有職転生〜異世界行ったら…え?三歳で剣を振るんですか?〜   作:KEN・JACK

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剣神の試練

4歳の誕生日を迎え、少し経ったある日の事だった。

 

「今日はちょっと趣向を変えてみようと思ってな…ニナ、入れ」

 

「はい!」

 

いつも通りに修行を行うべくガルの元に向かい、剣を振ろうとした矢先…ガルから待ったがかかる。ここ一年間内容がほぼ変わらなかったのに、一体どういう心境の変化だ?

 

そんな疑問を吹き飛ばすかのような元気な返事と共に、修練場にニナが入ってくる。階段があったら○ステのBGMでも流したいほどに姿勢が良い

 

「今日の修行はニナと一緒にやれ、内容は近くの森で群れてる雑魚の駆除だ。本来はこういうのは剣聖どもの仕事なんだが…ちょうどタイミングが悪くてな。商人が来れねえからサクッと頼むぜ」

 

魔物退治って事か…やるのは良いけど俺は実戦経験が無い。実力が足りるのか正直分からないし、何故ニナを連れていくんだ?

 

「僕に出来ますかね?」

 

「出来るに決まってんだろ、お前の実力は光の太刀抜きならとっくに剣聖クラスなんだからよ。剣聖ならこの辺の魔物の100や200切って捨てて当たり前だ」

 

剣聖化け物過ぎるだろ、じゃあティモシーとかガルとか本気でやればどんだけ強いんだ…?

 

「分かりました…では何故ニナちゃんと二人なんですか?その理屈で言うと俺一人でも十分な気がするんですけど」

 

「それは経験だ、俺様の娘ともあろう者が魔物駆除の経験も無いとは言えねぇだろ」

 

…要するに俺はお守りって話か?俺なんかより剣聖の上位陣の方が安全な気がするけどな

 

「たく…分かんねえ奴だな、ニナがお前と一緒が良いって言ってんだよ」

 

「頑張ろうね!ジノ!」

 

納得行かないというような顔を無意識に浮かべていたのだろうか…ガルが面倒くさそうに言うと、ニナが屈託の無い笑顔でこちらに手を伸ばして来る…どうやらやる気満々らしい

 

「何にせよ駆除さえ出来りゃ俺様はそれでいい…とっとと行ってこい、死なねえようにな」

 

「分かりました…頑張ろう、ニナちゃん」

 

あれこれ考えた所でノーと言う権利は与えられていないのだ。一旦考えるのを止めた俺は、ニナの手を握り返した

 

「森の場所は分かるわね?」

 

「大丈夫、近くだから迷うこともないし…すぐに帰ってくるよ」

 

聖地の出口で、ゼタが少し心配そうな顔で見送りに来てくれていた

 

俺とニナの腰にはいつもの木剣とは違う真剣が携えられており、気の引き締まり方もいつもとは違っているのが自分でもわかる。

 

服装も道着ではなく機能性と保温性を兼ね備えた剣神流の装備へと着替えた。速さが命だからどうしても薄くなるけど…そこは闘気で何とかしよう

 

重さで言えば木剣と大差ない…というか無いように作られていたのだろう。これならば戦うとしても問題は無い

 

「行ってきます!」

 

ニナの明朗な声を合図に、俺達は聖地を後にした

 

〜〜〜

 

聖地の外に出たのは俺にとってもニナにとっても初めての経験だったが…特に感動らしい感動は無かった。建物が無い分より殺風景になった広大な雪景色が目の前に広がるだけだったからだ…北海道がこんな感じだった気がするな

 

「魔物って…どんな姿してるんだろうね、やっぱおっきいのかな」

 

「どうだろ…見たことないから分かんないけど、僕達よりはおっきいんじゃないかな」

 

森までは歩いて15分ほどで着くために、軽い雑談を交えながら目的地へと向かう。冷静に考えたらどんな見た目かも分かんないのに討伐って色々おかしいな…ガルは行きゃわかるとか言ってたけど

 

「でも、私とジノならどんな相手でも楽勝だよね!ジノはすっごく強いし、私だって最近は負けてないし!…ジノ以外には」

 

「油断は良くないよ、ニナちゃん」

 

それくらい分かってるもん、と危機感を感じさせない返事が返って来るが…事実最近のニナの成長は目を見張る物がある。ガルもお前が剣を握る前と後じゃニナの成長スピードが段違いだと言っていたくらいには

 

だからといって、今回の修行は命を失う事がない聖地での稽古では無い…自分の為にもニナの為にも、少しの油断が命取りになる事を頭に入れておかなくては

 

そんなこんなで気持ちを作っていると、森の入口へと到着する。前の世界の静かな森とは違い、本能が警鐘を鳴らすとでも言うのだろうか…視界に入れるだけで危険だということが分かる

 

「…何か、緊張するね」

 

さっきまで遠足気分とでも言うように楽しげだったニナも、流石にここまで来れば何かを感じ取ったのだろう。剣の柄を握り締めてごくりと喉を鳴らす

 

「大丈夫、何かあってもニナちゃんだけは無事に帰してみせるから」

 

今は年下だけど中身は成人男性だからな…8歳の子供を優先する義務ってもんがある。ガルが自分の娘共々送り出した以上はそこまで危険じゃないのだろうけど…

 

「ダメ、絶対2人で帰るの…分かった?」

 

「……うん、そうだね。じゃあ行こうか」

 

カッコつけて言った台詞が、その何倍も凛々しい表情になって返ってきた。ヤダ…この子凄いカッコイイ…思わず分かったよお姉ちゃんって言いそうになっちゃった…

 

おっと、いかんいかん。今日はこんなふざけてる場合では無いのだ

 

気を引き締めて行こう

 

〜〜〜

 

森の中へ足を踏み入れると、不気味な雰囲気がより一層強まるのを肌で感じれる程になった。

 

生き物の気配は殆どしないのにも関わらず、木々には巨大な爪痕が残ってるものや、根元からポッキリと折れているものもある。それは間違いなく人ならざる何かが居るという証に他ならない

 

「この爪痕…熊みたいな魔物か?」

 

この世界における魔物は魔力溜まりによる突然変異で生まれる生き物であると言うことらしいが…やはりベースは元の世界にも居た猛獣的なやつなのだろうか

 

「っ…ジノ!あれ!」

 

痕跡を元に姿をイメージしていると、ニナの鋭い声が森に響く。振り返ると彼女は剣を構えており…視線の先には真っ白い体毛に覆われ、背骨に黒い線が入った巨大な熊が木々の間から顔を出していた

 

しかもその数は1匹では無い、群れを成してこちらを認識している。それも敵としてではなく手頃な餌としてだ

 

「ニナちゃん、数は向こうの方が多い。常にお互いを助けれるように動こう」

 

「分かった!」

 

8歳とはいえニナも中級の剣士で、世間一般で見れば1人前として扱われる…言葉を多くする必要は無い

 

「グォォオオオ!!!」

 

こちらの敵意を察したのか、クマ達は雄叫びを上げると同時に一斉に襲いかかって来る。

 

図体はデカいしパワーもありそうだけど…速さは無い。相手より先に剣を当てる剣神流との相性は最高だ

 

俺の無音の太刀が一撃で先頭の熊の首をはね、続けてニナがすぐ後ろの熊の胴体を数回斬りつけて倒す…感触は最悪だが、こいつらを放っておけば人間に被害が出る。誰かがやらなきゃならない事だ

 

「このまま行くよ!」

 

基本的に一撃で仕留めれる俺とは違い、ニナは致命傷を与えるのに数回の攻撃を必要とする。だが背中を合わせて、タイミングが遅れた所にこちらがフォローを入れれば、まず危険は無い

 

「はぁ…はぁ…終わり?」

 

最後の一匹が雪を巻き上げて倒れたのを見て、息を荒らげているニナがそう呟く。

 

初めての実戦で気持ちが昂っているのだろう。だが周りにはもう熊の姿は無いし、嫌な感じも消えている…取り敢えずの仕事は完了したと見ていいはずだ

 

「うん、これで全部だと思う。お疲れ様、ニナちゃん」

 

「…私、ちゃんと出来た?剣神流の剣士として、ちゃんと戦えてた?」

 

剣を鞘に納めながら終わった事を伝えれば、ニナはいかにも褒めてもらいたそうな表情でこちらを見てくる。正直可愛い…8歳でこれだ、将来は凛とした美人になる事は間違いないだろう

 

「うん、凄く助かったよ。ありがとう」

 

在り来りな返しだが、この言葉に偽りは無い。1人では厳しかったと言えば嘘になるレベルではあったが、ニナが居たおかげで格段に早く終わったのも事実だ

 

「えへへ…お父さんも褒めてくれるかな?」

 

剣神の娘として期待されていることも多い分、評価にこだわってしまう所もあるのだろう。俺に褒められて嬉しそうに顔を綻ばせながらも、やはり偉大な父親に認められたいという気持ちは大きいのか

 

「そりゃ褒めてくれるよ、今日はニナちゃんの好物をーー」

 

俺がそこから先を言うことは無かった。

 

いつの間にかニナの背後に…凄まじい殺気を放つ男が佇んでいたからだ。

 

「っ!!ニナちゃん!」

 

「え?」

 

俺は咄嗟にニナの手を引いて後方に引き飛ばすと同時に抜剣し、男の剣を受ける

 

(重い…!!)

 

だが、完全に受け切るには至らない。先程受けた熊の爪よりも遥かに重い一撃…まるでティモシーの剣と錯覚するほどの重みだった

 

「ふむ…これで4歳とは恐れ入る。とんだ怪物が産まれたものだ」

 

受け切れずに大きく後退した俺は、ニナを庇うように剣を構え直して男の方を見る

 

男の格好は何故あれほど近付くまで気が付かなかったのかと思うほどに奇抜であった。

 

虹色の上着に、膝までしかない下履…腰には4本の剣が携えられ、頬には孔雀の刺青が存在を示している。

 

「某は【北帝】孔雀剣のオーベール」

 

「訳あって…剣神の娘、ニナ・ファリオンの命。貰い受ける」

 

俺はその言葉を聞き、背に嫌な汗が伝うのを感じた

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