

 

「でも、私そんなにお金持ってないよ?学校に入るにはお金がいるんでしょ?」

 

「それは大丈夫、一旦は俺が出すよ。まぁ別に返せって言うつもりも無いんだけど…気になるなら後からくれればいいから」

 

北聖として依頼をこなせば、金貨3枚稼ぐのは難しい話じゃない。本当に返さなくても良いけど、そういうのが嫌なタイプも居るからね

 

「じゃあ、ちょっとずつ返せばジノとずっと一緒に居られるってこと?」

 

「何かずる賢くなったね…」

 

そのうち色々してやられそうだな…という危機感を覚えながらも、これからの指標発表会は終了した。明日は魔法大学へ出発する事にしよう

 

「サラ?ベッドが2つあるよね?何で俺の方に居るの?」

 

「何でって…今までも一緒に寝てたじゃん」

 

せやけど!もうあんた14やろ…?まだ俺の理性が持つけど後2年もその感じだったら俺も14とかになって来たら危ういんだって…流石に一緒に寝るのはもう止めよう

 

「いや、もう先生が居ないから言うけど!サラももう14だから同衾は流石にまず…」

 

俺の視界に映ったのは、少し泣きそうな顔で掛け布団を両手で握りしめ…俺を見つめるサラだった

 

「…入学したら終わりだからね」

 

本当に大丈夫なのだろうか…俺は…

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