魔法少女まどか☆マギカ 実績『朝焼けのエンドロール』獲得   作:くろしゅー

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(ようやく鶴乃ちゃんがまどドラ内定したので)初投稿です。



Record3 DAY.13~DAY.15

 

 

 

 

 

 仲間が集結する実況、はーじまーるよー。

 

 

 

 前回は時女集落へと向かい、そこで時女一族の時女静香ちゃん、土岐すなおちゃん、広江ちはるちゃんの三人がワルプルギス戦に協力してくれることになりました。

 

 

 

 今回はその続きから。ついに攻略の主要メンバーが揃います。

 

 

 

 

 

 DAY.13

 

 

 ということで、早速ほむらちゃんとまばゆちゃんに昨日の事を伝えましょう。

 

 

 

 

 かくかくしかじか……。

 

 そういうわけで、時女一族の人たちも協力してくれることになったゾ。

 

「本当に? そんな村があること自体半信半疑だったのだけど……」

「右に同じです。そしてよく協力を取りつけられましたね。驚きすぎて言葉が出てこないんですけど……」

 

 正義感が強い子たちばかりだったからね。楽勝でしたよ~。

 

 それに時女一族は日本を裏から守ることが代々の務めで、矜持らしいからね。ワルプルギスの夜に襲われるとか、まさにこの国のピンチなわけだし、そのための時女一族? あとそのための魔法少女?

 

「あまり実感は湧かないけど、あなたがそう言うなら本当にそうなんでしょうね」

 

 それでなんだけど、静香ちゃんたちがほむらちゃんたちに会いたいって。どうやら、自分たちでどんな魔法少女がいるか確かめたいみたいっすよ?

 

「まあそれはそうですよね。誰かも分からない人と一緒に戦えってほうが無理ですよ。むしろ話聞いて、ここまで来てくれることを了承してくれただけでも僥倖ですよ」

 

 ほんままばゆちゃんの言うとおりですよ。

 時女一族の善性は底知れないって、ハッキリわかんだね。

 

「それで? その人たちはいつ来るの?」

 

 明後日らしいゾ。

 

「きゅ、急ですね……。でも確かに、ワルプルギスの夜までの時間を考えると、早いほうがいいか……」

 

 お、そうだな。(適当)

 

 それに明後日なら、ちょうどやちよさんも来るしちょうどいいからね。なんでもフェリシアちゃんとさなちゃんも連れてきてくれるらしいしね。

 

 

「それなら、そこで色々と話し合うことにしましょうか。場所は……、暁美さんの家でいいですかね」

「構わないわ。杏子には私が声をかけておく」

 

 それならユリちゃんはマミさんに声をかけておくゾ。

 

「あ、それなら私も」

 

 ということで、マミさんに声をかけておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 かくかくしかじか……。

 

 ということで、ワルプルギス戦に更に追加だけど、いいかな?

 

「……もう言うこともないわね。最初ほどの驚きが無くなってきたわ」

 

 いやー、それほどでも。

 

「すみません、巴さん。勝手に話を進めてしまって」

「いいのよ、愛生さん。私もワルプルギスの夜と戦う魔法少女を集めるという作戦には賛成だったし……。それに、色んな地域の魔法少女と会えるの、実はちょっと楽しみなの」

「楽しみ、ですか……?」

「ええ。私、今まで一人で魔法少女をやって来たから、その……、嬉しいというか。七海さんや深月さんに二葉さん、もちろん愛生さんや夕凪さんに会えて嬉しかった。私も一人じゃないんだって感じがしてね」

「そう、ですか……」

「だから気にしないで。それに夕凪さんの話じゃ、その時女一族の人たちとは何だか仲良くなれそうな気がするのよ」

「……そうですね。巴さんとは、きっと仲良くなれますよ」

 

 そうだよ。(便乗)

 

 ということでマミさんの了承も得られたので、日付を進め、全員を集合させましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.15

 

 

 

 ……と、カッコよくいいましたが、実は現在ちょっとヤバい状況です。

 

 というのも、このループも半分まで来たのに、ユリちゃんの魔法少女ストーリー関連が全然進んでいないんです。

 一応、まばゆちゃんたちの会話を見るに、まばゆちゃんたちが裏で動いてくれているのは何となく分かるんですが、肝心のまばゆちゃんが行動に出てくれないんですよね。

 

 

 原因は恐らく、ユリちゃんの振る舞いでしょう。

 私も一応、選択肢の中では一番ユリちゃんの心情が伝わりやすい選択肢を選んでいるのですが、如何せんユリちゃんの心が鋼すぎてまばゆちゃんに付け入る隙を全く与えないんですよね。

 これではフラグが立たず、二周目のループと全く同じ結末にたどり着いてしまいます。

 

 

 

 

 ということで、(RTAじゃありませんが)こ↑こ↓でオリチャー発動!

 

 この後のとある分岐で本来選ぶはずの選択肢を選ばずに進めます。それにより起こるイベントにかけましょう。

 

 ここに来て、ユリちゃんのメンタルが鋼だったのが仇となりましたね。数多のRTA先駆者兄貴たちは大体ここら辺の好感度やメンタル面で事故っていたので、その事故を減らすための策だったのですが……。

 

 事故対策で事故起こすとか、これもう分かんねえな。(池沼)

 

 実際にどうやってユリちゃんの魔法少女ストーリーフラグを立てるかは見てもらったほうが早いでしょう。

 とりあえず簡単に何をするかというと、この後に起こる魔法少女が集まるタイミングでとあるバッドイベントを引き起こします。

 

 本来はその事故が起きないように行動するつもりだったのですが、これではいつまで経っても状況が変わりません。

 

 

 そのため、ユリちゃんには本当の本当に心が絶望に染まりきる寸前まで追い込まれてもらいましょう。(外道)

 

 死ぬこと以外かすり傷って、それ一番言われてるから。

 

 ただ、この攻略はマジでユリちゃんが魔女化するギリギリを攻めるので、かなりリスクがあるものです。決して私がユリちゃんを曇らせたいからやっているわけではありません。インディアン嘘ツカナイ。

 

 他にもかなり危なっかしいところもあり、最悪討伐パーティーが空中分解しますが……。

 

 

 

 そんなん恐れてたら、こんな激ムズ称号、取れっこありません!!

 

 日和ってるヤツいる? いねえよねあ!!?

 

 

 

 

(クソみたいな運命も)じゃあオラオラ来いよオラァ!

 

 

 

 

 

 

 ということでまずは最初の鬼門、お菓子の魔女戦です。

 ですが、今回は問題ないでしょう。

 前回と同じようにやちよさんがいることに加え、今日は時女一族の三人も来てくれました。

 

「ぜえ、ぜえ……」

「静香ちゃん、大丈夫?」

「やっぱり静香に、この都会はまだ厳しかったですかね……?」

「だ、大丈夫よ……。これくらいの機械と人の波に、時女の巫は負けたりしないわ……!」

 

 

 ……大丈夫そうだな、ヨシ!(節穴)

 

「えっと……。あなたたちが時女一族の人たち?」

「うん、そうだよ!」

「ご挨拶が遅れましたね。私は土岐すなおです。この子は広江ちはる」

「よろしくねー!」

「そして、こちらが時女本家の一人娘で、私たちの親友の時女静香です」

「こんな体たらくで申し訳ないわね、時女静香よ」

「ごめんね。静香ちゃん、今まで一度も集落から出たことなくて、見滝原のビルと人の多さに目を回しちゃったみたい。かくいう私も、人が多いから悪意も多くて……、うぷっ。ちょっと慣れるのに時間いるかも……」

「そ、そう……。私は巴マミ。この街の魔法少女よ。三人ともよろしくね」

 

 と、マミさんとも自己紹介も終わったところで、さっそくお菓子の魔女との戦いです。

 

 

 

 

 ですが、ここにはマミさんをはじめ、時女一族にやちよさんたちもいるので、戦闘シーンはカットです。

 あまりのワンサイドゲームで終わっちゃったので、見所さん!?が一切無かったんですね。

 もはやあのトラウマの魔女の面影はどこにもありません。

 

 

 

 

 

 

 さて、お菓子の魔女も処理したので、皆でほむらちゃんの家に。

 ここで、今回のワルプルギスの夜討伐パーティーがほぼ全員揃いましたね。

 

 ということで、改めてメンバー紹介を。

 

 まずはチーム見滝原。

 

 ・巴マミ

 ・佐倉杏子

 ・暁美ほむら

 ・愛生まばゆ

 ・夕凪凜

 

 次はチームみかづき荘。

 

 ・七海やちよ

 ・深月フェリシア

 ・二葉さな

 

 そして時女一族。

 

 ・時女静香

 ・土岐すなお

 ・広江ちはる

 

 以上10人が今回揃ったメンバーです。

 

 本当はもう少し仲間が欲しいところですが、まあこれが最低限のメンバーなので問題ないでしょう。

 それにもう少し仲間は増やす予定ですので、戦力は足りると思います。

 

 さて、皆がほむらちゃんの家に集まりましたが、この光景は中々壮観ですね。

 特に、時女一族と見滝原組、まばゆちゃんが一堂に会するシーンはマギレコにもないので、このルートならではでの光景ですね。

 

「皆、集まったわね」

 

 そのほむらちゃんの言葉で、第一回ワルプルギスの夜討伐作戦会議が始まりました。

 

 まずは全員が改めて自己紹介をし、その後は時女一族が代表で、ほむらちゃんに事情とワルプルギスの夜について質問をし、情報共有を行います。

 

 

 が、これはこの実況で既に解説した情報ばかりですので、倍速で流しておきます。

 甥の木村、加速します。(1919倍速)

 

 

 ではこの間に、私の考えたオリチャーを簡単に説明させてもらいます。

 

 まず先ほど説明した、とあるイベントを起こす選択肢ですが、実はその分岐点はすでに過ぎています。

 この分岐点が何かというと、魔法少女の真実について話すかどうかの選択です。

 

 実は今集まっているメンバー。混合チームなこともあって、魔女化のことを知っているメンバーと知らないメンバーが入り混じっています。

 

 知っているメンバーと知らないメンバーは以下の通りです。

 

 知っている

 ・暁美ほむら

 ・愛生まばゆ

 ・七海やちよ

 ・時女静香

 ・土岐すなお

 ・広江ちはる

 ・夕凪凜

 

 知らない

 ・巴マミ

 ・佐倉杏子

 ・深月フェリシア

 ・二葉さな

 

 と、10人中4人が知りません。

 

 本来考えていたチャートでは、この4人に魔女化のことを伝え、ここにいる皆でメンタルケアを行う予定でした。

 ですが、ここであえて魔法少女の真実を告げる選択肢を選ばずにこの会議に突入しました。すると、この会議中にとあるイベントが発生します。そのイベントが上手く作用すれば、ユリちゃんの心に隙間を作ることができ、まばゆちゃんに魔法少女ストーリーのフラグが立つ可能性が高いです。

 

 というわけで、この会議の行く末を皆さんで見守りましょう。

 

 頼む、上手くいってくれ……!

 

 

 

 というわけで、私はイベントの邪魔にならないよう、下がっておきます。少し早いですが、先に挨拶だけ。

 

 ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.13 Side MA

 

 

 

 凜さんが時女一族の村に行った翌日。

 

 私と凜さんは巴さんに、お昼休みの時間を使って時女一族のことを報告していました。

 

「……というわけで、時女一族の人たちが見滝原に来ることになったの」

「……もう言うこともないわね。最初ほどの驚きが無くなってきたわ」

「すみません、巴さん。勝手に話を進めてしまって」

「いいのよ、愛生さん。私もワルプルギスの夜と戦う魔法少女を集めるという作戦には賛成だったし……。それに、色んな地域の魔法少女と会えるの、実はちょっと楽しみなの」

「楽しみ、ですか……?」

 

 巴さんの好意的な意見を意外に感じ、私は聞き返します。すると、巴さんは口角を上げながら答えてくれます。

 

「ええ。私、今まで一人で魔法少女をやって来たから、その……、嬉しいというか。七海さんや深月さんに二葉さん、もちろん愛生さんや夕凪さんに会えて嬉しかった。私も一人じゃないんだって感覚がしてね」

「そう、ですか……」

「だから気にしないで。それに夕凪さんの話じゃ、その時女一族の人たちとは何だか仲良くなれそうな気がするのよ」

「……そうですね。巴さんとは、きっと仲良くなれますよ」

 

 ()()()()のことをよく知っている私が言うんだから、間違いありませんよ。

 

 

 

 凜さんも巴さんに頭を下げてお礼を言います。

 

「ありがとう、巴さん。よし、とりあえずこれで時女の人たちも味方につけられるかな。うんうん、良い感じじゃない?」

「今回もそうだけど、夕凪さんの行動力には驚かされるわね。時女一族の話だって、古本屋で見つけた本一冊の情報しかなかったんでしょう?」

 

 巴さんの驚きはその通りだと思います。私も、前の時間軸の凜さんから託された情報を伝えたら、時女一族に会いに行くと即断したときは、耳を疑いました。

 

 しかし、凜さんは何でもないように、あっけらかんと言います。

 

「そう? 迷ってるくらいなら行動したほうがいいかなって。特に今回は1ヶ月しか時間がないし。それに師匠がよく言ってたんだよ。出たとこ勝負でもいいじゃない、って。迷ってチャンスを逃したくないんだ」

 

 凜さんの考え方はとても真っ直ぐで、芯の通ったものでした。

 私の考え方とは正反対です。

 

 時間停止の原因を突き止めても、様子を見るといって暁美さんを陰から観察し続け、声をかけられなかった私。あの時、暁美さんが眼鏡をかけているときに声をかけていれば、未来も変わったんでしょうか。

 

 私がそんなことを考えると、不意に頬を押し込まれる感覚を感じます。

 

「ふにゅ!?」

 

 目線を向ければ、凜さんが人差し指で私の頬を押していました。

 

「り、りんひゃん、にゃ、にゃにするでしゅか!」

「んー? まばゆが暗いこと考えてそうだったから、罰ゲーム」

 

 ふわっと笑う凜さん。そんな彼女の顔にドキッとしつつ、私は頬をさすって質問します。

 

「そ、そんなに分かりやすかったですか?」

「うん。明らかに、私は凜さんみたいにできないなー、って顔してた」

「うっ」

 

 図星です。

 私自身、考えや感情が分かりやすいのは自覚してますが、それを差し引いても凜さんは人の変化に敏い気がします。

 

「まばゆがそんなこと思う必要ないのに」

「いや、でも、私にもっと行動力があればって、もっと動く勇気があればって思うことは多いんです。だから、つい……」

 

 すると、凜さんは当たり前のように言います。

 

「そのために皆がいるんでしょ」

「皆、ですか?」

「うん。まばゆの考え方って、全部自分で出来なきゃいけない人の考え方だよ。でもまばゆには頼れる人がもういるじゃない。ねえ」

 

 凜さんはマミさんのほうを見ます。

 

「そうね。色々できることに越したことはないでしょうけど、それだって限界はあるわ。特に性格の部分は変えるのが難しい部分でもあるし。私は愛生さんの慎重な部分、良いと思うわよ」

「私も同じ。私が突っ走りがちだから、そういう慎重な考え方する人がいてくれると助かるし」

 

 凜さんは私の肩を優しく叩きます。

 

「上なんて見ればいっぱいいるよ。私なんか、やちよ先輩を初めて知ったとき、『ああ、この人には絶対に届かないな』って思ったもん」

「やちよ先輩って、この前来てた七海やちよさんよね」

「そうそう。あ、巴さんにはまだ言ってなかったよね。実はやちよ先輩、モデルやっててね。一昨日もファッション雑誌の表紙飾ってるんだよ。ちょっと待ってて。……ああ、これこれ!」

 

 そう言いながら、凜さんがカバンから取り出したのは、一冊のファッション雑誌。私はそういうジャンルの雑誌を読まないので、その雑誌が有名なものか分かりませんが、表紙を飾るのは並大抵の人では出来ないことは理解してます。

 事実、マミさんの目が変わりました。

 

「え、この雑誌、そこそこ有名なやつよね? すごい、七海さんスゴい人じゃない!」

「でしょ? この仕事やりながら大学行って、魔法少女の活動もしてるんだから、マジで超人って感じ」

 

 雑誌の表紙に写る七海さんを見ながら、凜さんは言葉を続けます。

 

「こんな逸話聞くと、落ち込んでるのもバカらしくなるでしょ。だからまばゆが誰かと比較して落ち込む必要はないよ。変わろうと思う気持ちは大切だけど、それで自分を下げる必要はないんじゃない? そんなことしちゃうくらいなら、無理に変えるより、そこを誇っていったほうがいいと思うけどなあ。それがいつか、誰かの助けに、救いになることだってあると思うんだ」

 

 

 ああ、本当に。

 どうしてあなたは、そんなに私の欲しい言葉をくれるんでしょう。

 そんなこと言われたら、私は……。

 

「そう、ですね……。うん、そうします。私は根暗ボッチです! 誰かに話しかけてもらえないと喋れません! なんなら話しかけてくれても喋れないときもあります! なので、根気強く喋りかけに来てください!」

「おおー、その意気だー! まばゆにならたくさん話しかけちゃう!」

「私も同意見だけど……、これでいいのかしら?」

 

 マミさんはハテナを頭に浮かべていますが、いいんですよ! こういうのはノリです! 言えるときに言っとかないと恥ずかしくなって言えなくなりますからね!

 

 私の大きな声での宣言に凜さんも安心したようで、イタズラっぽい笑みを浮かべます。

 

「よーし、じゃあ次は私の番! 二人に聞いてほしい話があるんだ!」

「な、なんですか?」

 

 凜さんの言葉に、私は思わず身構えます。

 だって、凜さんが話を聞いてほしいなんて、今までほとんどありませんでした。もしかしたら、私の目的の手がかりに繋がるかもと、私は真面目に聞く姿勢を取ります。

 

 私の雰囲気に、マミさんも少し姿勢を正します。

 

「実はね……」

 

 凜さんはそう言って、先ほど取り出した雑誌の表紙を指で指します。

 

「この表紙のやちよ先輩、メッチャ美人じゃない?」

 

 

 

 その瞬間、私はコント番組顔負けに前へとずっこけました。

 

「それ!? 聞いてほしい話ってそのことですか!?」

「なにー? 先輩が美人すぎるって話なんて一大事でしょー?」

 

 ええ……、と困惑する私。マミさんも苦笑いしてますが、凜さんの言葉には同意のようで頷いていました。

 

「まあ確かに夕凪さんの言う通りね。この七海さん、とても美人。どんなメイクしてるのかしら」

「ねー。でも多分、そんなメイクしてないと思うよ。やちよ先輩、素で顔面偏差値高いし。というかカメラ写り良すぎか?」

「ほんと。凜とした表情、とっても素敵。着ている白いシャツも素敵ね」

「分かるー! あ、でも、私的には3ページ目に載ってる水色のオフショルダーも捨てがたい~! このやちよ先輩、笑顔可愛すぎでしょ。これで大学生は嘘だって」

 

(は、話に入っていけない……!)

 

 こういう話題に私はついていけません。ファッションなんてほとんど勉強したことありません。雑誌に載っている七海さんの写真はどれも素敵なのは同意ですが、それ以外の話題にはまるでついていけません。

 

(さっき話しかけてくれるって言ったじゃないですか! 二人の薄情者!)

 

 と、そんなこと言っている間に、二人の話題はファッションに移っていました。

 

「あー、私も新しい服買いたーい」

「私もよ。この雑誌見てたら買いたくなってきちゃった」

「あ、じゃあさ、今度の休みに買いに行かない? お互い服を見繕ってファッションショーやらない?」

「ふふっ、いいわね、それ。楽しそう」

「でしょ!? あ、まばゆも参加ね」

「うえええ!? わ、私も!?」

 

 しまった、完全に油断してました。

 

 自分が話題に上がるなんて考えていなかった私は、情けない声を出してしまいます。

 

「そうだよー。まばゆも可愛いからねー、色んな服着せたいんだよ」

「私は着せ替え人形か何かですか!?」

「素材がいいからね。それにまばゆ、私服大体一緒だし。あれ以外着てるまばゆも見たいんだよ」

「わ、私だってもうちょい私服ありますよ?」

 

 以前見た映画の主人公に憧れて買った、科学者風の服ですけど……。

 

「と、というか、可愛い言い過ぎです! 口説いてるんですか!?」

「うん、って言ったらどうする?」

 

 凜さんは私の頬に手を添えながら、顔を近づけてくる。

 

「へっ?」

 

 顔が熱を持っていくのが分かる。きっと耳まで赤くなっているでしょう。

 

「……アハハハ! まばゆ、顔真っ赤! ウソウソ! 冗談だから気にしないで!」

「……ちょっとー!? すごい恥ずかしいんですけど!?」

「うんうん、恥ずかしがってるまばゆも可愛いよ。ふっ」

「鼻で笑いませんでした!?」

「夕凪さん。そこまでにしてあげて。愛生さんも困っているでしょう」

 

 見かねたマミさんが私たちの間に入ってくれます。

 

「ごめんごめん。ついまばゆの反応が面白くて……」

「もう。夕凪さんも意外とイタズラ好きなのね」

 

 はあ~、とひとしきり笑った凜さんは、涙を拭いながら私に言う。

 

「でも、まばゆが可愛いのと服買いにいくのは本当だよ。せっかくだから、まばゆの服、見繕ってあげる」

 

(そういうこと、サラッと言えちゃうのがずるいですよ、凜さん)

 

 こう言われてしまうと断るに断れません。まあ、最初からそんなに嫌ではなかったですが……。

 

「いいわね。私も愛生さんにコーディネートしてみたいわ」

「え、巴さんまで?」

 

 私は思わず聞き返してしまいます。

 

「そうよ。せっかくだもの。皆で楽しみたいわ」

「いいねえー。やちよ先輩の雑誌で学んだ私のセンス、なめないでよー」

 

 凜さんも乗り気な表情でそう言います。

 

 

 

 なんだか面倒なことに巻き込まれた気がします。

 

 けど、頭に浮かんだその言葉とは裏腹に、私の口角は上がっていました。

 

 

 だって、今の時間は、普通の学生みたいだったから。

 

 記憶を消したときに、もう絶対に過ごせないと諦めた時間がここには流れていましたから。

 

 

 だから、私は自然と笑顔になっていました。

 凜さんの顔にも影はない。明るくて、ちょっとイタズラっぽい笑みの彼女は、とても自然に見えて。

 

 ああ、なんだか……。

 

(とっても、楽しいですね)

 

 こうやって友達と普通に話せるのがたまらなく楽しくて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、私はミスをしました。

 

 

 これなら、私が何かをするまでもなく、凜さんの心を癒やせるのではって。凜さんを支えていけるんじゃないかって。

 

 そんな楽観的な考えが私の頭に居座りました。

 

(そうですよ。無理に彼女に問い詰める必要なんてありません。凜さんが普通に、楽しく過ごせるなら。そんな日々を私たちと作っていけば、いつかは……)

 

 

 きっと何とかなる。

 

 根拠もなく、そう思いました。

 キュゥべえを追い返せた件もあり、私は事態を軽く見ていました。調子に乗っていました。

 

 

 

 

 

 凜さんに、慎重な考え方をしてくれるから助かるって言われていたのに。

 

 

 

 

 

 

 浮かれていた私は、そんなことも忘れてしまったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.15 Side MA

 

 

 

 

 太陽が地平線に隠れ始めた頃、私たちは暁美さんの家に集まっていました。

 

 ここでいう『私たち』は、いつもの私、暁美さん、凜さんの三人じゃありません。今回のワルプルギスの夜討伐に参戦してくれる人全て、という意味です。

 

 

 今までの時間軸では、どんなに集まっても五人が精々だった暁美さんの家に、今は私を含めて10人がいるという、ある意味異常事態です。

 

 

 話し合いが始まる前から、皆さん自発的に自己紹介をして、交流をしているようでした。

 

 まあ、それもそうでしょう。他の街の魔法少女と話す機会は中々ありません。まして、隣町でもない魔法少女と共同戦線を張るわけですから、皆さん話したいことが山ほどあるでしょう。

 

 

(ま、私にそこへ混じる勇気なんてないわけですが……)

 

 

 く、苦しぃ~!

 しまった……。すっかり忘れていましたが、大人数が集まるということは、必然的に大人数で話さなければいけないということ。

 

(コミュ障の私に、それはハードルが高すぎる~!)

 

 などと、胸の中で頭を抱える私。

 普通に考えて、この雰囲気に入っていける度胸とコミュ力あれば、私はボッチをやっていませんでした。

 

 人間関係は最初の印象が大切なのに、なんたるザマ。

 特に時女一族の人たちとは初対面ですし、挨拶したいのですが……。

 

(オ、オーラが! 発しているオーラが陽キャすぎる! 特に時女さんの雰囲気が竹を割ったような感じで、すごく話しかけづらい!)

 

 すると、時女さんたちを皆に紹介していた凜さんがこちらを気づきました。

 そして、何か納得したような顔をすると、私の腕を引っ張って時女さんたちの前に連れていきます。

 

「紹介がまだだったね。この子は愛生まばゆ。私の友達で、今回の中核メンバーの一人だよ。ほら、この前話した未来視が使える子。それがこの子なの」

「そうだったの。初めまして、愛生さん。私は時女静香よ。一応、時女一族の代表として来ているけど、かしこまらなくていいわ。他の子と同じように接してちょうだい」

「土岐すなおです。よろしくお願いしますね、まばゆさん」

「私、広江ちはる。よろしくね、まばゆちゃん!」

「あ、あ、えと、愛生まばゆ、です。よ、よろしくお願いします!」

 

 一気に喋りかけられて、しどろもどろになる私。

 

「まばゆね、人見知りだから、初めての人とはいつもこんな感じなんだよね~。でも、気にしないでどんどん話しかけてあげて。すぐに饒舌になるから」

 

 私の心中を察したのか、フォローしてくれる凜さん。人見知り、という大分マイルドな表現を使ってくれたことに感謝しつつ、私はようやく時女一族の人たちと話すことができました。

 

 

 

 ちなみに余談ですが、広江さんは大のミステリーマニアらしく、何度も映画化されている推理小説の話ですごく盛り上がりました。

 

 

 

 

 

 そして、全員が揃ったことで、ついに私たちの作戦会議は始まりました。

 

 

 

 

「さて、それじゃあ、改めて今回皆に集まってもらった事情を話すわ。個別には聞いているとは思うけど、もう一度情報を共有するために、私の事情も含めてね」

 

 全員の自己紹介が終わった後、暁美さんはそう言って、彼女自身の事情を話し始めました。

 

「まず、皆には伝えていると思うけど、この街にはあと二週間ほどでワルプルギスの夜がやって来る。ソイツはこの街を壊滅させ、何千人もの犠牲者を出すわ」

 

 暁美さんのその言葉に、全員が息を呑みます。

 

「なぜ言い切れるかと言われれば、私はその未来を経験してきたから。私の魔法は時間操作。普段は時間を止めることしかできないのだけど、契約をした日から1ヶ月だけなら私は時を遡ることができる。その力を使って、私は時間を何度も繰り返してきたわ。そんな破滅の未来を変えるために」

 

「けれど、何度やってもワルプルギスの夜には勝てなかった。どんなに武器を集めても、アイツには届かなかった。見滝原の魔法少女だけではとても太刀打ち出来なかったのよ。私は実感したわ。見滝原の魔法少女だけでは戦力が足りない。だから、あなたたちの力を貸してほしいの」

 

 暁美さんの話を静かに聞いていた時女さんが、手を挙げる。

 

「一つ、質問いいかしら?」

「何かしら?」

「会って間もなくで失礼かもしれないけど、その時を遡るって魔法、証明する方法はあるのかしら。正直、現状ではあなたの作り話とも捉えることは可能なのだけど」

 

 いきなり痛いところを突かれましたね。

 私は暁美さんと同じ時を過ごしていますし、神浜の人たちはみたまさんが証人となってくれますけど……。

 

「ごめんなさい。それに関しては、私を信じてほしい、と言うしかないわ。私の魔法は、記憶しか次に引き継げない。物質的な記録媒体は巻き戻したときに手元に残らないのよ」

 

 すると、凜さんが口を開きます。

 

「けど、信憑性は限りなく高いと思うよ。私の知り合いに記憶を見ることができる魔法少女がいるんだけど、その人が間違いないって言っていたから。その人を疑われちゃうと、反論できないけど……」

 

 凜さんに続くように、巴さんも口を開きます。

 

「それに、暁美さんはこの街の魔女の出現位置を正確に当ててたわ。私も見ていたけど、暁美さんの言っていることは多分、真実かと……」

 

 それを聞いて、手を顎に当てて考え込む時女さん。

 

「どうします、静香?」

「私は信じてもいいような気がするけど……。悪意の匂いは誰からもしなかったし」

 

 土岐さんと広江さんの二人が両サイドから時女さんに声をかけます。

 

 そして、時女さんは答えを出せたのか、目を開いてこう言いました。

 

「分かったわ。暁美さん、あなたの言葉、信じる」

「いいのかしら?」

「ええ。全部を疑っていたら誰も信じられなくなっちゃうもの。どこかで区切りは必要よ。それにちゃるが悪意を感じないのなら、この場にいる人は信用できる。今まで疑ってしまって申し訳なかったわね」

「謝る必要はないわ。こんな話、すぐに信じろというほうが難しいもの。信じてくれただけで、私にとっては救いよ」

 

 そう言う暁美さんの顔はどこか柔らかいものでした。

 

(そうですよね。今まで信じてもらえないことのほうが多かったですから。こうして暁美さんの話を信じてくれる人がこれだけ集まっていること自体、奇跡のようなものです)

 

 暁美さんは全員を見回します。

 

「他に質問はあるかしら? この機会だし、何かあれば遠慮なく言って欲しいのだけど……」

 

 すると巴さんが手を挙げました。

 

「それならいいかしら? 魔法少女を集めるとは聞いていたけど、それは新しく契約するのじゃダメなのかしら? この街にも才能のある子はいるし、暁美さんの話を信じるなら、私以外にも見滝原の魔法少女はいたんでしょう?」

 

 恐らく鹿目さんと美樹さんのことでしょう。

 さすがに巴さんは気づきますよね。

 

「ダメよ」

 

 それに対し、暁美さんは即答。まあ分かってました。

 

「どうして?」

「理由はいくつかあるけど、まず時間が足りないわ。契約して二週間でワルプルギスの夜と対峙したところで足手まといにしかならないわ」

「肉壁くらいには使えそうだけどな」

「佐倉さん!」

「んだよ、マミ。冗談だろ」

「あなたが言うと冗談に聞こえないのよ。それで他の理由は?」

「それは……」

 

 暁美さんが言葉を詰まらせます。

 気持ちは分かります。彼女の本心は、鹿目さんを何としても守りたいというものですから。この空気で、街より一人の少女が大切、とは言いづらいでしょう。

 

 しかし、ここで凜さんは暁美さんに言いました。

 

「……ほむら。言ったほうがいいと思うよ。ここで隠し事すると、信用は得られない」

「でも……」

「大丈夫だよ。ほむらの願いと思いを馬鹿にする人はここにいないと思うけどな」

 

 暁美さんは目を閉じて少し逡巡した後、深呼吸をして決意を固めた顔をしました。

 

「……もう一つの理由は、私自身の願いと反するからよ」

「願い……?」

「ええ。私は……、まどかを守りたい、守れるような自分になりたいと願って魔法少女になったわ。巴マミが言った、この街の魔法少女候補の中に、まどかもいるわ。けれど、彼女を魔法少女にはしたくないの。自分勝手な理由だと思うだろうけど、これだけは譲れないわ」

 

 暁美さんの顔は強張っていました。

 もし、否定されたら。そう考えると、暁美さんとしては恐ろしいのでしょう。

 

 けど、反対に凜さんは何も心配していないようでした。

 かくいう私も心配はしてません。

 

 だって……。

 

 

「それって、普通じゃね?」

「うん、私もそう思う」

 

 フェリシアさんと広江さんが当たり前のように言います。

 

「え?」

「いや、だって大事な誰かのために戦うって当たり前なんじゃねえ? デカゴンボールでも、誰かを守るときが一番強い力を発揮してたぞ」

 

 フェリシアさんに続くように、七海さんも言葉を発します。

 

「フェリシアの言うとおりね。街を守るという理由も立派だと思うけど、私は誰か一人を守りたいって気持ちのほうが共感できるわ」

 

 続けて七海さんは、こうも言いました。

 

「それに、鹿目さんを守りたいだけなら、やり方はいくらでもあったはずよ。それでも、この街での犠牲に目を背けず、戦うことを選んだのなら、私はあなたの意思を尊重するつもりよ」

「七海さん……」

 

 暁美さんの表情から、徐々に強張りが消えていきます。

 

 すると、時女さんも七海さんの言葉に頷きます。

 

「そうね。誰かを守りたいという気持ちは大切よ。守りたい人がいても、この街の犠牲も防ごうとしているなら、少しくらい大切な人を贔屓してもバチは当たらないわ。それに、そういう時のために私たち、時女一族がいるのよ。もしもの時は、その子を優先しなさい。街と人々は私たちに任せてくれればいいわ。事情を話してくれてありがとう、暁美さん。私たちも決心がついた」

 

 太陽のような笑顔でそういう時女さんは、あまりにも眩しいものでした。

 

 凜さんから事前に聞かされていた時女一族の生き方。理解しているつもりでしたが、彼女たちのあり方は私の想像の遙か上でした。

 その覚悟と強さを見せられた気がしました。

 

「……お礼を言うのは私のほうよ。ありがとう」

 

 だから暁美さんが安堵したような、少し泣きそうな表情になってしまったのも仕方ありません。

 

 

 その顔を自分がさせてあげられなかったことに感じた、少しの寂しさは無視しました。

 

 

 

 

「そうだったの……。ごめんなさい、暁美さん。あなたの事情も知らずに、鹿目さんたちを魔法少女に誘ってしまって……」

 

 巴さんはそう謝りますが、暁美さんは首を横に振りました。

 

「あなたが謝る必要はないわ。そもそも言っていなかった私に責任はあるから。こんなことなら、もっと早く話しても良かったのかもね。ごめんなさい」

「それこそ謝らないでちょうだい。それなら、今回はお互い様でどうかしら」

「ありがとう」

 

 なんだかんだ巴さんとも良い関係を築けている辺り、暁美さんが巴さんを苦手としているとは思えませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、私たちは様々な話をして大まかな方針を決めました。

 

「それじゃあ、ワルプルギスの夜襲来の一週間前に集まる、ということでいいかしら? 連携のこともあるし、少しでもお互いの息を合わせておいたほうがいいと思うの」

 

 暁美さんがそう意見をまとめると、凜さんは笑顔で頷きます。

 

「いいんじゃない? 私は賛成。やちよ先輩は?」

「そうね。私もまあ、賛成よ」

「オレも賛成だぞ! これで学校行かなくて済む!」

「ちょっとフェリシア、と言いたいところだけど、死なれても困るしね。一週間だけだからね。二葉さんもそれでいい?」

「は、はい……! 私、戦うの苦手だから、頑張りたいです……!」

 

 七海さんたちは賛成。

 

「私も賛成よ。すなおとちゃるもそれでいいかしら?」

「私もです」

「私も!」

 

 時女の皆さんも賛成。

 

「ま、アタシは何でもいいよ」

「私も問題ないわ」

 

 佐倉さんと巴さんも賛成。

 

「私は、当然賛成です」

 

 最後に私が賛成したことで、全会一致となりました。

 

 そして、この時にワルプルギスの夜討伐に関する詳しい作戦を立てる、ということで会議がまとまりかけた時でした。

 

 

 

 

 私たちの前に、ヤツが現れたのは。

 

 

 

 

「やあ、みんな。本当にこれだけの魔法少女が集まっているとは驚いたよ」

「っ!?」

「キュ、キュゥべえ!」

「あ、キュゥべえ」

「久兵衛様!」

 

 どこから忍び込んだのか、あの忌まわしき白い害獣が姿を現したのです。

 

 その場の反応は様々。

 歓迎する者。鬱陶しそうにする者。楽しそうにする者。嫌がる者。

 

 けど、何より私が意識を向けたのは……。

 

『暁美さん、落ち着いてください』

『まばゆ……』

 

 私は暁美さんにテレパシーで話しかけ、早まった真似をしないように宥めます。

 

『この場にはキュゥべえの本性を知らない人もいます。今キュゥべえに手を出せば、その人たちからの信頼を失いますよ。上手い感じに追い出しましょう』

『……そうね。ありがとう、まばゆ』

『いえ』

 

 そして、私たちは改めてキュゥべえに意識を向けます。

 

「キュゥべえ、来てくれたのね。最近姿を見なかったから心配してたのよ」

「悪かったね、マミ。ボクも色々とやることがあったんだ。それより、この集まりはワルプルギスの夜のための集まりだよね?」

「知ってたの?」

「ああ。話は知っていたさ。暁美ほむら、愛生まばゆのイレギュラーが話している内容はボクとしても興味深いものだったからね」

 

 白々しい、と思いながらも、私は努めて冷静に声をかけます。

 

「それで、何の用ですか?」

「様子を見に来たんだよ。かつてこれほどの数の魔法少女が一つの敵に立ち向かった例は存在しない。だから、これほどの魔法少女が集まるとどうなるのか、気になったんだ」

 

 嘘、という感じではないですね……。まあ、コイツらは嘘だけはつきませんから、当然といえば当然ですが。

 

 しかし、コイツらが私たちを心配して様子を見に来るわけありません。何か裏の意図があるはずですが……。

 

「久兵衛様、ご心配ありがとうございます。ですが、今のところ問題は起きていません。集落の外の魔法少女がどんな人たちなのか気になっていたけど、皆良い人ばかりで……」

「それは良かった。時女一族、特に静香は外の世界を知らないからね。そこの認識の相違が壁になると思ったんだ」

 

(なんか、キュゥべえが様付けされてると、無性に腹が立ちますね)

 

 時女さんとキュゥべえの会話を見ながら、私がそんなことを考えていると、巴さんが口を開きます。

 

「あの、時女さん? どうしてキュゥべえに様付けを?」

「ん? ああ、たしか集落の外だと違うのよね。私たちの集落ではね、久兵衛様は神の使いとされていて、この魔法少女の力を授けてくださる特別な存在として崇められているのよ。契約の時も、特別な神事を行ってから契約するのよ」

「へえ~……。あなた、意外と色んなところに行っているのね」

「まあね。マミのところ以外にも足は伸ばしているよ。魔法少女の契約はボクしかできないからね」

 

(ホントに色々な魔法少女の形があるもんですね)

 

 時女さんたちの話を聞いていると、本当にそう思います。

 

 それは佐倉さんも同じ気持ちだったようで、半ば呆れたような顔をしていました。

 

「神の使い、ねえ。アタシからすりゃただの珍生物にしか見えねえけどな。魔法少女の契約だって、結構あっさり済ましちまったし」

「それが文化の違いさ。時女一族はボクの知る少女たちの中でも特殊なほうさ。さっき静香に聞いたのは、その違いでの苦労についてだよ」

 

 キュゥべえの言葉に、二葉さんが口を開きます。

 

「確かに、それだけ違えば色々と大変ですよね。自分の知っている常識とのズレなんて……」

 

 二葉さんの言葉に、時女さんは頷きます。

 

「そうなのよ。時女一族のように日の本のために戦っている魔法少女はほとんどいないって聞かされたときはショックだったわ。私の常識は外の非常識だし、私たちの知らないことが外の常識だってことも。あなたたちは知ってた? 魔女が魔法少女のなれの果てだってこと?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、その場の空気が凍り付いたのがハッキリと分かりました。

 

 

 まるで時が止まってしまったように、全員の動きが止まりました。

 

 いや、本当に時が止まっていたほうがどれだけ良かったでしょう。それなら、私と暁美さんだけが自由に動ける時間でしたから。

 

 

 

 

 

 しかし現実は、あまりに一瞬で、あまりにあっけない暴露に、私は脳がフリーズしてしまい、フォローのために体を動かすことができませんでした。

 

 

「え? あの、どうしたの皆? 私、そんなに変なこと言ったかしら?」

 

 時女さんは本気で混乱したように言います。けど、それに答えられる人は、この場にはいませんでした。

 

 

 

「魔法少女が、魔女に……? じょ、冗談よね? 時女さん……」

 

 巴さんが震える声で時女さんに尋ねますが……。

 

「え、冗談なの? 私、久兵衛様からそう聞いたのだけど……」

 

 

 

(ああ、もうダメだ……)

 

 この瞬間、私の動かない脳が唯一出力した言葉は、諦めの言葉でした。

 

 この場でいくら誤魔化そうとしても、それが通用するポイントはとっくに過ぎてしまったのですから。

 

 

 時女さんの言葉を聞いた佐倉さんは弾かれるように立ち上がり、キュゥべえの頭を乱雑に掴みます。

 

「おいキュゥべえ。どういうことだ。アタシらにも分かるよう、説明してもらおうじゃんか」

「もちろんいいよ」

 

 佐倉さんの威圧など気にも留めない様子で、キュゥべえはあっけらかんに言いました。

 

「静香の言っていることは事実だ。魔法少女はいずれ魔女になる」

「だから、それがどういうことだって聞いてんだ!」

「焦らなくても、順を追って説明するよ」

 

 佐倉さんに頭を持ち上げられた状態でなお、キュゥべえの目は不気味なほど無感情でした。

 

「キミたち魔法少女は契約の時、その体から魂を抜き取り、固形化する。それがキミたちが今身につけているソウルジェムだよ」

「たま、しい……?」

 

 二葉さんは自身の指に嵌めてあるソウルジェムの指輪を、確認するように元の形に戻します。

 フェリシアさんと巴さんもそれに続くように、自身のソウルジェムを取り出しました。

 

「人間の体は脆弱だからね。そのままでは魔女と戦えない。だから、ボクたちは契約の時にキミたちの魂をソウルジェムへと変えるんだ。そうすれば、キミたちはソウルジェムを砕かれない限り、心臓を貫かれてようと、頭を砕かれようと、魔力が持つ限り戦い続けられる」

「……んじゃ、魔力が無くなったら?」

 

 キュゥべえの言葉を聞いたフェリシアさんが、そう尋ねます。

 

「いい質問だね、深月フェリシア。その答えこそ、最初の佐倉杏子の質問の答え、魔法少女が魔女になるトリガーさ。正確に言うと、ソウルジェムの濁りが限界に達したとき、キミたちのソウルジェムはグリーフシードへと姿を変える。そうして生まれるのが、魔女というわけさ」

 

 キュゥべえはひたすらに淡々と魔法少女の真実を伝えていきます。

 

「じゃあ、私たちが戦ってきた魔女も、元は……」

「そうだよ、二葉さな。キミの想像通り、この世界に存在する魔女も、かつてどこかの魔法少女だった成れの果てさ」

「……っ!」

 

 二葉さんは今にも泣き出しそうな顔をし、口に手を当てながらその顔をキュゥべえから背けました。

 

 佐倉さんのキュゥべえを掴む力が強くなり、腕は小刻みに震えていました。

 

「なんで……」

「ん?」

「なんで、そんなことしやがる!? アタシらになんか恨みでもあんのか!?」

 

 佐倉さんの震えの混じった怒号を、しかしキュゥべえは温度感のない声で返します。

 

「まさか。むしろボクたちはキミたちに感謝しているくらいだ」

「ウソつけ!」

「ウソじゃないさ。キミたち魔法少女は魔女になるその時、希望から絶望への相転移で莫大な感情エネルギーを生み出す。それは既存の熱力学に囚われない、エントロピーを凌駕するエネルギーだ。ボクたちはこれを使って宇宙の寿命を延ばしているんだよ」

「宇宙の、寿命……?」

 

 キュゥべえの言葉に、時女さんたちも頭を傾けます。

 

「ああ、これは静香たちにも説明してなかったね。ボクたちの目的はね、人間の感情エネルギーを利用して宇宙の寿命を延ばすことにあるんだよ。宇宙というのは、常にエネルギーのロスが発生している状況なんだ。この宇宙の物理法則として仕方ないとはいえ、このままではいずれこの宇宙は熱力学的な死を迎えてしまう。そうすれば、宇宙は生命は生きられない状態となってしまうんだ。それを避けるためには、既存のエネルギー法則に縛られない全く新しいエネルギーが必要になったんだよ」

 

 キュゥべえのその雰囲気を不気味に思ったのか、佐倉さんは舌打ちをしながらキュゥべえを離しました。

 佐倉さんからの拘束を逃れたキュゥべえは、私たちを見回すように首を動かします。

 

「そこでボクたちが目を付けたのが、感情エネルギーだったんだ。今の魔法少女システムは、その感情エネルギーを最も効率良く回収する形に過ぎないのさ。だから、杏子が言うような敵意や害意を、ボクたちは人類に向けてやっているわけじゃないんだよ」

 

 キュゥべえは後ろ足で頭を掻きながら、全員にそう伝えました。

 

 しかし、それに噛みついたのはフェリシアさん。

 

「じゃあ、お前らで回収すればいいじゃんか! なんでオレたちなんだよ!」

「その指摘は尤もだけど、残念ながらボクたちには感情というものが存在しない。だからキミたちから回収させてもらうことにしたのさ。当然、それではただ搾取になってしまうからね。見返りは用意させてもらったさ。キミたちも魔法少女になったとき、叶えただろう?」

 

 キュゥべえの無機質な目が、フェリシアを射抜きます。

 

「これでもボクたちは、キミたち人類をあくまで一つの知的生命体と認めた上で話をしているつもりだよ。キミたちは望んでボクと契約した。そして願いを叶えたじゃないか」

「でも知らなかった!!」

 

 フェリシアさんは泣く寸前のように顔を赤くしながら、キュゥべえに詰め寄ります。

 

 しかし……。

 

「知ろうとしなかったじゃないか」

 

 キュゥべえは当たり前のように、フェリシアさんへと言い放ちました。

 

 それを聞いて、佐倉さんが再度詰め寄ります。

 

「テメエが言わなかったんだろ! こんなこと、想像できるかよ!」

「聞かれなかったから言わなかったんだよ。説明を省いたのは事実だけど、契約には何の影響もないからね。実際、契約に必要なのは本人の意思だ。それ以上の説明は、本人が望んだら適宜答えているつもりだよ」

「このっ……!」

「それにさっきからキミたちはボクを非難したいようだけど、そんなに悲観するようなことだとは思わないけどな」

「ふざけてんのか! 勝手に魂をこんな石ころにされて、果ては化け物になることのどこに、悲観しない要素があるんだ!」

「キミたちは宇宙の寿命を延ばすことに役立っているんだよ。それはいずれキミたち人類にも利がある話だ。この地球に人類は80億もいる。たかだか数パーセントが犠牲になったところで、人類が存続していける可能性を残せるのなら、十分良い話だと思うけどな」

 

 

 次の瞬間、火薬の炸裂する音が響き、キュゥべえの頭に風穴が開きました。

 

「……これで分かったでしょう。コイツの正体はこんなもんよ」

 

 薬莢の落ちた音が響く中、暁美さんは吐き捨てるように言いました。

 

 

 

 

「ちょっと!」

 

 一瞬の静寂の後、それを切り裂いたのは時女さんの声でした。

 

「あなたたち、何か久兵衛様と誤解があったみたいだけど、それでもいきなり殺すなんて……」

「心配しなくていいよ」

 

 時女さんの言葉を遮って、再び姿を現すキュゥべえ。

 

「久兵衛様!」

「ボクに個体の概念は存在しない。だから体はただのハードウェア、依り代でしかないのさ。キミも十分知っているだろう、暁美ほむら」

「……」

「ボクを殺しても無駄だと知っていてやっているのだから、本当に人類は興味深い存在だ。とはいえ、ボクとしても無闇に体を減らされるのは困るんだ。そっちだって、無駄な労力は割きたくないだろう」

 

(本当にコイツは……!!)

 

 これ以上、キュゥべえの好きにさせたくなくて、私が口を開こうとしたときだった。

 

「……出てって」

 

 泣いてる二葉さんを抱きしめながら頭を優しく撫でていた凜さんが、口を開きました。

 

「キュゥべえ。もういいよ。これ以上、あなたと話すことはない」

「そうかい? せっかくだ。この機会にキミたちの質問に答えようじゃ……」

「出てって!!」

 

 そう叫ぶと同時に、凜さんはソウルジェムから生み出した双刃刀の刃を、キュゥべえのすぐ横に投げつけました。

 

 壁に突き刺さったそれを見て、キュゥべえは、やれやれ、と頭を振ります。

 

「仕方ない。これ以上、個体を減らされるのはもったいないからね。ボクは帰るよ。それじゃあね」

 

 キュゥべえはそう言うと、尻尾を振りながら影へと消えていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして残されたのは、絶望とやるせなさの濃い空気だけでした。

 

 そんな空気の中、最初に口を開いたのは、やはり佐倉さんでした。

 

「……ほむら。お前たち、知ってたのか?」

「……ええ」

「そうか……」

 

 佐倉さんはそう言ったきり、口を閉じてしまいました。

 

 二葉さんは泣いていて、フェリシアさんも唇を噛みしめ、必死に泣くのを堪えているようでした。巴さんは顔を下に向けたまま動きません。

 凜さんは二葉さんの横に座り、背中を撫でてあげていました。七海さんも、フェリシアさんの横に行き、話をしてあげているようでした。

 

 ですが……。

 

(これは、もう……)

 

 

 お通夜状態、なんて表現は生易しいでしょう。

 

 

 この状況はマズいと思ったのでしょう。

 凜さんは努めて明るい声で皆さんに話しかけます。

 

「え、えっと、まあ、魔法少女の真実は今の通りなんだけど……。そ、それでも、絶望する必要はないんだよ! えと、やちよ先輩! やちよ先輩も、魔法少女になって6年だけど、全然大丈夫だし……、必ず魔女になるってわけでも……」

 

 しかし、その言葉で気持ちが前を向く人は、この場に一人もおらず……。

 

 その状況を憂いたのか、時女さんも援護に入ります。

 もっとも、時女さんがこの状況で話したらどうなるか、私たちが気づくべきだったのですが……。

 

「そうよ。それに、私はむしろ、久兵衛様の話を聞いて安心したわ。私たちが魔女になることが宇宙のためになっていたなんて、私知らなかったもの。久兵衛様も私たちのことを騙しているのかと思っていたけど、安心したわ。きっとこれなら、過去の巫たちだって報われるはずよ」

 

 そう言い切る時女さんの瞳に濁りなどなく、純粋に、ただただ純粋にそう思って発言したのでしょう。

 

 その純粋さが、最後の一押しとなってしまいました。

 

「は? アンタ、本気で言ってんのか?」

 

 佐倉さんが理解できない、といった目で時女さんを見ます。

 

「本気でって……、当然よ。魔法少女となってこの国を守れるようになり、死んで魔女になってもこの宇宙のためになれるのなら、十分よ。私が死んだとしても、この国の、この世界の未来のためになるのなら、それは本望というものよ。きっと私が魔女に身を堕としても、他の巫が征伐してくれるわ。それなら、不安に思うことなんてないじゃない」

 

 時女さんはただただ真面目な雰囲気で答えています。

 けど、それが時女一族と私たちの価値観の違いを、より明確化させていました。

 

「……はあ。アンタのこと、勘違いしてたよ。頭お花畑かと思ってたが、思想までイカれてるとはね。これは参ったね」

「……どういう意味?」

「そのまんまの意味だよ。誰かのため、誰かのためって、アタシからしたら馬鹿げてるとしか思えない」

「なんですって?」

「そんなに誰かのためになることが立派かよ。誰かのためなんて、最期は大抵ロクでもないもんだ。こんなクソみたいな運命押しつけられて、なんで誰かのために戦わなきゃいけないんだよ。この力はアタシのもんだ。アタシらだけのもんだ。それなら、この力で少しでもアタシらが得するように生きるのが道理ってもんだろ」

 

 その言葉に、時女さんはあからさまに顔を歪める。

 

「それには賛同できないわね。日の本のために生きろ、とは言わないけど、その力は誰かのために使うべきじゃないかしら?」

「それならどうぞ好きにやってくれ。アタシはそんな生き方ごめんだね。この力で奪えるヤツから奪えばいいだろ」

「それじゃ搾取じゃない」

「それでいいんだよ。食物連鎖って言葉、田舎者のアンタでも知ってんだろ? ただの人間より色々できんだから、それを使ってアタシらが搾取する側に立つんだよ」

「信じられない……!」

「それはこっちのセリフだ。正義の味方とか、その手のおちゃらけた冗談を後生大事に守ってきた一族があるなんてな。それを忠実に守ってるアンタらが哀れでしょうがないよ」

 

 その瞬間、時女さんの顔が明確に険しくなりました。

 

「訂正しなさい。私を馬鹿にするならともかく、過去の巫まで侮辱するなら見過ごせないわ。今すぐ謝罪して」

「正しいと思ったこと言って、なんで謝んなきゃいけないんだよ。やだね」

 

 佐倉さんは笑いながらも、冷たい目を時女さんに向けます。

 

 二人の視線は、まるで火花を散らしているようでした。

 

「杏子、止めなさい。今は私たちで争ってる場合じゃないわ」

 

 暁美さんが佐倉さんの肩を掴んで、止めに入ります。

 しかし、佐倉さんはその手をどけ、暁美さんに言います。

 

「アタシだってそうしたいさ。けど、聞いただろ? アタシらとは価値観が違いすぎる。アタシも、今回だけの共闘ならって目をつむるつもりだった。けどさ、この状態で共同戦線張ったって、足の引っ張り合いになるだけだよ?」

「……確かにあなたのやり方に合わないのは認めるわ。けど、彼女らだってワルプルギスの夜を討伐にするには欠かせない戦力で……」

「本気でアイツらと一緒に戦うつもりか? ほむら、凜」

「……うん」

 

 凜さんの返事に、そうか、と返すと、佐倉さんは玄関へと踵を返します。

 

「それなら、アタシは降りるわ」

「えっ。ま、待ってください、佐倉さん! あなたがいないと……」

「悪いけど、あれに付き合えるほどアタシも我慢強くないんだわ。アイツら抜けたらまた声かけてくれ」

 

 佐倉さんはそう言って、引き止めようとする私を躱して、外へ出ていってしまいました。

 

 

 

 

 

「その……、ごめんなさい。私が余計なこと言ったせいよね」

 

 呆然と立ち尽くす私に、時女さんはそう謝ります。

 

 その一方で、けど、と時女さんは続けます。

 

「彼女が抜けるのに、私は賛成よ。あの子の考え方、私は納得できないわ。あの子を仲間にするなら、彼女の考えを改めさせるか、私たちが抜けるかのどちらかよ。さすがにあの子と一緒に戦ったら、これまでの時女の巫に申し訳が立たないわ」

 

 時女さんは毅然と言いました。

 この瞬間、私はキュゥべえの言っていた価値観の違いを、ハッキリと実感しました。魔法少女への価値観も、向き合い方も私たちとはまるで違う。

 覚悟が決まっている、というのが正しいのでしょう。

 

 すると、凜さんが口を開きます。

 

「いや、いいんだよ。静香ちゃんたちの生き方を考えたら、受け入れられないのは理解できるから。杏子ちゃんに関しては、私が何とかするから。そしたら、彼女のこと、許してあげてくれないかな?」

「そう、ね。彼女がさっきの発言を謝罪してくれたら、私としては言うことはないわ」

 

 すると、時女さんが立ち上がります。

 

「すなお、ちゃる。私たちも、一度おいとましましょうか」

「え、でも、静香ちゃん……」

「いいんでしょうか……?」

 

 二人の言葉に、時女さんは少し寂しそうにしながら答えました。

 

「これ以上私がいたら、また話をこじらせてしまいそうだから。本当にごめんなさい。夕凪さん、暁美さん、愛生さん」

 

 そう謝罪の言葉を口にした後、時女さんは出ていってしまいました。

 

「あ、待ってよ、静香ちゃん!」

「すみません、お邪魔しました。 また、後ほど……」

 

 広江さんは慌てて、すなおさんは私たちに一礼した後、時女さんを追いかけて暁美さんの家を出ていきました。

 

 

 

 

 

 

 そうして暁美さんの家が、三人分静かになったときでした。

 

「うるっせえよ!」

 

 フェリシアさんの怒号が部屋中に響きます。

 

 

 私たちが時女さんたちと話している間、七海さんと何かを話しているのは横目で確認したのですが、何が……。

 

「落ち着いて、フェリシア」

「落ち着いてられかっよ! キュゥべえの、アイツのせいで魔女が生まれてんだぞ! オレのとーちゃんとかーちゃんを殺した原因作ったアイツを、放っとけって言うのかよ!」

「そうは言ってないでしょ。ただ、アイツは殺してもすぐに新しいやつが出てくる。殺したところで無駄だし、魔女を生み出すのを止めさせることはできないの。殺すだけ無駄ってだけよ」

「言ってるだろ! というか、やちよは知ってたのかよ、この事」

「……ええ」

「知ってて、黙ってたのか?」

「……ええ」

 

 その瞬間、フェリシアさんは拳を振りかぶり、数瞬の迷いの後、テーブルにその拳を叩き付けました。

 

 ドン、と大きな音が響き、二葉さんの肩が跳ねます。

 

 すかさず凜さんが声をかけます。

 

「フェリシアちゃん、落ち着いて。気持ちは分かるけど、無闇に物に当たらないで。さなちゃんが怯えてる」

「うるせえ! 凜! お前も知ってたのか? いや、やちよの仲間だったんだから知ってたんだろ!?」

「それは、そうだけど……」

「くそっ! なんだよなんだよなんだよ! 知らなかったの、オレだけかよ! じゃあ、オレがバカみてえじゃん! 凜、お前、オレの復讐のこと聞いた時、どんなこと思ってたんだよ! バカにしてたんだろ!」

「そんなことしないよ! 魔女のことだって隠してたわけじゃ……」

「凜の言うとおりよ。あの情報は不用意に教えるべき真実じゃない。言うべきタイミングが来たら、いずれ言うつもりで……」

「ウソだ! 信じねえ!」

「フェリシアちゃん! お願い、信じて。それにフェリシアちゃんの気持ち、私だって分か……」

「分かるわけねえ! お前、まだ出会って一週間くらいしか経ってねえだろ! そんなんでオレの気持ちが分かるかよ! 信じられるかよ!」

 

 その言葉に凜さんはひどく動揺し、端から見ても分かるくらい、傷ついた顔をしました。

 

「フェリシア!」

 

 七海さんに怒鳴られ、フェリシアさんは、ビクリと動きが止まります。

 けれど、それも一瞬のことで……。

 

「……うるせえ! バーカ! バカ、バーカ!」

 

 フェリシアさんはそう言うと、逃げるように外へと飛び出していきました。

 

「ちょっとフェリシア! もう! あの子ったら……!」

 

 すると、凜さんが七海さんに声をかけます。

 

「やちよ先輩。今はフェリシアちゃんを追ってあげてください」

「でも……」

「こっちは大丈夫です。なんとかします。それにさなちゃんも辛そうですし。一度、落ち着く時間が必要だと思います。だから、神浜に戻って二人の気持ち、受け止めてあげてくれませんか?」

 

 凜さんは微笑みます。

 その顔に、七海さんは渋々といった様子で引き下がりました。

 

「……分かったわ。ごめんなさい」

「いえ、謝るのはこっちです。こんなことになって、ごめんなさい」

 

 そうして、七海さんは二葉さんの手を握って、玄関へと向かいました。

 

 外へと出る寸前、七海さんは振り返って言いました。

 

「あなたたちも、くれぐれも無茶しないように」

「分かってますよ」

 

 凜さんはさらっと返します。それは、いつものやり取りのように見えて、凜さんが七海さんの言葉から逃げてるように見えたのは、私だけでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 七海さんが出ていって、残ったのは私と暁美さん、凜さん、そして巴さんの四人でした。

 

 先ほどからずっと俯いている巴さんに、私は声をかけます。

 

「あの……、巴さん。大丈夫、ですか?」

 

 その声に、巴さんはゆっくりと私の顔を見ます。

 

 その目は、どこか焦点の合っていないものでした。

 

「え、ええ。ごめんなさい。ちょっと、頭が混乱していて……。私は大丈夫よ……。そう、大丈夫、大丈夫……」

 

(そんなわけないでしょう……)

 

 巴さんは、どの時間軸でも魔法少女の真実に、強いショックを受けていました。

 だから、私がフォローしないと……。

 

 私がそう考えていると、巴さんが立ち上がりました。

 

「巴さん……?」

「ごめんなさい、私も、帰らせてもらうわね。ちょっと、頭を整理したいから……」

「ま、待ってください、巴さん。少し落ち着いてからでも……」

「放っておいて!」

 

 巴さんの大声に、私は思わず肩を縮めてしまいます。

 

「今は誰とも話したくないの……! こんなこと、こんなのって……!」

 

 

 巴さんは走り出し、玄関の扉を開けて出ていきました。

 

 

 

 扉の閉まる音が、やけに大きく聞こえました。

 

 

 

 

 

 

 

 私たち三人だけが残された部屋で、凜さんは明るい声で切り出しました。

 

「……まあ、起きちゃったことはしょうがないよね。よし! 切り替えていこう!」

「凜さん……」

「ほらほら、まばゆもほむらも、そんな暗い顔しないで。まだ誰か死んだわけじゃない。致命的でも、不可逆な事態にはなってない。なんとかなるよ!」

 

 凜さんの声は、場を支配する重苦しい空気とは完全に不釣り合いで、凜さんが無理して明るいテンションで喋っているのは、私でも分かりました。

 

「凜、あなたまた無茶して……」

「してないって! ほむらも意外と心配性だなー」

 

 暁美さんの心配の言葉を、凜さんは軽い様子で流します。

 

「仮にしてたとしても、今は私より他の皆のほうが大切だって。ほむらも分かるでしょ?」

「……」

 

 暁美さんは、顔を顰め、そっぽを向いてしまいました。

 凜さんはバツが悪そうに、頭を掻きながら暁美さんに声をかけます。

 

「ああー……。えと、とりあえず、壁、傷つけちゃってゴメンね。つい、カッとなっちゃって……」

「……別に、気にしてないわ」

 

 とりあえず会話してくれたことに安心したのか、凜さんは一つ息をつくと、私のほうを見て言いました。

 

 

「まばゆも、心配しないで大丈夫だからね。私が絶対に何とかするから」

 

 その言葉を、私は受け入れたくありませんでした。だって、それじゃ、また凜さんが……。

 

「私、じゃなくて、私たち、でお願いします……」

「え?」

「頼りないかもしれないけど、私も力になります。凜さん一人に任せきりにはできませんから」

 

 けど、大した言葉も浮かばず、いつもと同じやり取りのようになってしまいました。

 力になるとは言うけれど、その実、私が凜さんの力になれたことなんて、今まで一度もないのですから。

 

(こんな気休めの言葉を言うのが精々の私に、本当に何かできるんですか? みたまさん)

 

 

 

 すると、暁美さんは大きく息をして、口を開きました。

 

「私もよ。あなただけに任せるわけにはいかないわ。さすがにあなたでも、一人でこの状況は厳しいでしょ。私とまばゆも手伝うわ」

 

 暁美さんは私のほうを見ます。

 頭に浮かんだ暗い思考を隅に追いやり、とりあえず暁美さんに期待されている言葉を言います。

 

 

「そ、そうですよ! 私たちにできることなら、いくらでも……!」

「ふふっ。ありがとう、二人とも」

 

 凜さんは笑みを零し、お礼を言います。

 

「大丈夫。まだ、何とかなるはず。諦めなければ、きっと……」

 

 凜さんの言葉は、半分自分に言い聞かせるようなものでしたが、それに私が勇気づけられたのも事実で……。

 

(そうですよ。まだ取り返しのつかない状況じゃない。凜さんがいれば、まだ……)

 

 状況はひっくり返せる。

 

 

 きっと私だけだったら、この状況に絶望し、動くことを諦めたでしょう。

 

 でも、凜さんと一緒なら……。

 

 

 私はまた、凜さんに希望を見いだしていました。

 

 

 

 凜さんだってギリギリのはずなのに。それを何とかするために私は動いていたのに。

 

 

 

 その希望がいかに淡いものか。

 

 気づかないふりをしないと、私は動けなくなってしまいそうでした。

 

 

 

 

 

 

 

 




すれ違いはまどマギのお家芸ってハッキリ分かんだね。

そしてやっぱり場をかき乱すのは……。

次回もよろしければ読んでいってください。
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