誠実な挫折のほうが、邪悪な勝利よりも気高い。
アテナイの悲劇作家───
◇◇◇◇◇
特別棟屋上ドアは微かに開いていた、北条は最後ドアを閉める際に締め切らないように気を配っていたのだ。
その隙間から屋上の様子を伺う、人物が2人がいた。尾行していた伊吹澪と、将人が弱みを握った上級生の1人だ。上級生はデバイスで、屋上での様子を撮影していた。
「おいっ!?ちょっと待てよ!!マジかよ!?」
「ちょっと……アンタ、これもアイツの計画なんじゃ無いの?!」
「わ、分かんねぇよ!?俺は、北条に指示された通りに動いてるだけなんだ!!ここに着いたら通話のコール1回!そっから動画撮影!で、最後は逃げて、動画送信!」
「チッ……使えないわね」
(今年の1年怖えよ!…………早く卒業したい)
2人がかりの攻撃を受けて、一方的に殴られ続ける北条の姿を見ながら思わず声を漏らしてまう2人だったが、伊吹はふと1つの考えに思い至った為、上級生に改めて確認した。
「……ねえ、今の様子撮ってたのよね?」
「あ、あぁ………五分ぐらい暴力を受けてる映像を撮ったら逃げて、落ち着いた場所で動画を送信するように言われてる。お、おい、もうそろそろ俺は行くぞ、お前も逃げた方がいいって!」
(……間違いない、この状況、全部が北条の想定通りなんだ。監視カメラの場所を把握してるからこそ、こうなる事を分かった上であえて挑発するような真似をしたのね! 教室で話を聞いてから策を考えたハズでしょ!? 一体どんな頭してんのよアイツ!)
1人で結論付け納得する伊吹だったが、それを知る由もない上級生の方は一刻も早くここから離れたかったのか逃げるようにして立ち去って行った。
その後も、暴行は続いたが暫くするとこの場に似つかわしくない音が鳴り響く。
ブ─── ブ────ッ!
北条将人のデバイスからバイブ音が鳴り響く。
◇◇◇◇◇
「……あ、なんの音だ?」
「………」
石崎はその音を耳にして手を止めると苛立ちを隠さず呟くように声を出す。それと同時にアルベルトも拳を止める。
一方の殴られた側の北条だが特に焦る様子も見せずに蹲った姿から、ゆっくりと立ち上がるとズボンについた埃を軽く払い除けてから口を開く。
「あー痛かったぜ、ガタイのいい奴は違うなー?いや、マジで痛かったぞ?………テレフォンパンチにしてはな」
そのふざけたような態度に龍園は再び怒りの表情を見せる。明らかにイライラしているのが傍目にも分かるほどだった。それを見る、将人はどこか楽しげである。
「……何の音だ?それはよぉ……」
龍園は、今一度将人を睨み付けながら問いかけると彼は待ってましたと言わんばかりに口角を上げると口を開いた。
「んー……
そう言いながらポケットから自身の端末を取り出すと操作を始める。程なくして画面を龍園達の方に向けると、動画を再生する。……一連の暴行の様子の動画を。
「……ほう、やるじゃねえーか。だが、分かってねぇな。こんなもんじゃ俺は引かないぜ?寧ろ、逆効果ってやつだ……ここでお前の口を封じるしかねぇな」
「無駄なんだけど……ま、そう言うよな」
「分かってるじゃねえか、なら話は早い……」
そう言いながら再び龍園達は臨戦態勢に入るのだが……それを見た将人は軽く笑みを浮かべると、まるで臆することなく言葉を返す。
「お前達、勘違いしてるぜ。お前達は俺を殴ってたんじゃない……俺が、殴らせてやってたんだ」
「は?何を言ってんだ……とうとう頭がイカれちまったか!」
「いやいや石崎、俺は正気だぜ?」
「舐めてんじゃねぇぞ!! お前は、俺達に潰されんだよ!」
そう言って石崎は将人に殴りかかるが、それを難なく躱すと逆に素早くカウンターを決めるべく拳を突き出す……が当たる直前、横から伸びて来た手に掴まれ止められてしまう。振り向くとそこにはアルベルトの姿があった。
「ふっ……シッ!」
ドスッ!!
将人はニヤッ笑みを浮かべると掴まれた腕を引き寄せながら蹴りを放つと、その蹴りはアルベルトの鳩尾にヒットし鈍い音を立てると共に巨体をくの字に折り曲げさせた後、膝をつくようにして崩れ落ちた。
ドサッと音を立てて倒れ込んだまま動かなくなったのを見て満足した様子を見せつつも視線を正面に戻すと不敵な笑みを浮かべたままで呟いた。
「……おいおい、誰が誰を潰すって?」
「ッ!」
その言葉に激昂した様子で襲い掛かろうとする石崎だったが、背後から迫る気配を察知したのか咄嗟に振り返りガードの姿勢を取ると同時に衝撃が走ったようで僅かに後退りしてしまう。そしてそのまま追撃を受けないように距離を取った所で構え直す石崎だったが、そこには見覚えのあるクラスメイトが佇んでいた。
「あらら、着いてきちゃったの? 澪ちゃん」
「……もう諦めたけど、その呼び方変えなさいよ」
「ごめん、無理」
「……はぁ」
そんなやり取りを交わす2人だったが、龍園はイラつきが増したようだった。それも当然だろう、目の前で一方的な暴力を振るっていた相手が反抗してきたかと思えば最強の手駒であるアルベルトを倒してしまったわけだ。
(どういうことだ、俺は北条を観察していた。食事中の姿や所々で滲み出る礼儀作法……コイツはどこぞのお坊ちゃんの筈、そんな人間が喧嘩慣れしているとでも?)
伊吹が気づいて、龍園が気づけなかった唯一の事。
否、これは喧嘩殺法などでは無く、体に叩き込まれた、列記とした格闘技である。だが、龍園は思い込んでいたのだ表面を見て……この男の事を何も理解していなかったのだと理解する。
「……ククッ、今回はお前の勝ちかもな。だが、次はどうだ?寝込みは?クソの最中は?……俺は何時でも、何処からでもテメェを狙うぜ」
「ん?次?……あー、知らないのかお前ら」
将人がわざとらしく言ってみせるとその反応を見た龍園は訝しげな表情を見せる。その様子を察したのか将人がニヤリと笑みを浮かべながら告げた言葉は、その場にいた全員を驚かせたに違いないものだった。
「この学校では、生徒が起こした問題に対して“裁判”の様な形で審議して、罰が与えられる」
「……それがどうした?」
「さっきのバイブ音は“証拠動画”と“暴行事件の証人”……それが、揃った合図だったわけ。こんだけ揃ってたら、1発退学に決まってんだろ」
将人がそう告げると、それを聞いた龍園達の表情が変わった。アルベルトは蹲ったまま震えており、石崎も顔を青ざめさせている。
龍園は、今まで見せたことの無いような真剣な表情で将人を睨みつけると、低い声で尋ねる。
「……ハナっから、これが狙いか?」
その問いに将人は鼻で笑うと当然だとばかりに答えた。
「最後通告だぜ……俺に従うか、3人仲良く退学か、好きな方を選べよ」
これがもし自分1人ならば、龍園は間違いなく抗った。しかし今は状況が違いすぎることを理解しているからこその選択を迫られている。
自分の選択次第で配下まで道連れとなってしまう。それは、頭としては3流の選択だと理解しているが故に……この結末は必然だった。
「チッ……一先ずは、テメェが
舌打ちをしながら憎々しげに呟く龍園。
敗北したといえ、その姿は……上に立つものとしてはこの上なく気高い姿だった。
龍園が屈するとしたら、こういうシチュエーションだけかなと思ったので……。
ここまでは構想があったんでスムーズに書けましたが、ここからはある程度、更新頻度落ちると思います。
内定している椎名・伊吹以外でヒロインを増やすなら? ※参考にさせてもらいますが、実際結果が反映されるかは分かりません。
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